① マイコプラズマ特異抗体のペア血清で4倍以上の増加を認める
② 喀痰、咽頭拭い液からのマイコプラズマPCR陽性
③ 喀痰からのマイコプラズマ培養陽性
と後付けの診断であり, 現場に即したものとは言えない.
抗体検査には、PA法とCF法の2つがあり, IgGとIgMをチェックするが, 主にPA法ではIgM, CF法ではIgGとIgMをチェックしている。
関連凝集素は感度, 特異度共に50%程度とショボい.
PA法と、CF法の感度, 特異度は以下の通り
Sn(%)
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Sp(%)
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LR(+)
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LR(-)
|
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PA法
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||||
1:40
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89[79-95]
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83[78-87]
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5.2[4-6.8]
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0.1[0.1-0.3]
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1:80
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80[68-89]
|
92[88-95]
|
10.4[6.8-16]
|
0.2[0.1-0.4]
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1:160
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71[59-81]
|
96[93-98]
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17.7[9.7-32.2]
|
0.3[0.2-0.4]
|
1:320
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56[38-62]
|
97[95-99]
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21.9[10.2-46.8]
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0.5[0.3-0.6]
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CF >=64倍
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33[25-43]
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99[96-100]
|
25.2[8-79.9]
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0.7[0.6-0.8]
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ImmunoCard Mycoplasma
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90[85-94]
|
93[91-95]
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13.4[9.7-18.5]
|
0.1[0.1-0.2]
|
Clin Vaccine Immunol 2006;13:708-10
J Clin Microbiol 1996;34:1180-3
J Clin Microbiol 1996;34:1180-3
ちなみに血清の迅速検査はImmunoCardを使用し, IgMを見ています.
これを見ると、ペア血清ではなくても良さげに見えるが,
他のStudyを診てみるとそうとも言えず、
マイコプラズマ特異的IgM, IgGをチェックする12種類の製品検査の感度, 特異度
Gold standardはPCRでの検出. PCRに陽性となった27名と陰性となった33名の血清を前向きに評価(下気道感染症 発症Day 1での血清)
またマイコプラズマ以外のViral, Bacterial pneumonia 63例の血清でも同様に評価.
ImmunoCardは感度50%以下しかなく, 特異度は79%のみ.
どの検査も感度は低いし, PCRがGold Standardということ自体疑問も残る
(JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, May 2005, p. 2277–2285)
マイコプラズマPCRの感度, 特異度の評価では,
2つのマイコプラズマ肺炎のアウトブレイクにおけるRT-PCRと血清検査の診断能を評価
咽頭拭い液にてRT-PCR検査を施行. QIAamp DNA[Qiagen], MagNA Pure LC[Roche Applied Science]), また, 血清検査はImmunoCard(IgM), Remel IgG/IgM assayを施行263例中, 97例が臨床的にマイコプラズマ肺炎と判断.
各検査の感度, 特異度は
PCRは特異性は良いが, 感度は20%程度と低い. (Clinical Infectious Diseases 2009;48:1244–9)
これは咽頭拭い液を検体として使用していることも原因として考えられ,
別のStudyにおいて, 喀痰, 鼻咽頭吸引液, 咽頭拭い液にてPCRを施行すると, 其々感度は
● 喀痰 69%
● 鼻咽頭吸引液 50%
● 咽頭拭い液 37.5% と感度が明らかに異なる. (J Med Microbiol. 2005 Mar;54(Pt 3):287-91.)
結局のところ, 問題点は,
● 抗体検査, 遺伝子検査, 培養検査どれも感度が不十分な点.
● その感度が不十分な検査をGold standardとして他の検査の感度, 特異度が出されている点.
それをふまえて,
マイコプラズマ肺炎を疑った場合は, 臨床像, 画像, 検査結果を複合して判断.
疑えばカバーが必要. 除外するのは困難.
PCRをするならば咽頭拭い液ではなくて喀痰を使うべき.
ということは分かった.
最近保険適応となった咽頭拭い液のマイコプラズマ抗体検査がどの程度役に立つかは論文が見付けられませんでした。少なくともPCRに勝る感度とは思えず...
あと, PCRの検体別の感度の差を見ると, 咽頭拭い液よりは喀痰でチェックした方がいい気もしますが, データは知りません。