Finlandの統計では, 脳梗塞発症率は
20-24yrで2.4/100000, 30-34yrで4.5/100000, 45-49yrで32.9/100000.
20-30yrでは女性例の方が多く, >30yrでは男性例が多くなる.
若年齢の方が脳梗塞の原因が不明な例が当然多く, リスクもはっきりしないことが多い.
>> しかしながら, 予後を考慮するとよりしっかりと診るべきは若年者
>> しかしながら, 予後を考慮するとよりしっかりと診るべきは若年者
若年者の脳梗塞において, 現時点で明らかなリスクファクターは, 経口避妊薬, 違法ドラッグ, アルコール中毒, 喫煙, 片頭痛, 妊娠, 出産.
若年者の脳梗塞の原因 Neurology® 2011;76:1983–1988
16−54yrの脳梗塞318例の解析.
男性195例, 女性123例. 16-44yrが131例, 45-54yrが187例.
脳梗塞の原因
原因不明の145例のうち, 43例(全体の13.5%)がPFO-ASA. (Patent foramen ovale, atrial septal aneurysm)
Total | 16-44yr | 45-54yr | |
動脈硬化性 | 15.4% | 8.4% | 19.8% |
頸動脈, 脳動脈解離 | 9.4% | 14.5% | 5.9% |
Small-vessel disease | 7.8% | 3.8% | 11.2% |
心原性塞栓 | 8.1% | 3% | 11.8% |
他の原因 | 14.1% | 19.8% | 10.2% |
原因不明 | 45.5% | 52.7% | 39% |
PFO-ASA | 13.5% | 15.3% | 12.3% |
Small-vessel disease | 2.8% | ||
原因不明な心室内血栓 | 1.5% | ||
大動脈弓部アテローム>4mm | 0.6% |
若年者の脳梗塞では卵円孔開存をチェック NEJM 2005;353:2361-72
<45yrの脳梗塞では43%が原因不明であり, その半分に卵円孔開存が関与しているとの報告がある
卵円孔開存自体は一般人口の27%で認められ, 片頭痛のRiskにもなる
<55yrの原因不明Strokeでは, PFOはRR 5.01[3.24-7.75]
>55yrでは, RR 1.20[0.56-2.56]
>55yrでは, RR 1.20[0.56-2.56]
PFO(+)の健常人で, 脳梗塞発症率は 0.1%/yr
PFOの程度(>=4mm), シャント血流量も関与すると考えられる
PFOの程度(>=4mm), シャント血流量も関与すると考えられる
Septal aneuarysmはRisk増大因子の1つ.
静脈系の血栓が卵円孔を通じてEmboliとなる機序が考えられ, 特にCalf-vein thrombiの合併頻度が高いとの報告もあり.
卵円孔開存評価にはEETがBest.
TTE + microbubble testでも感度は造影剤を用いたEETの半分程度
造影 Transcranial DopplerによるRLシャントもEETと同等の診断能
若年者の脳梗塞の予防は? NEJM 2005;353:2361-72
<60yrのStroke再発率は1.9%/yrと低く, 又治療の有無で差がないため, Stroke予防の必要性は不明.
Aspirin投与にて, PFO(+)群で2.3%, PFO(-)群で4.2%の再発率(4yr)
PFO + Atrial septal aneurysmでは, 15.2%と再発リスクが高い.
⇒ 高齢者ならばAspirinを投与すべきであるが,
若年ならばその他のRiskを評価しつつ, 適応を考慮するのが良い
若年ならばその他のRiskを評価しつつ, 適応を考慮するのが良い
Medical Therapy
WarfarinとAspirinの比較では有意差無し. 出血RiskはWarfarinでUP
小規模Studyしかなく, Evidence的にはPoorな領域.
ハッキリしたことは言えないが, Riskを考慮して適応を(CHADS2など).
ハッキリしたことは言えないが, Riskを考慮して適応を(CHADS2など).
PFO患者における閉鎖術(脳梗塞予防目的)NEJM 2005;353:2361-72
PFOの閉鎖術
以前は開胸が一般的であったが, 侵襲が大きく, PFO(+)患者のStroke発生率と天秤にかけると… 微妙な感じ
経皮的閉鎖術は低侵襲であり, Case-controlなど多い.
1355名に対する経皮的閉鎖術では術後1年以内のStorke発症は0-49% ⇒ Medical Therapyでは3.8-12.0% (Ann Intern Med 2003;139:753-60)
経皮的閉鎖術の合併症としては, 出血, 心タンポ, PE, 死亡が1.5%, 不整脈, Device fracture, embolization, 空気塞栓, 血腫, 瘻孔が7.9%
High-Risk群では閉鎖術の適応を進められている(>=2/4項目)
Shunt(>50bubbles)
Atrial septal aneurysm
多発性梗塞
多発性梗塞
ValsalvaにてStrokeが誘発 (Neurology 1996;46:1301-5)
Cryptogenic Stroke + PFO患者のStroke再発RiskをMeta Neurology 2009;73:89-97
*Cryptogenic Stroke: 明らかな原因が不明な脳梗塞 全脳梗塞の25%, 若年性脳梗塞の50%を占める
PFO(-)の患者群との比較では, PFO(+)患者のStroke, TIA再発RR 1.07[0.76-1.49]
Stroke再発RR 0.83[0.52-1.31]
Stroke再発RR 0.83[0.52-1.31]
PFO(+)患者群のStroke, TIA再発率 3.99[2.94-5.03]/100pt-yr
Cryptogenic Stroke患者の再発率 1.53[1.07-2.00]/100pt-yr
Cryptogenic Stroke患者の再発率 1.53[1.07-2.00]/100pt-yr
PFOの有無が再発Riskには関与しないとの結果. PFO閉鎖術を行う必要性は低いかもしれない
ガイドラインによるPFOの評価, 治療方針 Neurology 2009;73:89-97
心エコーの適応と治療方針
ガイドラインによるPFOの評価, 治療方針 Neurology 2009;73:89-97
心エコーの適応と治療方針
Diagnosis |
ACC/AHA/ASE |
American Academy of Neurology |
ACCP |
TTE or TEE |
<45yr + 脳血管イベント >45yr + 神経障害 (脳血管イベントは無くても良い) (Class I) |
若年(<55yr)のStrokeでは PFO, Atrial septal aneurysm評価を (Level C) |
記載なし |
TTE vs TEE |
TTEがNegならば, TEEを考慮 |
記載なし |
TEEはTTEより感度良好 |
Management |
ACC/AHA/ASE |
American Academy of Neurology |
ACCP |
PFO |
記載なし |
Warfarin, Aspirinの 優位性は不明. Warfarinは出血Risk↑ 外科手術とカテーテル閉鎖の 優位性も不明. |
抗血小板薬が Warfarinよりも推奨される (PFO単独では) |
PFO + 他Risk |
記載なし |
記載なし |
Medical vs Surgical Therapy で優位性は不明. |
PFO + DVT,PE |
記載なし |
>3moの抗凝固療法 |
抗凝固療法 |
明らかな原因のない脳梗塞でPFOがある場合は基本的にはアスピリンでOK
他のリスクがあれば抗凝固を考慮する。
閉鎖療法は脳梗塞のみでは基本的に適応にはならない
PFO以外の原因になりそうな疾患 NEJM 2005;353:2361-72
原因になりそうな疾患 |
原因不明 Strokeで 占める割合 |
一般人口で 占める割合 |
Risk for Stroke |
|
Myxoma |
LA, 卵円孔に 接するのが70% |
<2% |
0.01%, F:M=2:1 |
High |
Papillary fibroelastoma |
左心系の弁膜に生じる |
Very low |
0.0003% |
不明 |
Valvular strands |
外傷により, MV, AV付近に 生じる傷, フィブリン血栓 |
38.8% |
46.9% |
RR 0.59[0.08-4.43] |
MV prolapse |
粘液腫性の変性 Marfan, Ehlers-Danlos など関与 |
2.8% (<45yrの Stroke, TIA) |
2.4% (平均Age 56yr) |
TIAはRR 2程度 Strokeでは 有意差無し |
肺内シャント |
HHT, Lover diseaseと関与 |
Very low |
不明 |
不明 |
大動脈弓血栓 |
動脈硬化に関与する |
Very low |
不明 |
High |
若年者の脳梗塞で稀だがあり得る疾患 Lancet Neurol 2010; 9: 1085–96
抗リン脂質抗体症候群
SLE, 膠原病, ANCA関連血管炎
感染症; Syphilis, VZV, HBV, HCV, HIV
クリオグロブリン血症(HCV感染症)
違法薬剤
Primary CNS vasculitis, CNS感染症
Hyperhomocysteinemia
ATIII, Protein C, S欠損症
Factor V Leiden, Prothrombin G20210A変異
鎌状赤血球症
Retinocerebral arteriopathies
Periarteritis nodosa
高安病
Fabry病
CADASIL
MELAS
HANAC syndrome
肺内シャント量が多いほど脳梗塞リスクも高い
Hereditary hemorrhagic telangiectasiaのスクリーニングを行う患者群において, 肺内シャントの有無, 程度と脳血管障害リスクを評価
肺内の右左シャントは530名で検出.
程度はMicrobubbleを用いて, Grade分類で評価.
程度はMicrobubbleを用いて, Grade分類で評価.
Grade 0 |
no microbubble |
Grade 1 |
<30 microbubble |
Grade 2 |
30-100 microbubble |
Grade 3 |
>100 microbubble |
平均年齢 44.3±15.6歳
脳血管障害は51例で検出され, Grade別での発症率は, 有意に高度のRLシャント群でより高頻度.
Grade 0 |
1.4% |
Grade 1 |
0.4% |
Grade 2 |
6.5% |
Grade 3 |
20.9% |