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2014年4月16日水曜日

片頭痛: トリプタン製剤

片頭痛の治療: トリプタン製剤について
BMJ 2014;348:g2285 

選択的5-hydroxytryptamine(5HT) receptor agonist.
 5HT1B, 5HT1D受容体に親和性が高い.
 5HT1Bは血管平滑筋にあり, 刺激により血管収縮を来す.
 5HT1Dは血管周囲の三叉神経終末, 後角にあり, 刺激により三叉神経からのVasoactive peptide, 後角からneurotrasmitterを分泌し, 視床へ侵襲信号を伝達させる.

Triptan製剤は経口, 鼻スプレー, 皮下注と様々ある.
 Sumatriptan 50mgは2h後の疼痛消失 NNT 6.1[5.5-6.9],
 Sumatriptan 100mgはNNT 4.7[4.3-5.1],
 6mg SCではNNT 2.3[2.1-2.4],
 20mg鼻スプレーでは4.7[4.0-5.9] と効果は良好.

Canadian Headache Society guidelineでは
 急性の片頭痛(中等度〜重度)の治療にTriptan製剤を強く推奨している.
 Triptan使用後24h以内に再増悪するリスクがあるが, その場合も再投与にて改善が見込める.
UK National Institute for Health and Care Excellence(NICE)では
 Triptan製剤 + NSAID or アセトアミノフェンの併用を推奨している.
 単剤使用の場合はTriptan, NSAID, アセトアミノフェンから選択.
 Triptanを使用する場合は安価なものから使用し, 効果が乏しい場合は他のTriptanを試すように推奨.

トリプタン製剤とその効果
(Lancet Neurology 2010;9:285-98)
薬剤
Dose
初期2hrの改善
疼痛改善持続
Consistency
Tolerability
Sumatriptan(イミグラン®)
50mg
ND
ND
ND/-
ND

25mg
-
ND/-
-
+
Zolmitriptan(ゾーミック®)
2.5mg
ND
ND
ND
ND

5mg
ND
ND
ND
ND
Naratriptan(アマージ®)
2.5mg
-
-
-
++
Rizatriptan(マクサルト®)
5mg
ND
ND
ND
ND

10mg
+
+
++
ND
Eletriptan(レルパックス®)
20mg
-
-
-
ND

40mg
ND/+
ND/+
ND
ND

80mg
+
+
ND
-
Almotriptan(未承認)
12.5mg
ND
+
+
++

Sumatriptan 100mgと比較した際の効果
ND; No Difference
+; better than sumatriptan
-; inferior

経験的, Expert opinionでは,
 1つのTriptan製剤で効かなくても, 他で効く場合がある
 1つのTriptan製剤の効果は, 3回の発作で使用し, 効果なければ効果なしと判断する
 制吐剤との併用のStudyは無いが, 効果良好との話はある.

Triptan製剤のMeta-analysis (Cephalalgia 2014, Vol. 34(4) 258–267)
 74 RCTsのMeta. アウトカムは2h後, 24h後のpain-free rate.
(Triptan製剤 vs Placebo, 他のTriptan製剤)
各薬剤 vs Placebo, 他の薬剤の比較(アウトカム達成のOdds Ratio)

各トリプタン製剤の “最も効果が高い” 可能性を数値化.

Eletriptanが2h, 24h後の疼痛改善効果が最も高い 可能性が高い.
次いでRizatriptanが2h後の疼痛改善効果,
Zolmitriptanが24h後の疼痛改善効果が最高の可能性.

Triptanの副作用 BMJ 2014;348:g2285 
 RCTでは副作用の大半が中等度であり, Self-limited.
 Sumatriptan使用後24hでのNNHは50mg使用で13, 100mg使用で5.2.

心血管系への配慮
 5HT1Bが冠動脈にもあるため, CAD患者, PAD患者, コントロール不良の高血圧患者へは投与 ×
 ただし, 重度な心血管障害は<1/100万と稀.
 使用者の1-7%は “triptan sensation”という顔面, 頸部, 四肢, 胸部の熱感, チリチリ感を認める. (心原性酵素, ECGは問題無し)

妊婦, 授乳婦に対するTriptan製剤は原則禁忌
 1st trimesterでの使用は胎児奇形のRiskとなり, 早産のRiskにもなるため, 原則禁忌
 授乳中への移行は少ないが, Sumatriptan使用後12hrまでは中止.

TriptanとSerotonin syndrome
 TriptanでもSerotonin Syndromeを来たす可能性があるため, SSRIとの併用には尚更注意が必要.

Allodynia(過痛症)
 片頭痛の2/3でAllodyniaを認めるが, Allodyniaの存在はTriptanの効果不十分を示唆するとの報告もある
 Allodyniaが出現する前にTriptanを投与することが推奨される.

Triptanは1カ月に10日までなら使用可
 上記を超える投与量の安全性は確立されていない.
 Medication Overuse HeadacheのRiskもあるため, 患者には注意.

Triptanの早期投与
 Almotriptan 12.5mgの早期投与(発作から1hr以内)はより効果的.
 早期投与は他のTriptan, NSAID, 鎮痛薬でも同様に効果が増す.
 しかしながら, 早期投与を強調しすぎると, Overuseの危険性も増加し, MOHのRiskも上昇する.
 “典型的”な片頭痛症状, 前兆がある場合に早期内服をするように指導することが重要となる.
 NSAID, アセトアミノフェンとの併用も効果的である.
(Lancet Neurology 2010;9:285-98) 

最後にトリプタン製剤のまとめ (特に薬剤相互作用に注意)
BMJ 2014;348:g2285