体温< 35度で定義される
32-35度: Mild
28-32度: Moderate → ShiveringがStop (自己復温不可)
< 28度: Severe → VFのリスクがUP (致死的)
成人生存者の最高記録は直腸温13.7度, 小児で15度, 治療的低体温では9度という記録がある.
体温低下の4つの環境因子
Conduction(伝導), Convection(対流) 10%
Radiation(放散) 60%
Evaporation(蒸散) 25-30% の熱発散に関わる
Radiation(放散) 60%
Evaporation(蒸散) 25-30% の熱発散に関わる
上記因子と、患者の内因性要素が発症に関与
体温調節の仕組み
中枢は視床下部
寒冷への暴露によりMuscle tone上昇 → 熱産生2倍
Shivering → 熱産生5倍まで上昇
直腸温< 32度となると, 熱産生能が低下
中枢抑制, 熱産生能の限界を突破するため
ちなみに直腸温は15cm以上挿入して測定すべきとされる.
N Engl J Med 2012;367:1930-8.
低体温の原因
都会での低体温患者114名中, 47.9%に重大な背景疾患を認めた (Ann Emerg Med 1980;9:456-61)
寒冷からの退避×; 寝たきり, 意識低下など
熱産生の低下
薬物: β Blocker, 鎮静剤, 筋弛緩
内分泌: 下垂体機能低下, 甲状腺機能低下, 副腎低下, 低血糖
低栄養, 高齢者, 乳児, 敗血症, Shock
熱放散の上昇
体表面積が広い: 乳児、小児
末梢血管拡張:アルコール, 薬剤, 熱傷,
皮膚疾患
体温調節障害
神経障害; DM, 末梢神経障害, Stroke, 脊髄損傷, Wernicke脳症, Parkinson’s Disease
循環不全
脱水, Shock, DM, 喫煙など
薬剤
Barbiturate, Phenothiazine, Benzodiazepine, Opioid, Neuroleptics, TCA, Beta-blocker, エタノール
体温と症状
直腸温 | 症状 | Passive External |
Active External |
Active Internal |
|
Mild | 35 | Shivering(+) 熱産生は最大となる |
全身の復温 | ||
34 | 強い悪寒(+) 健忘, 構音障害, 見当識障害軽度 徐脈, 頻脈あり. 血圧正常 |
||||
33 | 意識混迷 運動失調, 無気力感(+) Shivering低下し, 頻呼吸に |
体幹のみの 復温 |
|||
Moderate | 32 | 意識低下, 昏迷 Shivering消失, 瞳孔散大 |
|||
31 | 熱産生ほぼ停止 末梢血管収縮強く, 血圧測定困難 |
||||
30 | 筋硬直増強, 意識消失 Af, 不整脈Risk上昇 |
||||
29 | 徐脈, 呼吸回数低下 瞳孔散大 |
直腸温 | 症状 | Passive External |
Active External |
Active Internal |
|
Severe | 28 | VF risk↑, 刺激によりVF誘発 | |||
27 | 意識消失, 自発的体動消失 | ||||
26 | DTR, 対抗反射消失 | ||||
25 | 刺激なくてもVF発症する | ||||
24 | 肺水腫, 重度低血圧, 徐脈 | ||||
23 | VF risk 高 角膜反射消失 |
||||
22 | O2消費 <25% | ||||
21 | VF電位低下 | ||||
20 | Fine VF |
22-28℃では刺激によりVFになり得るため, 注意
28.8±2.5度の患者をICU管理 ⇒ 38%が死亡
しかし, VT,VFによるものは0例であった (Chest 2001;120:1998-2003)
しかし, VT,VFによるものは0例であった (Chest 2001;120:1998-2003)
<28.0度の46/234が心停止, その内15名が蘇生した (NEJM 1997;337:1500-5)
腎臓への影響
初期には末梢血管収縮による腎血流の増加とADH分泌の低下が生じる
→ Cold-induced diuresisと呼ばれる利尿がおこる
→ Volume低下, 急性腎不全, 低K血症を来たす
→ Volume低下, 急性腎不全, 低K血症を来たす
28-30度では腎血流は50%まで低下する
直腸温が1度低下する毎にHt2%上昇すると言われている
他は, カテコラミン↑に由来する所見(高血糖など)
Cr, BUNは腎機能を反映しなくなる (正常でも実際は腎不全ということになる)
心血管系
低体温初期はBP, HR, COは上昇
28度になると50%の患者で徐脈を来たす
Pacemaker細胞の機能低下が原因であり, アトロピンは通常効果が無い
心筋は易刺激性となり, AfがVFに発展しやすくなる
CV留置時はカテ尖端が心臓に接しないように浅めにおく.
CV留置時はカテ尖端が心臓に接しないように浅めにおく.
32度を下回るとOsborn waveが認められるようになる
ECG初期変化としてはPQ, QRS, QTの延長
参考: 直腸温26度時のECG
中枢神経
代謝低下に伴い脳血流は低下
初期では運動障害; 協調運動, 構音障害, 見当識障害, 認知障害, 意識レベルの低下を来たす
体温中枢が麻痺すると, 寒いのに暑さを感じて服を脱ぐような行為も生じる(Paradoxical undressing)
脈が触れるかどうか
意識があるかどうか
バイタルサインが不安定かどうかで判断.
意識があれば HT I
意識が無く, ショックバイタル, BT<28度ならばHT II, III
脈が触れない場合はCPRを開始するが, 不可逆的な要素, 気道閉塞, 長時間の心停止が予測される場合は蘇生は中止. それが無い場合はHT IVとし, 体外循環を用いた迅速な復温が求められる.
低体温のStageと復温方法の選択 N Engl J Med 2012;367:1930-8.
復温の総論
復温には大きく分けて3つ
Passive rewarming
Active external rewarming
Active internal rewarming
各々の適応は前の体温との対応表を参照
重症低体温では, 出来るだけの方法を併用し, 出来るだけ早急に暖める必要がある
状態が安定していれば侵襲の少ないものから始めてゆく
Passive external rewarming (Mild例, HT I以上に適応)
外気温を高め, 濡れた衣服, 水分を除去する
ブランケットを用いて復温
ブランケットを用いて復温
復温は0.25-0.5度/hr程度でSlow
全例に適応される
Active external rewarming (Moderate, HT II,III以上)
ヒーター, お湯にて強制的に復温
ホットパック(43-46度に加温した輸液パック) → ①腋窩, 頚動脈, 鼠径部, ②腹部, ③胸部 に置く (低温熱傷が生じるため, ホットパックは直接皮膚に乗せないこと)
加温輸液, 加温酸素も使用
輸液; 42-44度に電子レンジで加温, 150-200mL/hrで開始. 尿量を0.5-1mL/kg/hrに維持する程度
加温酸素; 42-46度に暖める, 40度の酸素で1-1.5度/hr, 45度で1.5-2度/hrの復温が可能
Forced-air warming blanket; 1-3度/hrの復温を見込める
ちなみに,
500W程度の電子レンジにて, 500mlのNS, 乳酸リンゲルを加熱すると,
1:00 34.2℃
1:20 39.8℃ → 外傷,Shockで使用
1:40 43.8℃ → 低体温 で使用 となる.
1:00 34.2℃
1:20 39.8℃ → 外傷,Shockで使用
1:40 43.8℃ → 低体温 で使用 となる.
また、ホットパックは氷嚢袋に熱湯 + 水道水で即席で作ってもOK(漏れるとの報告もありますが )
全身を暖めると末梢血管拡張し, 冷えた血液の流入, 熱放散拡大が生じ, 復温後に体温が低下する可能性がある. これを“Afterdrop”と呼ぶ
Afterdropを避けるために, Moderate, Severeでは体幹部のみActive external rewarmingを行なうことが勧められるが, 実際に生じるかどうかは不明.
Afterdrop acidosisも体幹のみだと少なくなる
Active Internal rewarming (Severe例, HT III,IV)
温水による胃洗浄; 挿管必須. 電解質異常のリスクとなる
温水による注腸; 直腸温モニタリングが困難になる欠点あり. 1L流し込んでは吸引
温水による膀胱灌流; 尿量測定が困難になる欠点あり.
温水による腹膜灌流; 手技が特殊、装置も特殊. 43度のKCl-freeの輸液を使用. 2L流し込み, その後吸引する. 迅速で、慣れれば簡便であり、良く使用される治療
体外循環装置による加温. 心停止患者においては最も効果的といえる (循環, 酸素化も補助). 5分で1-1.8度の復温が可能
復温方法と効率 N Engl J Med 2012;367:1930-8.
復温後の管理
直腸温 > 35度を目標とし, 達成すれば復温中止
45-60min以上低体温となっていた場合血管拡張に伴うHypovolemiaとなりやすい → Vital signsを評価しVolume負荷が必要となる
復温に伴う高K血症にも注意する. Crush syndromeに起因するもの, 起因しないものがある
モニタリングをしっかりと
低体温の背景にある病態を評価, 対応する. 原因の項参照, 低体温を直すだけが治療ではない