失神で搬送された患者.
チルト試験をすると高度に血圧の低下が認められ, 起立性低血圧と判断された.
ただし変性疾患の既往も所見も認めず, 薬剤でもない.
十数年まえに胃の全摘術施行歴はあり, ビタミンB12補充はされていない.
下肢の振動覚や触覚の低下, 痺れなどは認めない.
---------------------------------
ビタミンB12欠乏による神経障害についてはこちらを参照
ビタミンB12欠乏では末梢神経障害, 亜急性連合変性症, 認知症が有名であるが,
自律神経障害や起立性低血圧の原因にもなる.
・起立性低血圧や失神の原因としてVit B12欠乏を認め, 補充により改善するという症例報告はいくつか散見される
(Tex Heart Inst J 2012;39(5):722-3)
起立性低血圧(+)で3ヶ月以内に2回以上の失神エピソードを持つ70歳以上の高齢者において, Vit B12を評価し, 低下(<180pg/mL)を認めた8例と, 正常範囲であった8例(Control群)にVit B12補充療法を施行し, 前向きにフォローした報告では,
・6ヶ月後のチルト試験におけるBP低下は有意にVit B12欠乏群で改善を認めた
(ClinAutonRes(2004)14:67–71)
21例のVit B12欠乏患者, 年齢を合わせた21例の健常Control, 9例の神経症を合併したDM患者において60度Head up tilt(HUT)試験を施行した結果
(Autonomic Neuroscience: Basic and Clinical 97 (2002) 45–54 )
・Vit B12欠乏群ではDM群と同等の自律神経障害が認められた.
------------------------------–
まとまった報告は多くはないものの, 自律神経障害, 起立性低血圧の鑑別の一つにビタミンB12欠乏は入れておくべき.
補充で改善が見込めるため, 疑えば補充するのも手であろう.
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
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2017年12月28日木曜日
オピオイド関連下垂体不全
慢性疼痛に対してオピオイドを使用している患者が数カ月前より倦怠感の増悪, 下痢症状を認めて受診.
精査の結果三次性副腎不全であった(CRH分泌低下. 視床下部性の副腎不全)
三次性副腎不全の原因は基本的にはステロイド慢性投与と脳器質的疾患(腫瘍など)程度のはずであるが, 画像検査も正常でステロイド投与歴もない.
さて、原因は?
--------------------
オピオイドは下垂体不全をきたすことがある.
オピオイドの慢性投与では, 性腺機能低下症をきたすことが多いが, 一部で副腎機能低下症や成人例の成長ホルモン分泌不全の原因となることが報告されている.
・これらはオピオイドの中止や他薬剤への変更により改善する可能性がある
(日本ペインクリニック学会誌 Vol.20 No.1, 17~23, 2013)
慢性疼痛に対してオピオイドを長期間使用し, さらに3ヶ月以内にステロイド投与を受けていない患者48例において早朝コルチゾールとACTH負荷試験を施行した報告
(Clinical Endocrinology (2016) 85, 831–835)
・年齢の中央値は53.5歳[45.4-62.4]. 25/48が女性例
・使用薬剤
早朝コルチゾール値とACTH 250µg負荷後の値
・早朝コルチゾール <3.6µg/dLとなるのが4例(8.3%)
ACTH負荷後の反応が不十分な症例が3例= 6.25%が副腎不全
副腎不全を合併していた3例は
・39歳女性, 繊維筋痛症に対してフェンタニルパッチ 75µg/h, Oramorph 5mgレスキューを使用
他に並存症はなし
ACTHは11ng/Lと正常範囲. プロラクチンとIGF-1は正常範囲
下垂体MRIでは問題なし.
ホルモン補充により倦怠感は改善を認めた.
・37歳女性, Neuropathic scar painに対してMST 60mg/dを使用.
他に並存症はなし
ACTHは13ng/Lと正常範囲. プロラクチンとIGF-1は正常範囲
無月経が1年間持続している.
下垂体MRIは正常
ホルモン補充により徐々に倦怠感が改善
・36歳女性, 慢性の腹痛に対してフェンタニルパッチ 75µg/hを使用
他に並存症はない.
ACTH 37ng/dL, 他の下垂体検査は正常.
64歳男性で, 慢性の腰痛に対してフェンタニルパッチを2年間使用していた患者の報告
(J Intern Med 2005; 257: 478–480.)
・ショックバイタルで救急搬送され, 二次性の副腎不全による副腎クリーゼと診断し, ステロイド投与で改善.
・フェンニタニルは入院前に中止されており, 1週間後CRH負荷試験をフォローするとACTH反応性が改善. コルチゾール値も改善を認めた.
21歳女性. 慢性の腹痛でトラマドールを処方されていた.
(Eur J Clin Pharmacol (2011) 67:865–867)
・倦怠感, ふらつき, めまい, 嘔吐, 頭痛などあり受診し, 早朝コルチゾール低値でありトラマドールによる副腎不全を疑われた
・薬剤中止後は改善.
・退院後, かかりつけ医により再度腹痛に対してトラマドールが再開.
2ヶ月後に同様の症状(+)
再度検査にて副腎不全(+)
中止後数カ月かけて改善.
トラマドール使用中, off後のACTH負荷試験後のCortisol値
-------------------
報告例はまだ少ないものの, オピオイドの慢性使用により副腎不全を発症する可能性がある点は注意が必要.
この場合は下垂体や視床下部性の副腎不全となる。
オピオイド中止により改善することもある.
今後慢性疼痛に対してオピオイド処方は増えることが予測されるため, 内科、外科、整形外科全ての医師が知っておいた方がよいだろう.
慢性使用中の患者で、以下のような症状がでたときは注意!
(日本ペインクリニック学会誌 Vol.20 No.1, 17~23, 2013)
精査の結果三次性副腎不全であった(CRH分泌低下. 視床下部性の副腎不全)
三次性副腎不全の原因は基本的にはステロイド慢性投与と脳器質的疾患(腫瘍など)程度のはずであるが, 画像検査も正常でステロイド投与歴もない.
さて、原因は?
--------------------
オピオイドは下垂体不全をきたすことがある.
オピオイドの慢性投与では, 性腺機能低下症をきたすことが多いが, 一部で副腎機能低下症や成人例の成長ホルモン分泌不全の原因となることが報告されている.
・これらはオピオイドの中止や他薬剤への変更により改善する可能性がある
(日本ペインクリニック学会誌 Vol.20 No.1, 17~23, 2013)
慢性疼痛に対してオピオイドを長期間使用し, さらに3ヶ月以内にステロイド投与を受けていない患者48例において早朝コルチゾールとACTH負荷試験を施行した報告
(Clinical Endocrinology (2016) 85, 831–835)
・年齢の中央値は53.5歳[45.4-62.4]. 25/48が女性例
・使用薬剤
早朝コルチゾール値とACTH 250µg負荷後の値
・早朝コルチゾール <3.6µg/dLとなるのが4例(8.3%)
ACTH負荷後の反応が不十分な症例が3例= 6.25%が副腎不全
副腎不全を合併していた3例は
・39歳女性, 繊維筋痛症に対してフェンタニルパッチ 75µg/h, Oramorph 5mgレスキューを使用
他に並存症はなし
ACTHは11ng/Lと正常範囲. プロラクチンとIGF-1は正常範囲
下垂体MRIでは問題なし.
ホルモン補充により倦怠感は改善を認めた.
・37歳女性, Neuropathic scar painに対してMST 60mg/dを使用.
他に並存症はなし
ACTHは13ng/Lと正常範囲. プロラクチンとIGF-1は正常範囲
無月経が1年間持続している.
下垂体MRIは正常
ホルモン補充により徐々に倦怠感が改善
・36歳女性, 慢性の腹痛に対してフェンタニルパッチ 75µg/hを使用
他に並存症はない.
ACTH 37ng/dL, 他の下垂体検査は正常.
64歳男性で, 慢性の腰痛に対してフェンタニルパッチを2年間使用していた患者の報告
(J Intern Med 2005; 257: 478–480.)
・ショックバイタルで救急搬送され, 二次性の副腎不全による副腎クリーゼと診断し, ステロイド投与で改善.
・フェンニタニルは入院前に中止されており, 1週間後CRH負荷試験をフォローするとACTH反応性が改善. コルチゾール値も改善を認めた.
21歳女性. 慢性の腹痛でトラマドールを処方されていた.
(Eur J Clin Pharmacol (2011) 67:865–867)
・倦怠感, ふらつき, めまい, 嘔吐, 頭痛などあり受診し, 早朝コルチゾール低値でありトラマドールによる副腎不全を疑われた
・薬剤中止後は改善.
・退院後, かかりつけ医により再度腹痛に対してトラマドールが再開.
2ヶ月後に同様の症状(+)
再度検査にて副腎不全(+)
中止後数カ月かけて改善.
トラマドール使用中, off後のACTH負荷試験後のCortisol値
-------------------
報告例はまだ少ないものの, オピオイドの慢性使用により副腎不全を発症する可能性がある点は注意が必要.
この場合は下垂体や視床下部性の副腎不全となる。
オピオイド中止により改善することもある.
今後慢性疼痛に対してオピオイド処方は増えることが予測されるため, 内科、外科、整形外科全ての医師が知っておいた方がよいだろう.
慢性使用中の患者で、以下のような症状がでたときは注意!
(日本ペインクリニック学会誌 Vol.20 No.1, 17~23, 2013)
2017年12月18日月曜日
発熱に対するアセトアミノフェン静注は血圧を低下させる可能性がある
アセトアミノフェンは静注製剤がでてきて, 使い勝手がある程度よくなったようだ.
特に静注では血中濃度ピークまで15分程度(経口では2時間)であり,
救急やICU, 一般病棟における解熱剤として使用されることがある.
しかしながら, 解熱剤として静注を使用する際は血圧低下に注意すべきであるとの警鐘もある
発熱に対するアセトアミノフェン静注は皮膚血流を増加させ, 血圧を下げる
(Australian Critical Care (2010) 23, 208—214 )
・ICU患者29例で発熱に対してアセトアミノフェン静注を使用し, 前向きに評価した報告
・また30例の健常ボランティアにも同様に1g静注して評価
・健常コントロールと比較して,
発熱患者ではアセトアミノフェン静注投与後は皮膚血流が増加し, 血圧が低下する
・体温も低下はするが, 大きくは変わりない
この結果を踏まえてERに受診した発熱患者で評価した報告
2015-2016年にERで診断されたインフルエンザA型感染症症例で, ERで解熱目的にアセトアミノフェン静注を行われた患者群を後ろ向きに解析
(American Journal of Emergency Medicine 36 (2018) 1–4 )
・韓国における報告. 使用薬剤はProparacetamol(プロドラッグ).
血圧正常で発熱を認め, 検査でインフルエンザAと判断された患者を対象.
18歳以上, BP≥120/80, BT≥38度を満たす群
・薬剤はProparacetamol 1-2g(アセトアミノフェン500-1000mgに値)をNSもしくは5%TZ 100mlに溶解して30分で投与
投与もしくはオーダー後90分以内の血圧低下(sBP<90, dBP<60, もしくは基礎値より30mmHg以上の低下)リスクを評価した.
・101例中, 30例(29.7%)で血圧低下を認めた.
6例が補液負荷を必要とした.
・血圧低下群と非低下群における各バイタルサインの変化
・アセトアミノフェン静注ではBP,HR双方低下する傾向がある.
解熱は0.5-1度程度.
-------------------------
個人的には解熱作用目的でアセトアミノフェン静注を使用することはまずありませんが, 使用している人は見たことはあります.
使用するならばそれによる血圧低下のリスクは理解しておき, フォローしないとダメでしょう.
使いっぱはダメよーダメダメ(古い)
特に静注では血中濃度ピークまで15分程度(経口では2時間)であり,
救急やICU, 一般病棟における解熱剤として使用されることがある.
しかしながら, 解熱剤として静注を使用する際は血圧低下に注意すべきであるとの警鐘もある
発熱に対するアセトアミノフェン静注は皮膚血流を増加させ, 血圧を下げる
(Australian Critical Care (2010) 23, 208—214 )
・ICU患者29例で発熱に対してアセトアミノフェン静注を使用し, 前向きに評価した報告
・また30例の健常ボランティアにも同様に1g静注して評価
・健常コントロールと比較して,
発熱患者ではアセトアミノフェン静注投与後は皮膚血流が増加し, 血圧が低下する
・体温も低下はするが, 大きくは変わりない
この結果を踏まえてERに受診した発熱患者で評価した報告
2015-2016年にERで診断されたインフルエンザA型感染症症例で, ERで解熱目的にアセトアミノフェン静注を行われた患者群を後ろ向きに解析
(American Journal of Emergency Medicine 36 (2018) 1–4 )
・韓国における報告. 使用薬剤はProparacetamol(プロドラッグ).
血圧正常で発熱を認め, 検査でインフルエンザAと判断された患者を対象.
18歳以上, BP≥120/80, BT≥38度を満たす群
・薬剤はProparacetamol 1-2g(アセトアミノフェン500-1000mgに値)をNSもしくは5%TZ 100mlに溶解して30分で投与
投与もしくはオーダー後90分以内の血圧低下(sBP<90, dBP<60, もしくは基礎値より30mmHg以上の低下)リスクを評価した.
・101例中, 30例(29.7%)で血圧低下を認めた.
6例が補液負荷を必要とした.
・血圧低下群と非低下群における各バイタルサインの変化
・アセトアミノフェン静注ではBP,HR双方低下する傾向がある.
解熱は0.5-1度程度.
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個人的には解熱作用目的でアセトアミノフェン静注を使用することはまずありませんが, 使用している人は見たことはあります.
使用するならばそれによる血圧低下のリスクは理解しておき, フォローしないとダメでしょう.
使いっぱはダメよーダメダメ(古い)
2017年12月16日土曜日
カフェイン中毒・依存・離脱症
コーヒーやお茶, ソフトドリンク, エナジードリンクと様々な飲料にカフェインが含まれる.
感冒薬にも含まれ, しばしば中毒症の原因となる.
(Typical servingsで, コーヒーが480mlってのは流石に米国という感じ)
(Journal of Analytical Toxicology, 2017;41:167–172)
*ちなみに眠眠打破は120mg, 強強打破は150mg
・カフェインの致死量は5-10g, もしくは150-200mg/kg
(Journal of the Intensive Care Society 2017, Vol. 18(4) 354)
カフェインは摂取されると胃や象徴で速やかに吸収
血中濃度ピークまでの時間は30-90分程度
Bioavailabilityはほぼ100%
・カフェインはほぼ代謝され, カフェインのまま尿中排泄されるのは~3%程度のみ
・吸収後はVolume of distribution 0.6-0.7L/kgで分布し, 半減期は3-7時間. 乳幼児ではさらに長い.
・代謝は肝臓のCYP1A2が関与し, paraxanthine, theobromine, theophyllineに代謝される
・またカフェインは容易にBBBを通過し, Adenosine受容体に作用
(Journal of Analytical Toxicology, 2017;41:167–172)
カフェインは精神に作用する物質で最も広く使用されている.
・20-200mg程度の摂取では軽度の陽性症状(気分が良くなる, エネルギーが満たされるような感覚)を生じる.
・200-800mgの大量摂取では陰性症状が出現(不安症状など)
特に普段からカフェイン摂取しない患者で生じやすい.
(JAMA. 1994;272:1043-1048)
カフェイン中毒
カフェインの作用は3つ:
中枢のアデノシン受容体阻害作用
Phosphodiesterase阻害によるcAMP上昇
細胞内Ca濃度の上昇
・この3つの作用により様々な症状を呈する:
悪心嘔吐, 下痢, 高血圧, 低血圧, 頻脈, 不整脈
不眠, 興奮, せん妄, 幻覚, 精神症状, 筋線維束性攣縮, 痙攣,
横紋筋融解症, 低K血症, 代謝性アシドーシス, 高血糖, WBC上昇
・死亡例は主に不整脈が関連している
・カフェイン中毒の診断は250mgを超えるのカフェインを摂取後
restlessness, nervousness, 不眠, 消化管症状, 頻脈の5つ以上の症状を認めることで定義される.
(Curr Addict Rep. 2014 September ; 1(3): 186–192)(Forensic Sci Med Pathol (2017) 13:355–358)
血中濃度は<10mg/Lならば特に問題はないが, >80mg/Lでは死亡リスクがある.
・報告では<40mg/Lでも死亡例報告あり.
・中毒症状は≥15mg/Lで出現し得る.
(Eur J Pediatr (2015) 174:1671–1678)
東京で2008-2013年に剖検され, 中毒の精査をされた4754例のうち, カフェイン中毒(>15µg/mL)は22例であった
・20-49歳が14例(63.6%)と最多.
・精神疾患の既往があった患者は16例(72.7%)
・20/22が死亡原因にカフェイン中毒とされていた
(Nihon Arukoru Yakubutsu Igakkai Zasshi. 2014 Oct;49(5):270-7.)
カフェイン依存症・離脱症
カフェインで最も問題となりやすいのが離脱症
自己申告におけるカフェイン依存症症例の解析
(JAMA. 1994;272:1043-1048)
・患者は18-50歳で, 最低でも高校卒業程度の学力があり, 血圧正常, 心拍数正常, 心電図異常なし, カフェイン摂取の禁忌がない(不整脈など)患者, 違法薬剤使用していない患者, 非妊婦患者を対象.
・上記を満たす16例の平均年齢は38歳.
・カフェイン摂取量は357mg/d(129-2548)
・依存基準のうち平均3.4項目を満たした
(Tolelance 75%, 離脱症状 94%, 減量必要性の自覚, 減量失敗 81%, 依存や使用による不利益を知りながら長期間使用 94%)
これらを満たす11例で, 二重盲検化した状態でカフェインwithdrawalを施行.
・9例(82%)で離脱症状(+)
頭痛を強く訴えたのが7例
倦怠感や抑うつ症状, 無気力感を強く訴えたのが7例
鎮痛薬を強く欲したのが5例
日常生活の障害を自覚したのが8例であった.
・上記以外にインフルエンザ様症状, 集中ができない, などの症状も認められる.
カフェイン中毒と診断され, 治療目的に受診した94例の解析
(Psychol Addict Behav. 2012 December ; 26(4): 948–954.)
・平均年齢41歳, 女性55%
カフェイン摂取量は平均548mg/d(120-2667)
カフェイン摂取減量の試行回数は平均2.7回
・摂取方法はコーヒーが50%, ソフトドリンクが37%
・依存の診断基準は,
離脱症状が96%, 減量の必要性の自覚, 原料失敗が89%,
依存や使用による不利益を知りながら長期間使用 87%
カフェイン離脱症状の頻度
・多い症状は頭痛, 集中力の低下, 倦怠感, イライラなど
感冒薬にも含まれ, しばしば中毒症の原因となる.
(Typical servingsで, コーヒーが480mlってのは流石に米国という感じ)
(Journal of Analytical Toxicology, 2017;41:167–172)
*ちなみに眠眠打破は120mg, 強強打破は150mg
・カフェインの致死量は5-10g, もしくは150-200mg/kg
(Journal of the Intensive Care Society 2017, Vol. 18(4) 354)
カフェインは摂取されると胃や象徴で速やかに吸収
血中濃度ピークまでの時間は30-90分程度
Bioavailabilityはほぼ100%
・カフェインはほぼ代謝され, カフェインのまま尿中排泄されるのは~3%程度のみ
・吸収後はVolume of distribution 0.6-0.7L/kgで分布し, 半減期は3-7時間. 乳幼児ではさらに長い.
・代謝は肝臓のCYP1A2が関与し, paraxanthine, theobromine, theophyllineに代謝される
・またカフェインは容易にBBBを通過し, Adenosine受容体に作用
(Journal of Analytical Toxicology, 2017;41:167–172)
カフェインは精神に作用する物質で最も広く使用されている.
・20-200mg程度の摂取では軽度の陽性症状(気分が良くなる, エネルギーが満たされるような感覚)を生じる.
・200-800mgの大量摂取では陰性症状が出現(不安症状など)
特に普段からカフェイン摂取しない患者で生じやすい.
(JAMA. 1994;272:1043-1048)
カフェイン中毒
カフェインの作用は3つ:
中枢のアデノシン受容体阻害作用
Phosphodiesterase阻害によるcAMP上昇
細胞内Ca濃度の上昇
・この3つの作用により様々な症状を呈する:
悪心嘔吐, 下痢, 高血圧, 低血圧, 頻脈, 不整脈
不眠, 興奮, せん妄, 幻覚, 精神症状, 筋線維束性攣縮, 痙攣,
横紋筋融解症, 低K血症, 代謝性アシドーシス, 高血糖, WBC上昇
・死亡例は主に不整脈が関連している
・カフェイン中毒の診断は250mgを超えるのカフェインを摂取後
restlessness, nervousness, 不眠, 消化管症状, 頻脈の5つ以上の症状を認めることで定義される.
(Curr Addict Rep. 2014 September ; 1(3): 186–192)(Forensic Sci Med Pathol (2017) 13:355–358)
血中濃度は<10mg/Lならば特に問題はないが, >80mg/Lでは死亡リスクがある.
・報告では<40mg/Lでも死亡例報告あり.
・中毒症状は≥15mg/Lで出現し得る.
(Eur J Pediatr (2015) 174:1671–1678)
東京で2008-2013年に剖検され, 中毒の精査をされた4754例のうち, カフェイン中毒(>15µg/mL)は22例であった
・20-49歳が14例(63.6%)と最多.
・精神疾患の既往があった患者は16例(72.7%)
・20/22が死亡原因にカフェイン中毒とされていた
(Nihon Arukoru Yakubutsu Igakkai Zasshi. 2014 Oct;49(5):270-7.)
カフェイン依存症・離脱症
カフェインで最も問題となりやすいのが離脱症
自己申告におけるカフェイン依存症症例の解析
(JAMA. 1994;272:1043-1048)
・患者は18-50歳で, 最低でも高校卒業程度の学力があり, 血圧正常, 心拍数正常, 心電図異常なし, カフェイン摂取の禁忌がない(不整脈など)患者, 違法薬剤使用していない患者, 非妊婦患者を対象.
・上記を満たす16例の平均年齢は38歳.
・カフェイン摂取量は357mg/d(129-2548)
・依存基準のうち平均3.4項目を満たした
(Tolelance 75%, 離脱症状 94%, 減量必要性の自覚, 減量失敗 81%, 依存や使用による不利益を知りながら長期間使用 94%)
これらを満たす11例で, 二重盲検化した状態でカフェインwithdrawalを施行.
・9例(82%)で離脱症状(+)
頭痛を強く訴えたのが7例
倦怠感や抑うつ症状, 無気力感を強く訴えたのが7例
鎮痛薬を強く欲したのが5例
日常生活の障害を自覚したのが8例であった.
・上記以外にインフルエンザ様症状, 集中ができない, などの症状も認められる.
カフェイン中毒と診断され, 治療目的に受診した94例の解析
(Psychol Addict Behav. 2012 December ; 26(4): 948–954.)
・平均年齢41歳, 女性55%
カフェイン摂取量は平均548mg/d(120-2667)
カフェイン摂取減量の試行回数は平均2.7回
・摂取方法はコーヒーが50%, ソフトドリンクが37%
・依存の診断基準は,
離脱症状が96%, 減量の必要性の自覚, 原料失敗が89%,
依存や使用による不利益を知りながら長期間使用 87%
カフェイン離脱症状の頻度
・多い症状は頭痛, 集中力の低下, 倦怠感, イライラなど
カフェインの離脱症状のReviewより(Psychopharmacology (2004) 176: 1–29)
・頭痛: 離脱症状では最も多い. 47%[9-100]で認められる
中等度~重度の頭痛が50%
カフェイン使用者の報告では, 頭痛は24%[8-56]
カフェイン中止後早期に生じ, 再摂取で改善する
・疲労感/倦怠感: 頻度は27%程度(21-56%)
・活動性の低下: 頻度は36%程度
・注意力の低下: 頻度は27-50%
・嗜眠/傾眠: 頻度は45%・満足感, 幸福感の低下: 頻度は18-64%程度
これら症状は早期に出現し, 再摂取で速やかに改善.・社交性の低下: 頻度は9-79%と幅がある
これら症状は早期に出現し, 再摂取で速やかに改善.・社交性の低下: 頻度は9-79%と幅がある
・インフルエンザ様症状: 頻度は31%
・気分障害, 低下: 頻度は16%[11-36]
他には,
集中力の低下
イライラ感
モチベーションの低下
頭がすっきりしない
あくび
自信の低下
狼狽
イライラ感
モチベーションの低下
頭がすっきりしない
あくび
自信の低下
狼狽
悪心嘔吐,
筋肉痛/こわばり,
不安,
手足が重い,
ふらつき,
複視などなど 様々認められる.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コーヒー、お茶、エナジードリンク使用歴はもう少ししっかりと, 詳しく聞かないといけないなぁと自戒