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2022年12月29日木曜日

ITPに対する新薬: Fostamatinib(タバリス®)は関節リウマチ合併ITPによいかも

新しくITPの治療の選択肢となったFostamatinib

Spleen Tyrosine kinase(Syk)阻害薬である.

・SkyシグナルはITPにおいて抗体を介した血小板破壊の中心的な役割を担う. このSykを阻害することで血小板破壊の抑制効果が期待できる.

・Fostamatinibは経口Sky阻害薬であり,
FIT1, 2 trialsにおいて有意に血小板の改善が得られている.


FIT 1,2: 持続性, 慢性ITP患者を対象

(Am J Hematol. 2018 Jul;93(7):921-930.)

・Fostamatinibを1日2回内服群とプラセボ群に割り付け比較


 投与量は100mgを1日2回, または150mgに増量が可能.

・アウトカムはPLT >5万/µL達成, 維持率

・5万以上を維持できた症例は
投与群で18%, プラセボ群で2%と
有意にFostamatinib群で良好.

・12wk以内にPLT ≥5万達成率は43% vs 14%であった.


FIT 1,2の長期フォロー

(Am J Hematol. 2019 May;94(5):546-553.)

・28ヶ月間において, 44%でCRを達成.

 
TPO製剤が無効であった症例の34%でCR

・有害事象は下痢や高血圧, 嘔気嘔吐, 肝機能異常があったが, 軽症や中等症が主.


ということで, FostamatinibはTPO製剤が無効であったITP症例の1/3でCRが期待できる, 新たな治療の選択肢となる薬剤と言える.


そして, このSky阻害薬がRAでも効果が期待できる.


MTX投与下の活動性RA患者457例を対象とし,
Fostamatinib 100mg bid, または150mg/d(1日1回)群, Placebo群に割り付け, 比較したDB-RCT

(N Engl J Med 2010;363:1303-12.)

・MTXは7.5-25mg/wkを3ヶ月以上使用している状況で,

 
TJ, SJが6箇所以上, 炎症マーカー上昇を認める群.

・他のcsDMARDの併用は可. PSL ≤10mg/dの使用は可.


 bDMARDはWashout期間を経ている場合は使用歴があっても良い.


アウトカム


・Fostamatinib群では有意にACR20, 50, 70達成率が良好.

 
特に100mg bid群(200mg/d)で効果は良い

副作用の頻度


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しばしばRA患者に合併するITP症例はある. またその逆も.

そういった症例で, 難治性ITPでTPO製剤を使用するくらいならば, このsky阻害薬の選択は双方にとってよいかもしれない.

選択肢として覚えておく価値はありそう.

2022年12月9日金曜日

バセドウ病に合併する自己免疫性疾患は?

某自己免疫性疾患の精査をしていると, バセドウ病が発見された.

自己免疫性甲状腺炎(橋本病)とバセドウ病は, 自己免疫性甲状腺疾患であり, 

最も多い自己免疫性疾患の1つ
.

T細胞関連臓器特異性自己免疫性疾患に分類される.


バセドウ病2791例, 橋本病495例の通院患者において,
 併存する自己免疫性疾患を評価した報告では,

(The American Journal of Medicine (2010) 123, 183.e1-183.e9)

・バセドウ病の9.67%, 橋本病の14.3%で自己免疫性疾患が併発.

・最も多いものはRA. 他は悪性貧血, 白斑といったものが多い



1993-2010年の外来診療より3209例のGD患者を前向きに評価

(Autoimmun Rev. 2019 Mar;18(3):287-292.)

・対象群として, 年齢, 性別, ヨウ素摂取量がほぼ同じ
一般人口より無作為にマッチさせた3つの対称群を導入

 対象群Iは同じ地域の一般人口. 甲状腺スクリーニングを行い, 甲状腺障害がある患者は除外.

 対象群IIは一般人口から無作為に抽出した自己免疫性甲状腺炎(AT)群

 対称群IIIは一般人口から無作為に抽出された非中毒性多結節性甲状腺腫(MNG)群


自己免疫性疾患の合併率は, 

 GD患者群で16.7%,
 一方でAT群で18.5%と高く

 
一般人口群では3.3%, MNG群では3.5%と, 
GDとATで頻度が高い.

・ATとGDでは各疾患の合併率に差はない.

・GDで最も多い自己免疫性疾患の合併は, 白斑症 2.6%, 慢性自己免疫性胃炎 2.4%, RA 1.9%,
 PMR 1.3%, MS 0.3%, Celiac disease 1.1%, 1型糖尿病 0.9%
 

 他はSLEやサルコイドーシスが<0.1%, Sjogren症候群 0.8%


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膠原病ミミッカーとして甲状腺疾患は重要で, 有名なので

通常スクリーニングとして甲状腺機能は評価されることが多い. 

大体がその時に気づかれるので見落とすことがないとは思われるが,

今回PMR患者でバセドウ病が隠れていたのでそういうことがあるのか, と思い調べてみた次第