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2020年3月30日月曜日

新型コロナウイルス(COVIT-19)感染症の症状

いろいろな論文より, 症状頻度をまとめてみました.
母集団の重症度により症状頻度は異なりますので, 備考にその母集団の死亡率やICU管理率, 重症例の割合を記載しています.

症状頻度
文献1
2
345
 (<60
歳群)
(<60yo)
5
 
(≥60歳群)
(≥60yo)
6(消化器症状+群)
(with GI symptoms)
(消化器症状-)
(without GI symptoms)
N41138109916165213674577
備考
remarks
死亡例15%, ICU管理32%
(morality 15%, ICU pt 32%)
ICU管理26%
(ICU pt 26%)
死亡例1.4%
(mortality 1.4%)
死亡例41%
(mortality 41%)
重症以上 6.8%
(Severe/critical case 6.8%)
重症以上 24.3%
(Severe/critical case 24.3%)
重症例が23%
(Severe case 23%)
重症例が8.1%
(Severe case 8.1%)
発熱
Fever
98%98.6%43.8%(37.5度)91%79.9%84.6%85.1%83.5%
咳嗽
Cough
76%59.4%(乾性)67.8%68%64.6%62.5%71.6%66.2%
喀痰
Sputum
28%26.8%33.7%30%33.1%36.0%39.2%34.3%
血痰
Hemoptysis
5%NA0.9%3%1.8%2.2%4.1%1.4%
呼吸苦
Dyspnea
55%31.2%18.7%44%3.1%12.5%10.8%3.30%
結膜充血
red eye
NANA0.8%NA
NA
NA
NANA
鼻汁, 鼻閉
rhinitis
NANA4.8%NA6.9%1.5%2.7%6.1%
咽頭痛
sore throat
NA17.4%13.9%4%14.4%12.5%8.1%16.1%
筋肉痛
muscle ache
44%34.8%14.9%22%10.9%14.7%13.5%10.6%
倦怠感
fatigue
69.6%38.1%50%17.6%17.6%31.1%16.6%
食欲低下
loss of apatite
NA
39.9%
NA
24%
NA
NA
NA
NA
頭痛
headache
8%6.5%NA11%10.3%5.9%21.6%8.8%
悪心
nausea
NA10.1%5%9%11.8%8.1%--
嘔吐
Vomitus
NA3.6%6%--
下痢
diarrhea
3%10.1%3.8%28%--
腹痛
abdominal pain
NA2.2%NA7%--
NA: not assessed
1; Lancet. 2020 Feb 15;395(10223):497-506.
2; JAMA. 2020;323(11):1061-1069.
3;
N Engl J Med. 2020 Feb 28. doi: 10.1056/NEJMoa2002032.
4;
BMJ. 2020 Mar 26;368:m1091.
5;
Clin Infect Dis. 2020 Mar 25. pii: ciaa242. doi: 10.1093/cid/ciaa242.
6:
Gut. 2020 Mar 24. pii: gutjnl-2020-320926. doi: 10.1136/gutjnl-2020-320926. 

身体所見を評価した論文では, (Physical examination)
咽頭発赤(redness of the pharynx) 1.7%, 扁桃腫大(tonsillitis) 2.1%, リンパ節腫大(lymph node swelling) 0.2%, 皮疹(rash) 0.2%
(N Engl J Med. 2020 Feb 28. doi: 10.1056/NEJMoa2002032.)

主な血液検査(文献は上記参照)
文献1
2
345
 (<60
歳群)
5
 
(≥60歳群)
6(消化器症状+群)(消化器症状-)
WBC6200[4100-10500]4500[3300-6200]4700[3500-6000]5900[3500-9500]4800[3800-5900]4800[3900-6400]4850[3800-6340]4700[3760-5900]
Ly<1000が63%800[600-1100]1000[700-1300]800[600-1200]1200[900-1600]1100[700-1400]970[730-1300]1200[900-1600]
LDH286[242-408]261[182-403]41%(250 IU/L)322[250-511]204[165-255]244[206-311]229[170-316]210[169-258]
PCT(ng/mL)69%(<0.1)64.5%(<0.05)94.5%(<0.5)0.09[0.04-0.23]


0.06[0.03-0.09]0.05[0.04-0.07]
CRP(mg/dL)


60.7%(1mg/dL)5.3[1.9-11.3]0.7[0.2-1.7]1.9[0.6-4.5]1.57[0.48-2.40]0.79[0.26-2.0]


シンガポールにおけるCase-control study
(Clin Infect Dis. 2020 Mar 25. pii: ciaa322. doi: 10.1093/cid/ciaa322. [Epub ahead of print])
1/26-2/16National outbreak screening center, 3次施設を受診し, SARS-CoV-2PCR検査を行われた患者を対象.
上記を満たす788例のうち, PCR陽性は54(6.9%)
 陽性群と陰性群を比較

症状の比較:
症状
陽性例
陰性例
p
咳嗽
66.7%
71.9%
0.5
喀痰
24.1%
27.1%
0.7
呼吸苦
13%
12.7%
1.0
鼻汁, 鼻閉
22.2%
30.8%
0.2
咽頭痛
33.3%
45.2%
0.1
肺音異常
11.1%
4.9%
0.1
上記以外の呼吸器症状
3.7%
5.9%
0.7
消化管症状
37%
32.4%
0.6
検査の比較;

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COVIT-19感染症の症状はその母集団の重症度も異なるため, 報告によっても差がある.

症状について:
・咳嗽は6割以上で認められ, Study間で差は少ない.
・喀痰も大体3割程度で認められる. 
・呼吸苦は当然だが, 重症度が高い母集団ほど多い
・結膜充血, 鼻汁・鼻閉はCOVIT-19では少なく, これらを認める場合は他の上気道炎を考慮する切っ掛けとなり得る. (参考:インフルエンザは鼻汁33-50%, 鼻閉68-91%(直接比較はできないが・・・)(JAMA 2005;293:987-997))
 同様に咽頭痛も2割未満の頻度と少ない. (参考: インフルは咽頭炎75-84%(JAMA 2005;293:987-997))
・筋肉痛, 節々の痛みは1-2割程度. (参考: インフルエンザは60-94%(直接比較はできないが・・・)(JAMA 2005;293:987-997)

・腹痛, 下痢, 悪心嘔吐といった消化管症状は1-3割程度で認め得る. 嘔吐よりも下痢が多い.

検査所見について:
・血液検査所見では白血球上昇を認めず, 且つリンパ球が1000程度まで低下するのがポイント.
・LDHは正常〜軽度上昇で, 高値ほど予後不良となる.
・CRPは軽度上昇(高くても10mg/dLいかない程度)で, PCTは正常範囲

2020年3月27日金曜日

肺吸虫症

肺吸虫症(Paragonimiasis)
(Intern Med 54: 179-186, 2015)
・Paragonimus(P. westermani, P. skrjabini miyazakii)による感染症で淡水に生息する甲殻類が二次中間宿主, 野生のイノシシが待機宿主でそれらの経口摂取で感染する.
・日本ではサワガニやイノシシ肉が主な感染源
1950年代には多かったが, 集中的な予防により減少.
・1970年代には稀な感染症となったものの1980年代から徐々に報告例は増加しつつある.

日本国内における肺吸虫症の解析では2001-2012年に報告された肺吸虫症は443.
・分布

年齢分布と感染経路

症状頻度
・咳嗽, 血痰, 胸痛, 呼吸苦が主
・発熱は1割前後

血液検査
好酸球増多(≥7%)7−8割で認められる

画像所見
胸水, 肺炎, 結節など

(気管支学.201234552557)

野生動物の病原体保有率は?

東京西部で捕獲されたイノシシ42頭の肺検体において肺吸虫を精査した報告
・42頭全頭で肺吸虫を検出.
・4種類の肺吸虫が検出された; M. elongatus, M. salmi, M. asymmetricus, M. pudendotectus
保有寄生虫量には季節性があり1-3月が最も多いちょうど猟期
(J Vet Med Sci 2007;69(4):417-420)

シカはどうか?
・岐阜県で捕獲されたシカ148頭のうち, 4頭より抗肺吸虫抗体が陽性.
このシカが捕獲された地域にはウェステルマン肺吸虫のメタセルカリアを認めるサワガニが確認され, 胃内容物より甲殻類も検出された.
(日獣会誌 2018;71:449-453)