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2014年6月26日木曜日

心原性脳梗塞の評価

心房細動は脳梗塞のリスクとなり, CHADS2 scoreにより抗凝固療法が適応となることは有名.

実際困るのは脳梗塞発症時にはAf所見が認められない場合であり, その際背後にAfが隠れているリスクがどの程度あるのか, 評価方法はなにがベストかは未だ結論を得ていない.

Afの既往, 出血性梗塞, 動脈解離を除いた脳梗塞, TIA患者149名のProspective cohort.
(Stroke 2004;35:1647-51)
 入院時にECGを施行し, 正常ならば入院後, 24hr-holter ECGを施行,
 Holterも正常ならばその後7dのECG monitoringを施行した.
上記の精査にて, 22/149(14.8%)で新規Af, AFが検出.  入院時ECGで4名, Holterで7名, 入院後5日以内のECG再検で6名, 7日間のECG monitoringで5名のAf, AFが検出された.


 脳梗塞, TIA患者では, Silent Afが隠れている可能性が高い.
 可能ならば長期間のMonitoring(当然毎日リコール確認)が大事ということが分かる.
 入院中は持続ECGモニターをし, そして毎日しっかりとリコールを確認する.
 (モニターしているのにリコールも確認しないならばモニターする意味は無い.)

CRYSTAL AF trial; (N Engl J Med 2014;370:2478-86.)
40歳以上で, 過去90日以内に脳梗塞, TIAを発症した患者群.
 24h ECG, TTE, 凝固障害, 血管評価を行い原因不明のCryptogenic strokeと診断された441例のRCT.
 埋め込み型 loop recorderを使用する群 vs 通常のモニタリング群で6ヶ月間のAf検出率, 抗凝固療法率, 脳梗塞, TIA再発率を評価.
Af検出率は以下の通り:

介入群
Control
HR
@6M
8.9%
1.4%
6.4[1.9-21.7]
検出までの期間
41d[14-84]
32d[2-73]

無症候性の率
74%
33%

脳梗塞, TIA
5.2%
8.6%

抗凝固薬
10.1%
4.6%
p=0.04
@12M
12.4%
2.0%
7.3[2.6-20.8]
検出までの期間
84d[18-265]
53d[17-212]

無症候性の率
79%
50%

脳梗塞, TIA
7.1%
9.1%

抗凝固薬
14.7%
6.0%
p=0.007




24hECGでは明らかに検出率が劣る. その分抗凝固薬使用頻度も低下する.
脳梗塞, TIA再発に着いては有意差ないものの, 長期的では有意差が出る可能性がある.

EMBRACE trial: (N Engl J Med 2014;370:2467-77.)
55歳以上で, 過去6ヶ月以内に原因不明の脳梗塞, TIA歴(+)の572例を対象としたRCT.
 原因不明とは, 一般的な原因検査, 24h Holter ECG, TTEでも原因がないこと.
 患者群はAfの既往無し.
上記患者群をさらに30日間のevent-triggered loop recorder群, vs 24h Holter-ECG群に割り付け, 30秒以上持続するAfを評価.
患者群の平均年齢は72.5-73.2歳.
アウトカム:
アウトカム
持続ECG
24h ECG
AD
NNS
90日以内の30秒のAf
16.1%
3.2%
12.9[8.0-17.6]
8[5.7-12.5]
モニターで検出された30sのAf

15.5%
2.5%
13.0[8.4-17.6]
8[5.7-11.9]
2.5分持続するAf
9.9%
2.5%
7.4[3.4-11.3]
14[8.8-29.4]
持続期間に関係しないAf
19.7%
4.7%
15.0[9.8-20.3]
7[4.9-10.2]
NNS: No. needed to screen

測定期間とAfの検出率.
24hのみでは不十分. 少なくとも2wk〜4wkの評価が重要.

抗凝固薬使用頻度

持続ECG
24h ECG
AD
最初の脳梗塞, TIA前の抗凝固薬
1.0%
0.7%
-
イベント後, 割り付け時の使用
5.6%
6.7%
-
Study開始後90dの使用



抗凝固薬のみ
18.6%
11.1%
7.5[1.6-13.3]
抗血小板薬のみ
79.6%
88.2%
-8.6[-14.6~-2.5]
Study開始後90dでの投薬変化



抗血小板薬→抗凝固薬
13.6%
4.7%
8.9[4.2-13.6]
抗凝固薬→抗血小板薬
1.1%
0.7%
0.4[-1.2~1.9]




このStudyでは脳梗塞再発リスクの比較は無し.

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これらデータより, 
他に原因のない脳梗塞, TIA患者の10-15%で発作性心房細動が隠れている.
Pafの検出には24h ECGでは不十分であり, 可能ならばLoop recorderが推奨される.
それが出来ない場合は入院中は持続モニターを行い, 毎日必ずPafのチェックをする.
ということが分かる.

では, 来院時のLabでPafのリスクが分かるかどうか?
これについては以下のデータがある

D-dimer, BNPの有用性
126名の脳梗塞患者において, Day 1, 6, 12でD-dimerを評価
(Arch Intern Med 2002;162:2589-93)
平均年齢75.5yr, 27%が心原性, アテローム性は27%, ラクナ25%.
D-dimer値は有意に心原性梗塞群で高値を示した.
Subtype
Day 1
Day 6 ± 1
Day 12 ± 1
心原性(34)
2.96±0.51
2.58±0.40
3.79±0.53
アテローム(34)
1.34±0.21
1.53±0.26
2.91±0.59
ラクナ(31)
0.67±0.08
0.72±0.06
0.64±0.10
Cryptogenic(27)
1.08±0.15
1.19±0.17
1.72±0.30
D-dimer値は, 心原性 > アテローム性 = Cryptogenic > ラクナ梗塞
Subtype
Cutoff
Sn(%)
Sp(%)
LR(+)
LR(-)
心原性
>2.00
59.3[38.8-77.6]
93.2[85.7-97.4]
8.69
0.44
ラクナ
<0.54
61.3[42.2-78.1]
96.2[89.2-99.2]
15.94
0.4

Cryptogenic stroke患者264名でその後のAf判明に対するNT-proBNP値の関連を調査したProspective cohort. (Neurology 2013;81:444–447)
1050名の脳梗塞患者の内, cryptogenic strokeは372名.
そのうちの264名で調査.
 フォローにてAfが判明したのは15名(5.6%)
 Af発症者はより高齢で, 高血圧が多い.

 pro-BNP高値も多く, ≥360pg/mLはOR5.7でAfを示唆する.
ただし, Pafの評価はLoop recordarではないので注意.