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2017年3月16日木曜日

VA-ECMOを用いた心肺蘇生

近年VA-ECMOを用いたCPR(ECPR)の報告, 施行件数が増加してきている.

札幌医大において2000-2004年に目撃されたCPAにて搬送され, 20分以上の蘇生が行われた162例のProspective cohort.
(Crit Care Med 2013; 41:1186–1196)
・53例がExtracorporeal cardiopulmonary resuscitationを施行され, 109例が通常のCPRを施行された.
・アウトカムは神経学的機能良好(CPC score 1-2)
 Propensity matching method で両群を比較. (N=48)

CPC 1-2はECMO群で29.2%, Control群で8.3%で達成.
・p=0.018と有意差を認め, ECMOを使用したCPRで予後が良好.

カナダの単一施設における後ろ向き解析
(Resuscitation 85 (2014) 1713–1719 )
・院内CPA症例32例で, VA-ECMOを使用した蘇生を施行.
・22例は蘇生開始後15分経過しても反応乏しく, ECMOを使用.
・10例は蘇生後心原性ショックが遷延し, ECMOを使用した症例.
・原因はACS, 心筋炎, 不整脈など. 心疾患が多い.

30日後の生存+神経予後良好は約半数で達成.


韓国における前向きCohort.
(Clin Exp Emerg Med 2016;3(3):132-138 )
・院外非外傷性CPAで, 事前に構築したECMO-CPRクラテリアを満たす患者において, E-CPRを行い, 予後を評価.
・E-CPRクライテリアは以下を満たす患者で定義:
 75歳以下, 
 目撃された心停止, 
 心停止〜CPR開始まで5分以下,
 CPR開始後〜30分以内, 
 ER到着後10分経過してもROSC無し.
・除外項目: DNAR, performance statusが悪い, 終末期, 外傷性, 頭蓋内出血, 急性大動脈解離, 心嚢液あり

・568例の院外CPA症例のうち, 上記を満たしたのが60例(10.6%)
 このうち10例でE-CPRを行なった.

患者群のデータとアウトカム

・神経予後良好はCPC1-2で定義
・1ヶ月後の生存率は有意差はないが, 神経予後良好は有意にE-CPR群で良好な結果.

ECPRのMeta-analysis
(Resuscitation. 2016 Jun;103:106-16.)
ECPRは予後改善が見込める.

サブ解析
・目撃の有無, 初期波形, 心原性のCPAかどうかでECPRによる予後改善効果は変わらない.
・10-20分以上の蘇生を施行している患者群ではよりECPRによる予後改善効果が期待できる

ECPRは蘇生において蘇生効果や生命予後, 神経予後を改善させる可能性が高い.
問題は, どの患者で適応すべきかということ

CPR開始後〜蘇生までの時間はどのくらいか?

院内CPAにおける, ROSC+, ROSC-群のCPR時間
(J Am Heart Assoc. 2014 Dec;3(6):e001044)
上 ROSC(-)群、下 ROSC群
・最初の10分で半数
 20分で75%がROSC

院外CPAにおけるCPR時間と予後(1014例の成人患者)
(Circulation. 2013;128:2488-2494.)

・蘇生時間が10分を超えると, 神経予後良好のROSC(mRS 0-3)はわずか2%程度のみ

これらのデータより, 蘇生開始〜15分経過してもROSCしない場合で, かつ治療可能な原因がある場合(ありそうな場合)にECPRを考慮する.
・ECPRは蘇生開始後30分以内, 長くても60分以内に開始することを目標
・超高齢者, DNAR, 基礎疾患で蘇生が困難, 復帰が困難と考えられる場合は基本的に対象とはならない
・他に, 高度な低体温(<20度)を合併した心停止では, 
 心停止→低体温ではなく,
 低体温→心停止といった状況ではECPRは良い適応となる可能性がある
(Ann Card Anaesth 2017;20:S4-10.)


現実的には,
 院内CPA, 目撃例のある院外CPAで,
 バイスタンダーCPRがあり,
 治療可能な原因がある/可能性があり,
 10-15分の蘇生でROSCしない症例で ECPRを考慮し, 手配/準備開始.

 CPA発症から30-60分以内に開始できるように動く/準備する という感じ.

カナダのバンクーバーからの前向きコホート(CJEM 2016;18(6):453-460)では,
 上記の対象になるような院外CPA症例は全体の3%程度との報告もあり, そこまで件数はないものの, 対象症例には施行できるような環境, 各施設でのプロトコール作りも考えてゆかねばならない.