バンコマイシンもテイコプラニンもグリコペプチド系抗生剤であり, MRSAに対して使用される.
一般的にはバンコマイシンがよく使用され, 副作用で継続困難な場合にテイコプラニンを考慮することが多い(現在はリネゾリドやらダプトマイシンなどがあり, 使用頻度は低くなっていると考えられるが).
バンコマイシンで副作用を生じた場合, テイコプラニンでも副作用が生じるリスクはどの程度あるか?
VCMで副作用を生じ, テイコプラニンに変更した24例中, 14例(58.3%)がテイコプラニンでも副作用(+).
・その14例中の10例が血液系の副作用(8例が好中球減少).
・VCMの好中球減少の頻度は8/170(4.7%)であることを考えると, テイコプラニンでの血液系副作用の頻度は高いかもしれない.
(J Clin Pharm Ther. 2012 Jun;37(3):296-300)
VCM投与にて発熱, 皮疹, 好中球減少を認め, テイコプラニンに変更した117例の解析(台湾).
・VCMの副作用は, 発熱のみが24例, 皮疹のみが77例, 発熱+皮疹が8例, 好中球減少が8例
・VCMで副作用を生じた患者の12/117(10.3%)がテイコプラニンでも副作用あり.
・副作用別にみると,
VCMで薬剤熱をきたした症例では, テイコプラニンでは薬剤熱や皮疹を生じる例があり,
VCMで皮疹をきたした症例ではテイコプラニンでは同様に皮疹や, 薬剤熱, 好中球減少を生じる例がある.
VCMで好中球減少を生じた症例では, テイコプラニンでも好中球減少となるリスクがある.
・VCMで好中球減少を生じた8例中, 4例(50%)がテイコプラニンでも好中球減少を併発.
(Clin Ther. 2009 Sep;31(9):1977-86.)
VCMとテイコプラニンの交差反応についてはあまりデータがない.
その上で言えることは,
・VCMで副作用を生じた場合, テイコプラニンでも副作用を生じるリスクは1-5割程度
・副作用はVCMは皮疹や発熱が多いが, テイコプラニンでは血液毒性も強いかもしれない.
・VCMで好中球減少を呈した症例では, テイコプラニンでも好中球減少となるリスクが高いので, 変更するならば他の薬剤にした方が良い.