ページ

2019年8月8日木曜日

非外傷性の視力障害に対するPOCUS: ViGMOプロトコール

眼球エコーは視神経鞘径の評価と頭蓋内圧亢進についてのデータを紹介した
参考 http://hospitalist-gim.blogspot.com/2012/10/optic-nerve-sheath-diameter.html

それ以外にも眼球エコーは眼球内の異常の評価に有用なことが多い.
眼内異物や硝子体剥離, 網膜剥離など.

ERを受診した眼外傷 or 急性の視力障害 61例のProspective Observational Studyでは, 

61名中, 26例が最終的に眼球内の異常と判断.
 内訳は穿通性眼球損傷(3), 網膜剥離(9), CRA閉塞(1), 水晶体脱臼(2)
 残りは硝子体出血, 硝子体剥離.
眼球エコーは, 上記診断, 眼球内障害除外に対して感度96.2%[88-99], 特異度100%[94-100]で予測可能. といった報告もある.
(ACADEMIC EMER- GENCY MEDICINE 2002; 9:791–799.)

ERにおける, 非外傷性の急性視力障害の評価として, POCUSを用いるプロトコールが提唱されている.

(American Journal of Emergency Medicine 37 (2019) 1547–1553)
ERにおける非外傷性視力障害のPOCUSによる評価: ViGMO protocol
・急性の, 単眼性, 無痛性, 非外傷性の視力障害における評価
 フラッシュ,飛蚊症, 視野欠損, 視力低下などが対象.
両側性の視力障害は中枢病変を疑うべきであるし,
 片側性の完全・完全に近い失明は血管障害を優先して評価(この場合はDopplerを用いるが, これは経験が必要.)(参考: http://hospitalist-gim.blogspot.com/2012/10/ischemic-optic-neuropathy.html)
・上記対象患者では主に4つの疾患を考える;
 硝子体離水 - 飛蚊症を自覚することが多い
 後部硝子体剥離 - 飛蚊症を自覚することが多い
 網膜剥離 - 視野欠損, 光視症を自覚(視野に光が走る)
 硝子体出血 - 霧視, 視力低下, 糖尿病患者で注意
・さらに, 頭痛や視力の低下を伴う患者では視神経乳頭浮腫にも注意する.


・硝子体剥離や離水は良性の病態であり, 高齢者で多く, 無症候性のことも多い. たまに飛蚊症を伴うことがある.
・網膜と硝子体に強い癒着があると, 網膜も蹄状に避ける(10%). これも自然に改善するが, 一部で網膜剥離に移行する.

眼球のエコー評価ではViGMO protocolを用いる
Vitreousの異常(硝子体)
 high, low Gainにおける異常所見の評価
 eye Movementの変化
 Optic discの所見を評価.
仰臥位~半仰臥位でLinear probeを用いて閉眼状態で, 眼瞼上から眼球を水平断で評価する
・エコーの設定は, 多くの機械で”ophthalmic” presetがあるがなければ”small parts” presetで高周波を選択する
・深さは眼球+数cmの深さとし, 視神経や眼球後部が入るように.
・Gainlow-mid rangeで開始

正常眼所見

・Side lobe Artifactが硝子体部位に認められる

硝子体離水
・Normal-low gainにおいて, 小型, 平坦, 可動性の反射する構造物.
 薄い蜘蛛の巣状の構造で繋がっていることが多い.
・Gainをさらに低下させると消失し, 上昇させるとより明瞭に見える
 一見硝子体出血と勘違いされることもある
・可動性が強いため, 眼球運動で移動する.
 眼球運動後も動いている所見が得られる.

後部硝子体剥離

・単一の, 薄い, 滑らかな, 軽くカーブした膜として描出.
 低~中等度の反射性を有する.
硝子体は眼球前部で強く網膜と結合し, 後部ではやや弱いため, 硝子体剥離は眼球後部で生じることが多い
・通常のGainでは見にくいため硝子体剥離を除外するためには>80dBで評価する必要がある.
 >> 網膜剥離は通常Gainでも明瞭に描出される.
また, 硝子体は動きやすいため眼球運動後の揺らぎは硝子体剥離を示唆
 >> 網膜剥離では可動性は低い

網膜剥離

・網膜剥離は緊急性を有する病態であるがこれはエコーで分かりやすい.
・厚く, 滑らかで, 反射性が高く, ロープ様の膜として描出される
 視神経乳頭と繋がっている
・また, 網膜剥離はどの部位から生じても良いため水平断, 矢状断, 側方視, 上下方視など眼球全体を評価することが重要.
 >> 上下方視での評価を忘れ, 見逃すことが多い
可動性は低く, 眼球運動後も所見は動かない.

硝子体出血

・エコー所見は様々であるが, 急性の出血ではびまん性, 低エコーの雪玉状に描出される
 時間が経つと, 輝度が亢進し, 網膜上に偽膜様に見え, 網膜剥離に類似した所見となりえる.
硝子体出血による偽膜は, 厚さが様々, 歪であり,その点で厚さが一定な網膜剥離との鑑別は可能.
 視神経乳頭部で繋がっている所見も鑑別に有用
・離水との鑑別点は可動性が弱い点, 通常Gainでも明瞭な点.

所見のまとめ

-------------------------------
徳洲会の時はたま〜にですが, 眼科がいない状況で, 視力障害や飛蚊症といった救急患者さんはいました.
エコーで硝子体出血を見つけて, 夜間に電話・・・ということもありましたが, 最近はあまり診療する機会がないです.

いざという時のために押さえておきたい.