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2016年1月21日木曜日

補液への反応性をエコーで推測する

重症疾患による低循環の患者では補液が重要となる.
しかしながら, 補液自体が害となることもあり,
「負荷する(入れる)べきか」「引くべきか」という判断はしばしば迷うこともある.

簡便で, 有用な指標も乏しいのが実際の所。

個人的にはエコーによる評価を多用しているが,
Journal of Critical Care 31 (2016) 96–100 より, 正に自分が行っているマネージメントそのもの, と言っても良い総説が出たので紹介する.

エコーによるIVCの評価と肺エコーによる補液負荷調節
Journal of Critical Care 31 (2016) 96–100
・まずIVC径を評価し, <15mmならば補液負荷を.
・1.5-2.5mmならばIVC径の変動率を評価する.
 この時 挿管患者ならばカットオフは>12%とし, 満たせば補液を負荷
 自発呼吸患者ならばIVC径の変動には頼らない
・最後に肺エコーを行い, 両側でA lineならば補液負荷を試す.
 両側でB lineならば補液負荷はしない. 
というプロトコール.
IVC径からの評価
IVC径は健常人で10-29mm (自発呼吸)
・メタアナリシスにおけるIVC径の評価:
・ショック患者, 低循環患者群と, 健常コントロールでの比較.
 患者は両群とも自発呼吸患者.
・ショック患者でのIVC径は平均11mm, 5.6-15.5mmで, 大半が<15mmとなる.
(American Journal of Emergency Medicine (2012) 30, 1414–1419.e1)

また, 他の前向きStudyにおいて, 補液に反応しないショック患者30例中, 29例がIVC>15mmであった報告もあり(これは挿管管理中の患者)(Intensive Care Med. 2004 Sep;30(9):1834-7.)
 <15mmならば補液負荷を試してもよいかもしれない.

IVCの変動率からの評価(人工呼吸器管理中の患者)
人工呼吸器管理中の患者において, 吸気終末期と呼気終末期のIVC径を評価した前向きStudy.
・IVC径の変動と補液反応性の関連を前向きに評価.
・補液反応性は7ml/kgのコロイド液負荷を行い, CI≥15%の増加がある場合に反応性ありと評価.
アウトカム
・IVC径の変動 ≥18%ならば, 感度90%, 特異度90%で補液反応性があることを示唆する.
(Intensive Care Med. 2004 Sep;30(9):1740-6.)

人工呼吸器管理患者39例において, 8ml/kgのコロイド液負荷を施行.
・CI ≥15%の上昇を反応性ありと定義し, 反応あり群となし群でIVC径変動率を両者で比較.
アウトカム
・IVC変動率は 25±15% vs 6±4%と有意に反応がある群で変動率も高い.
 カットオフ≥12%でPPV 92%, NPV 93%で補液反応性を示唆.
(Intensive Care Med. 2004 Sep;30(9):1834-7.)

2013年までに出版された8 trialsのMeta-analysis(N=235)
・IVCの呼吸性変動率のカットオフは12-40%と幅があり, 
 補液反応性への感度 76%[61-86], 特異度 86%[69-95].
・人工呼吸器管理患者に限る(4 trials)と, 感度 81%[67-91], 特異度 87%[63-97] となる.
 自発呼吸患者を評価した研究は1つのみ
(Ultrasound Med Biol. 2014 May;40(5):845-53.)

IVCの変動率からの評価(自発呼吸の患者群)
急性の循環不全 40例を対象 (敗血症 24, 出血 11, 脱水 5例)
・循環不全はMAP<65mmHg, 尿量<0.5ml/kg/h, 頻脈, Mottled skin, 乳酸値>2mmol/Lのいずれかを満たす患者群で定義.
 明らかな肺水腫症例や右心不全症例は除外.
・全例が自発呼吸があり, 挿管されていない.
・上記患者群でIVC呼吸性変動と補液反応性の関係を評価.
・補液反応性は500mlのコロイド液を15分でDIVし, 補液後のsubaortic VTI≥15%の増加があれば反応性ありと判断(velocity time index).

アウトカム; IVC変動率と補液反応性.
・変動率≥40%で感度70%, 特異度80%で補液への反応ありと判断.

肺エコーによる補液反応性の評価
肺エコーでは補液反応性の評価よりは, 補液することの安全性を評価する意味合いが強い.
・Blue-protocolではびまん性のB lineは感度 97%, 特異度 95%で心原性肺水腫を示唆する.
(Chest 2008;134:117-125)
・また, 両側でA lineのみならばPAOP≤13mmHgに対するLR 6.7とDry lungを強く示唆する所見と言える(Chest 2009; 136: 1014-20)(Anesthesiology 2014; 121:320-7)

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以上よりエコーによる補液反応性を評価する際のポイントとしては,
人工呼吸器管理中の患者において,
・IVC径<15mm は補液反応性を示唆する.
・IVC変動 >12-18%は補液反応性を示唆する.
・肺エコーはA lineならば安心して補液負荷が可能という指標となる.
 両側B lineでは要注意.

自発呼吸患者において
・IVC径とIVC変動については実のところあまりエビデンスがない.
 IVC変動のカットオフは40%とするとよいかもしれないが, 感度が低い
・肺エコーはA lineならば安心して補液負荷が可能という指標となる.
 両側B lineでは要注意.

ということ.
それに加えて, 心エコー所見を踏まえると, 結構正確に補液反応性が評価できる印象があります.

肺エコーも、B lineは両側の背側から出現し, 側胸部, 前胸部へと拡大します.
 どの時点で補液を控えるか, どこまで粘るかというのはさすがに経験が必要と思います.
 その点も明確に言語化できれば良いのですが、、、

にしても, こういうことをまとめて, 論文にできる人にはいつも尊敬します.
そして、いつもお世話になっております.