蜂刺傷は通常局所の疼痛, 発赤, アレルギーによるアナフィラキシーショックが有名.
複数刺され, 体内の蜂毒素が高くなると血管内溶血, DIC, 横紋筋融解症, AKI, 急性肝炎等 多臓器不全を呈し致死的となる症例報告がある.
(Saudi J Kidney Dis Transplant 2008;19(6):969-972)
● 22歳男性, 50-100箇所の蜂刺傷を受けた.
アナフィラキシーは無く, Vitalも正常.
市中病院でステロイド, H1阻害薬のDIVを受けたが, 次に示す様な経過をたどったため, 大規模病院へ転院となった(インド)
入院時は急性腎不全, AST 7000台, CPK上昇,
AST>LDHであり, 横紋筋融解と急性肝障害の合併疑い.
PLT低下, 貧血進行もあり, DICと血管内溶血が示唆.
腎生検では微小血管閉塞の所見
蜂刺傷による微小血管内溶血を疑われたが, 破砕赤血球は無く, 血漿交換のEvidenceも乏しい為, 行われなかった.
この症例はDay 9に死亡.
多臓器不全が軽度で済む症例でも, AKIによる乏尿, 無尿が継続し, 透析で繋ぐ必要があることもある.
3例の症例報告では1例死亡, 2例は完全に改善した経過であった.
腎機能は透析離脱までは16日~20日, 完全に改善するまでは42日~56日間かかっている
(NEPHROLOGY 2005; 10, 548–552)
29歳女性の蜂刺傷例の経過
貧血の進行とBilの上昇あり, 溶血を示唆.また腎不全も認めたが, 透析にはいたらず.
腎機能は14日をピークに改善を認めた. 肝障害も認めたが, 問題なく改善.
(Nephrol Dial Transplant (1999) 14: 214–217)
文献より24例のReview
様々な蜂で生じる(スズメバチだけではない)
病態は血管内溶血, 横紋筋融解, 肝炎(肝細胞壊死), 急性腎不全(ATN)の組み合わせである事が多い.
病態は血管内溶血, 横紋筋融解, 肝炎(肝細胞壊死), 急性腎不全(ATN)の組み合わせである事が多い.
死亡は6/24と25%に及び、予後は悪い病態と言える.
(Nephrol Dial Transplant (1999) 14: 214–217)
30歳男性, 登山中にAfricanized beeに複数回刺された. 数えると2000箇所も刺されており, 耳の中からも蜂がでてきた.
来院時Shock vitalであり, ステロイド, H1,H2阻害薬, 補液, 電解質補正等施行.
第3病日に無尿となり, 腹膜透析を行い, 同時に毒素除去目的に血漿交換を開始. 血漿交換は計3回施行した.
最終的には21日目に後遺症無く退院
(Arch Intern Med. 1998;158:925-927)
まとめると,
蜂の種類によらず, 大量に刺される事で体内では血管内溶血と横紋筋融解を生じ, その結果AKI, 肝細胞壊死を生じることが分かった.
AKIは重度で透析となる例が多いが, 増悪するのは大体2-3週間がピークでその後1-2ヶ月で改善してくる可能性も高い.
治療は対症療法が一般的ではあるが, 一部では血漿交換が行われている. ただし, 有用性は未だ不明.
ハチ毒; bee venom, Apitoxinの成分は
酵素; ホスホリパーゼ, ヒアルロニダーゼ, プロテアーゼ
ペプチド; Melittin, キニン, ヒスタミン, ドーパミン.
ハチ毒は1-5µg/mLの濃度で24h細胞死を引き起こし, 10µg/mLの濃度では72時間持続する.
半減期によりことなると考えられている
従って, 血中濃度が高い事が予測される場合は, 早期の血漿交換による除去は理にかなっているかもしれないが, 臨床的に評価, 比較したStudyは皆無.