2021年1月のJAMA Intern Medより, COVID-19肺炎に対するトリシツマブ(TCZ)を評価した3つの報告が発表されたので, 簡単にまとめです.
+ NEJMからの報告も追加です(2020/1/14)
RCT-TCZ-COVID-19: イタリアにおけるOpen-label RCT
(JAMA Intern Med. 2021;181(1):24-31. doi:10.1001/jamainternmed.2020.6615)
・PCRで診断された成人例のCOVID-19で, 肺炎像を認め, P/F 200-300, 且つ発熱(≥38度)とCPR上昇(≥10mg/dL)を伴う症例を対象
・TCZ投与群 vs 通常の治療群に割り付け, 14日以内の挿管管理, 死亡, 呼吸状態の増悪(P/F <150, RR>30), 多臓器障害リスクを比較.
気管挿管はP/F <150, RR>30, Respiratory distress, MOFで考慮
・TCZは初回8mg/kg, Max 800mgを投与し, 12h後に再投与.
・Control群では通常の治療を行う. IL-1阻害薬やTNF阻害薬, JAK阻害薬の使用は禁止.
・ステロイドは入院前に使用している場合は使用可. 入院後増悪した場合, ステロイドやTCZの使用は両群で許容.
アウトカム・臨床的増悪, ICU入室, 死亡リスクは両者で有意差なし
CORIMUNO-TOCI-1: フランスにおけるopen-label RCT.
(JAMA Intern Med. 2021;181(1):32-40. doi:10.1001/jamainternmed.2020.6820 )
・COVID-19による中等度以上の肺炎症例を対象.
診断はPCRまたは典型的な胸部CT画像で診断,
中等度以上の肺炎はO2投与量>3L/分且つWHO-CPS ≥5で, NIVやMV未使用患者を導入
・TCZ群(8mg/kgをDay 1に投与. 必要に応じて400mgをDay 3に追加) vs 通常の治療群に割り付け, 比較.
必要に応じてとは, 酸素投与量が半分以下にならない場合に考慮されるが, 最終敵には主治医の判断が優先される.
通常の治療群はステロイド含む.
・アウトカムはDay 4における死亡, NIVやMVの使用
Day 14におけるNIVの必要率を評価
アウトカム
・Day 14
における死亡リスク, MV導入にリスクはTCZで低下する傾向があるが, 有意差はない
STOP-COVID: 米国におけるICU管理となったCOVID-19患者4485例のデータを解析.
(JAMA Intern Med. 2021;181(1):41-51. doi:10.1001/jamainternmed.2020.6252 )
・ICU入室から2日以内にTCZを使用した群と不使用群で分類し早期のTCZ投与と予後の関連を評価した.
・3924例を評価し, このうち433例(11.0%)でICU入室早期にTCZを使用
・TCZ使用群のほうがより若年, ICU入室時の低酸素が多く, MV使用やP/F<200が多い.
・両群をInverse probability weightingでBaselineと重症度を合わせ, アウトカムを比較した.
アウトカム
・推定30日死亡率はTCZ群で27.5%[21.2-33.8]
Control群で37.1%[35.5-38.7]
RD 9.6%[3.1-16.0] と有意で早期TCZは死亡率低下に関連
NEJMからの報告
COVID-19肺炎で入院した, 人工呼吸器使用のない患者群を対象としたRCT.
(N Engl J Med 2021;384:20-30.)
・患者は成人症例で, PCRまたは典型的な画像所見にて診断
・室内気でSpO2 <94%を満たす群で, 人工呼吸器やBIPAP, 陽圧換気をされている群は除外
また, 24h以内に致命的となりそうな増悪がある患者や活動性TB, 活動性の細菌, 真菌, 他のウイルス感染症が疑われる場合も除外(コントロールされたHIVは除く)
・TCZ 8mg/kg投与群 vs 通常の治療群に割り付け, 比較
TCZは初回投与後 8-24hあけて再投与可(2回まで)
母集団
アウトカム
・人工呼吸器使用+死亡の複合エンドポイントは有意にTCZ群で低下する結果.
・死亡リスク単独では有意差なし
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P/F 200-300を対象としたRCTでは予後改善効果はなく
O2投与されている患者を対象としたRCTでは予後改善する可能性があるという結果.
→ これはNEJMからの報告も同じ
Cohortを用いたICU管理となった患者群の比較では死亡率はかなり低下する(NNTが10近い)
TCZはARDSにいかないまでの酸素投与が必要な患者で使用すると, その後の増悪リスクが防げる可能性がある.
ステロイドと同じ感じか