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2014年3月24日月曜日

市販薬による中毒症: ブロム中毒

市販薬による中毒症 (Intoxication by OTC drugs)
ブロム中毒 
ブロムワレリル尿素 (http://jsct.umin.jp/page030.html)
 日本国内では鎮痛剤(ナロンエース®), 眠剤(ウット®)として市販薬として販売されており, その分 急性過量服薬や慢性中毒の原因として多い物質.

急性中毒
 経口急性中毒量は6g, 致死量は20-30gと言われている.
 血中濃度と意識障害の関連は, 

 100µg/g以上でJCS 300, 
 50-100µg/gでJCS 100-200, 
 25µg/g前後でJCS 10と報告あり.

ブロムワレリル尿素の慢性中毒 (日老医誌 2001;38:700-703)
 ブロムワレリル尿素の半減期は2.5時間だが, ブロム自体の半減期は12日と長く, 連用により体内蓄積を生じる.
 血中ブロム濃度が50-80mg/dLで慢性ブロム中毒症状を来すが, これには個人差がある.
 ブロムの慢性中毒症状は, 倦怠感, 嘔気以外に, 小脳失調, 小脳症状, 眼筋麻痺, 脳幹症状や,錐体外路症状を来す.
 依存性もあり, 離脱症状も呈する.

10例の報告を見ると, 症状は倦怠感, 嘔吐以外に小脳失調, 小脳症状が多い. 脳幹症状も認められる. また, 血清Cl値が著しく高値となる.

何故血清Clが高値となるのか?
 Cl値の測定にはイオン選択電極法で行われており, これはブロム等のハロゲンの干渉を受ける.
 ブロムが増加した分, Clは減少するが,  ブロムの方がClよりも高感度に測定されるため, 測定値は高値となる.

 Clが上昇することでアニオンギャップが低くなり, アニオンギャップがマイナスとなることもある.
Clin J Am Soc Nephrol 2: 162–174, 2007.

慢性中毒による小脳症状

長期間の慢性中毒にて小脳萎縮を呈する症例もある (Internal Medicine 1998;37:788-791)

ブロム中毒では脳幹や小脳のMRI所見を呈することもある (NEUROLOGY 2005;64:1279–1281)
 メトロニダゾール等と同じ様な小脳, 脳室周囲の高信号を呈する.
 薬物の中断にて所見は改善する.
メトロニダゾールも臭素もビタミン代謝経路の阻害作用を呈する可能性があり, 他にも同様の薬剤は複数ある.
それら薬剤の慢性使用によりWernicke脳症と同様の機序で症状を呈する可能性が示唆されている.