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2017年8月7日月曜日

アミロイドーシス診断における腹壁脂肪穿刺吸引

アミロイドーシスの診断は組織診断が重要
・組織生検のアミロイド染色により診断する.
  >> 腸上皮, 腎臓, 心臓, 肝臓, 甲状腺, 神経, 骨髄, 脂肪などの生検が必要.
・直腸生検は感度80%とスクリーニングに有効だが, 手間がかかる
腹部の脂肪吸引検体による検査は簡便で安全
 感度は52%-88%とバラツキがあるが, 検体量に依存すると考えられる.
・病理検査にてアミロイド沈着が認められれば
 免疫染色などでアミロイドのタイプを判別.
 尿中BJPが陽性でもALアミロイドーシスとは限らないので注意(BJP陽性でも10%が非ALアミロイドーシス)
(Mayo Clin Proc. 2015;90(8):1054-1081)

腹壁脂肪穿刺吸引検体による組織検査

120名のアミロイドーシス患者(AA 38, AL 70, ATTR 12)において脂肪吸引検体のCongo red染色を施行.
(ARTHRITIS & RHEUMATISM Vol. 54, No. 6, June 2006, pp 2015–2021)
・3回穿刺吸引を行い, 3検体で検査Sn 93%[87-97], Sp 100%[92-100]Systemic Amyloidosisを診断可能.

アミロイドーシスタイプ別の感度, 特異度

・Validation; 162名のSystemic Amyloidosis疑い患者(69名がAmyloidosis)において脂肪吸引検体による検査では96%が陽性.

この患者群における各組織の陽性率

・脂肪組織は腎生検と並ぶ感度がある.
・比較的安全に施行可能で簡便な検査である.

600例の心アミロイドーシス患者において, 腹壁脂肪穿刺吸引(コンゴーレッド染色)を施行した報告
(European Heart Journal (2017) 38, 1905–1908)
・ALアミロイドーシスが216, Hereditary transthyretin(ATTRm)113,  wild-type transthyretin(ATTRwt)271.

・ALアミロイドーシスでは皮下脂肪穿刺吸引の感度は84%と良好.
 ATTRm, ATTRwtでは感度は低い

123I-labelled SAPシンチによるアミロイド沈着範囲と腹壁脂肪穿刺吸引の感度.
・アミロイド沈着範囲が多いほど感度も高い.


ただし, 報告により感度はばらつきが多く, 腹壁脂肪穿刺吸引を行なった39例の解析では感度は19%のみ, 特異度は100%と感度は低い結果など報告もある(Cytojournal. 2009; 6: 24.)

腹壁脂肪穿刺吸引の方法
(J. Vis. Exp. (44), e1747, doi:10.3791/1747 (2010). )

部位とマーキング, 麻酔

・部位は臍の両側あたり
各辺5cm程度のひし形にマーキングし皮膚を消毒
・1%キシロカインにて各辺に沿って局所麻酔を注入する.
 静脈穿刺に注意(逆血を確認して注入)

穿刺吸引の方法

・10ccシリンジに18G針をつけて菱形内の皮下組織を穿刺.
・陰圧をかけつつ針を刺し引きし様々な方向に進める.
・シリンジ内に1mL程度, 脂肪や線維組織混じりの血液が貯まればOK
・穿刺後圧迫止血を行う

検体の処理; 4A, 4B, 4Cを速やかに進める

4A) スライドグラス上に脂肪組織を置き, 2枚のスライドグラスで挟み, 圧排

4B) グルタルアルデヒドに4-5欠片を入れて固定. 電顕用とする

4C) 残りは5-7分放置しクロットとなるのを待つ
 その後 10%ホルマリンに入れて固定する.

スライドグラスではコンゴーレッドなどアミロイド染色を
・クロット標本ではAmyloid A, κ軽鎖, λ軽鎖など免疫染色を行う.