40台男性. 数日前からの強い心窩部痛を自覚.
疼痛は持続痛で、お腹に力をれると増悪. またうつ伏せでも増悪あり、疼痛で眠れない.
仰臥位ならばなんとか眠ることができる.
消化器症状なし. 咳嗽もなし. 深吸気で軽度疼痛あり.
近医にて血液検査、心電図、内視鏡を施行されるが正常. 腹部CTまで行われ異常なし.
診察すると, 心窩部に限局した強い圧痛あり, さらに評価すると剣状突起に一致して圧痛が顕著に認められる結果であった.
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剣状突起痛, Xiphodynia.
別名 Xiphoid syndrome, Xiphoidalgiaなど
剣状突起の急性, 慢性, 間欠的な頭痛.
・心窩部を圧迫するような行為, 腹臥位で頭痛が増強する.
疼痛は胸部や背部へ放散することもあり, しばしば診断が難しい.
・触診で剣状突起の限局した圧痛を認める.
腹痛患者では意識して診察する必要がある.
・外傷性や軟骨炎, 周囲の筋炎, 肋剣靭帯の炎症などが原因となる
あきらかな原因を認めないものも多い
・心窩部痛の評価として, 内視鏡など評価され, 異常が認められれず, たらいまわしになれるケースもあり. 虚血性心疾患を疑われるケースもある.
・一般人口の2%で認められるとされ, 思ったよりも多い病気
(Occupational Medicine 2014;64:64–66)(Intern Med 54: 1563-1566, 2015)(JAMA 2012;307:1746)
剣状突起の解剖
・剣状突起は胸骨と結合する軟骨組織であり, 加齢とともに化骨を生じる.
・腹直筋が付着し, 肋剣靭帯で下位肋骨(第7-8肋骨)と結合している.
・後部では横隔膜が付着.
(Chiropractic & Osteopathy 2007, 15:13)
Xiphodyniaの診断
・診断には剣状突起の触診が重要.
軽度の圧迫で疼痛の誘発が認められることが重要.
・剣状突起の前方への突出がある場合, Xiphodyniaとなりやすい可能性がある.
剣状突起の側面から見たViewで, 前方に突出している場合, 剣状突起痛を認めるリスクが高い報告がある.
Xiphodyniaの3例では, 105度, 135度, 120度
一方でControl群の60例では172±15度.
(Joint Bone Spine. 2010 Oct;77(5):474-6.)
・とは言え, 角度が浅いからといって否定できるものではない.
治療は対症療法が基本
・自然に改善することが多いが, 改善が乏しい場合はトリガーポイント麻酔も行われる.
・難治性では剣状突起切除が有効