Cryptogenic strokeではPFOの評価を行うことは重要.
PFOが認められた場合, 原則閉鎖療法を行うことが推奨される.
PFOで脳梗塞を生じた症例における閉鎖療法 vs 抗血小板療法・抗凝固療法を評価したRCTをみてゆく
CLOSURE I trial; 18-60歳のcryptogenic strokeで, PFO(+)であった909例のopen-label RCT
(N Engl J Med 2012;366:991-9.)
・カテーテルによるPFO閉鎖術 vs Medical Therapyに割り付け, 2年フォロー.
・PFOは造影TEE + バルサルバ法で心房レベルでの右左シャントで評価.
・カテーテル治療群; 閉鎖後にClopidogrel 75mg/d 6mo + ASA 81-325mg 2yr.
Medical Therapy; ワーファリン, ASA or 併用療法.
母集団データ:
・心室中隔瘤は5割程度, 中等度以上のシャントがある例が約4割
アウトカム
・2年間のフォローでは脳梗塞リスクやTIAリスクに有意差ない結果
・サブ解析では,心室中隔瘤の有無, シャント率の大きさ, Medical therapy群の治療選択(ASA単独, ワーファリン単独, 併用)別の評価でも特に両者で有意差は認められない.
PC trial; PFO(+)で脳梗塞, TIA, 血栓症を来した414名のRCT.
(N Engl J Med 2013;368:1083-91.)
・患者は≤60y, TEEでPFOを認め, 他に血栓症の原因が認めない患者群.
・Amplatzerを用いたPFO閉鎖療法群 vs 薬剤治療群に割り付け, 塞栓症, 脳梗塞, TIAの再発リスクを比較.
・薬剤療法; ASA 100-325mg/d 5-6m以上 + 以下のどちらか.
Ticlopidine 250-500mg/d or Clopidogrel 75-150mg/d 1-6mo
アウトカム
・4年間のフォローにて, 塞栓症は両群で有意差無し. 死亡リスクも変わらない.
・Sub-analysisでも有意差は認められなかった.
・合併症, 副作用も両者同等.
RESPECT trial; 18-60yのCryptogenic strokeでPFOを認める980名を対象としたRCT.
(N Engl J Med 2013;368:1092-100.)
・PFO閉鎖術 vs 薬物療法群に割り付け, 脳梗塞再発率を比較.
・薬物療法; ASA, clopidogrel, warfarin, dipyridamole.
閉鎖術; カテーテルにて閉鎖. 閉鎖後ASA+clopidogrel 1m, ASA 5m継続.
アウトカム
・イベント率は両者で有意差無し.
・Sub-analysisではAtrial septal aneurysm(+)やシャント量が多い群でのみ有意差あり.
また, 抗血小板療法のみよりは抗凝固療法のほうが予防率は良好であった
RESPECT trialの長期フォロー (N Engl J Med 2017;377:1022-32.)
・フォロー期間の中央値 5.9年
・虚血性Strokeの再発リスク, 特にCryptogenic strokeリスクは有意に閉鎖群で低下する結果.
REDUCE trial: Cryptogenic strokeでPFOを認めた664例を対象としたRCT.
(N Engl J Med 2017;377:1033-42.)
・PFO閉鎖 + 抗血小板療法群 vs 抗血小板療法単独群に割付け, 継続.
・アウトカムは24ヶ月後の頭部MRIフォローによる脳梗塞病変を評価.
フォロー期間は2年~最大5年
・患者は18-59歳で180日以内にCryptogenic strokeを罹患し, さらに右左シャントを伴うPFOを認めた群.
・PFO閉鎖はHelex Septal Occluder device, Cardioform Septal Occluder deviceを使用.
抗血小板療法はアスピリン単独もしくはジピリダモールかクロピドグレルとの併用とした. 抗凝固療法は不可とした.
母集団
アウトカム
・PFO閉鎖群では有意にStroke再発リスクは低下
・特にシャント量が中等度以上ではリスク軽減効果がある.
合併症ではPFO閉鎖術では心房細動のリスクが上昇
CLOSE trial: PFOによる脳梗塞をきたした16-60歳の症例 663を対象としたRCT.
(N Engl J Med 2017;377:1011-21.)
・患者は16-60歳で, 6ヶ月以内に脳梗塞を生じ, PFO以外の明らかな原因が認めなかった症例.
さらにPFOに加えて, 心房中隔瘤や大量の右左シャントを認める患者が対象
大量シャントはマイクロバブル法で, 3心拍以内に30バブル以上を認めることで定義.
・これら患者群を以下に割付け, 比較.
カテーテルでのPFO閉鎖術+長期間の抗血小板薬使用群
抗血小板薬単独群
抗凝固療法群 に割付け(Group 1. n=524)
・さらに抗凝固療法禁忌者では, PFO閉鎖術 vs 抗血小板療法(Group 2. n=129)
PFO閉鎖術禁忌者では抗凝固療法 vs 抗血小板療法(Group 3, n=10)に割付け
母集団
アウトカム: 5.3±2年間フォロー
・PFO閉鎖 vs 抗血小板薬単独では, 有意にPFO閉鎖群の方が脳梗塞再発リスクは低下する
・抗血小板薬単独 vs 抗凝固療法では有意差なし
合併症リスク
・新規の心房細動, 心房粗動リスクはPFO閉鎖群で上昇する.
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まとめると,
・PFO+脳梗塞患者では, PFO閉鎖を考慮すべき.
・〜2-4年程度の短期的にはPFO閉鎖による脳梗塞予防効果は乏しいかもしれないが, それ以上の長期では予防効果に有意差がでてくる.
・また, 心室中隔瘤や中等度以上のシャント量がある場合はPFO閉鎖術による脳梗塞予防効果は高い
・PFO閉鎖術では長期的な心房細動のリスクにもなり得る
・上記リスクが少なく, 高齢者や閉鎖術を希望しない場合は抗血小板薬の使用で経過をみる方法もあり. この場合抗血小板薬と抗凝固薬ではどちらも効果は同等と言える.