ページ

2012年5月1日火曜日

COPDに対する吸入ステロイド


COPDに対する吸入ステロイドは急性増悪頻度を減少させるが, 肺炎が増加することが分かっている.
いろいろMeta-analysisをみてみると,

Chest 2010;137:Issue 2.Feb 吸入ステロイド(ICS) vs Control. ICS+LABAは除外されている.Jadad score 3以上の11 RCTのメタで, N=8164. JadadとはRCTのクオリティを評価する指標. 1-5で5が最も良好.
結果は,  吸入ステロイドにより急性増悪Riskは18%軽減(RR 0.82[0.73-0.92])FEV1>50%群では, 急性増悪予防効果は認められないが, FEV1≤50%群では予防効果を認める. FEV1>50% RR 1.026[0.859-1.226] FEV1=

LABAとの併用 vs LABA単独治療の比較のMetaをみると(Chest 2009;136:Issue 3.Sep)ICSの併用は急性増悪頻度をNNT40で低下させる一方, 肺炎リスクをNNH 40で増加させるとの結果.他には口腔カンジダの増加が認められる. 

吸入ステロイドと肺炎のリスクを評価したMetaによると, (Arch Intern Med. 2009;169(3):219-229)
肺炎のリスクは RR 1.60[1.33-1.92]
重症肺炎リスクは RR 1.71[1.46-1.99]
 vs Placeboでみると RR 1.81[1.44-22.9] vs LABAでみると RR 1.68[1.20-2.34]
肺炎関連死亡 RR 1.27[0.80-2.03]と有意差無し.
結論はICSは肺炎リスクを有意に上昇させるが, 死亡リスクは変わらない.

さらに同様にCOPDに対するICSのMeta (JAMA 2008;300:2407-16)をみてみると
肺炎リスク RR 1.34[1.03-1.75], 骨折リスク RR 1.09[0.89-1.33]
Sub解析において, 特に肺炎リスク上昇となる要素は,ICS dose >1000mg, ICS使用期間2年以内, FEV1

ICSの種類ではなにか違いがあるか?
Budesonideの吸入に対する9 trialsのMetaによると(Lancet 2009;374:7:712-9)
(N=7042, 追跡期間>6ヶ月)
肺炎リスクはHR 1.05[0.81-1.37], 重症肺炎リスクは HR 0.92[0.62-1.35]と有意差無し.

以上をまとめると

COPDに対するICSは, 急性増悪予防効果はあるが, それはFEV1 ≤50%の重症例のみ. 一方肺炎リスク増加もあり得る. 特に重症COPDでリスクが高くなる. 他の肺炎のリスクは高用量のICS, ICS使用開始後2年以内が挙げられる.

 ICSでもBudesonide(パルミコートもしくはシムビコート(合剤))ならば肺炎リスクは上昇させない可能性がある.


使用を考慮すべき患者は重症のCOPDであるべきで、使うならばパルミコート or シムビコートがいいってことかなぁ。