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2014年5月1日木曜日

微量元素欠乏症: 亜鉛と銅欠乏

亜鉛欠乏症
(West J Med 1979;130:133-42) (J. Nutr 2000;130:1344S-9S) (Am Fam Physician 2009;79:768-72)

Feに次いで体内で豊富な微量元素
蛋白構成, 酵素反応, 遺伝子合成に関与
 Polymerase, proteaseの補助因子
 Thymulin(T-cellに影響)の補助因子
 黄斑変性に関与すると言われている.
様々な食材, サプリメントに含まれており, 通常枯渇することはないが, 低栄養, 吸収障害, アルコール中毒患者では欠乏があり得る.
血中Zn濃度は体内Znを反映しないため, Routine測定は推奨されない

亜鉛欠乏の症状
 成長遅滞, 思春期遅発, 勃起不全, 下痢, 脱毛症, 舌炎, 爪変形, Hypogonadism, 免疫低下
 表皮障害, 創傷治癒遅延

腸性四端皮膚炎(J Am Acad Dermatol 2007;56:116-24.)


亜鉛欠乏関連疾患
 Crohn病, Celiac disease, Chronic alcoholism, Cirrhosis, Sickle cell disease
 Acrodermatitis enteropathica; 通常新生児で認める.

亜鉛欠乏関連状態
 妊娠, 母乳栄養, ベジタリアン, 長期の点滴栄養, 短腸症候群, 消化管手術

亜鉛補充療法にて, 年齢関連性黄斑変性の予防効果が期待できる.
Wilson病の治療として亜鉛補充もある. 
しかしながら, URI, 創傷治癒, HIVに関しては有意差は認めていない.

亜鉛の代謝
Znは微量元素であり, 体内の総量は体重の0.01%以下
 体重75kgの成人に存在するZnは2.5g.
 30%は骨, 60%は筋組織に分布している.
 濃度が高い臓器は, 眼球, 毛髪, 精巣, 骨 > 肝臓, 腎臓, 筋肉
血中では80%がRBCに分布し, 炭酸脱水素酵素として機能.
 血漿Znの正常値は70-110mcg/dL, 血清Znはそれより10%高い.
 血漿中では, 約50%が緩くAlbと結合しており, 遊離 or Alb結合 Znとして存在する.
 7%がアミノ酸と結合しており, 残りがα2-macroglobulin, 蛋白と強く結合し存在する.
 Transferrinとも結合し, 亜鉛の身体内分布に役立っている.
Tissue
Zn mcg/g
Tissue
Zn mcg/g
Tissue
Zn mcg/g
Tissue
Zn mcg/g
副腎
6
毛髪
175
筋肉
48
皮膚
6
血液
7
心臓
27
卵巣
12
脾臓
19
66
腎臓
37
血漿
0.7
精子
125
13
肝臓
38
前立腺
87
尿
0.3
GI tract
21
リンパ節
14





亜鉛の吸収部位は十二指腸, 小腸近位部
 吸収率は20-30%と記載されているものが多い.
 Zinc 65による評価では, 摂取後15minで体内に取り込まれ, 2-4hrで血中濃度がピークとなる
 摂取後21日目で約70%が排泄されている
 Znの排泄に最も関与する部位が小腸であり, 未吸収のZn + 胆汁排泄Zn + 膵排泄Znが便中に排泄される
 尿中には0.3-0.5mg/d, 汗では115mcg/dL, 2-3mg/dの排泄がある

亜鉛の1日必要量
 鉄のような, 貯蔵Znは存在しない. 筋骨格のZnも代謝には使用されない
生後~4mo3mg/d, 5mo~12mo5mg/d
1-10yrで10mg/d, 学童~成人で 15mg/d
妊婦, 授乳婦では20-25mg/dを必要とする

亜鉛欠乏の原因

Factors
Example
Intake不足
Low-income diets
高齢者
タンパク, カロリー吸収障害
Zn必要量の上昇
成長期, 妊娠, 授乳
タンパク同化の亢進
Availabilityの減少
Phytate, Fiber
吸収の低下
吸収不良症候群, 脂肪便
Excessive loss
Zn尿症
外科手術, 熱傷
発汗増多, 出血
医原性
キレート剤(ペニシラミン)
経静脈栄養
Genetic defects
Acrodermatitis enteropathica

 鉄剤と同時に摂取するとZnの吸収率が減少するとの報告が多いが, Controversialであり, 気にする必要は無し (Am J Clin Nutr 1998;68:442S-6S)
 TPNでは通常70-80mcg/kgのZnが血中濃度維持に有効.(Am J Clin Nutr 1981;34:1853-60)

亜鉛の検査
血清Zn値は炎症期には低下する.
 炎症性蛋白であるIL-2やT-helper type 2 cytokineによりZip14 zinc transporterが誘導されるためとされる.
 また, Albと結合するため, 低AlbでもZn値は低下する
 また, 明らかに亜鉛欠乏性皮膚炎で, 亜鉛補充に反応した症例でも血清Znは正常範囲内のこともある. 血清Znは全体の0.1%のみであり, 厳密にコントロールされる為. 
 また溶血するとZn値は上昇する.
 より信頼のおけるのはRBC, 毛髪の亜鉛濃度と言われる.

Zn依存性酵素の評価; ALP, copper-zinc superoxide dismutase, Lymphocyte 5’-nucleotidase.
Zn-regulated protein; Eryhthrocyte metallothionein
 上記の評価も考慮されるが, 国内では困難.

銅欠乏症
銅欠乏症では貧血+Neu減少を来す (Am. J. Hematol. 82:625–630, 2007)
銅欠乏症は,
 微量元素の補充を行っていないTPN, EN.
 胃全摘後, Short bowel syndrome, 吸収不良症候群, 牛乳のみで栄養された乳児, 多量の亜鉛摂取(慢性のコイン摂取など) で認める.
 
鉄芽球性貧血 ± 好中球減少 ± PLT減少を認める.
 2003-5年で原因不明の貧血 or MDS疑いでNorth Carolinaの大学病院に紹介された患者126名.
 その内8名(6.3%)がCu欠乏症であった. 
 年齢 32-71yr, 全例女性. MCV 81-101. 7例が正球性, 1例のみ大球性.
 骨髄異形成は7/8で(+). Neu減少合併7/8, 神経障害5/8.
 基礎疾患; 慢性下痢, MGUS, 胃摘後3例, IBS, 無しが2例

銅欠乏による神経障害 (Clinical Chemistry 57:8 1103–1107 (2011))
銅欠乏では, 失調, 痙性歩行, 神経症, 眼神経症, 運動神経変性を呈し得る. 
 失調は感覚性失調が主であり, 振動核の低下を伴うことも多く, 後索障害が示唆される.
 また, 腱反射は減弱するが, Babinski徴候は陽性となる.
 ALSと同じ様な症状. 下位ニューロンの障害が主となる.

Neurology 2013;80:e120-126より, 神経障害のタイプと原因の表