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2023年7月31日月曜日

中枢神経リンパ腫におけるCSFマーカーについて

中枢神経リンパ腫(CNS lymphoma: 以下CNSL)の診断は難しい.

Gold standardは脳生検であるが, そのハードルは高く, 髄液検査で異常細胞が検出されればよいものの, その細胞診の感度は<50%程度に過ぎない.

また, 髄液量も10.5ml以上採取することが推奨されるため, 意識していないと検体が足りないということも多々ある.

他には髄液のFCM, TCR遺伝子再配列, IgHの評価が有用である.


CNSLの診断に有用な髄液マーカーにはどのようなものがあるだろうか?


国内より, 複数のCSFマーカーを使用したCNS lymphomaの診断能を評価した報告

(Cancer Medicine. 2020;9:4114–4125.)

・髄液中のマーカーでは, CXCL-13, IL-10, β2-MG, sIL-2Rの組み合わせはCNS lymphomaの診断に有用であるとの結論.

・コマーシャルベースで考慮するならば,
 IL-10, β2-MG, sIL-2Rの組み合わせであるが,
 CXCL-13がどれも含まれており, そこが難点.


2018年のSystematic reviewより, 髄液マーカーのカットオフや分布, 感度特異度を評価したものをまとめる. (British Journal of Haematology, 2018, 182, 384–403)

髄液中IL-10

・IL-10は悪性リンパ腫細胞や腫瘍内に浸潤しているMφからも産生, 分泌されている.


対象群

Cutoff

CNS L群の中央, 平均値

SN

SP

Mabray (2016)

転移性腫瘍, Glioma, 脱髄性病態

>21.77pg/mL

557.5pg/mL(167.5-947.5)

62.8%

95.5%

Nguyen-Them(2016)

Glioma, Ependymoma, Medulloblastoma, 転移, 神経炎症性疾患

>4pg/mL

-

88.6%

88.9%

Song(2016)

NHL, 中枢神経炎症性疾患, 感染症, 脱髄性疾患, 他の脳腫瘍

>8.2pg/mL

74.7pg/mL(<5.0-1000)

95.5%

96.1%

Sasagawa(2015)

Glioblastoma, Astrocytoma, Glioma, Ependymoma, 転移, 他腫瘍, MSなど

>3pg/mL

28pg/mL(≤2-4100)

94.7%

100%

Rubenstein(2013)

神経炎症性疾患, 原発性脳腫瘍, 転移

>16.15pg/mL

*別記載

65.4%

92.6%

Rubenstein(2013)
HIV陰性群

神経炎症性疾患, 原発性脳腫瘍, 転移

>23pg/mL

*別記載

64%

94%

Sasayama(2012)

他のCNS腫瘍, CNS炎症

9.5pg/mL

27pg/mL(<2-1610)
42pg/mL(5-118)

71%

100%

・各病態ごとのIL-10値の分布

患者群 疾患

IL-10

対象群 疾患

IL-10

PCNSL 新規診断(43)

282.9±113pg/mL

神経炎症性疾患(71)

5.6±2.3

SCNSL 新規診断(43)

57±37pg/mL

原発性脳腫瘍(8)

10.9±5.6

PCNSL 再発例(17)

1663±483pg/mL

脳転移性腫瘍(12)

5.3±1.5

SCNSL 再発例(13)

302±126pg/mL

CNS外の感染症, 腫瘍(46)

3.6±1.4

・CNSLでは大きくIL-10は上昇する. 一方で炎症性の病態でのIL-10の上昇は乏しい.


髄液中IL-6とIL-10/IL-6比


対象群

Cutoff

CNS L群の中央, 平均値

SN

SP

Song(2016)

NHL, 中枢神経炎症性疾患, 感染症, 脱髄性疾患, 他の脳腫瘍

>5.1pg/mL

5.2pg/mL(<2.0-109)

54.6%

70.1%



>0.72
(IL-10/IL-6比)

12.6(0-115)

95.6%

100%

Sasagawa(2015)

Glioblastoma, Astrocytoma, Glioma, Ependymoma, 転移, 他腫瘍, MSなど

>2.2
(IL-10/IL-6比)

10.8pg/mL(1.2-127)

68.4%

96.1%

Sasayama(2012)

他のCNS腫瘍, CNS炎症

4.0pg/mL

5.7pg/mL(1.2-264)
6.8pg/mL(4.4-13.9)

77%

63%

・CSF-IL-6はCNSLと他の病態との鑑別には有用とは言い難い.

 IL-10/IL-6比も試されているが, IL-10のみで十分ともとれる.


髄液中CXCL-13

・CXCL-13はケモカインの1つであり, 樹状細胞より産生される.


対象群

Cutoff

CNS L群の中央, 平均値

SN

SP

Mabray (2016)

転移性腫瘍, Glioma, 脱髄性病態

>103.0pg/mL

2960.5pg/mL(1125-4796)

76.7%

90.9%

Rubenstein(2013)

神経炎症性疾患, 原発性脳腫瘍, 転移

>90pg/mL

*別記載

69.9%

92.7%

Rubenstein(2013)
HIV陰性群

神経炎症性疾患, 原発性脳腫瘍, 転移

>116pg/mL

*別記載

71%

95%

・各病態における分布

患者群 疾患

CXCL13

対象群 疾患

CXCL13

PCNSL 新規診断(43)

5926±2030pg/mL

神経炎症性疾患(71)

44.9±19

SCNSL 新規診断(43)

1783±896pg/mL

原発性脳腫瘍(8)

84.5±60.7

PCNSL 再発例(17)

996±312pg/mL

脳転移性腫瘍(12)

58.5±41.6

SCNSL 再発例(13)

539±157pg/mL

CNS外の感染症, 腫瘍(46)

11±3.6

・これもCNSLでは他の病態と比較して桁違いに上昇する


他のマーカー

CSF-IL-2Rのまとめ


対象群

Cutoff

CNS L群の中央, 平均値

SN

SP

Sasagawa(2015)

Glioblastoma, Astrocytoma, Glioma, Ependymoma, 転移, 他腫瘍, MSなど

>60.4 U/mL

225 U/mL(<54.5-2750)

94.7%

84.6%

Sasayama(2012)

他のCNS腫瘍, CNS炎症

77 U/mL

100 U/mL(<50-978)
88 U/mL(<50-3495)

81%

83.3%

・報告はさほど多くないが, 感度, 特異度は良好. 対象群として炎症性病態は少ないため, その点注意が必要である

・Sasayama(2012)におけるCNS炎症性病態は2例のみ


β2MGのまとめ


対象群

Cutoff

CNS L群の中央, 平均値

SN

SP

Sasagawa(2015)

Glioblastoma, Astrocytoma, Glioma, Ependymoma, 転移, 他腫瘍, MSなど

>2.4mg/L

3.9mg/L(1.7-11.8)

89.4%

88.5%

Sasayama(2012)

他のCNS腫瘍, CNS炎症

2056µg/L

4084µg/L(970-11239)
4983(2303-6166)

88%

90.3%

Muniz(2014)
SCNSL症例

DLBCL, BLでCNS病変無し

>2.56ng/mL


62%

90%

Kerstein(1996)
SCNSL, ALLによる中枢神経病変

NHL, ALLでCNS病変なし

>1.67mg/L


81%

68%

Ernerudh(1987)
SCNSL

NHL, HDでCNS病変なし

>1.9mg/L

3.9±3.4mg/L

71%

67%

・古い論文が比較的多い. またこれも炎症性の病態との対比がすくないため注意.

 Sasayama(2012)におけるCNS炎症性病態は2例のみ


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CNSリンパ腫を疑う際に参考となるCSFマーカーとしては,

IL-10, CXCL13は有用であろう. これらは他腫瘍や炎症性の病態, 脱髄性の病態との鑑別でも有用と考えられる. しかしながらCXCL13はコマーシャルベースでは評価不可.

他にIL-2Rやβ2-MGも利用可能であるが, 炎症性の病態との鑑別は不十分である.

2023年7月13日木曜日

バルプロ酸による胸水貯留の特徴は?

原因不明の片側性, 滲出性胸水貯留の症例. 内服薬剤にバルプロ酸の記載があった.

たしか, 薬剤性の胸水貯留の原因にバルプロ酸があったはず... 


そこでバルプロ酸の胸水貯留にはどのような特徴があるのか, 調べてみる.


(Clin Toxicol (Phila). 2021 Oct;59(10):869-876.)

バルプロ酸による胸水貯留

1970-2020年に報告されたバルプロ酸による胸水貯留例をReviewした報告

・他に原因が考えられるものを除外し, 28例がバルプロ酸による胸水貯留と判断された.

・胸水のタイプは主に4つに分類された;

 > 多くが好酸球が優位な滲出性胸水となる(17/28, 60.7%)
. このうち末梢血好酸球増多は10例で認められた

 > 他にはリンパ球が優位な滲出性胸水が2/28で報告.

 > 漏出性胸水が3/28(10.7%)

 > バルプロ酸による薬剤性Lupusに伴う胸水貯留が5/28(17.9%).
 このうち好酸球性の胸水が3例. ANAは全例で陽性であり, 抗ヒストン抗体は2例で陽性であった.


好酸球性胸水例: 開始後~2ヶ月程度が多い.


リンパ球性胸水, 漏出性胸水例: 好酸球性よりも薬剤開始後時間が経過している印象


薬剤性Lupus症例: 開始後早期のものもあるが,
数年経過して発症しているものが2/5あり.



薬剤性Lupus以外の症例における評価

・両側性は8/23であり, 半数以上が片側性.
 また, 心嚢液貯留も伴う例がある.


薬剤性Lupus例の評価

・これも両側性は2/5. 


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バルプロ酸による胸水貯留は稀な病態であるが, ありえる.

薬剤開始後数カ月以内に生じる場合は主に好酸球優位の滲出性胸水となる.

時間が経つとリンパ球優位の滲出性胸水や漏出性が生じえる.


また, 数年の経過で薬剤性Lupusを発症し, 胸水貯留を生じるパターンもある.

薬剤の中止により数カ月で改善する経過となる.

2023年6月26日月曜日

糖尿病性筋梗塞, 壊死性筋症

症例: コントロール不良の2型糖尿病患者(HbA1c 11%).

2週間前に左大腿部の腫瘤を自覚し, その後同部位の疼痛が出現した.

疼痛は強く, 体動困難となり救急要請.

来院時, CRP 12mg/dLと上昇あり, 左大腿部の強い浮腫と圧痛を認めた.

CT検査にて大腿部の筋に限局した強い筋浮腫と造影不良領域が認められ, 壊死を伴う筋炎と考えられた.


当初感染症を疑い抗菌薬投与を行うも反応は乏しく,

試験切開や穿刺でも菌体は確認できなかった.

Focal myositisや感染性筋炎が疑われ, 筋生検も行ったところ, 感染巣は認められなかったものの, 壊死した筋組織, 強い筋浮腫が認められた.


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稀であるが, たまに遭遇する糖尿病の合併症に, Diabetic amyotrophy(糖尿病性筋萎縮症)がある.

これは, 腰神経叢の虚血, 血管炎に伴う下肢近位筋の脱力や筋萎縮を主体とする病態である.

参考: 糖尿病による近位筋の脱力, 萎縮: Diabetic amyotrophy

こういった稀なDM合併症の一つに, 糖尿病性筋症, または糖尿病性壊死性筋症(Diabetic myonecrosis), 糖尿病性筋梗塞(Diabetic muscle infarction: DMI)と呼ばれる疾患がある.

筋炎Mimickerとして押さえておきたい.


Diabetic myonecrosis, Diabetic muscle infarction

(AJR 2010; 195:198–204)(AACE Clinical Case Rep. 2019;5: e77-e81)

・DMによる微小血管障害が原因の
筋組織の虚血, 梗塞による筋障害.

・下肢の近位筋で多く, 大腿四頭筋, ヒラメ筋での報告が多い.


 罹患部位の腫脹, 疼痛が主な症状となる.

・微小血管障害であり, 他の腎症やPAD, CADが合併しているDM例で多い.

・最初に報告されたのは1965年であり, それから2015年までに200例以下の報告例のみと稀な病態.


2015年に発表されたLiterature reviewでは, 126例をReview.

(BMJ Open Diabetes Research and Care 2015;3:e000082.)

・女性例が54%であり, 平均発症年齢は44.6歳(20-67)
 

 1型DMでは35.9歳[20-65]と若く,
 2型DMでは52.2歳[34-67]と中年で多い

・またDM発症〜DMI発症までの期間は
 

 1型DMで18.9年[5-33], 2型DMで11.0年[1-25]

・発症時のHbA1cは9.34%[5-21]
 

 117/126で糖尿病性の合併症あり.
 

 46.6%で網膜症, 腎症, 神経症を合併.
 

 65.8%で2つ以上の合併症があり,
 75%で腎症が認められた.

・DMIの機序は不明確であるが動脈硬化やDM性血管障害, 血栓症を伴う血管炎, 虚血による障害が指摘されている.


DMIの診断/特徴

・DM患者における急性の筋痛や筋腫脹で疑う. 
特に下肢で多い.

・また, コントロール不良のDM, DM性合併症の存在はさらに可能性を上げる.

・多くの患者は初診時に発熱は認めず(89%), 外傷歴もない(96.3%)

・DVTの除外や感染症の除外, 自己免疫性疾患(APS)の除外は重要.


血液検査


・WBC上昇は42.5%で認められる.


 CRPやESRの亢進は8-9割で認められる

 
CPKは68.4%で正常範囲.


DMIの分布: 主に下腿近位で多い.


DMIの筋病理は非特異的であり, 筋壊死と浮腫を認める

・生検は感染症や腫瘍性病変の評価, 除外を目的として行われる.

MRI所見はT2WIでの高信号とT1WIの等〜低信号


・T2WI高信号は76.8%, T1WI等〜低信号は14.6%の頻度


DMIの治療は安静やNSAID, また抗血小板薬などが試される.

・基本的に保存的加療と血糖管理により1-3ヶ月かけて徐々に改善を認める.

・しかしながら再発例も1/3程度で認められる.


DMIの病状のまとめ表 (AACE Clinical Case Rep. 2019;5: e77-e81)




くりかえす扁桃腺炎に対する扁桃切除の有効性

 NATTINA trial: (Lancet 2023; 401: 2051–59)

繰り返す扁桃腺炎ではしばしば扁桃切除術が選択される.

扁桃腺炎の頻度や, 重症度が緩和される報告は多数あるが, 今回は各群N=200規模のStudyが発表された.


16歳以上の繰り返す扁桃腺炎患者を対象とし,
扁桃切除術群 vs 通常の治療群に割り付け比較したRCT.

・日常生活を妨げるような扁桃腺炎症状があり, 

 
過去1年以内に7回以上, または過去2年以内に5回/年以上, 過去3年以内に3回/年以上の頻度で繰り返す症例を対象.

・アウトカムは24ヶ月における咽頭炎の頻度, 症状の強さを比較.


母集団


アウトカム

・24ヶ月における咽頭痛の期間は,
 
切除群で23日[11-46]
, 保存群で30日[14-65]と
有意に切除群で短縮される.
・Baselineの頻度や重症度を考慮すると
 
扁桃栓切除によるIRR 0.53[0.43-0.65]と
ほぼ半減する結果.

・TOI-14(Tonsil Outcome Inventory-14)も有意に低下
 TOI-14は0-35点は軽症
 36-48が中等症
 49-70が重症

2023年6月5日月曜日

腹痛発作時にリンパ球が増多する症例

 症例: 中年の女性. これまで年に数回, 急性の腹痛で救急受診歴がある患者さん.

 誘因は様々〜認めず, 急性の腹痛を生じ体動困難となり受診.

 受診後 補液や検査中に改善し, 帰宅となることが多い.

 これまで複数回, 発作時に腹部造影CTも評価されているが, その際に十二指腸〜空腸の腸管の浮腫が認められ, 腸炎疑い, とされている. 


 血液検査ではCRP 0.5mg/dL程度の軽度の上昇のみ. という症例の相談を受けた.


腹部CTを見直すと確かに軽度の腸管浮腫があるのみで, 他に原因はない.

血液検査を見ると, 一つの違和感に気づいた.

それは, 発作で受診した時のリンパ球分画が常に高い(60%)ということ.

WBCは8000-9000と軽度上昇. 好中球は20-30%と低下し, Eo, Baは正常範囲.

Lyは60%台と高く, フォローの採血では速やかに低下(入院した際の翌日のLabでも低下)

他に生化学の検査では異常なし.


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このようなLabの動態を示す病態を, 自分は過去数回経験している.

それは, アナフィラキシーなのだ.




そこで色々論文を漁ると, 以下の論文があった.


Shock vitalの症例において, 血球分画を解析し, 比較した報告.

(American Journal of Emergency Medicine (2005) 23, 763–766)

・アナフィラキシーショック 17例


 出血性ショック 105例

 
心原性ショック 35例


 敗血症性ショック 18例を比較した.


アナフィラキシーショック群と他の原因のLabを比較すると,

・白血球増多が少なく, Neu分画が低く,
さらにLy分画が多い. 

 左方移動が生じにくいショックと言える.


Ly(%)の分布

・アナフィラキシーでは40%を上回る例が多い.


 出血性や心原性では広く分布.
 

 敗血症では左方移動が生じるため, Lyは低い.


なぜLyが上昇するのだろうか?

・これについては, 上記論文ではViral Infection説とカテコラミン説が挙げられているが, その双方ともアナフィラキシー症例のみでの説明はむずかしく, 原因は不明と結論されている.


カテコラミン説

(Brain Behavior and Immunity 1996;10:77-91)

・カテコラミンを投与すると
 ~30分で末梢循環中のLyが増加し,
 その後好中球の増加が認められ, Lyは低下する現象が観察される.

・カテコラミンはNK細胞や顆粒球数に影響するが,
 B細胞やT細胞数には影響しない.

・Lyの増加はβ2刺激が, 顆粒球の増加はα刺激が関連し,
 Lyは脾臓のプールより導入され, 
顆粒球は主に肺のプールより導入される.

・感情ストレスや運動ストレス下でも同様のLy増多が生じうる.


最近の報告では, 20-30歳の健常者を, 14度の冷水で
クーリングした研究があった.

(INTERNATIONAL JOURNAL OF HYPERTHERMIA 2021, VOL. 38, NO. 1, 696–707)

・冷水曝露後はカテコラミンや
コルチゾールは上昇する.


・一方, Lyは増加すると思いきや, むしろ低下している. Neuは徐々に上昇.


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冒頭の症例以外にも,
繰り返す急性〜亜急性経過の腹痛, 腸管浮腫 + 発作時にLy分画70%台, 翌日には改善という症例を経験しており, 
その症例は結果的にアナフィラキシー発作 → 全身性肥満細胞症であった.

アレルギーに関連したサイトカインが一過性のLyの主に脾臓から末梢血への遊走を促進させるのかは定かではない.

それ以外に脾臓プールの関連(脾腫?)などの要素も関わっているのか? 

ちょっとアナフィラキシーの症例集めてみる.

2023年5月31日水曜日

GCAに対するIL-17A阻害薬(セクキヌマブ)

・GCAに対する治療では, TNF阻害薬やアザチオプリン, シクロホスファミドなどのデータは乏しく, または効果が期待できない結果が得られている.

・一部の報告ではMTXは効果が期待できるが, それも結論が得られていない

・IL-6阻害薬は効果が証明された薬剤の一つであるが,
 CRPを抑制することでモニタリングが困難となる欠点がある.


・GCAの血管炎病変では, 外膜の活性化樹状細胞とIFNγを産生するTh-1細胞とIL-17を産生するTh-17細胞の集積が認められる.
 

 IL-17Aが多く発現していることから, IL-17Aを阻害することで病勢のコントロールができる可能性が示唆されている.


TitAIN trial: 初発/再発性のGCAでBio未使用, PSL 25-60mg/dを使用中である患者を対象としたphase II DB-RCT.

(Lancet Rheumatol 2023; 5: e341–50)

・上記患者群をSecukinumab(IL-17A抗体) 300mgを週1回, 4週間. 以後4週毎
とPlacebo群に割り付け, 28wkにおける寛解維持率を比較した.
 

 また52wkまでフォローし, PSL累積投与量, PSL減量成功率など比較

・PSLは両群で26wkにOffとするように減量.

・12wkまでに寛解が達成できなかった患者群や寛解後に再燃した患者, PSL減量が守れなかった患者群は責任医師の臨床判断にてPSLを使用(Escape群とした) 
(Secukinumab, Placeboは継続)



アウトカム


・28wk時点での寛解率は介入群で70% vs Placebo群で20%
 

 RD 0.50[0.29-0.67]と有意に介入群で良好

・52wkでの寛解率は
 59% vs 8%と有意に介入群で良好

・再燃までの期間は
Placebo群で197日[101-280]
 介入群では計算不可

・PSL投与量は,


介入

Placebo

~28wk

2506mg[990-6156]

2359[441-4996]

~52wk

2506[990-6156]

3466[441-6274]

Escape群

9例

19例

PSL≤5mg @19wk

88%

50%

PSL≤5mg @28wk

83%

45%

PSL≤5mg @52wk

90%

76%


 IL-17A阻害薬投与群でPSLの減量成功例は多く, 1年間の総投与量も減少できる結果

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まだ選択肢が少ない疾患であり, 選択肢が増えるのは歓迎できる.
Phase 3にも期待.

2023年5月18日木曜日

後天性第XIII因子欠損症

高齢者の筋肉内血腫や皮下出血など出血が顕著な症例.

PTやAPTTは正常で血小板減少や機能には異常はない...


PT, APTTが正常な凝固障害として想起するのが後天性VWDと後天性第XIII因子欠損症である

出血時間が伸びる場合はVWDを疑うものの, 今回は正常であったという程で考える



ということでお勉強です


後天性XIII因子欠損症 (Transfus Apher Sci . 2018 Dec;57(6):724-730.)

・第XIII因子はα, γフィブリン鎖を結合することで, 凝血塊を安定化させる作用を示す. 

 欠乏により出血や創傷治癒の遅延の原因となる. 


・第XIII因子欠損症ではAPTT, PT, 血小板数や機能は正常であり, 原因が不明な出血傾向がある患者において, 後天性vWDと共に想起することは重要


・症状は無症候性〜重度な出血まで様々

 出血部位は筋肉内出血や皮下出血が7割を占める. 

 他に頭蓋内出血が13-18%, 腹腔内や後腹膜出血も認められる.


日本国内より免疫性第XIII因子欠損症(後述) 93例をまとめた報告

(Blood Rev . 2017 Jan;31(1):37-45.)


・患者の平均年齢は65.8±18.1歳, 中央年齢70歳であり, 高齢者ほど頻度は増加する. 

 また男性例が51例, 女性例が42例と若干男性例が多かった. 


・出血部位は筋肉内出血が68%, 皮下出血が60%と多い.

 頭蓋内出血が11%, 腹腔内・後腹膜出血が19%で認められた. 

 術後の出血も16%で報告された.


後天性第XIII因子欠損症の機序は免疫性, 非免疫性に分類される.


・免疫性では第XIII因子の中和作用を持つインヒビターと, 第XIII因子のクリアランスを亢進させる非中和型の抗体がある. 

・非免疫性では産生の低下, また消費の亢進が挙げられる.


・それぞれの機序と背景疾患は以下.

機序

病態の特徴

関連する背景疾患

免疫性

第XIII因子の阻害, 代謝の促進

第XIII因子活性の高度低下(<10%)
重度の出血.

第XIII因子抗体の存在*

クロスミキシング試験による第XIII因子活性評価が鑑別に有用.

SLE, 関節リウマチ
悪性腫瘍(固形腫瘍, 血液腫瘍)
薬剤性(主にイソニアジド, 他にプロカインアミド, アミオダロン, ペニシリン, シプロフロキサシン)
MGUS

47%は背景疾患が不明な特発性.

非免疫性

消費の亢進

第XIII因子活性の軽度低下(20-70%)
出血は少ない, または軽度
他の凝固因子の低下も伴うことが多い

外科手術, 
DIC,
炎症性腸疾患
IgA
血管炎
敗血症
血栓症

産生の低下

肝疾患
白血病
薬剤性(バルプロ酸, トシリツマブ)

*コマーシャルベースには測定困難. 中和抗体ではBethesdaアッセイ, 非中和抗体ではBindingアッセイを用いる.

(Transfus Apher Sci . 2018 Dec;57(6):724-730.)(Haemophilia . 2021 May;27(3):454-462.)(Blood Rev . 2017 Jan;31(1):37-45.)

 


・基本的に免疫性第XIII因子欠損の方が第XIII因子活性は低下(<10%, 平均8.5±8.2%)し, 出血も重度となる. 

 非免疫性では活性は20-70%程度と軽度の低下となり, 出血症状も軽度であることが多い. 

 第XIII因子活性が低いほど, 重度の出血に関連する.


・検査は第XIII因子活性と第XIII因子抗原の評価を行う.

 免疫性第XIII因子欠損症の診断基準は以下の通り.


可能性あり

1.     主に高齢者における最近発症した出血症状

2.     先天性の第XIII因子欠損や他の凝固因子障害の家族歴を認めない

3.     過去の外科手術や侵襲的処置, 外傷で出血症状を認めていない

4.     抗凝固療法や抗血小板薬の過剰使用がなく, 薬剤では出血が説明できない

5.     第XIII因子活性や抗原が<50%と低下している.

準確診

上記1-5を満たし, さらに第XIII因子インヒビターが認められる(クロスミキシング試験の2時間値で再度活性が低下することで証明)

確診

上記1-5を満たし, さらに抗XIII因子抗体が証明される

(Thromb Haemost . 2016 Sep 27;116(4):772-774.)


 

・出血症状があり, 第XIII因子活性(±抗原)の低下が認められれば後天性第XIII因子欠損症を考慮する.

・さらにクロスミキシング試験にてインヒビターが証明されれば免疫性第XIII因子欠損症と診断する.

・抗第XIII因子抗体が証明できれば確定診断となるものの, コマーシャルベースでは検査はできない.


免疫性と非免疫性の鑑別では, クロスミキシング試験における残存第XIII因子活性の評価が有用(Haemophilia . 2021 May;27(3):454-462. )


・免疫性, 非免疫性の後天性第XIII因子欠損症患者において, 第XIII因子抗原, 活性を評価, 比較した報告では, 免疫性の方がより抗原, 活性共に低値であるがその値には重なりも多く認められた(A)(B). 



・クロスミキシング試験後に再度第XIII因子活性を評価した「残存第XIII因子活性」では免疫性群で活性低下が持続する一方, 非免疫性群では活性は軽度改善を認め, その差は明確となった(D).



後天性第XIII因子欠損症の治療


・出血を安定させるために, 第XIII因子製剤を投与する. 

 乾燥濃縮人血液凝固第XIII因子(ブロガミンP®)が使用可能である. 

 すぐに手配ができない場合は新鮮凍結血漿を用いる.


・非免疫性では第XIII因子活性を>10%に維持するように投与を行う. 

 また侵襲検査や外科手術時には>50%を目標に投与を行う. 

 治療可能な背景疾患への対応も重要である.

 トラネキサム酸を併用することで, 出血リスクを低下させる報告もある.


・免疫性第XIII因子欠損症ではさらに免疫抑制療法が推奨される. 

 ステロイドやカルシニューリン阻害薬, シクロホスファミドが用いられる. 

 適応外使用となるがリツキシマブも効果的である. 

 また免疫グロブリン静注療法も効果が期待できる. 背景疾患への治療も重要である.


・免疫性第XIII因子欠損症の長期予後は不明確ではあるが, 50-68%の患者で免疫抑制療法が終了できたとの報告もあり.


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自己免疫疾患や血液疾患に合併し, さらにPTやAPTTでは異常がでないが出血傾向となる病態

把握しておくと良いと思う.