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2016年8月19日金曜日

原発性アルドステロン症における, 副腎CTと副腎静脈採血(AVS)

原発性アルドステロン症では, 片側性の副腎腺腫か、両側性の過形成かを判別することは
治療方針の決定に重要である.

片側性の副腎腺腫ならば手術切除を推奨するし,
両側性の過形成ならば投薬治療が基本となる.

この判断にはまず副腎CTが推奨されている.
 腫瘍を認める場合や, 外科切除を希望している場合はAVSを行い, 局在を確定し切除する
(J Clin Endocrinol Metab 101: 1889 –1916, 2016) 

AVSを行ってから手術を勧める理由としては以下のMetaが挙げられる.

副腎CT, MRI, AVSにて部位精査を行った38 Study(n=950)のMeta
(Ann Intern Med 2009;151:329-337)
・37.8%の症例でCT/MRIとAVSの結果が不一致
 一致とは, CT/MRIで片側に腫大(+) ⇒ 同側のAVS陽性
 CT/MRIで両側副腎Size同等 ⇒ 両側AVS陰性 で定義される.

この結果から, もしもCT/MRIのみで部位診断を行った場合,
・14.6%で不十分な副腎摘出を施行し(AVSで両側陽性なのに片側のみ)
・19.1%で副腎摘出を中止(AVSでは片側陽性だが, 摘出しない)
・3.9%で健側の副腎を摘出する(AVSは反対側で陽性) ということになり得る.

AVSをReference standardとした場合, CT/MRIの感度は68.8%のみであり, CT/MRIのみで部位診断を行うのはRiskが伴う.

そこに, 今回臨床的アウトカムを評価したSPARTANS trialが発表

SPARTACUS trial: アルドステロン症で, 副腎CTもしくはAVSを予定している患者群184例を対象としたRCT.
(Lancet Diabetes Endocrinol 2016; 4: 739–46 )
・患者は18歳以上で, IV salt-loading testでアルドステロン症と診断され, さらに副腎切除も選択肢として希望している患者群.
副腎CTで評価し, 治療行う群 
  vs AVSを行い, 治療を行う群に割り付け
・1年後の薬物投与の強度, 切除検体の組織所見を評価した.
 強度はアムロジピン 5mg, Lisinopril 10mgが “1” 双方併用で “2” というようにカウントする

・治療方針は, CTもしくはAVSにおいて, 片側の腺腫ならば切除術を, 両側の過形成ならば薬物治療を行う.

母集団データ

アウトカム:

・CT群で副腎切除は50%, AVSでも同様に50%
・両群で1年後の治療強度は有意差なし.
 血圧コントロール, RAND-36 physical, mental scoreも有意差を認めない結果.
・費用はCT群のほうが安価で済む.

副腎切除群における比較では,
・CT評価群の20%は切除後もアルドステロン症が持続
 AVS群では11%が持続. 両者で有意差はない(p=0.25)
 CTとAVSの感度も同等と言える


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副腎静脈サンプリングは技術が必要であり, 可能な施設も限られる.
この報告では費用も+2000-3000ユーロほど余計にかかる(22-33万円).

高性能, 高解像度のCTでしっかりと2-3mmスライスで評価できれば, それで方針を決めるのも良いと思われる. 特にAVSがなかなか困難な環境では.

2016年に原発性アルドステロン症のガイドラインが改訂されたので、反映されるとしてもまだまだ先になりそうですけども, どう推奨が変わるのか, 興味があります.