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2016年5月11日水曜日

結核による腎障害

1年未満の経過で急激に腎機能の増悪を呈し, 透析導入となった患者.
腎不全増悪の原因は不明で, スクリーニング検査でも原因は不明.
経過中に原因不明の発熱が持続し, 精査の結果 結核感染が判明.

結核と腎不全には関連があるのか?

結核の0.5-0.9%で腎臓に肉芽腫形成を合併する (Medicine 2007;86:170–180) 
・腎, 泌尿器の結核感染は抗生剤に反応しない細菌尿, 培養陰性の膿尿などで疑う
・背部, 鼠径部痛を認める例もある
・胸部XPの異常を伴うものは1/3のみ

腎結核では, 慢性間質性腎炎, 腎組織内の肉芽腫形成が認められる
・腎萎縮を伴わない末期腎不全, 腎内の石灰化などを呈する.
・また, 慢性炎症に伴うアミロイドーシスによる腎障害や稀ながら, 糸球体腎炎を合併する報告もある
・1991年のヨーロッパの統計では, 透析導入となった腎不全の0.65%が腎結核によるものであった.
(J Am Soc Nephrol 12: 1307–1314, 2001)

結核による糸球体腎炎
結核感染では稀ながら糸球体腎炎を併発することがある
・粟粒結核に合併した免疫複合体による急速進行性糸球体腎炎の症例報告 (Saudi J Kidney Dis Transpl 2014;25(4):872-875)
・結核感染があり, 血尿, 蛋白尿(+)で結核治療により所見が改善
 且つ 尿や腎検体からTBが陽性, 乾酪性肉芽腫を認める46例の解析ではIgA腎症所見が72%で認められた. (Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2012 May;31(5):775-9.)
・他には半月形成糸球体腎炎や膜性腎症などの症例報告もある

TB感染に伴う糸球体腎炎の報告例のまとめ
(Kaohsiung Journal of Medical Sciences (2013) 29, 337-342)

糸球体腎炎のパターンとしては膜性増殖性糸球体腎炎, IgA腎症, 半月形成糸球体腎炎が多い
結核感染が糸球体腎炎を来す機序は色々考えられる
・腎泌尿器への結核の直接感染による障害
・慢性間質性腎炎やアミロイドーシスによる腎障害
・免疫複合体による糸球体腎炎(もっとも多いのはIgA腎症)
・抗結核薬(リファンピシン)による腎炎も報告されている

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冒頭の症例における末期腎不全の原因として、結核の関連は十分に考えられる.
腎結核であったのかもしれないし, 感染に関連した糸球体腎炎であったのかもしれない.
組織検査が不明であり結論をつけることは困難であるが,
原因のわからない腎不全や糸球体腎炎では, 頭の片隅に結核は置いておいたほうがよいのだろうか. 特にそういう地域では.