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2015年6月10日水曜日

発作性上室性頻拍に対するアブレーション治療

発作性上室性頻拍の慢性期治療としてのアブレーション

AVNRT、AVRTに対するアブレーション治療の成績は良好であり,
治療成功率はAVNRTならば95-98%、AVRTでは92-98%。(The Ochsner Journal 14:586–595, 2014)

抗不整脈薬よりも治療成功率は良好で, 薬剤の副作用もないことから近年施行数は増加している。

上室性頻拍の治療についてのReviewでは (The Ochsner Journal 14:586–595, 2014)
各病態に対するアブレーションの成功率、不整脈再発率は以下の通り

ちなみにAVNRTではSlow−pathwayのアブレーションを行う。
アブレーションの合併症として深刻なのはAVブロック、心タンポナーデであるが、これらの合併率は1-1.5%程度。

アブレーションにはRadiofrequency catheter ablation(RFCA)とCryoablation(CA)がある。
 RFCAはカテーテル先端が発熱し、組織を焼灼する方法、
 CAはカテーテル先端が−75度となり、組織を冷却して組織障害を起こす方法。
 CAの方が新しい治療であり、利点は−4度程度で冷却することで、本処置の前にマッピングが可能な点と、冷却によりカテーテル先端と組織がくっつくことで処置がやりやすくなることが挙げられる。(The Ochsner Journal 14:586–595, 2014)

AVNRT症例 509例を対象として、CA法 vs RFCA法を比較したRCT(CYRANO trial)では
(Circulation. 2010;122:2239-2245.) 
 短期的には両群とも治療成功率は良好: 96.8%(CA) vs 98.4%(RFCA)
 AVブロック合併率は 0% vs 0.4%と有意差なし.

 6ヶ月後のAVNRT再発リスクはCA群で有意に高い結果(9.4% vs 4.4%)であった.


さて、上記表ではAVNRTやAVRTに対するアブレーション治療では
治療成功率は100%近く、さらに再発リスクは<10%と非常に良好な結果であるが、
アブレーション治療の問題点として、長期フォローによる再発リスクが不明な点が挙げられる。

いろいろな単一施設、後ろ向きStudyを見てみると、

760例の上室性頻脈に対するアブレーション治療の報告では, 
 Accessory pathwayを認める384例中 95.6%[93.5-97.6]でアブレーションが効果的であり,
 合併症率は1.1%, 再発率は5.5%. (J Cardiovasc Electrophysiol. 1993 Aug;4(4):371-89.)

AVNRT患者321例の治療にて成功率は92.5%, 合併症率は2.4%, 再発率10.5%
(Arch Inst Cardiol Mex. 2000 Jul-Aug;70(4):349-66.)

SVTでアブレーション治療を行った454例のRetrospective cohort
 2002-2007年にアブレーション治療を行った患者群を平均4.5±1.3年フォローし, QOLを評価.
 評価できたのは68.1%
 再発率はAVNRTで24.1%
 新規の不整脈発症を含めるとAVNRT患者の75.9%で不整脈再発を認めている
(Int J Med Sci 2009; 6(1):28-36.)

と、再発リスクはバラツキが大きい

高齢者ほどアブレーション後の不整脈再発リスクが高い報告もある.
AVNRT 85例に対してCryoablation(CA)を行った報告(後ろ向きStudy)
 患者を≤20歳(20例), 21−50歳(30例), ≥51歳(35例)に分けて予後を比較
 急性期における除細動成功率は100%であるが, フォローアップにて10.6%で再発あり.
 高齢者ほど再発率も高く,
 ≤20歳では0%, 21-50歳群では6.7%, ≥51歳群では20%で再発あり.
(Cryoablation of typical AVNRT: younger age and administration of bonus ablation favor long-term success.
Pieragnoli P, Perini AP, Checchi L, Carrassa G, Giomi A, Carrai P, Michelucci A, Padeletti L, Ricciardi G. 
Heart Rhythm. 2015 May 29. pii: S1547-5271(15)00689-X. PMID: 26031373)

また、女性ではアブレーション後の自覚症状改善効果が乏しい報告もある
 AVNRT, AVRT患者 82例に対してアブレーション治療を行った前向きStudy (RFCA)
 女性で有意に症状の改善効果が乏しく, 抗不整脈薬使用頻度が高くなる結果.
(Europace. 2014 Dec;16(12):1821-7.)

どのような患者群で選択するべきか、という点はまだ不明瞭な部分が多い。
発作の頻度、発作時の症状、職業に加えて
年齢、薬剤投与における副作用の有無、薬剤投与の予防効果を評価しつつ
アブレーションを考慮することは変わらない。