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2015年1月20日火曜日

ピロリ菌の検査、治療

H. pylori
十二指腸潰瘍, 胃潰瘍の主な原因 (BMJ 2008;337:a1454)
 十二指腸潰瘍の95%, 非NSAID性胃潰瘍の80%, 胃潰瘍の60%で認める
 日本, 南アメリカでは80%の保菌率! 英国では40%, スカンジナビアでは20%の保菌率.
 保菌者のうち, 1-10%で十二指腸潰瘍, 0.1-3%で胃潰瘍, <0.01%でMALT lymphoma
 消化管潰瘍発症, 胃癌発症に関与しており, 除菌により上記疾患のRiskは軽減することが分かっている ⇒ 近親者に胃ガン患者がいれば, それだけで除菌の価値あり.

 除菌後も再発Riskはあり, 先進国では3.4%/yr, 発展途上国では8.7%/yrの再発率
時間が経つにつれ, 再発Riskも低下する.

H. pyloriの感染部位がNon-acid-secreting entral regionの場合, Gastrin分泌を亢進させ十二指腸潰瘍の原因となる
 胃潰瘍はH. pyloriの粘膜直接浸潤により生じるとされる
胃癌のRiskになることが明らかになっているが, 除菌療法が胃癌のRisk低下に繋がるかどうかは未だ結論がでていない.
 Meta-analysisでは有意差あるものの, 各RCTでは有意差無しとの結論.
 MALT lymphomaのRisk低下になることは証明されている
GERDのRiskを減らす?
 ウレアーゼ産生により, GERD, AdenocarcinomaのRiskを低下させるとの意見があるが, 実際のMetaでは除菌とGERD発症率に関連性は無し.
どのような患者群でScreeningが必要か?
 胃, 十二指腸潰瘍, MALT lymphoma, 胃癌患者, 第一親等に胃癌を持つ患者, 萎縮性胃炎, 説明困難なIDA, 慢性TTP患者が推奨されているが, Evidenceは少ない.
NEJM 2010;362:1597-604

ピロリ菌の検査
大体が90%以上の感度, 特異度を持つ
内視鏡生検; Sn 90%, Sp 95%, 2箇所以上の生検, PPI内服で感度低下.
培養検査; 感度は最低, 特異度は100%
治療失敗例に行なう(薬剤感受性をCheckする目的)
迅速ウレアーゼテスト; SN90%, SP>90%
PCR; 最も感度が良い
血清学的検査; Sn 85%, Sp 79%, 未治療ならば感染を示唆
Past, Activeはこれでは分からない.
6-12M後に再度測定し, 治療の判定としては有用とされる
尿素呼気試験; Sn, Sp 95%, 4-6W以内の治療反応性のCheckに有用
便中抗原; Sn, Sp 95%, 1W後の治療反応性のCheckに有用
  Rapid EIA testならばActive infectionのCheckとなる

上部消化管出血時の各検査の感度、特異度は

感度
特異度
LR+
LR−
ウレアーゼ試験
67%[64-70]
93%[90-96]
9.6[5.1-18.1]
0.31[0.22-0.44]
組織検査
70%[66-74]
90%[85-94]
6.7[2.5-18.4]
0.23[0.12-0.46]
培養
45%{39-51]
98%[92-100]
19.6[4-96]
0.31[0.05-1.9]
尿素呼気試験
93%[90-95]
92%[87-96]
9.5[3.9-23.3]
0.11[0.07-0.16]
便中抗原
87%[82-91]
70%[62-78]
2.3[1.4-4]
0.2[0.13-0.3]
血清検査
88%[85-90]
69%[62-75]
2.5[1.6-4.1]
0.25[0.19-0.33]
Meta-analysis: Am J Gastroenterol. 2006 Apr;101(4):848-63.
感度が低下するため、上部消化管出血時の検査で陰性でも否定はできない.

便中抗原検査, 尿素呼気試験時は, PPI内服中ならば検査前1-2wk中止, H2-blocker内服中ならば検査前24hr中止,  抗生剤は検査前4wk中止が必要となる.
 PPIはH pyloriの活動を抑制する効果を示す.
 除菌効果はないが, しばしば呼気試験, 便検査の感度を低下させる.
 尿素呼気試験で陽性だった93名に, Lansoprazole 30mg 28日間内服.
 その後 呼気試験再検査を0, 3, 7, 14d後に施行. Ann Intern Med 1998;129:547-50
 検査の時期と陽性率
検査時期
陽性率
PPI0d
67%[56-76]
3d
91%[83-96]
7d
97%[90-99]
14d
100%[96-100]
 確実に除菌を確認したいならば, PPIは2wkは中止する必要がある.

H2-blockerは胃内pHを上昇させることで, 呼気試験の感度を低下させる可能性があるが, H pyloriは抑制しないため, 偽陰性も軽度. Helicobacter, 2004;9:17– 27

ピロリ菌の除菌療法
日本ヘリコバクター学会のガイドライン 2009より, 除菌療法の適応
日本ヘリコバクター学会誌 2009;10:104−28

エビデンスレベル
保険適応の有無
胃潰瘍, 十二指腸潰瘍
I
あり
胃MALTリンパ腫
III
あり
特発性自己免疫性血小板減少症
I
あり
早期胃癌に対する内視鏡治療後
II
あり
萎縮性胃炎
I

胃過形成ポリープ
II

機能性ディスペプシア
I

逆流性食道炎
II

鉄欠乏性貧血
III

慢性蕁麻疹
III


除菌療法のレジメ
一次除菌 (保険適応あり): 7日間
薬剤

PPI
OPZ 20mg or LPZ 30mg or RPZ 10mg or EPZ 20mgを2回/日
AMPC
750mg 2回/日
CAM
200mg もしくは 400mgを2回/日
二次除菌 (保険適応あり): 7日間
薬剤

PPI
OPZ 20mg or LPZ 30mg or RPZ 10mg or EPZ 20mgを2回/日
AMPC
750mg 2回/日
MNZ
500mg 2回/日
三次以降の除菌レジメ (保険適応なし)
STFX(グレースビット®)を使用したレジメ: 7日間(LAS)
薬剤

PPI
LPZ 30mg 2回/日
AMPC
750mg 2回/日
STFX
100mg 2回/日
高用量2剤療法: 14日間(LA)
薬剤

PPI
LPZ 30mg 4回/日
AMPC
500mg 4回/日
LVFXを使用したレジメ: 7日間(LAL)
薬剤

PPI
LPZ 30mg 2回/日
AMPC
750mg 2回/日
LVFX
300mg 2回/日
OPZ: オメプラゾール, LPZ: ランソプラゾール, RPZ: ラベプラゾール, EPZ: エソメプラゾール, CAM: クラリスロマイシン, MNZ: メトロニダゾール, AMPC: アモキシシリン, STFX: シタフロキサシン, LVFX: レボフロキサシン
Japan GAST study: 国内の一次, 二次除菌で失敗した204例を対象としたopen-label RCT.
上記のLAS, LAL, LA群に割り付け, 除菌成功率を比較
 LASの除菌成功率は70.0%
 LALでは43.1%, LAでは54.3%と有意にLASで除菌成功率が高い結果. J Gastroenterol. 2013 Oct;48(10):1128-35.

キノロンを使用する場合はLVFXよりSTFXの方が除菌率が良好
日本ヘリコバクター学会誌 2013;14:95-100

ピロリ菌の薬剤耐性率
2002-2006年, 2010-2011年にピロリ菌の耐性率を評価 Helicobacter Research 2014;18:118-125

CAM耐性
AMPC耐性
MNZ耐性
2002-2006年
24.7%
17.5%
2.6%
2010-2011年
31.0%
16.9%
3.4%
全体
26.3%
17.3%
2.8%
一次除菌不成功
86.2%
29.7%
5.5%
二次除菌不成功
80.2%
51.1%
68.7%