CDAD①: 総論 CDAD②: 検査
Metronidazole(フラジール®) 250mg qid or 500mg tid 10D
Vancomycin 125mg qid 10D
抗生剤の中止のみで25%が48hr以内に改善する
中等症~重症, 改善しない例, 抗生剤中止できない例で治療を開始
2000年以前では, 上記の両者とも効果同等とされてきた (治療失敗率; 2.5% vs 3.5%)
2000年以後のStudyではMetronidazoleで治療失敗が増加
QuebecでのCD腸炎では, 26%がMetronidazoleに不応 (CID 2005;40:1591-7)
下痢の持続時間も, 有意にVancomycinで短期間(4.6D vs 3.0D)
(J Antimicrob Chemother 1995;36:673-9)
バンコマイシンは経口摂取のみであり, IVでは治療効果は無し.
MetronidazoleはIVでも治療可能だが, 国内未承認
バンコマイシン経口とMetronidazoleの薬価は10倍以上(Metronidazoleの方が遥かに安い)
各薬剤の投与経路と便中濃度
薬剤
|
便中濃度
|
MIC90(mcg/mL)
|
経口VCM(2g/d)
|
3100mcg/g stool
|
0.75-2.0
|
IV VCM
|
様々
|
|
経口Metronidazole(1.2g/d)
|
0.4-14.9mcg/g stool
|
0.2-2.0
|
IV Metronidazole(1.5g/d)
|
5.1-24.2mcg/g stool
|
Metronidazole vs Vancomycin
150名のCD-Associated Diarrhea患者を両群に割り付け
(RCT, DB, [Mtz. 250mg qid] vs [Vm. 125mg qid 10D]) (CID 2007;45:302-7)
(RCT, DB, [Mtz. 250mg qid] vs [Vm. 125mg qid 10D]) (CID 2007;45:302-7)
>=2ptでSevere CDADと判断し, 重症度別にアウトカムを評価
項目
|
pt
|
項目
|
pt
|
年齢 >60
|
1
|
WBC >15000
|
1
|
体温 >38.3
|
1
|
偽膜性腸炎(+)
|
2
|
Alb< 2.5mg/dL
|
1
|
ICU管理
|
2
|
Mild 81名, Severe 69名
Outcome: 治癒
Severity
|
Mtz
|
Vm
|
P
|
Mild
|
37/41(90%)
|
39/40(94%)
|
.36
|
Severe
|
29/38(76%)
|
30/31(97%)
|
.02
|
Severity
|
Mtz
|
Vm
|
P
|
Mild
|
3/37(8%)
|
2/39(5%)
|
.67
|
Severe
|
6/29(21%)
|
3/30(10)
|
.30
|
重症の場合はMtzの治療効果が劣るという結果
近年になりMetronidazoleに対して, 治療抵抗性が高まっている
2000年以前と以後の各治療薬の治療失敗, 再発率の評価
(NEJM 2008;359:1932-40)
Metronidazole
|
Vancomycin
|
|||
期間
|
治療失敗
|
再発
|
治療失敗
|
再発
|
~2000年
|
2.5%
|
6.7%
|
3.5%
|
17.9%
|
2000年~
|
18.2%
|
28.6%
|
2.8%
|
19.9%
|
全体
|
13.2%
|
20.2%
|
3.4%
|
18.4%
|
Metronidazoleの不応性のリスク因子を評価 (CID 2007;45:302-7)
Factor
|
不応性 RR
|
Alb < 2.5mg/dL
|
12.70[1.70-88.40]
|
偽膜性腸炎
|
6.67[2.49-17.84]
|
ICU管理
|
5.83[2.81-12.1]
|
WBC > 15000
|
3.07[0.90-10.43]
|
体温 > 38.3
|
2.28[0.55-9.55]
|
基礎疾患, 抗生剤暴露には影響されない
下痢など, 腸管通過が速いとMtz吸収率は低下する(通常BA100%)
Fidaxomicin
629名のCDAD患者において, Fidaxomicin 200mg bid vs VCM 125mg qid 10dで比較 (NEJM 2011;364:422-31)
臨床的改善; 治療開始から終了までに下痢改善+Toxin陰性化
再発; 治療終了後4wk以内の再発.
再発; 治療終了後4wk以内の再発.
Outcomeは臨床的改善, 再発(治療終了~4wk), 治癒を評価.
ITT analysisでは,
Outcome | Fidaxomicin | VCM | ARR |
臨床的改善 | 88.2% | 85.8% | 有意差無し |
再発 | 15.4% | 25.3% | -9.9%[-16.6~-2.9] |
FidaxomicinではVCMよりも再発リスクが低かった.
NAP1/B1/027株では, 再発率は両者有意差無し(24.4% vs 23.6%)
再発性CDADの治療 (JAMA 2009;301:954-62)
再発は治療終了から1-2wkで多い
12wk経過してからの再発もあり. 再発率は20%-30%程度.
CD colitis再発の既往が1回あれば, 再発率は40%,
2回以上あれば>60%と上昇する
2回以上あれば>60%と上昇する
Vancomycinの長期投与が再発予防に効果的とする報告もあり
VCM 125mg q6hr 14D ⇒ q12hr 7D ⇒ q24hr 7D ⇒ 2日1回を4回分 ⇒ 3日に1回を5回分と徐々に減量する方法もある.
VCM 125mg q6hr 14D ⇒ q12hr 7D ⇒ q24hr 7D ⇒ 2日1回を4回分 ⇒ 3日に1回を5回分と徐々に減量する方法もある.
Metronidazoleの長期投与は副作用のRiskから行い難い
Rifampin, RifaximinはC. diffに対する効果が認められており, 再発性CD colitisに対してVancomycinと併用することで 再発Riskを減少させるとの小規模Studyあり.
Rifaximinは経口摂取で吸収されないため, 好まれる.
再発のリスク因子 (Clinical Infectious Diseases 2014;58(10):1386–93)
2つの大規模Phase 3 trials(fidaxomicin vs vancomycin)にて再発に関連するリスク因子を評価し, スコアを作成.
最終的に再発に関連する因子は4項目:
≥75歳, 過去24hの下痢の回数 ≥10回, Cr≥1.2mg/dL, 過去にCDADの既往あり.
リスク因子と治療別の再発リスク
腎不全はそれだけで2pt分のリスク上昇
VCM使用群の方が再発リスクは高い.
Cr値以外の要素は1ptとして(年齢, 下痢数, 既往), 0-5ptで評価.
VCM使用の場合,
0ptで18%, 1pt 24-25%
2pt 29-32%, 3pt 35-39%
4pt 44-45%, 5pt 54%の再発率となる.
0ptで18%, 1pt 24-25%
2pt 29-32%, 3pt 35-39%
4pt 44-45%, 5pt 54%の再発率となる.
難治性CDADの治療 (JAMA 2009;301:954-62)
難治性 or 劇症型CD colitisでは, Vancomycin 500mg q6hr poが第一選択
Metronidazole 500mg q6hr DIVもあるが, 国内未承認
イレウス, 経口摂取困難ならば, Vancomycin 500mgをNS100mlに溶解させて q6hrで経直腸投与
Subtotal colectomyも選択肢となるが, 予後は悪く, 42%の院内死亡率.
また外科手術へのタイミングも難しい選択
また外科手術へのタイミングも難しい選択
IVIGも試みられているが, 効果のほどは不明
その他の治療:
整腸剤(Probiotics) (Lancet Infect Dis 2009;9:237-44)
Probioticsの効果
S boulardiiはAnti-toxin A抗体の産生を亢進させるとの動物実験があり, CDAD発症を予防する可能性あり.
他のProbioticsでは, 腸管上皮への付着, 侵襲を予防する作用があり, ProbioticはCDADを予防する可能性が示唆.
予防効果
抗菌薬とLactobacillus casei, L bulgaricus, Streptococcus thermophilusのProbioticsを併用した群で, 抗菌薬由来の下痢, C.difficile下痢症の発生頻度は優位に低い.
下痢発生率: 12% vs 34%, NNT 5
C. difficile下痢症: 0% vs 17%, NNT 6
各ProbioticsのStudy
2次予防目的のProbiotics
Probiotics
|
N
|
Pt
|
Dose
|
治療
期間 |
追跡
期間 |
再発率
介入群 |
再発率
プラセボ |
P値
|
S boulardii
|
124
|
CDAD, 再発性
|
2x1010
|
28日
|
28日
|
26%
|
45%
|
0.03
|
S boulardii
|
32
|
再発性CDAD
|
2x1010
|
28日
|
180日
|
17%
|
50%
|
0.04
|
Lactobacillus plantarum
|
20
|
再発性CDAD
|
5x1010
|
38日
|
70日
|
36%
|
67%
|
NS
|
L rhamnosus GG
|
25
|
CDAD
|
NA
|
NA
|
NA
|
36%
|
35%
|
NS
|
L rhamnosus GG
|
15
|
再発性CDAD
|
5.6x1011
|
39日
|
78日
|
38%
|
14%
|
NS
|
1次予防目的のProbiotics
Probiotics
|
N
|
Dose
|
治療
期間 |
追跡
期間 |
発症率介入群
|
発症率
プラセボ |
P値
|
Lactobacillus acidophilus
Bifidobacterium bifidum |
138
|
2x1010
|
20
|
0
|
3%
|
7%
|
NS
|
L acidophilus,
L bulgaricus, B bifidum |
100
|
NA
|
Var
|
Var
|
11%
|
40%
|
0.001
|
L casei DN 114 001
L bulgaricus, S thermophilus |
135
|
2x1010
|
Var
|
Var
|
0
|
17%
|
0.01
|
S boulardii
|
180
|
2x1010
|
Var
|
14
|
3%
|
8%
|
NS
|
S boulardii
|
246
|
1x1010
|
Var
|
14
|
3%
|
8%
|
0.08
|
ProbioticsでCDADの予防効果を評価した12 RCTsのMeta
(Ann Intern Med. 2012;157:878-888)
ProbioticsはCDADの発症RR 0.34[0.24-0.49]と有意に低下させる.
NNT 33[25-38]/1000
Meta-analysisをみるとProbioticはCDAD予防に有用と考えられるが, どれも小規模Studyのみ.
2013年にLancetに大規模RCTが発表された
PLACIDE trial; 65歳以上でAbxを使用された入院患者を対象 Lancet 2013; 382: 1249–57
N= 2941名. ITT解析
65歳以上の入院患者で, 7日以内のAbx開始, もしくはこれから開始する患者が対象.
除外項目は既に下痢(+), 免疫不全患者, ICU患者, 人工弁(+), 3m以内のCDAD,
12m以内にIBDに対する特異的な治療を行っている患者群, 膵炎.
12m以内にIBDに対する特異的な治療を行っている患者群, 膵炎.
LactobacilliとBifidobacteriaを合計6x1010含んだ製剤を1回/d vs Placebo群に割り付け, 21日間継続.
8wk以内の抗生剤関連下痢症と12wk以内のCDADの発症頻度を比較.
アウトカム;
抗生剤関連下痢症, CDAD発症率双方とも有意差無し.
同様のStudyのMetaでは有意差あるが, 最もNの大きい大規模Studyで有意差が出なかった意味は大きい
再発性CDADに対する便移植療法 N Engl J Med 2013;368:407-15.
VCM or MNZ治療で再発したCDAD患者を対象としたopen-label RCT.
以下の3群に割り付け;
VCM 500mg/d 経口投与 4-5日間 ⇒ 4LのMacrogol solutionで全腸洗浄 ⇒ 健常人の便懸濁液のNasoduodenal tubeからの注入. |
VCM 500mg/d 経口投与 14日間 |
VCM 500mg/d 経口投与 4-5日間 ⇒ 4LのMacrogol solutionで全腸洗浄 |
アウトカム; 治癒 ⇒ 治療後10wk以内の再発(-)で定義.
便注入療法群では1回目で効果内場合, 2回目も行う.
アウトカム;
予定人数はN=120であったが, N=43の時点でStudyは中断.
便注入群が他の2群と比較して優位に治癒率が良好との結果.
便注入の副作用;
このStudyで行われた便移植方法は,
便移植ドナー;
<60yrで感染性疾患を除外された患者群.
便検査にて寄生虫(Blastocystis hominis, Dientamoeba fragilis), C. difficile, 腸管病原性の細菌を除外.
便検査にて寄生虫(Blastocystis hominis, Dientamoeba fragilis), C. difficile, 腸管病原性の細菌を除外.
血液検査ではHIV, HTLV type 1,2, HAV, HBV, HCV, CMV, EBV, Treponema pallidum, Strongyloides sterocoralis, Entamoeba histolyticaを除外.
便移植方法;
移植当日に便を採取し, NS 500mlで希釈, 撹拌され, 上澄み液を濾過し, 滅菌ボトルに採取.
便採取から6時間以内に上記 便懸濁液をNDチューブを使用し, 患者に注入する(50ml/2-3minの速度)
NDチューブは投与後30分後に抜去し, 2時間の経過観察.
Mayo clinicでの便移植療法;Mayo Clin Proc. 2013;88(8):799-805
2011-2013年に行われた便移植療法(FMT) 31例の報告(Retrospective)
全例, 抗生剤治療に不応性であった.
平均年齢 61.29±19.34歳.
CDAD初診〜FMTまでの期間は340日
治療後の結果;
下痢は9割以上で軽快 or 改善あり.
腹痛, 倦怠感も6割以上で改善を認めている.
FDAでは便移植を生物学的製剤と位置づけ,
施行に当たっては患者の安全性を確保するように指示
施行に当たっては患者の安全性を確保するように指示
便移植療法の適応例は以下の通り;
再発例では,
● 3回以上の軽度〜中等症のCDIで, 6-8wkのVCM taperingでも治療失敗した例.
● 入院が必要なCDIを2回以上起こしており, ADL障害を来す例.
● 入院が必要なCDIを2回以上起こしており, ADL障害を来す例.
中等症のCDIで1wk以上のVCM, Fidaxomicin治療に反応しない例.
重症, 劇症CDIで通常の治療開始後48hで反応の無い例.
(Clinical Infectious Diseases 2014;58(4):541–5)
カプセルを用いた経口便移植
Oral, Capsulized, Frozen Fecal Microbiota Transplantation for Relapsing Clostridium difficile Infection. JAMA 2014.
軽度〜中等度のCDIを3回以上繰り返す患者群, もしくは重症CDIを2回以上繰り返す患者群 20例を対象
バンコマイシン6-8wk減量療法を施行しているが再発を認める例.
上記患者群に冷凍便細菌叢カプセルを使用.
カプセルは非血縁者の健常ボランティアから作成.
1カプセルあたり便1.6g[1.0-2.05]からの細菌叢を含有. 30カプセルで48gの便から採取した細菌叢を使用する計算となる.
カプセルは非血縁者の健常ボランティアから作成.
1カプセルあたり便1.6g[1.0-2.05]からの細菌叢を含有. 30カプセルで48gの便から採取した細菌叢を使用する計算となる.
15カプセル/日を2日間連日経口投与し, 症状をフォローした.
結果は, 1回の治療で下痢が改善したのは14例(70%[47-85])不応性の6例で再投与を行うと, 4例で下痢が改善.
2回の治療で改善したのは90%[68-98]であった.
Monoclonal抗体
C difficile toxin A, Bに対するHuman monoclonal抗体治療の84日間の再発率を評価したDouble blind RCT. (NEJM 2010;362:197-205)
200名のCDAD患者を2群に割り付け,
CDA1, B1 antibodies 10mg/kg 1回投与 vs Placeboで比較
(両群ともVCM経口 or Metronidazole治療は施行されている)
CDA1, B1 antibodies 10mg/kg 1回投与 vs Placeboで比較
(両群ともVCM経口 or Metronidazole治療は施行されている)
Outcome; CDADの再発は32名: 7% vs 25% (p<0.001)
下痢自体の再発率は28% vs 50%(P=0.002)
下痢の重症度, 他の症状, 改善までの期間は有意差無し.
副作用はPlaceboよりも少なく, 目立ったものは無し.
Clinical Infectious Diseases 2008;46:S32–42より, 初発例, 再発例の治療アルゴリズム
初発例の治療
3回以上再発した場合の治療