ページ

2014年5月27日火曜日

Kikuchi-Fujimoto病

Kikuchi-Fujimoto病, 菊池病について
(Am J Clin Pathol 2004;122:141-152)
局所的なリンパ節腫大, 圧痛, 発熱, 盗汗を伴う基本的には良性, Self-limitedな病態
不明熱の原因としてもしばしば認められる
原因は様々な説がある: Viral Infection , Autoimmune説
 血清学的抗体検査, PCR陽性など認められ, 感染症が関与している可能性が示唆される
  Yersinia enterocolitica, Toxoplasma, EBV, HHV-6,8, HTLV-1, HBV, HPV B19, HSV, CMV, VZVなど

 “Self-limited SLE-like condition induced by viral Infection” (Am J Pathol 1982;107:292-99)
しかしながら, ANA, RFなど自己抗体は陽性とはならない

日本, アジアでの罹患率が高い
< 40Yでの罹患が多いが, 報告例では19M-75Y
 台湾の61例の報告では平均21歳であった (Otolaryngol Head Neck Surg 2003;128:650-3)
 F:M = 4:1で女性に多いが, 男女に差がないとする報告も多い
(Otolaryngol Head Neck Surg 2003;128:650-3) (Am J Surg Pathol 1995;19:798-809)

遺伝素因も関与している可能性
 HLA class IIの関与が示唆; DPA1*01, DPB1*0202がKFD患者で多く認められている
 Asia人で多い遺伝子であり, フランス(0.4%), イタリア(0.8%), 韓国(9.9%), 日本(4.5%)

臨床症状
急性~亜急性の経過; 2-3wk
症状
頻度
頚部リンパ節腫脹
56-98%
 後頚部リンパ節, 圧痛(+)
 88.5%
 片側性
 88.5%
 直径0.5-4cm
 93.4%
 疼痛(+)のリンパ節腫脹
 59%
全身性リンパ節腫脹
 1-22%
縦隔, 腹腔, 後腹膜腔リンパ節は稀
30-50%でFever, URI症状を認める
体重減少, 嘔吐, 嘔気, 咽頭痛, 盗汗の頻度は低い
節外症状(+)の症例では全身症状が強い傾向にある

節外症状について (J Am Acad Dermatol 2008;59:130-6)
稀であるが, 皮膚病変, 骨髄病変, 肝障害が報告されている
 皮膚病変; 顔面が最も多い
 皮疹は様々で, 非特異的
 粘膜疹は症例報告レベルであり

%

%
Rash
27%
掻痒感
10%
紅斑性 Macule or Patch
23%
脱毛
8%
紅斑性 Papule or Plaque
17%
日光過敏
4%
紅斑性 Macule and Papule
14%
結膜充血
3%
頬部紅斑
11%
落屑
3%
口腔内潰瘍
10%


初発症状として, 全身性のリンパ節腫脹+肝脾腫もアリ

SLEとの合併がしばしば報告されているが,
 KFDとSLEでは臨床病理学的に異なっていると証明(Pathol Int 2003;53:221-226)
 SLEの初期をKFDと誤診している可能性がある(その逆も然り)
 SLEだけでなく, 抗リン脂質抗体症候群, 多発筋炎, Systemic juvenile idiopathic Arthritis, 両側性ぶどう膜炎, Cutaneous necrotizing vasculitis, Pulmonary Hemorrhageとの合併報告もある.

Labデータ: (Am J Clin Pathol 2004;122:141-152)
Lab dataは正常であることが多い
 貧血, 軽度ESR亢進を認める場合もある
 Leukocytosisは2-5%のみ, Mild Leukopeniaは25-58%で認める
 25-31%で末梢血 異型リンパ球(+) (前駆 Viral Infectionが示唆される)
 Leukocytopeniaの原因としては, CFU-Cの低下が挙げられる
  ⇒貧血, PLT低下, WBC低下を認めるが,
骨髄所見は正常
 LDH, ALT, ASTは軽度上昇をしめすこともある

KFDの診断
基本的にはリンパ節生検にて診断
 CT, MRI, USでのリンパ節評価は非特異的
 Fine-Needle Aspiration CytologyのAccuracyは56.3%
⇒ FNACでダメなら生検を考慮する必要がある
組織所見
 広範囲の被膜下壊死, 核の崩壊象
 壊死組織周囲の形質細胞, 組織球浸潤
 壊死周囲血管の血栓形成
 反応性リンパ小胞は50-60%で認められる
 小胞過形成は10%

皮疹生検でも同様の細胞浸潤を認める
皮膚生検結果 (J Am Acad Dermatol 2008;59:130-6)
組織所見
%
詳細
%
組織球浸潤
68%
皮膚; Ly(+)
皮膚; Ly, 形質細胞(+)
皮膚; Ly, 好酸球(+)
皮膚; Ly, 形質, 好酸球(+)
56% 
21%
 
3%
 
3%

皮下; Ly(+)
皮下; Ly, 形質細胞(+)
6% 
3%

表皮変化
46%
Keratinocyte壊死
萎縮
小胞閉塞
Hyperkeratosis
 
小胞孔の拡張, 表皮内小胞, 角質内微小膿瘍,
不全角化, 海綿状変化
48% 
13%
 
9%
 
9%
 
4%
4%
その他の組織所見と頻度
非好中球性核崩壊
42%
リンパ球浸潤
20%
基底部空胞上変性
38%
有糸核分裂像
10%
乳頭浮腫
28%
Nonspecific
10%

免疫組織染色では,
T cell優位であり, B cellは極少数. CD8+ >> CD4+
組織球ではCD68の発現が目立つ. MPO(myeloperoxidase)も増加

KFDの臨床経過
治療は無く, 対症療法のみ
Self-limitedな病態. 1-4M持続する
再発率は3-4%, 一部では8-9年経過し再発した例もある
予後は良好であるが, 死亡例が3例報告
 全身性リンパ節腫大+心不全合併 (拡張型心筋症)

KFD 244例の解析 (Clin Rheumatol (2007) 26: 5054)
1991-2005年に報告されたCase reportの解析
330例報告され, 男女比は1:2. 平均年齢25歳[1-64], 70%が<30yr.
症状頻度(N=224)
症状%所見%
発熱35%リンパ節腫脹100%
倦怠感7%紅斑10%
関節痛7%関節炎5%
皮疹5%肝腫大3%
体重減少5%脾腫大2%
食欲低下3%Xerophthalmia2%
発汗3%口腔内アフタ1%
筋肉痛2%


リンパ節腫大は
 頸部リンパ節が79%,
 頸部, 腋窩双方が8%,
 腋窩リンパ節のみが5%,
 全身性が5%
 腸間膜, 鼠径, 皮膚は稀.

検査所見
検査



WBC低下18%LDH上昇6%
ESR亢進16%Viral serology陽性5.3%
貧血9%PLT低下4%
AST, ALT上昇8%その他serological異常3%
ANA陽性7%WBC上昇2%
合併症
検査



SLE13%血球貪食症候群3%
非感染性炎症疾患10%リンパ腫3%
Viral infection7%TB2%
FUO5%その他5%
神経障害合併5%全体51%
予後
自然寛解が64%, ステロイドを使用した例が16% (1mg/kg mPSL)
死亡率は2.1%