ページ

2014年3月9日日曜日

物理的蕁麻疹, コリン性蕁麻疹 (Physical, Cholinergic urticaria)

Immunol Allergy Clin N Am 34 (2014) 73–88

Physical urticaria (PhysU) 
身体的刺激, ストレス, 熱刺激(寒冷, 暖)刺激にて誘発される, チクチクするミミズ腫れ, Flare-typeの皮疹±血管浮腫を伴う病態.

様々なSubtypeがあり,
 Urticaria factitia/symptomatic dermographism(人工蕁麻疹/皮膚描記症)
 Delayed pressure urticaria(DPU), Vibratory urticaria/angioedema, 
 Cold contact urticaria(ColdU), Heat contact urticaria(HeatU), 
 Solar urticaria(SolU)等がある.

Cholinergic Urticaria (CholU) 
 同じく誘発性の蕁麻疹だが, 体温上昇に伴い誘発される.
 入浴や運動で誘発され, 外的刺激では誘発されない.


これらPhysU, CholUはDPUを除いて刺激により急速に出現し, 数分〜数時間で消失する.
 皮疹出現時にチクチクとした痛みを伴うもの特徴的. 全身症状を伴うこともある.

慢性化し, 其々 慢性蕁麻疹の25%, 5%を占める.

Urticaria factitia/symptomatic dermographism: 
 PhysUの中で最も多いタイプで, 50%を占める.
 一般人口の5%で認めるとされる.
 皮膚を引っ掻く等, Shear forceが加わると, その部位にチクチクした疼痛や皮疹を生じる.
 症状は1.5-2hほど持続することが多い. どの年代にも発症し, 平均6.5年間ほど続く.
 治療は第2世代のH1ブロッカーが第一選択.
 通常使用量の4倍ほど使用せねばならないこともある.
 他の選択肢として, Omalizumab, cycA, Montelukast等

Delayed pressure urticaria: ミミズ腫れを来さないurticaria
 DPUは血管浮腫性の紅斑様の皮疹を呈する.
 圧迫を加えられた皮膚に生じ, 粘膜にも生じ得る(上気道等)
 垂直方向の圧で誘発され, チクチク感, 焼ける様な感じ, 疼痛を伴う
 発熱やFlu-like symptom, 関節痛, 悪寒も伴うことがある.
 典型的な経過は, 鞄を肩にかけた後やキツい靴を履いた後, 裸足で梯子を上る行為, クッションのない椅子に長時間座る等の行為後に生じる.
 皮疹は圧迫後4-8時間経過して出現し, 数時間持続(6-9h). 
 時間の解離があるため, DPUと認識せず, 慢性蕁麻疹と解釈している患者もいる.
 膨疹よりは血管浮腫Like, 圧がかかる部位に生じる点, 慢性蕁麻疹はより表在性で, 持続時間も短い点で鑑別.

DPUの診断は誘発試験
 圧をかけ, その30分, 4,6,8,24h後に評価.
 誘発後6時間程度で赤色の腫脹を認めれば診断
 治療は垂直方向の圧を避けること, 第二世代のH1ブロッカーを使用する.

Cold contact urticaria: 寒冷刺激で誘発される蕁麻疹
 PhysUの1/3を占めるタイプ
 冷たい空気, 水, 物質に触れた数分後に, 触れた部位のみで生じる.
 ヒスタミン, 肥満細胞からのMediatorが原因.
 プール等で全身が暴露すると全身で蕁麻疹を生じ, 低血圧や意識障害を来すこともあり, 致命的なことも.
 若年成人で多く, やや女性で多い傾向. 4.8-7.9年持続する.

非典型例として, Delayed ColdU (DCU)があり,  寒冷曝露後~24hで出現するタイプもある
 さらに稀であるが常染色体優性遺伝の家族性DCU, familial cold auto-flammatory syndrome, familial atypical cold urticariaがある.
 DCUは寒冷誘発試験では検出が困難.

ColdUの誘発試験
 氷をビニール袋に入れて5分間前腕に接触させる. その後10分後に評価し, 隆起した皮疹, 掻痒感, 焼ける様な感覚があれば陽性と判断する.
 陽性ならば次はどの温度, 何分接触すると生じるかを評価 (4度-44度で評価).
 これらの情報で治療効果判定を行ってゆく.

Heat contact urticaria: 稀で<100程度の報告しかない
 温熱刺激後, 数分で生じる蕁麻疹.
 温熱刺激で誘発するか, 入浴で深部温を45度まで上げて誘発する.

Solar urticaria: 
 稀なタイプで, 光線, 紫外線暴露後5-15分で生じる蕁麻疹. 24h以内に改善.
 一部で曝露後1h以上経過して出現し, 24h以上持続する例も報告されている
 21974例の蕁麻疹の内, 0.08%

Vibratory angioedema: 
 振動刺激より10分以内に局所の血管浮腫を来す病態. 非常に稀なタイプ

Cholinergic urticaria: 
 体温が上昇することで誘発される蕁麻疹. 血管浮腫は少ない.
 ストレスや運動, 入浴が刺激になる. 
 掻痒感やチクチクした痛みを伴い, 膨疹や紅斑を生じる. 皮疹は15-60分程度持続し, 改善することが多い. 
 若年成人に多く, 加齢と伴に症状は軽快することが多い. また季節性もあり, 夏は軽度となる.
 インドの大学生600例でCholUを評価したところ, 25例でCholUと診断(4.16%). 大半が軽症であった. (Indian Dermatology Online Journal 2013;4:62-63)

CholUにはいくつかのタイプがある
 汗腺閉塞型CholU
 低汗症を伴うCholU
 汗に対するアレルギー反応を伴うCholU
 特発性CholU 

CholUには汗が関連している可能性がある
 汗には様々なサイトカイン, IgA, IgEが含まれており, 汗腺が閉塞することで膨疹を生じる(汗腺閉塞型CholU). 夏には発汗が多くなり閉塞が解除されるため, 軽快する可能性がある
 低汗症に伴うCholUでは, 汗腺のAcetylcholine-Rも障害され, 組織のAcetylcholineが高値となり, 生じる可能性が示唆.
 汗自体に対するアレルギー反応での蕁麻疹の機序もある.

Allergology International. 2012;61:539-544

Type
汗アレルギー
, 低汗症
アセチルコリン
皮下注射試験
病理所見
治療
汗過敏症
汗腺周囲の
リンパ球浸潤
減感作療法
, 低汗症
, モザイク
(一部)
正常
ステロイド
特発性
正常
抗ヒスタミン
発汗, 無汗の評価はヨウ素-デンプン試験で評価する.
 ヨウ素-デンプン試験: 評価部位(この場合全身)にヨウ素を塗り, 乾燥. その上からコーンスターチをかける.
 運動負荷 or 高湿度(70%), 高温の部屋で汗をかかせ, 発汗(+)部位は青紫に. 発汗(-)部位はそのままとなる.
 発汗部位と無汗部位の皮膚生検を行い, 評価する.

CholUの検査:
 運動負荷試験; 年齢, 状態に応じた運動負荷を行い, 発汗がある時点から15分間まで継続.
 運動負荷後, 10分で蕁麻疹が出現すれば陽性.
 上記が改善した後(24h空けて) 42度の風呂に15分はいり, 深部温を+1度上昇させ, 誘発させる. 
 運動負荷試験のみでは運動誘発性蕁麻疹との鑑別が出来ない.

CholUの治療はH1 + H2阻害薬の併用がBetter
16-29歳でCholUと診断された251例のRCT.
(二次性; HL, SLE, 血管炎や, 既に薬剤使用している群は除外)

A) Chlorpheniramine maleate 4mgを運動の30分前
 Chlordiazopoxide 5mg + Clindium bromide 2.5mg tid投与群
B) Chlorpheniramine maleate 4mg tid + Maprotiline HCl 25mgを眠前に投与群
C) Chlorpheniramine maleate 4mg tid + Cimetidine 200mg tid投与群 で比較したRCT.

Chlorpheniramine maleate; H1ブロッカー (レスタミン®)
Chlordiazopoxide; ベンゾジアゼピン系 (バランス®)
Clindium bromide; 抗コリン薬
Maprotiline HCl; 四環系抗うつ薬 (ルジオミール®)
Cimetidine; H2阻害薬 (タガメット®)

アウトカム;
A) 抗コリン + ベンゾ, 運動前に抗ヒスタミン群
B) 抗ヒスタミン + 抗うつ薬
C) 抗ヒスタミン + H2阻害薬 の比較では,

H1+H2阻害薬の併用が最も症状の緩和には有効であった.
抗コリン + 抗ヒスタミン常用の群も作って欲しかったが...