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2021年2月9日火曜日

市中感染症とギランバレー症候群(GBS)のリスク

 GBSの前駆感染症ではCampylobacter jejuniによる腸炎や, 最近ではZikaウイルス, そしてCOVID-19後なども有名. ワクチン摂取後の発症もある.

免疫が惹起されて生じるため, それら以外の一般的な感染症もリスクとなることは重要.

(Neurology. 2021 Feb 9; 96(6): DOI: 10.1212/WNL.0000000000011342)

デンマークにおけるNational cohort:

1987-2016年に診断された初発のGBS症例全例と1:10MatchさせたControl群において診断の60日以内の病院で診断された感染症(ER受診, または入院), 市中で処方された抗菌薬の頻度を比較した.

・さらに, Primary careにおいて, 感染症に関連した検査施行歴も評価.

・CRP測定やA群溶連菌抗原検査, 尿培養, 血液培養, マイコプラズマ肺炎検査, インフルエンザ, アデノウイルス検査など

GBS症例は2414, Control群は23909例を評価した.


アウトカム:

GBS OR

病院 感染症歴

市中 抗菌薬処方

全体

13.7[10.2-18.5]

3.5[3.0-4.1]

小児群

14.7[6.4-34.1]

3.2[1.7-5.9]

成人群

13.6[9.9-18.7]

3.5[3.0-4.1]

<50歳

13.6[8.4-22.0]

3.3[2.6-4.3]

50歳

13.8[9.5-20.2]

3.6[2.9-4.4]

・市中感染症歴や抗菌薬処方歴は有意なGBSのリスク因子となる

GBS症例の4.3%60日以内の病院診断の感染症歴(vs 0.3%)

 22.4%で市中における抗菌薬処方歴(vs 7.8%)がある.

リスクは小児, 成人にかかわらず, 上昇


感染症のフォーカス

・下気道感染症, 消化管感染症, 上気道・耳感染症, 尿路感染症, 皮膚と様々な部位でリスクが上昇.

敗血症もリスク因子.


感染後1ヶ月以内で最もリスクが高い.


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・以前, 市中感染症で入院した患者さんが, 入院中にGBSを発症した症例がありました.

 GBSといえば, 「数日の経過で増悪する下肢の痺れや疼痛 → 上行性の脱力で救急受診」というIllness scriptが強かったため, 「院内発症のGBS」という鑑別がすっぽり抜けていたことが思い出されます. 

 一般市中感染症を診療する立場では, このような経過もIllness scriptとして押さえておくとよいかもしれません.