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2014年9月22日月曜日

神経因性膀胱 Neurogenic bladder

神経因性膀胱 Neurogenic bladderについて

排尿の機序 Britich J Pharmacology 2006;147:S14-24
尿意; Bladder sensation
 膀胱容量の40%で尿意(+), 排尿欲求は60%で生じる
 緊張, ストレスは尿意の感受閾値を低下
 上行性の刺激は骨盤神経, 延髄脊髄路を通り, PAGに至る
 骨盤神経~仙髄~副交感Nで反射弓を形成するが,  交感神経の活動で抑制
中枢では, 前帯状回周囲の島は内臓の感覚, 膀胱充満感を覚知する部位
 求心経路にて上行した刺激はPAGに到達し, 橋の排尿中枢(PMC)へ ⇒ 排尿刺激となり, 一方で帯状回に到達し, 覚知に関与
 帯状回周囲は自律神経にも関与する.
 前頭葉の帯状回周辺の脳梗塞では神経因性膀胱を生じることがある.

排尿
排尿に関与する部位は前前頭皮質, 島, 視床下部, PAG ⇒ 最終的にはPMCが活性化
①PMCより遠心性に仙髄に信号が到達し, 尿道括約筋を支配する
 副交感神経を刺激 ⇒ α拮抗作用で括約筋を弛緩
②1の数秒後, 反射弓の交感神経抑制系を阻害し, 副交感神経を活性化 ⇒ 膀胱壁収縮を来す.

神経因性膀胱
尿貯留不全 ⇒ 排尿持続(失禁)

 PMC抑制の不全(大脳病変)
 脊髄障害; 脊髄損傷の慢性期(6wk~)
 末梢神経障害; (尿意は±) 骨盤神経, 副交感神経障害で反射弓×

排尿障害 ⇒ 残尿増加
PMC抑制(中枢性)
 上行性感覚神経障害 ⇒ 尿意消失
 脊髄損傷急性期(~6wk)
 交感神経刺激↑ ⇒ 副交感神経↓
 障害部位により排尿障害も合併する.

神経因性膀胱では尿閉もしくは尿失禁, その双方を認める.
 治療はコリンエステラーゼ阻害薬が基本.
 コリンエステラーゼ阻害薬はDistigmine(ウブレチド®)とBethanechol(ベサコリン®)がある.
 ベサコリン®は頻尿にすることで残尿を減らし, ウブレチド®は膀胱容量を保ったまま残尿を減らす. ベサコリンは耐性獲得することがある
 ウブレチドは蓄積により, Cholinergic crisisを来す可能性あり. ベサコリンではその報告は無し
 ADL良好ならばウブレチド®, 寝たきりにはベサコリン®が安全

弛緩性膀胱に対してはコリン作動薬とα-阻害薬の併用がより効果的.
 119名の弛緩性膀胱患者を対象としたRCT. 
International Journal of Urology (2004) 11, 88–96
 コリン作動薬群 vs α阻害薬群 vs 併用群に割り付け, 4wk後の尿路症状を比較(IPSS).
 アウトカムは残尿量, 流速, IPSSすべて併用群でより改善を認めた結果であった.

尿失禁 Urinary Incontinence Ann Intern Med. 2014;161:429-440.
 14-21歳の若年女性の25%, 40-60歳の中年女性の44-57%
 ≥75歳の75%で尿失禁を認める.
 有症状患者の半数しか医師に相談しないとのデータもあり, 実際はもっと多いと予測されている.
 
尿失禁は2つのタイプに分類: Stress, Urgency
 Stress UIは尿道括約筋の機能低下により, 腹圧がかかると尿失禁が生じる.
 Urgency UIは突如の強い尿意を生じ, 排尿してしまう.
 高齢者では混在型が多く, 機序が明確に分かれないことも多い.

 過活動性膀胱はUrinary urgencyの症状がある状態であり, 尿失禁の有無は問わない. 頻尿と夜間尿が主な症状となる.
 尿失禁のリスク因子は 尿失禁は妊娠や骨盤底外傷, 子宮摘出, 閉経, 肥満, UTI, 認知機能障害, 慢性咳嗽, 便秘症がリスク因子となる.
 
尿失禁の評価
 半数の女性が症状はあっても相談しないため, Review of systemとして聞き出す必要がある

尿失禁の治療: 非薬物治療
 治療の目標は症状を50%以上改善させること.

非薬物治療としては骨盤底筋トレーニングと膀胱トレーニングが挙げられる.
 骨盤底筋トレーニングはStress UIに対してNNT 3[2-5]で排尿コントロールを改善させる報告がある.
 膀胱トレーニングはUrgency UIに効果的. NNT 2[2-4]
 混在型UIの場合は骨盤底筋トレーニングと膀胱トレーニングを行う. 失禁の低下はNNT 6[4-16], UIの改善はNNT 3[2-6]で達成
 体重をへらすことも有効である. NNT 4[2-18]
尿失禁の治療: 薬物治療
 Stress UIに使用する薬剤はEstrogenの外用使用: 経腟投与は排尿調節を改善(NNT5[3-12]). ただし, UI自体は改善させなかった
 Duloxetine(サインバルタ
®): Low-quality studyのみ効果あり, High-qualityでは有意差は無し. QOLの改善効果も乏しい.

Urgency UIに使用する薬剤 (抗コリン薬)
 Darifenacin(未承認) 尿失禁改善効果あり(NNT9[6-18])
 Fesoterodine(トビエース
®) 排尿コントール改善 NNT 8[6-11]
  尿失禁改善効果あり NNT 10[7-18]
 Oxybutynin(ポラキス
®) 排尿コントール改善 NNT 9[6-16]
  尿失禁改善効果あり NNT 6[4-11]
 Propiverine(バップフォー
®), Solifenacin(ベシケア®)
 Tolterodine(デトルシトール
®), Trospium(スパスメックス®)も同様に効果が期待できる.
 
Urgency UIに使用する薬剤 (β3-Adrenoceptor Agonist)
 Mirabegron(ベニタス
®) 排尿コントロール改善 NNT 12[7-29], UI改善 NNT 9[6-17].
 Solabegron(未承認) も同様に有用とされる.

女性のUrgency UIに対する薬物治療のMeta-analysis Ann Intern Med. 2012;156:861-874
女性のUrgency UIに対する薬剤治療を評価した94 RCTsのMeta-analysis
 Outcome; 症状改善とは排尿回数が50%以上低下した場合と定義

薬剤別の効果の比較
 薬剤の使用中断リスクの評価
Urgency UIに対して排尿頻度を50%以下とできるのは10-15%程度で, どの薬剤も同じ程度の効果.
副作用による中断はデトルシトール, ベシケア, スパスメックスが少ない.

抗コリン薬の副作用は, 口腔内乾燥, 胸焼け, 頭痛, 悪心, 便秘,下痢, めまい, 眼球乾燥, 倦怠感, 複視など挙げられている.
効果はそこまで変わりない為, 副作用の観点で選ぶのが良いという結論.