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2016年2月4日木曜日

寛解, 低活動性を達成した, 安定した関節リウマチ患者におけるDMARDの減量, 中止について


エタネルセプト(ETN)の減量, 中止
PRESERVE trial; Etanercept + MTXでLow activityを達成した患者群のDB-RCT
(Lancet 2013, 381: 918–29)
・MTX 15-25mg/wk, ≥8wk投与でModerate activity (DAS>3.2, ≤5.1)のRA患者にEtanercept 50mg/wkを追加し, 36wkの時点でLow activityを達成した604名を対象.(元々は834名, 72.4%が達成)
・以下の3群に割り付け, Double-blindで52wk継続. RAのactivityを比較
 継続: ETN 50 + MTX
 減量: ETN 25 + MTX
 中止: プラセボ + MTX

アウトカム:
アウトカム
中止群
継続群
減量群
DAS28 ≤3.2
42.6%
82.6%
79.1%
DAS28 <2.6
29.4%
66.7%
60.2%
ACR20
48.7%
75.5%
74.6%
ACR50
25.9%
62.5%
57.2%
ACR70
11.2%
35.5%
31.3%
DAS28
3.5(1.4)
2.4(1.0)
2.5(1.1)
SDAI
13.5(11.3)
6.3(6.8)
7.0(7.2)
CDAI
12.7(11.0)
5.6(6.6)
6.3(7.0)
圧痛関節数(0-28)
3.8(4.7)
1.4(3.0)
1.4(2.4)
腫脹関節数(0-28)
2.5(3.6)
0.8(1.8)
1.0(2.4)
朝の強ばり(min)
132.4(316.9)
62.3(226.5)
48.0(153.9)
CRP(mg/L)
10.2(14.6)
7.0(10.2)
6.7(7.7)
Modified total sharp score(0-448)
42.8(48.3)
42.6(58.8)
38.9(59.8)
rate of progression (U/y)
0.60(0.13)
-0.06(0.13)
0.05(0.13)
Erosion score(0-280)
26.4(28.6)
25.7(34.6)
24.7(36.4)
rate of progression (U/y)
0.33(0.11)
-0.05(0.10)
0.02(0.10)
Joint space narrowing score(0-168)
16.4(21.5)
16.9(25.4)
14.2(24.6)
rate of progression (U/y)
0.27(0.07)
-0.01(0.07)
0.02(0.07)
A: DAS28, B: SDAI

減量群と継続群では疾患活動性は同等.
中止群では増悪, 再燃が認められる. ただし, 3-4割は中止しても寛解が維持できている.

早期RA症例に対してEtanercept 50mg/wk + MTXを開始し, 52wk継続.
39-52wkで反応を示した症例(39wkでDAS28≤3.2, 52wkでDAS28≤2.6を達成した群
)を二重盲検で以下の3群に割り付け, さらに39wk継続(DB phase).
 Etanercept 25mg/wk + MTX群 (減量群)
 MTX単独群 (中止群)
 Placebo群 (全中止群)
さらにその後は全群で治療を中止し, 最終的に65wkまでフォローした
(N Engl J Med 2014;371:1781-92.)

アウトカム: DAS28, 骨病変

ETN減量群では約2割程度で再燃が認められる.
一方でETN中止群では半数が再燃.
全て中止すると8割が再燃.

ETN 50mg/wk + MTXでLow disease activityを達成した91例を対象としたDB-RCT (Ann Rheum Dis 2016;75:52–58.)
・上記のうち8wk安定した73例を以下の3群に割り付け比較.
 ETN 50mg + MTX継続群
 ETN 25mg + MTX群 (減量群)
 プラセボ + MTX群 (中止群) で48週間継続.
・再燃した症例はETN 50mgで治療を行った.
低活動性を維持できたのは,
 継続群で52%, 減量群で44%, 中止群では13%のみ


アダリムマブ(ADA)の減量, 中止
AdalimumabにてLow disease activityを達成した46名のフォロー.
・24名はADA継続, 22名で中止し, 52wk後のRA活動性を評価.
・22名のADA中止群のうち, 14名がそのまま52wk後も中止.
 その内4名はLow disease activityを維持した.
(Mod Rheumatol (2012) 22:814–822)

HONOR trial: 197例のRA患者にてAdalimumab + MTXを使用し, ステロイド中止, DAS28-ESRで寛解(<2.6)を6ヶ月維持できた75例
・ADA継続群(23) vs 中止群(52)で1年後の寛解維持率を比較(non-RCT)
(Ann Rheum Dis. 2015 Feb;74(2):389-95.)
ADA中止群では62%が寛解, LDAを維持可能.
 継続群では91%で維持可能.

OPTIMA trial(Period 2); Adalimumab + MTXの併用療法でLDA(DAS28<3.2)を達成した207例においてAdalimumab中止群 vs 継続群に割り付け, その後の経過を比較.
(Lancet 2014; 383: 321–32)

(補足: OPTIMA period 1)
発症1年未満のRA患者(MTX使用歴無し)をAdalimumab + MTX vs Placebo + MTXに割り付け比較したDB-RCT, N=1032, 26wk継続

・Adalimumab 40mg/2wk,  
・MTX 7.5mg/wk,1-2wk毎に2.5mg増量し, 第8wkで20mg/wkまで増量
・ステロイドはPSL 10mg/d以下が4wk以上変わらず投与され, 病状が安定している場合は継続可能.

Period 1の内, 2剤療法に割り付け, Low-activityを獲得した患者群をさらにAdalimumab中止 vs 継続群に割り付け, その後の経過を比較したのがOPTIMA period 2.
・DAS28 <3.2 @ 22-26wkとなった207例で割り付け. 52wk継続した.

アウトカム: (点線までがperiod 1, それ以降がperiod 2)

・ADA継続群では9割がLDAを維持可能
 ADA中止群ではLDA維持率は8割程度となる. 最初からMTX単剤で治療している群とほぼ同等の維持率.

STRASS trial: RA患者でEtanerceptもしくはAdalimumabを使用し, 6ヶ月以上DAS28で寛解を達成している患者群を以下の2群に割り付けDAS28の変化を評価したopen-label RCT.
・3ヶ月毎に投与間隔を50%ずつ延長し, 最終的に中止する群(S-arm)
・投与量を維持する患者群(M-arm)
(Ann Rheum Dis 2016;75:59–67.)
減量群(S-arm)では, 再燃, 増悪時にはその前の投与量に戻し, 安定後再度減量を試す.

アウトカム:
・減量群において, 抗TNF-α阻害薬が中止できたのは39.1%, 減量のみが35.9%, 減量もできなかったのは20.3%であった.

・投与量維持群のほうがDAS28は低い傾向があるが, 有意差はない(SD 19%[-5%~46])
・再燃率はより減量群で多い結果(76.6% vs 46.5%)
・XPにおける骨病変は両群で有意差なし.

その他のDMARDの中止

トシリズマブ(アクテムラ®)の単剤治療で寛解, 低活動性となったRA患者187例で薬剤を中断し, 52wkフォロー(DREAM study)
(Mod Rheumatol, 2014; 24(1): 17–25)
 そのまま程活動性を維持できたのは13%のみ.

DMARD中止後の再燃リスク因子
RETRO study: DMARDを使用中のRAで6ヶ月以上寛解(DAS28<2.6)を達成している101例を以下の3群に割り付け
・DMARD継続群
・DMARD減量群(50%に減量)
・DMARD中止群 12ヶ月後の寛解維持率を比較.
(Ann Rheum Dis 2016;75:45–51.)
MTX使用患者は82.2%. bDMARD使用患者は41%であった.

アウトカム: 再燃率
 DMARD継続群で15.8%
 DMARD減量群で38.9%
 DMARD中止群で51.9%.
再燃のリスク因子の評価
再燃のリスク因子はDMARDの減量, 中止以外に 抗CCP抗体陽性が挙げられる.

これらをまとめると,
bDMARD + MTXで寛解 or LDAを達成した患者では,
・投薬の継続による寛解, LDA維持率は5-9割くらい
・投薬の減量による寛解, LDA維持率は5-8割くらい
・投薬の中止による寛解, LDA維持率は1-5割くらい.
・bDMARDとMTX全て中止, もしくはbDMARDのみでMTXを使用していない患者群でbDMARDを中止すると8-9割が再燃する.

DMARD中止による再燃リスク因子は抗CCP抗体陽性がある.
・それ以外に明らかリスク因子は認められず, どの患者で中止を考慮するかどうかは未だ明確ではない.

減量の方法としては寛解, 低活動性が2-6ヶ月以上維持できた患者群において, 数カ月毎に50%ずつ投与量を減らす方法がよいかもしれない.