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2016年3月7日月曜日

化膿性関節炎 vs 結晶性関節炎(主に偽痛風)

急性の単関節炎〜少数関節炎の鑑別診断の主な原因は結晶性関節炎や化膿性関節炎.
・単関節炎で救急を受診した患者の27%[17-38]が化膿性関節炎
(Acad Emerg Med. 2011 Aug;18(8):781-96.)

この2つの鑑別は救急や一般内科外来における永遠のテーマである
特に機能予後が悪い化膿性関節炎の除外が重要となる.

Q. 関節液中の結晶は両者の鑑別となるか?
A. なりません
 
関節液検査し, 結晶陽性であった265名のRetrospective Study
内183名(69.0%)が痛風, 81名(30.6%)が偽痛風, 1名(0.4%)が痛風, 偽痛風の両結晶を認めた.
そのうち, 関節液培養(+)が4名(1.5%[0-3]), 痛風で1名(0.5%), 偽痛風で3名(3.7%)
・培養(+)群と(-)の関節液WBCは113000[71700-153200] vs 23200[19400-27000].
(Journal of Emergency Medicine 2007;32:23-6)

104例の化膿性関節炎と295例の結晶性関節炎を比較(双方とも急性単関節炎)
化膿性関節炎でも31例(5.2%)で結晶が認められた.
 13例が尿酸結晶, 19例がピロリン酸Ca結晶.
(J Rheumatol 2012;39;157-160)

ということで, 結晶があれば結晶性関節炎というわけにはゆかない

Q. どのような病歴, 所見が化膿性関節炎を示唆する?

2011年発表された化膿性関節炎診断のEvidence review.
(Acad Emerg Med. 2011 Aug;18(8):781-96.)
・化膿性関節炎を示唆する所見
 高齢者, 糖尿病, 関節リウマチ, 3ヶ月以内の関節手術歴, 人工関節, 関節付近の皮膚感染徴候は有意に化膿性関節炎のリスクとなる.

・WBCやESR, CRPは診断に有用とは言えない.
 さすがにESR>100mm/hやCRP>10mg/dLとなれば化膿性関節炎をカバーした方がよいとは思う. ただし, 化膿性関節炎を否定できる情報ではない.
 プロカルシトニンは陽性ならば診断に有用かもしれない. 除外能は微妙

ちなみに, 化膿性関節炎143例でCRPとESRを評価した報告では以下のように分布する
(CRPの単位はmg/Lに注意. 日本国内ではmg/dL)
 4割はCRP<10mg/dLとなる. また2割はCRP<4mg/dL, 1割はCRP<2mg/dL.
 CRPが低いからといって除外はできないので注意.
(The Journal of Emergency Medicine, Vol. 40, No. 4, pp. 428e431, 2011 )

・関節液所見WBCは
 0-25000/µL: LR 0.33 25000-50000/µL: LR 1.06 50000-100000/µL: LR 3.59  
 >100000/µL: LR ∞

・それ以外の関節液検査
 関節液中Lacは診断, 除外に有用な可能性がある.

最近の前向きStudyでは
化膿性関節炎疑い 105例を前向きに評価.
(CJEM. 2015 Jul;17(4):403-10.)
最終的に38例(36%)が化膿性関節炎であった.
・化膿性関節炎に関連する病歴, 所見は
 悪寒 OR 4.7[1.3-17.1]
 結晶性関節炎の既往 OR 0.09[0.01-0.9]
 関節液が膿性 OR 8.4[2.4-28.5]
 関節液 WBC>5万/µL OR 6.8[1.3-36]
 骨融解や破壊像 OR 7.1[1.3-37.9]

以上から, 化膿性関節炎の除外は結構難しい
個人的には,
・関節液より結晶を認め, 
 + 関節液中WBC<2.5-5万, 
 + DM, 人工関節, 他の皮膚感染徴候などのリスクがない場合は抗生剤カバーはしていない.

乳酸値に関しては, 関節液を血ガス機にいれると詰まって壊れると技師さんに言われてからはやっていないのでよくわかりません.
 遠心分離して、上澄み通せば測定できるかな?