心房細動による心原性脳梗塞では, 急性期における梗塞再発リスクが0.1-1.3%と高く, なるべく早期に予防的抗凝固療法の開始が理想である.
しかしながら, 早期の抗凝固療法は脳出血のリスクとなる可能性もあるため, 開始のタイミングは難しい.
EHRA-ESCガイドラインでは
・TIAでは翌日より抗凝固開始
Minor strokeでは3日後 (NIHSS<8で定義)
Mild strokeでは6日後 (NIHSS 8-15で定義)
Severe strokeでは12日後 (NIHSS >15) に開始することを推奨しており,
・これらは1-3-6-12 ruleと呼ばれる.
(Lancet Neurol. 2019 Jan;18(1):117-126.)(Europace. 2018 Aug 1;20(8):1231-1242.)
他のガイドラインの推奨のまとめ
ただ, これらよりも早期に開始しても出血リスクは増加しないとの報告も最近増えてきている
日本国内より, 1-2-3-4 ruleの提唱
(Stroke. 2022 May;53(5):1540-1549.)
・国内より2つのProspective cohortのデータを解析.
TIA, NIHSS 0-7, 8-15, ≥16の脳梗塞症例において, DOACの開始時期を評価.
DOAC開始の中央期間よりも早い症例を早期投与群と定義し, 早期投与と予後を比較した.
・1797例の患者において, TIAでは2日,
脳梗塞例では軽症, 中等症, 重症でそれぞれ 3,4,5日で開始していた.
両群における出血, 塞栓症のリスク
・早期群: 1-2-3-4日後に開始した群は, 晩期群と比較してよりStroke再発リスクは低く, 大出血は両群で同等であった.
ELAN: Nonvalvular Afを認める脳梗塞症例を対象とし, 抗凝固療法(DOAC)開始のタイミングを比較したRCT.
(N Engl J Med 2023;388:2411-21.)
・脳梗塞は軽症(梗塞巣≤1.5cm),
中等症(中大脳動脈, 前大脳動脈, 後大脳動脈の皮質表在枝の分布にある梗塞),
重症(中等症の動脈支配領域のさらに広範囲の梗塞や>1.5cmの脳幹, または小脳の梗塞)に分類し, それぞれでDOACの開始タイミングを設定し比較
・N=2013例
・早期開始群: 軽症, 中等症では48時間以内, 重症では6-7日目(1-2-2-6)
晩期開始群(ガイドラインによる推奨 1-3-6-12): 軽症では3-4日目, 中等症では6-7日目, 重症では12-14日目
・アウトカムは脳梗塞再発リスクと出血リスク.
アウトカム
・脳出血リスクは両者で有意差なし.
・脳梗塞再発リスクは有意差はないものの, 早期開始群で1%程度低下する可能性が示唆された.
・90日アウトカムでは, 複合アウトカムで 有意差を認める
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心房細動+脳梗塞症例における抗凝固の開始時期は従来のGLで推奨されている投与開始期間よりも大きく短縮される可能性がある.
TIAでは早期に, 軽症では1-2日後, 中等症でも2-3日後, 重症では4-6日を目安とするとよいのかもしれない. ルール的には 1-2-3-5 的な?