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2014年4月12日土曜日

頭部外傷後の行動障害

頭部外傷後の行動障害
Neurosurgery 2002;50:927-40

重度の頭部外傷後の行動障害は13-66%で認める.
 100名の小児での重症頭部外傷後では, 18%で錐体外路症状(+).
 振戦は最も報告例が多い症状. 振戦のみであれば一過性であることが多い.
 重症頭部外傷後の小児の45%~66%で振戦を認めた報告もあり.
 受傷後GCS≤8の頭部外傷患者221名のうち, 22.6%が行動障害あり, 10.4%が一過性, 12.2%が3.9年以上持続していたが, ADL障害となるのは5.4%のみ
症状
一過性(%)
持続性(%)
2.5-4Hz intention tremor
1.4%
0.9%
2.5-4Hz Postural/kinetic tremor
-
3.2%
>4Hz Postural/kinetic tremor
4.1%
3.6%
分類不能の振戦
4.5%
1.4%
局所的ジストニア
0.5%
1.8%
半身ジストニア
-
0.9%
半身 + 反対側の局所ジストニア
-
0.9%
半身 + 頸部ジストニア
-
0.5%

一過性(%)
持続性(%)
Stereotypy
-
0.9%
ミオクローヌス
-
0.5%
パーキンソン症状
-
0.9%
paroxysmal
hypnogenic dyskinesias
-
0.5%
Hyperekplexia
-
0.5%
軽症〜中等症の頭部外傷後の運動障害.
 GCS 9-15の頭部外傷後の158名では, 10.1%で運動障害あり.
 一過性が7.6%, 持続性が2.6%と大半が一過性の経過. (Bias強いかも)
症状
一過性(%)
持続性(%)
>4Hz Postural/intention tremor
8.2%
1.3%
Hyperekplexia
-
0.6%
頸部のミオクローヌス
-
0.6%

症状の出現タイミングは直後〜数ヶ月後まで様々
 外傷の衝撃による直接的な脳組織障害と, 外傷に付随する低酸素, 高血圧, 低血圧, 虚血による間接障害がある

頭部外傷後の行動障害として振戦を認める例が多いため,
その振戦をPosttraumatic tremorと呼ぶ.
振戦は外傷後の運動障害で最も多い症状.
 2.5-4Hzの姿勢時, 運動時振戦が多く, 運動機能を障害する.
 静止時振戦もあり, パーキンソン症状を来すこともある.
 振戦は上肢メインとなることが多い.
 障害部位としては, 基底核, 中脳, またそれに関連する経路.
 静止時振戦では中脳黒質に障害を認める例も報告されている.
 その一部ではL-dopaが効果的であったとの報告もあり.

Posttraumatic tremorの治療, 予後
 発症時に予後を推定するのは困難. 
 発症1yr以内ならば改善する可能性は十分にあり.
 治療も確立されたものは無し. β阻害薬やL-dopa, ベンゾ, カルバマゼピン, 抗コリン薬, ボツリヌス毒素など試されている.

Posttraumatic Dystonia
不随意の筋肉収縮により捻転様の運動を来す病態.
 振戦やミオクローヌスと同時に認めることもあり, しばしば見落とされる.
 症候性の半身ジストニアの7-9%が外傷を契機として発症している.
 外傷後ジストニアでは反対側の被殻, 尾状核病変を認めることが多い.
 淡蒼球単独病変でのジストニアの報告は少ない.
 局所, 特に手のジストニアでは視床病変が多い.
 ジストニアは徐々に増悪し, その後症状が持続する経過となる.
 特に半身ジストニアでは改善する可能性は低く, 症状は持続. (MRIで脳病変があれば特に改善する見込みは低い.)

Posttraumatic Parkinsonism
単回の頭部外傷によるパーキンソン症状は稀だがあり得る.
 重度の非開放性頭部外傷での報告が多い.
 中脳黒質の直接的な障害では穿通性損傷の報告が多い.
 黒質病変の場合は, L-dopaへの反応性が良好である場合が多く, 試す価値がある.
 外傷後のパーキンソン症状はAkinetic-rigid syndromeとなることが多い.

複数回の頭部外傷後のパーキンソン症状
 ボクシングでの報告例が多く, “Pugilistic parkinsonism” “punch-drunk”
 プロボクサーでの発症頻度は20-50%と高い.
 引退して数年後に発症する例もある.

参考:
慢性外傷性脳症の症状, 経過の報告 (Neurology 2013;81:1122-1129)
頭部外傷後に行動/気分障害を認めた22例と認知障害を認めた11例の解析
(主に認知機能面の評価)