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2015年1月30日金曜日

タミフルのメタアナリシス

Oseltamivir(タミフル®)の効果を評価した9 Double-blind RCTsのMeta-analysis
Oseltamivir treatment for influenza in adults: a meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet 2015
インフルエンザ感染が証明された患者群のITT解析
全症状改善までの時間はOseltamivir群で有意に短縮
 (97.5時間 vs 122.7時間, Difference -25.2h[-36.2~-16.0])

Sub解析では
特に<65歳, 症状が重い患者, インフルエンザA型でより効果が良好.
発症から<24h, ≥24hではどちらも有効.

下気道合併症頻度も低下する
 65/1544(4.2%) vs 110/1263(8.7%), RR 0.56[0.42-0.75], ARD -3.8%[-5.0~-2.2], NNT 26
内訳は、
 気管支炎が3.6% vs 6.9%, RR 0.62[0.45-0.85], NNT 30
 肺炎が0.6% vs 1.7%, RR 0.40[0.19-0.84], NNT 91
 下気道感染症が0.1% vs 0.3%, NNT 500
入院率も有意に低下
 9/1329(0.7%) vs 22/1045(2.1%), RR 0.37[0.17-0.81], ARD -1.1%[-1.4~−0.3], NNT 91

副作用頻度
下痢はむしろ減ると。
悪心嘔吐は多い。

年末は インフルA → タミフル使用 → 食事食べない、脱水 → インフル治っているけど脱水で入院のコンボに悩まされました。

2015年1月26日月曜日

ARDSのVolume control: FACTT Lite

ますARDSのVolume controlや治療については、こちらを参照

これに記載されている N Engl J Med. 2006 Jun 15;354(24):2564-75.によるConservative protocolが今の推奨であるが、それをもっと簡便化したFACTT Liteというものがある
FACTTはFluid and Catheter Treatment Trialの略

FACTT Lite Crit Care Med. 2015 Feb;43(2):288-295.
CVP
(推奨指標)
PAOP
(Optional)
MAP60mmHg, 昇圧剤が12h以上off
尿量<0.5mL/kg/h
尿量0.5mL/kg/h
>8
>12
フロセミド投与, 1h後再評価
フロセミド投与, 4h後再評価
4−8
8-12
補液治療、1h後再評価
フロセミド投与, 4h後再評価
<4
<8
補液治療、1h後再評価
介入なし, 4h後再評価

CVPを基本的な指標とし、CVP<4cmH2Oと尿量≥0.5mL/kg/Lを維持する。
昇圧剤無しで、平均動脈圧を60mmHg以上で維持できていることが前提。

このFACTT Liteに対して、NEJM 2006のConservative protocolをFACTT Conservative, Liberal protocolをFACTT Liberalと呼ぶ。

ICUにおけるARDS患者を対象としたRetrospective study.
FACCT Conservative 503例, Liberal 497例, Lite 1124例で補液量, 予後を比較
Crit Care Med. 2015 Feb;43(2):288-295.

補液量, フロセミドの使用量は
 FACCT Liberal > Lite > Conservativeの順番.


臨床的アウトカム
挿管フリー期間, 死亡率, AKIすべてLiteとConservativeで同等
ショック合併はLiteで少なく, LiteとLiberalで同じくらい.

Retrospective studyの結果に過ぎませんが、一番無難なマネージメント方法かもしれません。
ICU管理は単純に考えるのが好みです。

神経性疼痛に対する薬物治療のメタ

Pharmacotherapy for neuropathic pain in adults: a systematic review and meta-analysis.
Lancet Neurol. 2015 Jan 6. pii: S1474-4422(14)70251-0.

書いている時点で一番新しいメタアナリシス。

NNT
投与量
添付文章
推奨
三環系抗うつ薬
(
主にアミトリプチリン)
3.6[3.0-4.4]
25-150mg
同じ
1st
SNRI
(
主にデュロキセチン)
6.4[5.2-8.4]
デュロキセチン 60-120mg
ベンラファキシン 150-225mg
デュロキセチン ~60mg
1st
プレガバリン
7.7[6.5-9.4]
300-600mg
同じ
1st
ガバペンチン
7.5[5.9-9.1]
1200-3600mg
~2400mg
1st
トラマドール
4.7[3.6-6.7]
200-400mg
同じ
2nd
強オピオイド
4.3[3.4-5.8]


3rd
カプサイシン8%
10.6[7.4-18.8]
末梢神経性のみ
国内に薬剤なし
2nd
ボルリヌス毒素A
1.9[1.5-2.4]
末梢神経性のみ

2nd

添付文章投与量は国内の最大投与量を示す。
少量より開始する必要あり。

デュロキセチンとガバペンチンは海外よりもDoseが少ないため、これを同じ効果が期待できるのかは不明。
アミトリプチリンとプレガバリンは海外と同じ用量が使用可能なので、副作用がなければこちらの方が効果は期待できるかもしれない。

ちなみに、TCAとガバペンチンの単剤治療と併用療法をCross−overで比較したProspective studyでは、併用療法の方が有意に疼痛改善効果が高い(糖尿病性神経症とヘルペス後神経痛の患者を対象) ( 2009 Oct 10;374(9697):1252-61)

またプレガバリンは脊柱狭窄症患者の間歇性症状には効果が認められなかった(DB−RCT)
(Neurology® 2015;84:265–272)

2015年1月20日火曜日

ピロリ菌の検査、治療

H. pylori
十二指腸潰瘍, 胃潰瘍の主な原因 (BMJ 2008;337:a1454)
 十二指腸潰瘍の95%, 非NSAID性胃潰瘍の80%, 胃潰瘍の60%で認める
 日本, 南アメリカでは80%の保菌率! 英国では40%, スカンジナビアでは20%の保菌率.
 保菌者のうち, 1-10%で十二指腸潰瘍, 0.1-3%で胃潰瘍, <0.01%でMALT lymphoma
 消化管潰瘍発症, 胃癌発症に関与しており, 除菌により上記疾患のRiskは軽減することが分かっている ⇒ 近親者に胃ガン患者がいれば, それだけで除菌の価値あり.

 除菌後も再発Riskはあり, 先進国では3.4%/yr, 発展途上国では8.7%/yrの再発率
時間が経つにつれ, 再発Riskも低下する.

H. pyloriの感染部位がNon-acid-secreting entral regionの場合, Gastrin分泌を亢進させ十二指腸潰瘍の原因となる
 胃潰瘍はH. pyloriの粘膜直接浸潤により生じるとされる
胃癌のRiskになることが明らかになっているが, 除菌療法が胃癌のRisk低下に繋がるかどうかは未だ結論がでていない.
 Meta-analysisでは有意差あるものの, 各RCTでは有意差無しとの結論.
 MALT lymphomaのRisk低下になることは証明されている
GERDのRiskを減らす?
 ウレアーゼ産生により, GERD, AdenocarcinomaのRiskを低下させるとの意見があるが, 実際のMetaでは除菌とGERD発症率に関連性は無し.
どのような患者群でScreeningが必要か?
 胃, 十二指腸潰瘍, MALT lymphoma, 胃癌患者, 第一親等に胃癌を持つ患者, 萎縮性胃炎, 説明困難なIDA, 慢性TTP患者が推奨されているが, Evidenceは少ない.
NEJM 2010;362:1597-604

ピロリ菌の検査
大体が90%以上の感度, 特異度を持つ
内視鏡生検; Sn 90%, Sp 95%, 2箇所以上の生検, PPI内服で感度低下.
培養検査; 感度は最低, 特異度は100%
治療失敗例に行なう(薬剤感受性をCheckする目的)
迅速ウレアーゼテスト; SN90%, SP>90%
PCR; 最も感度が良い
血清学的検査; Sn 85%, Sp 79%, 未治療ならば感染を示唆
Past, Activeはこれでは分からない.
6-12M後に再度測定し, 治療の判定としては有用とされる
尿素呼気試験; Sn, Sp 95%, 4-6W以内の治療反応性のCheckに有用
便中抗原; Sn, Sp 95%, 1W後の治療反応性のCheckに有用
  Rapid EIA testならばActive infectionのCheckとなる

上部消化管出血時の各検査の感度、特異度は

感度
特異度
LR+
LR−
ウレアーゼ試験
67%[64-70]
93%[90-96]
9.6[5.1-18.1]
0.31[0.22-0.44]
組織検査
70%[66-74]
90%[85-94]
6.7[2.5-18.4]
0.23[0.12-0.46]
培養
45%{39-51]
98%[92-100]
19.6[4-96]
0.31[0.05-1.9]
尿素呼気試験
93%[90-95]
92%[87-96]
9.5[3.9-23.3]
0.11[0.07-0.16]
便中抗原
87%[82-91]
70%[62-78]
2.3[1.4-4]
0.2[0.13-0.3]
血清検査
88%[85-90]
69%[62-75]
2.5[1.6-4.1]
0.25[0.19-0.33]
Meta-analysis: Am J Gastroenterol. 2006 Apr;101(4):848-63.
感度が低下するため、上部消化管出血時の検査で陰性でも否定はできない.

便中抗原検査, 尿素呼気試験時は, PPI内服中ならば検査前1-2wk中止, H2-blocker内服中ならば検査前24hr中止,  抗生剤は検査前4wk中止が必要となる.
 PPIはH pyloriの活動を抑制する効果を示す.
 除菌効果はないが, しばしば呼気試験, 便検査の感度を低下させる.
 尿素呼気試験で陽性だった93名に, Lansoprazole 30mg 28日間内服.
 その後 呼気試験再検査を0, 3, 7, 14d後に施行. Ann Intern Med 1998;129:547-50
 検査の時期と陽性率
検査時期
陽性率
PPI0d
67%[56-76]
3d
91%[83-96]
7d
97%[90-99]
14d
100%[96-100]
 確実に除菌を確認したいならば, PPIは2wkは中止する必要がある.

H2-blockerは胃内pHを上昇させることで, 呼気試験の感度を低下させる可能性があるが, H pyloriは抑制しないため, 偽陰性も軽度. Helicobacter, 2004;9:17– 27

ピロリ菌の除菌療法
日本ヘリコバクター学会のガイドライン 2009より, 除菌療法の適応
日本ヘリコバクター学会誌 2009;10:104−28

エビデンスレベル
保険適応の有無
胃潰瘍, 十二指腸潰瘍
I
あり
胃MALTリンパ腫
III
あり
特発性自己免疫性血小板減少症
I
あり
早期胃癌に対する内視鏡治療後
II
あり
萎縮性胃炎
I

胃過形成ポリープ
II

機能性ディスペプシア
I

逆流性食道炎
II

鉄欠乏性貧血
III

慢性蕁麻疹
III


除菌療法のレジメ
一次除菌 (保険適応あり): 7日間
薬剤

PPI
OPZ 20mg or LPZ 30mg or RPZ 10mg or EPZ 20mgを2回/日
AMPC
750mg 2回/日
CAM
200mg もしくは 400mgを2回/日
二次除菌 (保険適応あり): 7日間
薬剤

PPI
OPZ 20mg or LPZ 30mg or RPZ 10mg or EPZ 20mgを2回/日
AMPC
750mg 2回/日
MNZ
500mg 2回/日
三次以降の除菌レジメ (保険適応なし)
STFX(グレースビット®)を使用したレジメ: 7日間(LAS)
薬剤

PPI
LPZ 30mg 2回/日
AMPC
750mg 2回/日
STFX
100mg 2回/日
高用量2剤療法: 14日間(LA)
薬剤

PPI
LPZ 30mg 4回/日
AMPC
500mg 4回/日
LVFXを使用したレジメ: 7日間(LAL)
薬剤

PPI
LPZ 30mg 2回/日
AMPC
750mg 2回/日
LVFX
300mg 2回/日
OPZ: オメプラゾール, LPZ: ランソプラゾール, RPZ: ラベプラゾール, EPZ: エソメプラゾール, CAM: クラリスロマイシン, MNZ: メトロニダゾール, AMPC: アモキシシリン, STFX: シタフロキサシン, LVFX: レボフロキサシン
Japan GAST study: 国内の一次, 二次除菌で失敗した204例を対象としたopen-label RCT.
上記のLAS, LAL, LA群に割り付け, 除菌成功率を比較
 LASの除菌成功率は70.0%
 LALでは43.1%, LAでは54.3%と有意にLASで除菌成功率が高い結果. J Gastroenterol. 2013 Oct;48(10):1128-35.

キノロンを使用する場合はLVFXよりSTFXの方が除菌率が良好
日本ヘリコバクター学会誌 2013;14:95-100

ピロリ菌の薬剤耐性率
2002-2006年, 2010-2011年にピロリ菌の耐性率を評価 Helicobacter Research 2014;18:118-125

CAM耐性
AMPC耐性
MNZ耐性
2002-2006年
24.7%
17.5%
2.6%
2010-2011年
31.0%
16.9%
3.4%
全体
26.3%
17.3%
2.8%
一次除菌不成功
86.2%
29.7%
5.5%
二次除菌不成功
80.2%
51.1%
68.7%