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2014年10月20日月曜日

尿路感染症について: 総論

尿路感染症: 総論
原因菌, 尿培養はこちらを参照
Disease-a-Month 2003;49:Issue 2
生後数か月を除き, 常に女性で多い疾患; 1.2% vs 0.6%
 生後6か月には既に女児は男児の3倍の頻度(6.6% vs 1.8%)
 電話による調査では>18yrの女性の10.8%がUTI症状を経験
 病院にかかるのは少なく, 発症5日間は経過観察していることが多い.
 上記女性群の大半が2回以上のエピソードを経験
 55-74yrの高齢女性ではUTI一般的な症状の訴えが乏しい.
UTI患者で注意すべき背景 ⇒ 複雑性として対応(後述)
 乳幼児, 妊娠女性, (高齢者)
 脊髄損傷患者, 尿カテーテル留置患者

 糖尿病, MS, AIDS, 尿路奇形, 障害のある患者

年齢, 性別, 外来, 入院患者別腎盂腎炎頻度 CID 2007;45:273-80

女性の尿路感染症の病歴, 身体所見
臨床症状, 所見の有用性
症状
LR(+)
LR(-)
排尿時痛
1.5[1.2-2.0]
0.5[0.3-0.7]
頻尿
1.8[1.1-3.0]
0.6[0.4-1.0]
血尿
2.0[1.3-2.9]
0.9[0.9-1.0]
発熱
1.6[1.0-2.6]
0.9[0.9-1.0]
側腹部痛
1.1[0.9-1.4]
0.9[0.8-1.1]
下腹部痛
1.1[0.9-1.4]
0.9[0.8-1.1]
帯下
0.3[0.1-0.9]
3.1[1.0-9.3]
腟部違和感
0.2[0.1-0.9]
2.7[0.9-8.5]
背部痛
1.6[1.2-2.1]
0.8[0.7-0.9]
自己診断
4.0[2.9-5.5]
0.0[0.0-0.1]
腟分泌物
0.7[0.5-0.9]
1.1[1.0-1.2]
CVA圧痛
1.7[1.1-2.5]
0.9[0.8-1.0]
尿のDipstick test
4.2
0.3
症状の組み合わせで判断
 排尿時痛, 頻尿(+) 帯下(-), 膣部不快感(-) → LR 24.6
 排尿時痛(-), 帯下(+) or 膣部不快感(+) → LR 0.3
 排尿時痛 or 頻尿(+) and 帯下(+) or 膣部不快感(+) → LR 0.7 

単純性尿路感染症: Uncomplicated UTI(膀胱炎)
 症状は6.1日, 活動低下が2.4日, Bed restが0.4日間要する
 20-30%が3-4か月以内に再発
 E coliで再発率高く, 6か月以内の再発率は23.7% vs 7.7%(非E coli)
 合併症(CRF, 腎障害, 高血圧)は来すことはない

症状持続期間
血尿持続期間
排尿痛
頻尿
日中頻尿
頻度(%)

16%
64%
63%
78%
全体(d)
3.83(2.97)
1.88(1.75)
2.67(2.26)
3.06(2.54)
3.46(2.59)
抗生剤(-)(d)
4.94(3.82)
3.00(NA)
5.25(3.37)
4.71(4.54)
6.3(3.02)

夜間頻尿
尿の異臭
腹痛
活動性低下
Unwell
頻度(%)
57%
28%
47%
42%
47%
全体(d)
3.14(2.50)
2.92(2.46)
3.15(2.57)
2.89(2.59)
3.13(2.62)
抗生剤(-)(d)
4.22(3.38)
6.00(1.41)
2.20(1.30)
5.17(3.97)
5.33(4.18)
抗生剤投与にて症状持続期間の短縮効果が見込める.
抗生剤投与無しでは5-6日程度. 抗生剤投与にて3日程度に短縮.

性行為自体がUTIのRiskとなる
 妊娠可能年齢の女性におけるUTIのRisk (NEJM 1996;335:468-74)
 性交渉後の排尿習慣が予防に有効との報告もあり

1wk以内の性交渉回数とUTIのRR
 1回/wk RR1.24-1.37
 3回/wk RR 1.91-2.56
 5回/wk RR 2.96-4.81

単純性膀胱炎の抗生剤選択 JAMA. 2014;312(16):1677-1684.
Fosfomycin 3g 1回投与,
ST合剤 4T/2 3日間が有用.
 CPFX 250mg bidも有用であるが耐性菌の存在やより重症例に残しておくべきであり, 1st lineとはならない.

 βラクタム系も有用だが, 上記と比較すると効果は劣る.


複雑性尿路感染症 Infect Dis Clin N Am 2003;17:333-51
Risk for Complicated infections
Complicated UTI

男性患者
女性患者
小児患者
既往歴, 原疾患より
  尿路構造異常
  閉塞(結石, UPJ閉塞)
  妊娠
  糖尿病
  脊髄損傷
  神経疾患(多発性硬化症)
  尿道カテーテル
  Papillary necrosisを来す基礎疾患
  (Sickle cell, 重度DM, NSAID, 緑膿菌)
  稀な原因菌(結核など)
Historyより
  抗生剤に反応しないUTI
  細菌尿持続(同一菌によるUTI再発)
  Urea-splitting organismによる感染
  小児期の再発性UTI
症状より
  Febrile UTI(>3日間)
  Renal colic
  著明な血尿
院内感染

 男性, 小児患者, 院内感染のUTIは原則複雑性と考える
 女性患者では尿路異常, 基礎疾患等で判断.

カテーテル由来UTI
 カテーテル留置により8%/d[3-10%]の頻度で細菌尿を来す
 院内UTIの88%がカテーテル関連(3.83/1000pt-days)
 94%が単一細菌性であり, 90%が無症候性細菌尿 (Arch Intern Med 2000;160:678-82)
 カテーテル由来のASBでは, 抜去後14日間で36%が細菌尿消失.
 細菌尿持続した患者の内, 26%が症状出現を認めた. (Ann Intern Med 1991;114:713-9)
 脊髄損傷患者の1/3に細菌尿を認め, 約40%が泌尿, 腎疾患で死亡

カテーテル由来のUTIでは症状が出現しにくい Arch Intern Med. 2000;160:678-682
1497名のカテーテル留置した患者のProspective study
 毎日尿検査, 症状をチェック. UTIは尿中細菌が>103 CFU/mLで診断.
 院内カテーテル由来UTIを来したのは235名.
 UTI群と非UTI群の比較では, UTI症状に有意差無し. (90%が無症候性)
DM患者では細菌尿Riskが2-4倍となる
 合併症も上昇; 気腫性膀胱炎, 腎盂腎炎
 腎盂腎炎の併発, 重症化, 入院率も有意に高くなるため, 注意.

HIV/AIDS患者のUTI
 CD4+ cell < 200/mcLでRisk上昇
 Enterococcus spp.による感染が多いとの報告あり.

妊婦ではASBも治療対象となる
 妊婦のASBは腎盂腎炎, 低体重児, 貧血, 妊娠関連高血圧症のRisk
 Third-trimester UTIでは乳児意識障害, 成長障害, 脳性麻痺, 胎児死亡のRiskとなるため, 治療の適応となる

ICU患者でのUTI Crit Care Med 2010;38:S373-9
ICU管理中のUTI合併頻度は, 3.1/1000 catheter-day.
 熱傷ICUでは7.7/1000 catheter-day.
 慢性期ケアで導尿されている患者よりは低頻度 (一般病棟では4.7, リハビリ病棟では16.8/1000 catheter-day)
 Healthcare-associated bacteremiaの17%が尿路からの侵入であり, カテ感染に次いで多い原因となる.
Risk Factors
 重要なのはカテーテル留置期間; 1日毎に細菌尿は3-10%増加.
 女性は男性に比べてCAUTI Riskが高い(RR 1.7-3.7)
 他には, 年齢>50yr(RR2), 内科疾患(RR2.2), DM(RR2.3), 重大な基礎疾患(RR2.5), 整形外科疾患(RR51), 泌尿器(RR4), オペ室以外での挿入(RR5.3), 第6病日以降の挿入(RR8.6)

尿路感染症の治療
抗生剤は7日間投与でOK
 2010年のカテーテル関連UTIのGuidelineでは,抗生剤に反応の良いCA-UTIの治療期間は7日間と推奨
 抗生剤への反応が遅れている例に関しては, 10-14日間を推奨(A-III)

 非重症例ではLVFX 5日間投与でも良いかもしれない.(B-III)
 また, <65yrの女性において, 下部尿路症状のみであれば抗生剤は3日間投与で良い(B-II) (CID 2010;50:625-63)

女性の市中腎盂腎炎では7日間投与でよい
≥18y, 女性の市中腎盂腎炎 248名のRCT. Lancet 2012;380:484-90
 CPFX 500mg bid 7d vs 14dで比較.
 最初の7dはOpen-label, その後7-14dはDouble-blind.
OutcomeはCPFX終了後10-14dでの短期治癒率と42-63dでの長期治癒率 (短期治癒率の評価は, 両群でCPFXが終了するタイミングが異なるため, 全患者で17-21日目, 24-28日目にフォローした)
治癒は症状の改善と再燃が無いことを確認して判断.
 患者は腎盂腎炎の診断が付く前に割り付けされており, 後に腎盂腎炎ではないと判断された場合, CPFX耐性菌の場合等は除外.

248名中, 最終的に解析されたのは156名(62.9%)
除外理由;

Baseline; 
 年齢は41-46歳.


Outcome; 治癒率
CPFX終了後10-14日目の治癒率, 長期治癒率は両者同等.
血液培養陽性群 vs 陰性群の比較では, 両者で治癒率は同等 (陽性群 95% vs 陰性群 97%, p=0.412) 
血液培養陽性群のみで, 7d投与群 vs 14d投与群の比較でも, 治癒率は同等 (7d投与群 94% vs 14d投与群 96%, p=0.623)

血液培養が生えても7日間の投与で問題無し

尿路感染症の治療経過
複雑性尿路感染症では抗生剤治療後48-72hrで臨床的改善を認める
 48-72hrで改善を認めない場合, 尿路の閉塞, 膿瘍, UTI以外の原因, 耐性菌などを評価する必要あり. (Can J Infect Dis Med Microbiol 2005;16:349-60)

治療にて改善しない細菌尿の原因 (Infect Dis Clin N Am 2003;17:333-51)
抗生剤耐性
腎不全; 薬剤の移行性が悪い
膿瘍形成
治療期間中に耐性化を獲得
乳頭壊死(NSAID abuse)
解剖学的異常(膀胱腟瘻, 腸瘻)
2種類以上の細菌感染
サンゴ状結石

急性の再感染
Self-innoculation

以上をふまえた上で, 水腎評価, 泌尿器系画像評価, 必要に応じた尿培養再検査, 抗生剤変更を行う