しかしながら現実問題, 全例にTEEを行うのは困難な事も多く, SABにおけるTEEの適応に関しては最近様々なStudyがでており, 今後明確な基準ができるかもしれない. その辺は後日記載します.
(Clinical Infectious Disease 2011;53:1-9)(Medicine 2013;92: 182-188)
では, レンサ球菌菌血症症例ではIEのルーチン評価は必要かどうか?
"レジデントのための感染症マニュアル 第二版"には, TEEはSABの全例, 他のGPC菌血症の場合, 感染Focusがはっきりしない場合にTEEを行うべき, との記載がある.
TEEの対費用効果を考慮すると,
IEの検査前確率 4-60%の場合に第一選択としてTEEを行うことがよいとされている
(Am J Med. 1999 Sep;107(3):198-208.)
検査前確率>60%の場合は検査せずにIEをカバーしにいった方が良いし,
2-3%の場合は経胸壁エコーで除外することも許容される.
実際, レンサ球菌 菌血症(Streptococcus spp. bacteremia; SSB)の場合, どの程度の感染性心内膜炎を合併し得るのだろうか?
遠隔播種のリスク因子を1つ以上満たすSAB 85例, SSB 30例のprospective cohort
(Medicine 2012;91: 86-94)
遠隔播種のリスク因子は以下の通り;
○市中感染症
○治療の遅れ
○>48時間の血液培養陽性持続
○治療開始後>72時間発熱が持続
遠隔播種はPETにて評価した.
アウトカム; 遠隔播種の頻度は以下の通り
心内膜炎の合併率は, SABで15.3%, SSBで30%. 統計学的には両者に有意差は無し.
SSBでは遠隔播種を認めたのが20/30(67%)で, 20例で30部位の感染.
SABでは遠隔播種を認めたのが64/85(75%)で, 64例で101部位の感染.
>> 重複感染率も両者で同等
SABとSSBの遠隔播種を評価したRetrospective cohortでも, 遠隔播種の頻度は39% vs 25%と有意差ないものの, 心内膜炎, 脳血管感染症の頻度はむしろSSBの方が高頻度であった
(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2007 Feb;26(2):105-13.)
つまり, SABにしてもSSBにしても, 実はIEのリスクは同等であり,
SSBでも同様にIEを評価せねばならない可能性が高い.
特に遠隔播種のリスク因子を満たす症例に関しては, 積極的に捜すべきなのかもしれない.
ちなみに, 遠隔播種のリスクは, 以下の通り.
(Medicine 2012;91: 86-94)
これを見ると, 治療の遅れ, >72時間の発熱持続, 侵入門戸不明例, 異物は遠隔播種のリスク因子であり, それらを満たすSSBでもIE評価は大事となりそう.
SAB以外のGPC菌血症の場合はFocus不明例のみで調べれば良い, となると見逃すリスクもあるのかもしれない.
(注意; これらのGPC菌血症, SSBは肺炎球菌菌血症は除かれています)