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2014年12月30日火曜日

若年者の脳梗塞

若年者の脳梗塞 Lancet Neurol 2010; 9: 1085–96

Finlandの統計では, 脳梗塞発症率は
 20-24yrで2.4/100000, 30-34yrで4.5/100000, 45-49yrで32.9/100000.
 20-30yrでは女性例の方が多く, >30yrでは男性例が多くなる.
 若年齢の方が脳梗塞の原因が不明な例が当然多く, リスクもはっきりしないことが多い.
  >> しかしながら, 予後を考慮するとよりしっかりと診るべきは若年者

 若年者の脳梗塞において, 現時点で明らかなリスクファクターは, 経口避妊薬, 違法ドラッグ, アルコール中毒, 喫煙, 片頭痛, 妊娠, 出産.

若年者の脳梗塞の原因 Neurology® 2011;76:1983–1988
16−54yrの脳梗塞318例の解析.
 男性195例, 女性123例. 16-44yrが131例, 45-54yrが187例.
 脳梗塞の原因
 原因不明の145例のうち, 43例(全体の13.5%)がPFO-ASA. (Patent foramen ovale, atrial septal aneurysm)

Total 16-44yr 45-54yr
動脈硬化性 15.4% 8.4% 19.8%
頸動脈, 脳動脈解離 9.4% 14.5% 5.9%
Small-vessel disease 7.8% 3.8% 11.2%
心原性塞栓 8.1% 3% 11.8%
他の原因 14.1% 19.8% 10.2%
原因不明 45.5% 52.7% 39%
 PFO-ASA 13.5% 15.3% 12.3%
 Small-vessel disease 2.8%


 原因不明な心室内血栓 1.5%


 大動脈弓部アテローム>4mm 0.6%



若年者の脳梗塞では卵円孔開存をチェック NEJM 2005;353:2361-72
 <45yrの脳梗塞では43%が原因不明であり, その半分に卵円孔開存が関与しているとの報告がある
 卵円孔開存自体は一般人口の27%で認められ, 片頭痛のRiskにもなる
<55yrの原因不明Strokeでは, PFOはRR 5.01[3.24-7.75]
>55yrでは, RR 1.20[0.56-2.56]

PFO(+)の健常人で, 脳梗塞発症率は 0.1%/yr
 PFOの程度(>=4mm), シャント血流量も関与すると考えられる
Septal aneuarysmはRisk増大因子の1つ.
 静脈系の血栓が卵円孔を通じてEmboliとなる機序が考えられ, 特にCalf-vein thrombiの合併頻度が高いとの報告もあり.
卵円孔開存評価にはEETがBest.
 TTE + microbubble testでも感度は造影剤を用いたEETの半分程度
 造影 Transcranial DopplerによるRLシャントもEETと同等の診断能

若年者の脳梗塞の予防は? NEJM 2005;353:2361-72
 <60yrのStroke再発率は1.9%/yrと低く, 又治療の有無で差がないため, Stroke予防の必要性は不明.
 Aspirin投与にて, PFO(+)群で2.3%, PFO(-)群で4.2%の再発率(4yr)
 PFO + Atrial septal aneurysmでは, 15.2%と再発リスクが高い.
高齢者ならばAspirinを投与すべきであるが,
若年ならばその他のRiskを評価しつつ, 適応を考慮するのが良い

Medical Therapy
 WarfarinとAspirinの比較では有意差無し. 出血RiskはWarfarinでUP
 小規模Studyしかなく, Evidence的にはPoorな領域.
 ハッキリしたことは言えないが, Riskを考慮して適応を(CHADS2など).

PFO患者における閉鎖術(脳梗塞予防目的)NEJM 2005;353:2361-72
PFOの閉鎖術
 以前は開胸が一般的であったが, 侵襲が大きく, PFO(+)患者のStroke発生率と天秤にかけると… 微妙な感じ
 経皮的閉鎖術は低侵襲であり, Case-controlなど多い.
 1355名に対する経皮的閉鎖術では術後1年以内のStorke発症は0-49% ⇒ Medical Therapyでは3.8-12.0% (Ann Intern Med 2003;139:753-60)
 経皮的閉鎖術の合併症としては, 出血, 心タンポ, PE, 死亡が1.5%, 不整脈, Device fracture, embolization, 空気塞栓, 血腫, 瘻孔が7.9%

High-Risk群では閉鎖術の適応を進められている(>=2/4項目)
 Shunt(>50bubbles)
 Atrial septal aneurysm
 多発性梗塞
 ValsalvaにてStrokeが誘発 (Neurology 1996;46:1301-5)

Cryptogenic Stroke + PFO患者のStroke再発RiskをMeta Neurology 2009;73:89-97
*Cryptogenic Stroke: 明らかな原因が不明な脳梗塞 全脳梗塞の25%, 若年性脳梗塞の50%を占める

 PFO(-)の患者群との比較では, PFO(+)患者のStroke, TIA再発RR 1.07[0.76-1.49]
 Stroke再発RR 0.83[0.52-1.31]
 PFO(+)患者群のStroke, TIA再発率 3.99[2.94-5.03]/100pt-yr
 Cryptogenic Stroke患者の再発率 1.53[1.07-2.00]/100pt-yr
 PFOの有無が再発Riskには関与しないとの結果. PFO閉鎖術を行う必要性は低いかもしれない

ガイドラインによるPFOの評価, 治療方針 Neurology 2009;73:89-97
心エコーの適応と治療方針
Diagnosis
ACC/AHA/ASE
American Academy
 of Neurology

ACCP
TTE or TEE
<45yr + 脳血管イベント
>45yr +
神経障害
 (
脳血管イベントは無くても良い)
(Class I)

若年(<55yr)Strokeでは
PFO,
Atrial septal aneurysm
評価を
(Level C)

記載なし
TTE vs TEE
TTENegならば, TEEを考慮
記載なし
TEETTEより感度良好
Management
ACC/AHA/ASE
American Academy
 of Neurology

ACCP
PFO
記載なし
Warfarin, Aspirin
優位性は不明.
Warfarin
は出血Risk↑
外科手術とカテーテル閉鎖の
優位性も不明.
抗血小板薬が
Warfarin
よりも推奨される
(PFO
単独では)
PFO + Risk
記載なし
記載なし
Medical vs Surgical Therapy
で優位性は不明.
PFO + DVT,PE
記載なし
>3moの抗凝固療法
抗凝固療法
明らかな原因のない脳梗塞でPFOがある場合は基本的にはアスピリンでOK
他のリスクがあれば抗凝固を考慮する。
閉鎖療法は脳梗塞のみでは基本的に適応にはならない

PFO以外の原因になりそうな疾患 NEJM 2005;353:2361-72
原因になりそうな疾患
原因不明
Stroke

占める割合
一般人口で
占める割合
Risk  for Stroke
Myxoma
LA, 卵円孔に
接するのが70%
<2%
0.01%,
F:M=2:1

High
Papillary
fibroelastoma

左心系の弁膜に生じる
Very low
0.0003%
不明
Valvular strands
外傷により, MV, AV付近に
生じる傷, フィブリン血栓
38.8%
46.9%
RR
0.59[0.08-4.43]

MV prolapse
粘液腫性の変性
Marfan, Ehlers-Danlos
など関与
2.8%
(<45yr

 Stroke, TIA)

2.4%
(
平均Age 56yr)
TIARR 2程度
Stroke
では
有意差無し
肺内シャント
HHT, Lover diseaseと関与
Very low
不明
不明
大動脈弓血栓
動脈硬化に関与する
Very low
不明
High
若年者の脳梗塞で稀だがあり得る疾患 Lancet Neurol 2010; 9: 1085–96
 抗リン脂質抗体症候群 
 SLE, 膠原病, ANCA関連血管炎
 感染症; Syphilis, VZV, HBV, HCV, HIV
 クリオグロブリン血症(HCV感染症)
 違法薬剤
 Primary CNS vasculitis, CNS感染症
 Hyperhomocysteinemia 
 ATIII, Protein C, S欠損症
 Factor V Leiden, Prothrombin G20210A変異
 鎌状赤血球症
 Retinocerebral arteriopathies
 Periarteritis nodosa 
 高安病
 Fabry病
 CADASIL 
 MELAS 
 HANAC syndrome

肺内シャント量が多いほど脳梗塞リスクも高い
Hereditary hemorrhagic telangiectasiaのスクリーニングを行う患者群において, 肺内シャントの有無, 程度と脳血管障害リスクを評価
 肺内の右左シャントは530名で検出.
 程度はMicrobubbleを用いて, Grade分類で評価.
Grade 0
no microbubble
Grade 1
<30 microbubble
Grade 2
30-100 microbubble
Grade 3
>100 microbubble
 平均年齢 44.3±15.6歳
 脳血管障害は51例で検出され, Grade別での発症率は, 有意に高度のRLシャント群でより高頻度.
Grade 0
1.4%
Grade 1
0.4%
Grade 2
6.5%
Grade 3
20.9%