ページ

2014年4月4日金曜日

頭位変換性めまい症のReview ③: BPPVの治療

頭位変換性めまい症の治療

Posterior, Anterior-canal BPPVの治療: Epley法
(J Clin Neurol 2010;6:51-63)
Step1-2はDix-Hallpikeと同じ
Step2で20-30s保持
Step3: 反対側へ90度回転, 20-30s保持
Step4: さらに90度回転, 20-30s保持
Step5: 座位へ

Dix-hallpike法による診断と同時に進めることが可能な治療であり,
典型的な症例ではそのまま試すのもあり.

施行後24hrで80%が無症状, Dix-Hallpike陰性に
Sham maneuverでは10%のみ(NNT = 1.43) (J Neurol Neurosurg Psychiatr 2006;77:980-82)

Epley 開始後4Wkで61%が症状消失(Shamでは20%), NNT 2.44
Dix-Hallpike陰性は88.9% (vs 26.7%), NNT 1.60 (Otolaryngol Head Neck Surg 1995;113:712-20)

EpleyのNNT 1.43-3.7,治療後にHorizontal, Anteriorへ変化することも

Horizontal canal-BPPVの治療: Gufonii法
HC-BPPVはEpley法が無効. これがタイプを判別する大きな理由.
有名な方法はGufonii法
Gufoni maneuver(重力方向眼振, 患側; 右)
 座位 ⇒ 反対側へ倒れこみ1min保持
 その後地面側に45-60度頭位を回転, 2min保持
 頭位はそのままで座位に戻る

反重力方向眼振の場合は患側へ倒れこみ, 天井側に頭位を回転させる (従って患側の判別が重要となる)

Geotropic HC-BPPV患者170名のRCT
 Barbecue rotation vs Gufoni vs Sham maneuverに割り付け,
 最大2回試行し, 1時間以内の改善率を評価.
Outcome;

BBQ
Gufoni
Sham
≤1回で改善
50.9%
48.4%
25.0%
≤2回で改善
69.1%
60.9%
35.4%

 BBQ法とGufoniでは6-7割が改善. 両者間で有意差無し. 
 両者ともにSham法よりも改善率が有意に良好.
(Neurology® 2012;79:700–707)

157名のApogeotropic HC-BPPV患者のRCT
 Gufoni法 vs Head-shaking法 vs Sham法に割り付け,
 最大2回施行し, 施行後1hr以内の改善率を評価.
*Head-shaking法; 頚を振ることで, 付着した耳石を落下させる方法.
  座位で, 頸部を30度屈曲させた状態で3Hzで15秒頭を振る.
Outcome; 
 Gufoni法では73.1%が改善
 Head-shaking法では62.3%が改善
 Sham法では34.7%が改善を示した.

Gufoni法とHead-shaking法では効果同等であり, Sham法のみ効果が劣るという結果.
(Neurology® 2012;78:159–166)

診断, 治療までの流れ
患側の向きや, 治療方法等, 結構忘れやすいのでここでまとめておくと,

BPPVを疑ったら,
 先ず仰臥位の状態で Supine roll testを.
 重力方向の眼振(+) ⇒ 眼振が強い方が患側のGeotropic HC-BPPV.
  ⇒ 眼振が弱い方へ倒れ込むGufoni法をトライ.
 反重力方向の眼振(+) ⇒ 眼振が弱い方が患側のApogeotropic.
  ⇒ 眼振が弱い方へ倒れ込むGufoni法をトライ.
 結局Gufoni法は眼振が弱い方へ行う.

 Supine roll testで陰性ならばDix-hallpikeを.
 陽性ならば陽性方向が患側のPC-BPPVであり, そのままEpley法を
 全て陰性ならばBPPV改善 or 他の疾患を考慮.

薬物治療
ベンゾ系(ジアゼパム, ロラゼパム)は効果なし
Flunarizine(フルナール®, Ca-ch blocker) (Laryngoscope, 114:827– 831, 2004)
 Posterior canalのPBBV 156名(74yr[70-80])のRCT.
 Semont法 vs Flunarizine vs 経過観察に割り付け, 
  無症状 + Dix-hollpikeの陰性をOutcomeとして比較.

Semont法は1wk毎に1-3回try
Flunarizineは10mg/d 眠前投与を60d継続

Outcome; 
 Semont法では, 1回目の施行後に44名(85%), 2回目で2名, 3回目で3名.
  計94.2%がBPPV改善. 6moフォロー時の再発率は3.8%
 Flunarizineでは57.7%が治療後に改善. 6mo再発率は5.8%.
 経過観察群では34.6%のみ改善. 再発率も21.1%に及ぶ.

BPPV消失率はSemont > Flunarizine > Controlとなり,
再発率はSemont = Flunarizine > Controlとなる.