Seronegative RAと乾癬所見が目立たない乾癬性関節炎(PsA)の診断はしばしば難しい. 初期にSeronegative RAや原因不明の末梢関節炎と診断された患者が後日皮膚所見が出現, 判明し, PsAとされることもある.
両者の鑑別には皮膚鏡による評価が有用な可能性がある.
PsA sine psoriasis 15例(乾癬所見が目立たないPsA), RA12例において, 肘の所見と指のNail-fold capillaryを評価した報告
(Journal of Dermatology 2016; 43: 1217–1220)
・肘もNFCもDermoscopyを使用した.
Dermoscopyの所見
・PsAの爪所見では発赤を背景とした点状の血管, 発赤のみが多い・肘所見ではびまん性の発赤, 点状血管が主となる
爪の所見
a) PsA症例. びまん性の発赤に点状の血管を認める
b,c) RA症例. 「魚の学校」様に細かい血管が群生(b), 不整, 不鮮明な紫色の血管所見(c)
d) コントロール群. 正常所見
肘の所見
a) PsA症例: びまん性の点状血管
b,c) RA症例: 不整, 不鮮明な紫色の血管所見や血管消失所見
早期のPsA, RA(seropositive, negative)で手指の障害, 症状を認める患者群を対象
(J Rheumatol. 2018 May;45(5):648-654)
・ERA(発症<12M), EPsA(発症<24M)で紹介された患者を対象.
診断はACR/EULAR 2010, CASPARで評価され, さらに末梢関節が有意に障害されている患者を導入(DIPメインは除外)
・上記患者において, 手のUS, 皮膚鏡評価を施行.
またその後膠原病+皮膚科に紹介し, 詳細に再評価を行った.
患者は73例で, 内訳は
・Seronegative ERA 23例, Seropositive ERA 25例, EPsA 25例
Seropositive ERAの19/25はRF, CCP抗体陽性
EPsAの22/25が乾癬所見あり, 23/25がCASPAR ≥3
初期にSeronegative ERAとされた23例中,
6例(26.1%)が後に爪や皮膚所見を生じ, PsAと診断された.
・このうち4例は肘のみで皮膚病変が認められる限局型. 皮膚鏡のみで検出可能であった.
・2例は爪のみで乾癬性の変化が認められた
関節US所見や皮膚鏡所見のPsA予測に対する感度, 特異度
・超音波所見もPsAに特異的な所見は多いが, 感度が不十分.
・爪の皮膚鏡所見(点状血管)は感度96%, 特異度83.3%でERAとEPsAの鑑別に有用.
・超音波所見と組み合わせると, 感度は低下する. 特異度は若干の上昇.
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・乾癬所見が目立たないSeronegativeな末梢関節炎でも後にPsAが顕在化する可能性がある.
・早期に検出する方法として爪や肘のDermoscopeによる評価が有用な可能性.