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上記のエントリーで, 当科ではバイタルサインと同じくらい重要な所見として常にCRTやMottlingを評価, フォローしつつ加療するようにしています.
新たな論文も出てきており, 今回はその所見についてザッとまとめ.
末梢循環の評価は低侵襲で簡便に評価可能であり, 重症患者のマネージメントにおいて有用な可能性がある.
・末梢毛細血管循環は手指や膝におけるCapillary refill time(CRT)や, 皮膚の蒼白所見, Mottling所見を評価する.
・皮膚(や腸管, 筋肉)は最も早期に犠牲にされる臓器.
ショック患者ではまず皮膚に異常が生じ, 最後に改善する部位と言える
・CRTや Mottlingの有無, 経過に伴う所見の変化は重症患者における病態の把握に有用
(Curr Opin Crit Care 2015, 21:226 – 231)
敗血症性ショック患者 30例において, CRT, mottling score, 末梢皮膚温と臓器血流の関連を評価
(Journal of Critical Care 35 (2016) 105–109)
・臓器血流は各臓器における
[収縮期の最大血流速度 - 拡張期の最小血流速度]/平均血流速度 で計算.
・末梢皮膚温は相関性がないが, CRT, mottlingは臓器血流との相関性あり
Mottlingスコアについては後述
CRT: Capillary Refill Time 毛細血管再充満時間
・小児の脱水やVol評価ではよく使用されるが, 成人では個体差も様々であり, 正常値もはっきりしない
・年齢, 性別, 評価時の外気温でも左右される.
・正常値の上限は3.5-4.5秒であり, 2秒をカットオフとすると特異性は低い.
(American Journal of Emergency Medicine (2008) 26, 62–65 )
1000例のControl群での評価では, CRT中央値は1.9秒. 95% percentile 3.5秒.
・10歳加齢毎に3.3%延長し, 男性は女性と比較して7%短縮し, 外気温が1度上昇すると5%低下する.
(American Journal of Emergency Medicine (2008) 26, 62–65 )
Mottlingスコア
・Mottlingは皮膚の毛様皮疹で, 膝〜大腿に認められる.
皮膚の循環不全を反映する.
・スコアはMottlingの範囲で判断.
(Annals of Intensive Care 2013, 3:31)
Mottlingと皮膚血流の関係
Mottlingスコアと各指標の関連
(Intensive Care Med (2011) 37:801–807)
・Mottlingスコアと尿量, 動脈血乳酸値, SOFAスコアには相関性がある.
Cardiac Indexとは関係なし
CRTやMottlingの予後への関係
敗血症性ショック患者 59例において, 初期治療(カテコラミン)開始後6時間でのCRT(示指, 膝で評価)と14日死亡リスクの関係を評価したProspective study.
・14日死亡率は36%
・死亡例と生存例の比較では,
6時間後のSOFA, SAPS, 尿量, Lacは有意に生存例で良好.
CRTも同様に生存例では<5秒となる.
CRT<2.5sを死亡 OR 1とすると,
示指CRT 2.5-5sはOR 5.4[1.3-22.3], >5sはOR 18.0[3.6-89.6]
膝CRT 2.5-5sはOR 5.1[0.5-51.3], >5sはOR 61.2[6.5-578.9]
(Intensive Care Med (2014) 40:958–964)
敗血症性ショック患者 65例中, 49%でMottling(+)
・ICU患者 791例では29%(230例)でMottling(+)
・Mottlingの有無, 持続時間は予後に関連性がある
6時間以上持続するMottlingは予後不良因子
(Intensive Care Med (2015) 41:452–459)
Septic shockにてICU管理となった63例の後向き解析
・PrehospitalにおけるMottlingスコアとCRTの死亡リスクへの関連を評価.
疾患は肺炎が最多で67%
・Mottlingスコアは3±2
CRTは5±1s
死亡率は36%であった.
・生存者, 死亡例の初期のMottlingスコア, CRT
Mottlingスコア, CRTが高いほど死亡リスクも高い.
Propensity score matched analysisによる28日死亡RRはMottlingスコア>2でRR6.58, CRT>4sでRR2.03
(American Journal of Emergency Medicine 37 (2019) 664–671)
CRTやMottlingの経時的変化
重症敗血症, 敗血症性ショック 41例において, 蘇生の経過とCRT, SCVO2などパラメータの経過を比較.
・CRTの変化は蘇生開始後2hで有意差がでる一方, 他の指標は>6時間経過して有意差が出現する.
CRTの変化は最も早い指標となりえる
(Journal of Critical Care (2012) 27, 283–288)
先に紹介した敗血症性ショック59例の解析では, 膝CRTが<5秒で, さらに6h後の示指CRTが改善傾向にあれば死亡例は無し.
(Intensive Care Med (2014) 40:958–964)
さらに先で紹介したSeptic shockにてICU管理となった63例の後向き解析では, これら指標の変化は死亡リスクに関連する結果
Mottlingスコア, CRTの変化
・変化は [初期値-最終値] / Prehospital settingの時間(h)で評価
この母集団におけるPrehospital settingの時間は85±33分
(American Journal of Emergency Medicine 37 (2019) 664–671)
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バイタルサインには皮膚所見を入れるべしと常日頃より指導しています.
この文化がもっと広がることを祈って.