症例: ○○歳女性. 肺炎球菌性肺炎で人工呼吸器管理中
来院時バイタルサインBP98/42mmHg, HR 101bpm, RR 32, SpO2 84%(10L), BT 38.2度
血液検査にて, WBC 16800/µL(Neu 92%), Hb 10.4g/dL(MCV 87fl), 血小板2.2万/µL, T-Bil 1.2mg/dL, AST 92IU/L, ALT 38IU/L, LDH 476IU/L, ALP 228IU/L, GGT 34IU/L, BUN 34mg/dL, Cr 1.4mg/dL, Na 143mEq/L, K 3.4mEq/L, Cl 102mEq/L, CRP 23mg/dL, APTT 32sec, PT—INR 1.1, D-dimer 2.2µg/mL
背景疾患や既往歴は情報なく不明.
この血小板減少に対してどのようにアプローチしたらよいだろうか?
ICU患者における血小板減少の原因
ICU患者の8.3-67.6%で血小板減少を認める. また, ICU管理中に血小板減少が出現, 進行する例が14-44%ある. 疾患重症度が高いほど, 臓器不全が高度なほどその頻度は上昇する(1).
ICUにおいて血小板減少を考える際に重要な点は, 出現するタイミング, 頻度, そして特異的治療が必要かどうかである. 頻度の多い原因としては敗血症や一過性侵襲による播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)があり, これらには血小板減少に対する特異的治療はなく全身状態の安定化, 原疾患の治療が基本となる(DICに対するトロンボモジュリン製剤は血液疾患患者では有用な報告があるが, 敗血症患者では議論があるためここでは扱わない). 特異的治療や対応が必要な病態はヘパリン誘発性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia: HIT), HIT以外の薬剤性血小板減少, 血球貪食症候群, 血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA), 自己免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia: ITP)が挙げられる. ITPは普段の血液検査ですでに血小板が低値であることが多いが, 過去のデータがない場合に鑑別が必要となる.
(表1)ICUにおける血小板減少の原因(出現タイミング, 経過, 機序からの鑑別疾患)
入院時
|
血小板の改善なし
軽度改善後に緩徐に低下 |
軽度改善後に急速に低下
| |
血液希釈
|
細胞外液の補充, 赤血球やFFPの輸血
| ||
血小板消費亢進
|
大量出血, 多発外傷, DIC, 敗血症, 重症肺血栓塞栓症, 糖尿病性ケトアシドーシス, HELLP症候群, 前骨髄球性白血病, マラリア, TMA
|
出血の持続, 再手術, 敗血症・院内感染, 多臓器不全, 透析治療, ECMO, IABPの使用, DIC
|
敗血症, DIC, 肺血栓塞栓症, 出血
|
血小板産生の低下
|
薬剤性, 急性白血病, 骨髄異形成症候群, 悪性腫瘍骨髄浸潤, 慢性肝疾患, ウイルス感染症(EBV, CVM HCV, HIVなど), 放射線治療後, 先天性巨大血小板症, 血球貪食症候群
|
薬剤性, ウイルス感染症, 悪性腫瘍骨髄浸潤, 急性・慢性肝不全, 栄養障害(鉄, 葉酸, ビタミンB12, 銅, 亜鉛), 化学療法後
| |
血小板破壊, 回収
|
肝脾腫, ITP, 早期発症HIT, 薬剤性, 輸血後紫斑, 自己免疫性疾患(SLE)
|
HIT, 薬剤性, 輸血後紫斑,
|
縦: 血小板減少の機序, 横: 血小板減少の出現タイミング, 経過
(2)より作成
ICU患者における血小板減少へのアプローチ
ICU患者における血小板減少の大半は敗血症や重症疾患に伴うDIC, 大量輸液, 輸血後の希釈性であり, 原疾患の治療と全身管理が主な対応となる. 血小板輸血は出血の予防を目的に行う. ICUで行う可能性がある処置とその血小板輸血閾値を(表2)にまとめる.
(表2)ICU患者における血小板輸血閾値
血小板輸血閾値
| |
出血の予防目的
|
10000/µL
|
腰椎穿刺(緊急)
|
20000/µL
|
腰椎穿刺(待機的)
|
50000/µL
|
上下部内視鏡検査+粘膜生検
|
20000/µL
|
気管支鏡検査
|
20000/µL
|
気管支鏡検査+生検
|
50000/µL
|
中心静脈カテーテル挿入
|
10000-20000/µL
|
硬膜外麻酔
|
80000/µL
|
脊髄麻酔
|
50000/µL
|
脳神経外科手術を除く大手術
|
50000/µL
|
(3)(2)
血小板減少の原因評価は1) 敗血症, 一過性の侵襲によるDICとして典型的か, 2) 特異的治療が必要な病態があるかを検討することが重要.
1) 敗血症, 一過性の侵襲によるDICとして典型的か
敗血症に伴う血小板減少
敗血症に伴う血小板減少はDICに付随するものが有名であるが, それ以外にも血球貪食やADAMTS13の低下(trombotic thrombocytopenic purpura:TTP),補体活性化, 血球貪食, ヒストン遊離の亢進など様々な要素が関連している(4).血小板減少を伴う敗血症患者において骨髄穿刺を施行した報告では, 64%で血球貪食所見が認められる報告もあり, 血球貪食像=血球貪食症候群とは言えないため注意が必要である(5).
[特徴&評価]
感染症や敗血症が明らかで以下の経過や特徴があれば敗血症に伴う血小板減少と判断し, 原疾患の治療を優先する.
・血小板はICU入室時〜3日間で最低値となり, 4~8日程度で改善を認める. 昇圧薬が中止できてから2日程度で血小板は改善する(4)(6)
・重症例ほど血小板も低値となる. 敗血症性ショック患者の29.1%が血小板<10万/µL, 10.3%が<5万/µLである一方, ショック(-)の敗血症患者では14.6%<10万/µL, 4.6%が<5万/µL(6).
・凝固・線溶系の異常を伴う(APTT, PT-INR). これは血小板減少の程度と相関はしない(6)
一過性の侵襲における血小板減少(DIC)の特徴
外傷や外科手術といった一過性の侵襲では侵襲後1-3日で急激に血小板が低下し, その後速やかに改善に転じる経過となる(7).改善が遅い場合や高度な血小板減少(<5万/µL)では他原因の合併を考慮すべきである.
[特徴&評価]
外傷や外科手術など一過性の侵襲があり, 以下の経過や特徴があれば一過性の侵襲における血小板減少と判断し, 原疾患の治療を優先する.
・外傷や外科手術では, 受傷・術後1-3日で血小板が最低値となり, その後速やかに改善し, 受傷・術後1週間程度で正常化する(7).
・血小板は<10万となることは少なく, <5万/µLとなることは稀(2.) (7).
・凝固・線溶系の異常を伴う(APTT, PT-INRの亢進).
2) 特異的治療が必要な病態があるかを検討する
敗血症や一過性の侵襲における血小板減少らしくない場合は特異的な治療が必要な病態かどうかを検討する. 原因としてはHIT(2型), HIT以外の薬剤性血小板減少, 血球貪食症候群, TMA, ITPが挙げられる. このうちHIT(2型), 血球貪食症候群, TMAは対応が遅れると致命的となるため, 特に注意すべき病態といえる.
HIT(2型)による血小板減少
HITはヘパリン開始後5日以内に生じる非免疫性の血小板凝集による1型と5-12日で生じる免疫性の血小板減少である2型がある. 1型は先ず問題とならず, 経過観察のみで改善するためここでは省略する. 2型ではヘパリンと血小板第4因子(PF4)が結合した複合体に対する自己抗体(IgG)が産生される. 複合体-IgG結合体が血小板と単球に交差反応を示し, 血小板凝集(血栓傾向, 血小板減少)と単球による血管内障害を生じる(8).
HIT(2型)の評価には4TスコアとHIT抗体(PF4-ヘパリン複合体抗体)の評価が有用である.
[特徴&評価]
ヘパリン開始後5-12日(90日以内に使用歴がある群では開始直後)より血小板減少が出現した症例では, HIT(2型)を考慮し, 以下の特徴に合致するかを評価. 可能性が高ければ対応を.
・血小板減少はヘパリン(UFH、LMWH)使用開始後5-12日で出現する. ヘパリンは静脈血栓症予防目的のみならず, 末梢ルートや中心静脈ルートなどのヘパリンロックも原因となるため注意. 過去90日以内にヘパリン暴露歴がある場合, 抗体が体内に残存しているため, ヘパリン再開後すぐに発症する可能性がある. 抗体は50-85日で消失する. ヘパリンの中止により4日以内に血小板数は改善傾向を示すが, 血栓傾向は3週間は持続する.(9)
・血小板数は50%以上低下するが, 1-2万/µLを下回ることは稀. 血小板減少よりも血栓症が問題となる. これは血小板が正常範囲でも生じ得るため, 薬剤の中止のみだけではなく, アルガトロバンの併用が必要.(8 )
・ヘパリン投与後30分程度で抗原-抗体反応による炎症(発熱.悪寒), 頻脈,呼吸苦, 胸痛など生じることがあり, この場合肺血栓塞栓症との鑑別が必要となる(9.)
・HITの評価にはまず4Tスコア(表3)でスクリーニングを行う. 4Tスコア0-3点ならばHIT除外. 評価できない項目がある場合はHIT抗体(PF4-ヘパリン複合体抗体)を評価する. 4-5点ならばHIT抗体を評価. 6-8点ではHITとして対応し, HIT抗体を評価する.
・HIT抗体の結果がでるまで4-6日程度かかるため, 結果を待つ間, HEPスコア(表4)を評価して対応するのもよい. HEPスコア≥5点ならばHITとして対応し, HIT抗体結果を待つ.
・HIT抗体は検査法とカットオフに注意. ラテックス凝集法では陰性(<1.0U/mL)ならばHITは除外可能. 強陽性(≥4.00U/mL)ならばHITと診断可. 化学発光免疫測定法(CLIA)では陽性(≥1.0U/mL)ならば診断可能である(10).
・4Tスコア≥6点or HEPスコア≥5点or HIT抗体陽性ならばHITとして対応. ヘパリン投与を中止し, アルガトロバンを開始する. 0.7µg/kg/分で開始し, APTTを正常上限の1.5-3倍の範囲で調節する. 肝機能障害がある場合は0.2µg/kg/分で開始する. 血小板数>15万/µLとなった時点でワーファリンを開始し, 5日間併用し, PT-INRが2-3となってからアルガトロバンを中止する(8).
(表4) 4Tスコア
評価項目
|
2点
|
1点
|
0点
|
急性の血小板減少
|
>50%の減少があり, 且つ最低値が≥2万/µL
|
30-50%の低下あり. もしくは最低値が1-1.9万/µL
|
<30%の低下あり. もしくは最低値が≤1万/µL
|
発症タイミング
|
ヘパリン暴露後5-10日で発症.以前に暴露歴がある場合, 暴露後1日で発症
|
ヘパリン暴露後>10日経過して発症. もしくは暴露歴が不明
|
ヘパリン曝露後4日以内での発症. もしくはヘパリン暴露なし
|
血栓症
|
ヘパリンボーラス投与後に新規血栓症やアナフィラクトイド反応あり
|
進行性, 再発性の血栓症あり
|
なし
|
他の血小板減少の原因あり
|
なし
|
可能性あり
|
確実にあり
|
0-3点は低リスク, 4-5点が中リスク, 6-8点が高リスク
(11)
(表5) HEPスコア
評価項目
|
点数
| |
血小板の減少
(最高値〜最低値で評価) |
<30%減少
30-50%減少 >50%減少 |
-1
1
3
|
血小板減少のタイミング
|
通常発症型
ヘパリン曝露後<4日 ヘパリン暴露後4日 ヘパリン暴露後5-10日 ヘパリン曝露後11-14日 ヘパリン暴露後>14日 急速発症型(100日以内にヘパリン暴露歴あり)ヘパリン暴露後<48時間 ヘパリン暴露後>48時間 |
-2
2
3
2
-1
2
-1
|
血小板の最低値
|
≤2万/µL
>2万/µL |
-2
2
|
血栓症
|
通常発症型
投与開始後4日以降の新規血栓症 すでに存在していた血栓症の増悪 急速発症型 投与開始後の新規血栓症 すでに存在していた血栓症の増悪 |
3
2
3
2
|
皮膚壊死
|
皮下注射部位の皮膚壊死
|
3
|
急性全身反応
|
大量投与時の急性全身性反応
|
2
|
出血
|
出血, 点状出血, 広範囲な皮下出血
|
-1
|
他の血小板減少の原因
|
慢性血小板減少疾患の存在
血小板減少を来す薬剤の新規開始 重症感染症
重症DIC*動脈内留置デバイス(IABP, ECMOなど)
96時間以内の人工心肺の使用 他に明らかな原因がない |
-1
-2
-2
-2
-2
-1
3
|
*フィブリノーゲン<100mg/dL, D-dimer 5.0µg/mL
(12.)
血球貪食症候群による血小板減少
血球貪食症候群はマクロファージや好中球が活性化, 増殖し, 網内系での血球貪食が亢進し, 汎血球減少, 肝脾腫, リンパ節腫大などを呈する病態である. 原因はウイルス感染症(特にEBV), 他感染症, リンパ腫, 悪性腫瘍, 自己免疫疾患, 自己炎症性疾患, 遺伝性など様々ある(13).
ICU管理で重要となるものは反応性血球貪食症候群であり, これは感染症や悪性腫瘍, 自己免疫疾患により過度に刺激された炎症反応により生じる血球貪食である. これは急性経過で増悪し, なおかつ診断が難しく, 敗血症や血液腫瘍と判別がつきにくい(14).
前述の通り敗血症患者でも骨髄検査を行うと血球貪食像が半数以上で認められるが, そのような場合敗血症治療に加えて免疫抑制療法が必要かどうかはまだわかっていない. 現時点では敗血症に伴う血球貪食症候群では特異的な治療の必要はないとされている.
[特徴&評価]
血球貪食症候群では以下の特徴がある. 反応性血球貪食症候群ではHScoreを意識して評価すると良い.
・血球貪食症候群では全系統の血球減少を認めるが, ICU管理が必要な血球貪食症候群ではほぼ全例で血小板低下が認められる(15). 血小板減少のみが3割, 2系統の血球現象が5割, 汎血球減少が2割程度で認められる(16).
・反応性血球貪食症候群の評価にはHScore(表6)が有用. スコア≤130点なら反応性血球貪食症候群の可能性は9%以下, ≥180点では70%以上(210点では90%以上)となる.(14).骨髄穿刺はこの点数を考慮し, 骨髄像の結果が治療方針に影響を与える可能性があれば行うとよい.
・反応性血球貪食症候群に対する治療は, 原疾患が判明していればそれに対する治療が優先される. 不明な場合はステロイドパルスやシクロホスファミドといった免疫抑制療法, 免疫グロブリン静注療法, 血漿交換が選択肢となる.(17)
(表6)HScore
評価項目
|
評価と点数
|
元々免疫抑制状態がある*
|
なし: 0点, あり: 18点
|
体温
|
<38.4度: 0点, 38.4—39.4度: 33点, >39.4度: 49点
|
臓器腫大
|
なし: 0点, 肝腫大もしくは脾腫大: 23点, 肝脾腫: 38点
|
血球貪食の系統数**
|
1系統: 0点, 2系統: 24点, 3系統: 34点
|
フェリチン値(ng/mL)
|
<2000: 0点, 2000-6000: 35点, >6000: 50点
|
トリグリセリド(mg/dL)
|
<133: 0点, 133-354: 44点, >354: 64点
|
フィブリノーゲン(mg/dL)
|
>250: 0点, ≤250: 30点
|
AST(IU/L)
|
<30: 0点, ≥30: 19点
|
骨髄像で血球貪食像
|
なし: 0点, あり: 35点
|
*HIV陽性, 長期間の免疫抑制療法を受けている(ステロイドやシクロスポリン, アザチオプリンなど)
**Hb≤9.2g/dL, 白血球≤5000/µL, 血小板≤11万/µLで定義
(14.)
血栓性微小血管症(TMA)による血小板減少
TMAとは微小血管内に血栓を形成し, 破壊性の血小板減少と溶血性貧血を生じる病態である. 血小板減少と直接クームス試験陰性の溶血性貧血, 臓器障害を合併する. ADAMTS13活性の低下・欠損に関連するTTP(thrombotic thrombocytopenic purpura),シガ毒素に関連するHUS(hemolytic uremic syndrome)以外にも, 先天性TMA(TTPの一部, 他), 薬剤性TMA, 補体に関連する非典型HUSなど様々ある(18).
ICU管理で重要となるのはTTP, 非典型HUSであり, これらは迅速な血漿交換(先天性では血漿投与), 免疫抑制療法(後天性の場合のみ)が予後に関係するため, 疑いが濃厚ならば治療に踏み切るべきである(19) (18.).
[特徴&評価]
ICUにおけるTMAでは, DICとの鑑別が最も重要となる. 両者の鑑別のポイントは血小板減少の程度, 凝固検査と破砕赤血球の割合である. 疑わしければ治療に踏み切る.
・TMA(TTP, HUS)ではDICと比較して血小板減少の程度が高度(<2万/µL)であり(感度59%, 特異度86%), 凝固機能障害の程度は軽度のみ(PT正常値〜上限+5秒未満)となる(感度93%, 特異度57%)(20).
・さらにTTPの可能性を評価する指標としてPLASMICスコアがある. PLASMICスコア0-4点ではTTPの可能性は0-4%, 5点では5-24%, 6-7点では62—82%となる.(21)
・末梢血の破砕赤血球≥2%は濃厚にTMAを疑う所見. <1%ならば可能性はTMAである可能性は低いと判断する(22). ICSH(International Council for Standardization in Hematology)の基準では, 破砕赤血球≥1%をTMAの診断基準にしているが, 敗血症や出産, 血液悪性腫瘍, DIC, 腎不全患者, 健常者でも~1%前後の破砕赤血球は認められるため注意が必要(23)(24).
評価は機械カウントではなく目視で行うことが重要. 機械カウントでは1%を上回る場合, 低く見積もることがわかっている(22.). 目視では100倍視野において, 1視野あたりおよそ100個の赤血球が含まれるため, その視野内に認められた破砕赤血球数をそのまま%表示するとよい. 10視野程度確認し, 平均値で求める(23).
・上記情報から敗血症やDICの可能性が低く, TTPや非典型HUSを疑う場合はその時点で血漿交換を行う. ADAMTS13活性結果を待つ必要はない(25).
(表7)PLSMICスコア(各1点)
血小板<3万/µL
|
溶血所見(網赤血球>2.5%, ハプトグロビン検出感度以下, 間接ビリルビン>2.0mg/dLのいずれか)
|
活動性の悪性腫瘍なし
|
臓器移植, 造血幹細胞移植歴なし
|
MCV<90fL
|
INR<1.5
|
Cr<2.0mg/dL
|
(21)
症例の続き:
ICU入室時の血小板減少のアセスメントは以下の通り
・ 重症肺炎であるものの, バイタルサインや凝固機能検査と血小板減少の程度に解離があり, 敗血症による血小板減少のみでは説明困難である. 他の原因が合併している可能性を考える必要がある.
・ LDH上昇もあり, 他の対応が必要な原因の評価を行うべき. ヘパリン使用歴がないため, HITの可能性は考える必要はなく, 目視による破砕赤血球の確認, 血中フェリチン値を追加.
その後の検査では血中フェリチン値420ng/mL. HScoreを計算すると<100点であり, 血球貪食症候群の可能性は低いと判断した.
検査からはTMAの可能性は残るが, 末梢血破砕赤血球は<1%であり経過観察と全身管理, 肺炎の治療を継続した.
第2病日にはバイタルサインは安定化. 血小板数1.2万/µL, PT—INR 1.2, APTT 36secであったが, 破砕赤血球の増加は認めず, LDH 320IU/Lと低下傾向もあり, 経過観察を続行. この時点でTMAの可能性は低いと判断し, 他の血小板減少の精査を開始した.
その後血小板は6万/µLまで改善. 検査にて抗核抗体320倍,血小板IgG陽性,骨髄検査所見からITP合併と判断. 抜管後の病歴聴取より, ITPで他院で経過観察中であったことが判明した.
引用文献
(1) Hui P, et al: The frequency and clinical significance of thrombocytopenia complicating critical illness: a systematic review. Chest 139: 271-278, 2011.
(2) Thiele T, et al: Thrombocytopenia in the intensive care unit-diagnostic approach and management. Semin Hematol 50: 239-250, 2013.
(3) Greinacher A, et al: How I evaluate and treat thrombocytopenia in the intensive care unit patient. Blood 128: 3032-3042, 2016.
(4) Zarychanski R, et al: Assessing thrombocytopenia in the intensive care unit: the past, present, and future. Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2017: 660-666, 2017.
(5) Francois B, et al: Thrombocytopenia in the sepsis syndrome: role of hemophagocytosis and macrophage colony-stimulating factor. Am J Med 103: 114-120, 1997.
(6) Claushuis TA, et al: Thrombocytopenia is associated with a dysregulated host response in critically ill sepsis patients. Blood 127: 3062-72, 2016.
(7) Greinacher A, et al: Thrombocytopenia in the intensive care unit patient. Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2010: 135-143, 2010.
(8) Kelton JG, et al: Nonheparin anticoagulants for heparin-induced thrombocytopenia. N Engl J Med 368: 737-744, 2013.
(9) Selleng K, et al: Heparin-induced thrombocytopenia in intensive care patients. Crit Care Med 35: 1165-1176, 2007.
(10) Althaus K, et al: Evaluation of automated immunoassays in the diagnosis of heparin induced thrombocytopenia. Thromb Res 131: e85-90, 2013.
(11) Warkentin TE, et al: Laboratory diagnosis of immune heparin-induced thrombocytopenia. Curr Hematol Rep 2: 148-157, 2003.
(12) Cuker A, et al: The HIT Expert Probability (HEP) Score: a novel pre-test probability model for heparin-induced thrombocytopenia based on broad expert opinion. J Thromb Haemost 8: 2642-2650.
(13) Ishii E, et al: Nationwide survey of hemophagocytic lymphohistiocytosis in Japan. Int J Hematol 86: 58-65, 2007.
(14) Fardet L, et al: Development and validation of the HScore, a score for the diagnosis of reactive hemophagocytic syndrome. Arthritis Rheumatol 66: 2613-2620, 2014.
(15) Valade S, et al: Coagulation Disorders and Bleeding in Critically Ill Patients With Hemophagocytic Lymphohistiocytosis. Medicine(Baltimore) 94: e1692, 2015.
(16) Grange S, et al: The Use of Ferritin to Identify Critically Ill Patients With Secondary Hemophagocytic Lymphohistiocytosis. Crit Care Med 44: e1045-e1053, 2016.
(17) Demirkol D, et al: Hyperferritinemia in the critically ill child with secondary hemophagocytic lymphohistiocytosis/sepsis/multiple organ dysfunction syndrome/macrophage activation syndrome: what is the treatment? Crit Care 16: R52, 2012.
(18) George JN: Syndromes of thrombotic microangiopathy. N Engl J Med 371: 654-666, 2014.
(19) George JN: Clinical practice. Thrombotic thrombocytopenic purpura. N Engl J Med 354: 1927-1935, 2006.
(20) Park YA, et al: Platelet count and prothrombin time help distinguish thrombotic thrombocytopenic purpura-hemolytic uremic syndrome from disseminated intravascular coagulation in adults. Am J Clin Pathol 133: 460-465, 2010.
(21) Bendapudi PK, et al: Derivation and external validation of the PLASMIC score for rapid assessment of adults with thrombotic microangiopathies: a cohort study. Lancet Haematol 4: e157-e164, 2017.
(22) Schapkaitz E, et al: The Clinical Significance of Schistocytes: A Prospective Evaluation of the International Council for Standardization in Hematology Schistocyte Guidelines. Turk J Haematol 34: 59-63, 2017.
(23) Huh HJ, et al: Microscopic schistocyte determination according to International Council for Standardization in Hematology recommendations in various diseases. Int J Lab Hematol 35: 542-547, 2013.
(24) Lesesve JF, et al: Schistocytes in disseminated intravascular coagulation. Int J Lab Hematol 36: 439-443, 2014.
(25) Moake JL: Thrombotic microangiopathies. N Engl J Med 347: 589-600, 2002.