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2023年1月5日木曜日

膿胸, 肺炎随伴性胸水に対するNaHCO3の胸腔内投与

膿胸や肺炎随伴性胸水ではしばしば線溶作用のある薬剤(ウロキナーゼ)の胸腔内投与が行われる.

外科治療の必要性やドレナージ治療の成功率の改善が期待できる.


しかしながら, 現状ウロキナーゼが品薄であり, 供給が停止している.


そんななか, NaHCO3(重炭酸ナトリウム: メイロン®)の投与が有用かも?という報告.



NaHCO3は抗血栓作用や抗菌作用を有している

(International Journal of General Medicine 2022:15 8705–8713 )

・
Caイオンをキレートし, フィブリノーゲンからフィブリンへの変化を抑制.

・
細菌のバイオフィルム形成, 特にブドウ球菌などのグラム陽性菌の付着力を低下させる作用も期待できる.

・NaHCO3イオンは細菌の膜透過性を変化させ, 細菌自体の構造を変化させる可能性が示唆されている.


35例の肺炎随伴性胸水, 膿胸患者を対象としたRCT

(European Respiratory Journal 2017 50: PA3750; DOI: 10.1183/1393003.congress-2017.PA3750)

・膿性胸水, pH<7.20, 培養/グラム染色陽性例を導入.

・両群で胸腔鏡治療を行い, 且つ

 
8.4% NaHCO3 200mLで胸腔内洗浄を行い, 以後200mL/日を胸腔内投与群と

 
生理食塩水 500mLで胸腔内洗浄群に割り付け, 比較.


アウトカム

・NaHCO3群では88%が完全治癒, 12%が部分治癒

 
対象群では70%, 30%と有意にNaHCO3群で良好の結果.

・在院期間は2.9±1.1日 vs 5.1±1.3日とNaHCO3群で短縮された.


感染性の胸水症例40例を対象とした前向きCohort.

(International Journal of General Medicine 2022:15 8705–8713)

・画像上胸水貯留を認め, 膿性胸水, pH<7.20, 胸水培養陽性のいずれかを満たす症例が対象.

・ウロキナーゼ胸腔内投与による治療群とNaHCO3投与による治療群でアウトカムを比較した.

・ウロキナーゼは1回 10000UI/50mL


 NaHCO3は50 mEq/50mLを使用.


 胸腔穿刺後, トロッカーより薬剤を胸腔内に投与した.

・胸水穿刺は残った胸水を排液するために繰り返された.


・アウトカムは良好な治療成績であり,
 

 十分な胸水排出, 臨床症状の改善, 全身感染の抑制, 画像上の改善で定義


母集団

・Group AはNaHCO3群, Bはウロキナーゼ群


画像所見/検査の比較

・多くが胸腔の半分異常を占める
胸水貯留

・膿瘍は20%

・Gram陽性菌はおよそ半数程度


アウトカム

・抗菌薬投与期間や発熱持続期間, 
治療成功率は両者で有意差を認めなかった.

・複数回の胸腔穿刺の必要性も両者で差は認めない結果.


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まだまだエビデンスは弱く, 規模の大きいRCTが欲しいところではあるが,

現状のウロキ供給停止下では一つの選択肢として押さえておくと良い