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2015年11月30日月曜日

高コレステロール血症に対するPCSK9モノクローナル抗体

PCSK9: Proprotein convertase subtilisin/kexin type 9.
 肝臓で産生されるプロテアーゼで, LDL産生に関わる酵素.
 PCSK9に対するモノクローナル抗体はコレステロール低下効果が期待できる.

2015年11月末にこのPCSK9モノクローナル抗体 レパーサ皮下注140mgシリンジ®が承認を得ました. 今後市場に出回ることでしょう.

さて, これを機会に, 自分がいままでチェックしていたRCTをまとめてみます.

DESCARTES trial: 高脂血症で推奨治療を4-12wk施行しても, LDL-Chol≥75mg/dLとなっている患者群のRCT.(N Engl J Med 2014;370:1809-19.)
推奨治療はガイドラインに則り, 食生活改善のみ, Atrovastatin 10mg/d, 80mg/d, Atrovastatin 80mg + ezatimibe 10mg/dの併用療法が選択.
・これらの治療にてLDL-C≥75mg/dLの群をEvolocumab 420mgを月1回投与 vs Placeboに割り付け比較した.

母集団データ
アウトカム: 
Evolocumab投与群ではどの患者群でもLDL-C<70mg/dLを8割以上で達成できている

副作用頻度
特にリスクが高い副作用は認められない.

RUTHERFORD−2 trial: ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症の患者で, 投薬治療後もLDL≥100mg/dLの331例を対象としたDB-RCT. (Lancet 2015; 385: 331–40 )
Evolucumab 140mg皮下注 2wk毎 vs 420mg 毎月 vs Placeboに割り付けLDL-Cholを比較

アウトカム: LDL-Cの変化
 140mg 2wk毎の皮下注と, 420mg毎月の皮下注双方で有意なLDL-C低下が認められる.
 投与量, 期間では140mg 2wkと420mg毎月で同等. 費用的には前者がBetter.

副作用頻度
 特に増加する副作用もない

TESLA Part B: ホモ接合体家族性高コレステロール血症 50例を対象としたDB−RCT.
(Lancet 2015; 385: 341–50)
Evolocumab 420mg 4wk毎投与 vs Placeboに割り付けて比較

アウトカム: LDL-Cの変動
 母集団のLDL−Cholは平均300mg/dL
 Evolocumabは有意にLDL減少効果を示す. 

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Evolocumab(レパーサ®)は難治性高コレステロール血症, 家族性(ヘテロ, ホモ双方)高コレステロール血症でコントロール不良例でとても良好なコレステロール低下効果を示す.

420mgを毎月投与する方法(140mgシリンジならば3本)と, 140mgを2wk毎に投与する方法があり, 後者のほうが少なくて済むのでおそらく国内では後者の使用方法となるか.
状態に応じて140mg/月でも良いのかもしれない.

副作用も致命的なものや, プラセボと比較して有意に増加するものはないが,
問題は費用.
モノクローナル抗体であり, 結構高額となるのか?

そもそも一般外来ではあまり出番はないと思われる.
(少なくとも自分の外来ではいない)

2015年11月27日金曜日

上部消化管出血後の抗凝固薬

上部消化管出血において, アスピリンはできるだけ早期に開始するほうが,
再出血リスクは増加するものの, 全体的な予後は改善するという話は以前書いた

抗血小板薬と消化管出血 を参照


では抗凝固薬はどうか?
抗凝固薬のほうが再開しにくいなぁ、という感じが強い.

Afで抗凝固療法 and/or 抗血小板療法を施行している患者で消化管出血をきたした4602例のCohort study.
(BMJ 2015;351:h5876)
・患者の平均年齢は78.3±9.3歳. 
・CHADS2スコア 2.1±1.2, CHA2DS2-VAScスコア 3.6±1.5
・抗凝固薬単独が23.9%, 併用が19.4%

コホート集団の予後: 死亡率, 血栓症リスク, Major bleedingリスク, 消化管出血再発リスク

・発症後90日後〜2年以内に死亡した症例が39.9%[38.4-41.3]
・抗凝固療法, 抗血小板療法を再開しなかった例は27.1%であった.
・血栓症を呈した患者が12.0%[11.0-13.0]
・Major bleedingは17.7%[16.5-18.8]
・消化管出血再発例が12.1%[11.1-13.1].

抗凝固薬, 抗血小板薬再開の有無別の予後(HR)
・抗凝固薬や抗血小板薬の再開は有意な死亡, 血栓症リスク低下効果が期待できる
・薬剤の再開による出血リスクの上昇もあるが, そこまで多いものでもない.
・Table 4はPPI併用群における比較.

薬剤中止〜再開までの期間別の評価
・薬剤中止期間が30日〜120日どの群でも, 再開による死亡リスク低下効果は期待できる

Afで抗凝固薬を使用している患者で, 上部消化管出血を発症してしまった患者群では,
どれだけ期間が空いても, 再開できるならば再開したほうが良い.

2015年11月25日水曜日

高尿酸血症の治療適応

高尿酸血症治療適応は, 国内と海外では大きく異なる.

ACR 2012ガイドラインでは, 以下を満たす高尿酸血症を治療適応としている
・身体所見, 画像所見で痛風結節を認める
・1年間で2回以上の痛風発作を認める
・Stage 3以上のCKD, もしくはStage 2で腎の器質的障害が認められる場合
・尿路結石の既往がある


・治療薬は, 第一選択薬はアロプリノールかフェブキソスタットであり, それが耐えられない場合はプロベネシドを用いる。
・血清尿酸値の目標値は<6mg/dLとするが, 痛風の症状が残存していれば<5mg/dLまで下げることで改善する可能性はある
(Curr Opin Rheumatol 2014, 26:152 – 161)


日本国内のガイドラインでは,
 無症候性でもUA≥9mg/dLとなる場合, 
 高血圧など合併症がある群ではさらに低値(≥8mg/dL)で治療が推奨されている.
(Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids, 30:1018–1029, 2011)

無症候性の患者に対する尿酸降下薬の使用の利点, 欠点については未だ調査されていないため, 結論は得ていない.
・2014年の時点でStudyは3つのみ. そのメタでも発作や腎不全の増悪については有意差なし.
(J Rheumatol Suppl. 2014 Sep;92:70-4.)

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繰り返す痛風発作や尿路結石(尿酸結石)において, 治療適応となるのはまあ納得できる.
では腎不全や無症候性患者ではどうなのか?

そもそも, 尿酸効果薬で使用されるアロプリノールは副作用も多い薬剤として有名である.

・国内におけるDIHSの原因薬剤としてアロプリノールは2番目に多い薬剤.
・台湾での報告では, アロプリノールによる
 過敏症候群の頻度は新規使用者1000例あたり4.68
 過敏症候群による入院は2.02/1000
 死亡リスクは0.39/1000の頻度. 

・DIHSのリスク因子は
  女性, 
  60歳以上, 
  初回投与量>100mg/d, 
  腎疾患, 
  心血管疾患, 
  無症候性の高尿酸血症の治療としての使用
・無症候性, 腎疾患, 心血管疾患患者へのアロプリノールの使用は
 DIHSリスク OR1.61[1.33-1.94]
 死亡リスク OR 5.59[2.61-11.94](腎疾患), 3.57[2.31-5.51](心血管)と上昇する.
( 2015 Sep;175(9):1550-7.)

従って, 使用には注意しなくてはならない.

慢性腎不全患者に対するアロプリノール, フェブキソスタットのRCT

eGFR<60mL/min/1.73m2の113例を対象としたRCT.
アロプリノール 100mg/d vs Placeboに割つけ, 心血管イベント, 腎不全増悪(末期腎不全)をアウトカムとして両者を比較 
・基礎のUA値は7.3±1.6(コントロール群)、7.8±2.1
アウトカム: 
・84ヶ月[54-84]のフォローにおいて, UA値は7.8±2.1 vs 6.6±1.5mg/dLと有意に低下.
・eGFR低下値は 13.3±5.0 vs 6.5±1.6とアロプリノールで緩徐に. 
・心血管リスクは HR 0.43[0.21-0.88]と有意にリスクは低下する結果.
腎不全患者ではアロプリノールは有意に予後を改善させる
(Am J Kidney Dis. 65(4):543-549.)

18-65歳のStage 3-4のCKD患者で無症候性の高UA血症がある93例を対象とした単一施設DB-RCT
・高尿酸血症の定義はUA≥7mg/dL
・Febuxostat 40mg/d vs Placeboに割り付け, 6ヶ月継続し, eGFRの変動を評価.
母集団データ
アウトカム
Placebo群ではeGFR低下している一方, Febuxostat群では6ヶ月後のeGFRは上昇している
・eGFRが上昇したのはFebuxostat群で47%. ≥10%の低下を認めたのは38%
 Placebo群では上昇は23%,  ≥10%の低下を認めたのは54%と有意差あり.
(Am J Kidney Dis. 2015;66(6):945-950.)


アロプリノールもフェブキソスタット双方とも尿酸産生抑制薬.
・アロプリノールは100mgで24.6円/日
・フェブキソスタット10mgで32円, 40mg使用すると128円/日. 

双方のRCTとも小規模ではあるが, eGFR<60の腎不全で高尿酸血症があるならば考慮してもよいのであろう. 副作用には注意.
無症候性で腎機能が正常な患者で使用する必要はないと思う.

2015年11月24日火曜日

DESによるPCI後の抗血小板薬3剤療法

冠動脈疾患に対してDES(Drug-eluting stent)を用いてPCIを施行した場合,
抗血小板薬2剤療法を行う(アスピリンとクロピドグレルの組み合わせが多い).

上記2剤療法にシロスタゾールを併用した3剤療法を行うとどのような利点があるか?

ACS患者1212例を対象としたRCT 
(Am Heart J 2009;157:733-9.)
・UAP, non-STEMI, STEMIで受診した20-80歳の患者群
・PCI後にASA+Clopidogrelの2剤療法群 vs 上記 + Cilostazolを6ヶ月併用した3剤療法群に割り付け, 比較.
 ASA 300mg/dを1ヶ月, 以後100mg/d
 Clopidogrel 300-600mg, その後75mg/dを3-12ヶ月
 Cilostazol 100mg bidを6ヶ月間.
・アウトカムは1年以内の心血管イベントリスク

母集団

アウトカム

心血管死亡, MI, Strokeリスクは有意に3剤療法群で低い結果.
・MACCE(major adverse cardiac or cerebral event)も有意に低い結果.
・副作用はCilostazol使用群で動悸や頭痛, 皮疹が多い
・出血リスクは有意差なし.

DECLARE-Long: ACSで≥25mmの病変に対して, ≥32mmのDESを用いてPCIを行った患者群500例を対象 (Am J Cardiol 2007;100:1103–1108)
・ACS患者でPCIを施行後, 抗血小板療法として, ASA + Clopidogrel群(2剤療法) vs 2剤 + Cilostazol (3剤療法)群で6ヶ月間継続し, 再度血管造影を施行し, 所見を比較した.
・また, 使用するDESもSirolimus vs Paclitaxel-eluting stent群で比較.

母集団
血管造影所見

Late-loss(PCI直後の血管径とフォロー時の血管径の差)は有意に3剤療法群で少ない
・3剤療法群の方が狭窄リスクは低い可能性

9ヶ月における臨床アウトカム
・TLR(Target lesion revascularization)は有意に3剤療法群で少ない結果.
・死亡やACSリスクは有意差なし.
・副作用は出血リスクは有意差なし
・消化管症状は3剤療法で有意に多い.

DECLARE-DIABETES: 糖尿病患者でPCIを施行した患者群400例を対象としたRCT.
(Am J Cardiol 2007;100:1103–1108)
・ACS患者においてDESを使用しPCIを施行.
 その後ASA + Clopidogrel (2剤群) vs 2剤+ Cilostazol(3剤群)に割り付け 6ヶ月継続. 
・6ヶ月後の血管造影検査所見を評価.
・DESはSirolimus, Paclitaxel-eluting stentを使用.

母集団
血管造影検査結果
Late lossは有意に3剤療法群で少ない結果.

臨床アウトカム
・TLRは有意に3剤療法で少ない.
・出血リスクは有意差なし

2剤療法 vs 3剤療法を比較した17 trialsのMeta-analysis.
(Open Heart 2014;1:e000068. )
・Studyの大半が第一世代DES(PES, SES)
・BMSを除いたDESによるPCIで, 3剤療法の効果を評価
アウトカム

Platelet reactivity units
MD -47.73[-61.41~-34.04]
% PLT inhibition
MD 12.71[10.76-14.67]
MACE
IRR 0.64[0.55-0.75]
全死亡
IRR 0.82[0.59-1.15]
MI
IRR 0.80[0.58-1.11]
TLR
IRR 0.57[0.44-0.74]
TVR
IRR 0.65[0.54-0.79]
ステント血栓
IRR 0.64[0.39-1.05]
Major bleeding
IRR 1.26[0.79-2.00]
Minor bleeding
IRR 1.44[0.87-2.37]
Any bleeding
IRR 1.37[1.03-1.80]
薬剤中断
IRR 1.60[1.31-1.95]

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まとめると,
DESによるPCI後の抗血小板薬は2剤療法よりも3剤療法(ASA, Clopidogrel, Cilostazol)を使用したほうが血小板活性の抑制効果は高く, 再狭窄リスクは低下する.
ただし, 薬剤による副作用は増加. Major bleedingリスクに有意差はないが, 頭痛や動悸, 消化管症状は増える.

またこれらのStudyは主に第一世代のDESを用いたStudyであり,
第二世代ではどうかはまだ不明.
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では第二世代DESを用いた場合は3剤療法の方良いのか?
第一世代DES
 Sirolimus, Paclitaxel-eluting stentが第一世代にはいる
第二世代DES
 Everolimus, Zotarolimus-eluting stentが第二世代.

COACT cohortにおいて, EES, ZESでPCIを施行された1248例でPCI後2剤療法施行群 vs 3剤療法施行群をPropensity-matched analysisを用いて抽出(各群 362例ずつ).
(Medicine 94(46):e2062)
・Major cardiovascular events(MACE)リスクを比較した.
・薬剤投与量と期間は
 ASA 250-500mg初回, 100mg/dで継続,
 Clopidogrel 300-600mg初回, 75mg/dで6ヶ月以上継続,
 Cilostazol 200mg/日を3ヶ月以上投与

アウトカム(平均13ヶ月フォロー)
・MACEは2剤群, 3剤群で有意差なし.
・TLR/TVRはHR 1.64[0.85-3.17]と有意差ないが, IPTW調整HR 2.39[1.25-4.59]と有意差あり

第二世代DESでも3剤のほうが再狭窄リスクは少ないのか、どうかは未だ結論はでない.
 RCTを待ちたいところではある.

第一世代では再狭窄リスクが低くなり, 心血管イベントリスクも低下するため, 
高リスク群では考慮すべきといえる.

2015年11月23日月曜日

末梢カテーテルから投与可能なカテコラミンの量は?

まず最初に, カテコラミンは基本的に中心静脈カテーテルから投与すべきである
 カテコラミンを末梢ルートから投与すると血管障害や周囲の皮膚障害を生じるリスクがある

85 studiesのMeta-analysisでは
カテコラミン投与による組織障害の報告例は325例.
 そのうち318例が末梢カテーテルからの投与で生じている.
・末梢カテーテルからのカテコラミン投与開始から局所の組織障害や血管外漏出までの時間はそれぞれ 56±68時間, 35±51時間.
・その大半が軽度であり, 後遺症は残さないが, 壊疽が7%ある
・CVCからの投与では, 局所の組織障害出現までの時間は55±47時間で壊疽は14%で報告された

Ann Emerg Med. 2015 Dec;66(6):629-631.

カテコラミンを必要とする患者において, 末梢ルートとCVCを比較したRCT.
成人のICU患者263例におけるopen-label RCT.
(Crit Care Med 2013; 41:2108–2115) 
・ICUで最初に確保するルートとしてCVC群と末梢静脈ルート群に割り付け, 合併症リスクを比較.
・患者群は以下の血管障害リスクがある薬剤を使用する患者
 アドレナリン ≤2mg/h, 
 ノルアドレナリン ≤2mg/h, 
 ドパミン, ドブタミン ≤10µg/kg/min
 アミオダロン ≤150mg/d, ≤3日間,  
 バンコマイシン <1g/日, 
 アムホテリシンB ≤3日間
・もしくは, 末梢ルートが確保しにくい患者
 (2回連続で確保失敗, 2日連続で1日に2回入れ替えが必要となった症例, 3日連続で1日に1回入れ替えが必要となった症例)
・上記量を超える薬剤投与時や末梢静脈ルート確保が困難な場合は除外, もしくはCVC確保を行う(末梢カテーテル群に割り付けられた患者でCVC確保へ移行した症例はITT解析で末梢カテーテル群として評価する)
・CVCの必要がなくなればすぐに抜去し, さらに補液が必要な場合は末梢カテーテルへ移行する.

患者は266例導入し, 263例で解析 (ITT)

CVCもしくは末梢カテーテルを必要とした理由は, 
 昇圧剤が必要な患者が70%
 末梢カテーテル留置2回失敗 13%
・末梢カテーテル群でCVC留置を行ったのは67例.
 理由はルート確保が困難な例やカテコラミンを高用量投与例.

アウトカム
Major complication(感染, 出血, 気胸, 皮膚障害, 血栓症など)は有意に末梢カテーテル群で多い(1.04 vs 0.64, p<0.02)
・しかしながら致命的な合併症はなし.
末梢ルート群の気胸はCVC移行例

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末梢ルートとCVCで比較したRCTはこの1つのみ.
このRCTでは合併症リスクはCVC確保群の方が低い結果.
静脈炎は同等であり, 致死的な合併症は両群でみとめず, 末梢の壊死の報告も無し

このStudyでは以下のカテコラミン投与量ならば末梢から投与可能としている
 アドレナリン ≤2mg/h, 
 ノルアドレナリン ≤2mg/h, 
 ドパミン, ドブタミン ≤10µg/kg/min
NAならば5mg/50mlの溶液で20ml/hまで
ドパミンならばキット600の使用で患者体重が50kgならば 10ml/hまで末梢で投与できる可能性がある.

2015年11月20日金曜日

難治性高血圧に対するスピロノラクトン

難治性高血圧は降圧薬3種類を使用しても血圧コントロールが不良な高血圧で定義.
その3種類はACE阻害薬/ARB, Ca-ch阻害薬, 利尿薬の3種類となることが多い.

上記では二次性高血圧の原因を評価するが,
それが否定されれば本態性高血圧の難治性と判断される.

さらに追加する降圧薬としては, アルファ阻害薬, ベータ阻害薬, 硝酸剤などが選択されるが, そのような患者において, スピロノラクトンが効果的であるとの報告がいくつかある.

ASPIRANT-EXT trial: 利尿薬を含む3剤でも血圧目標(sBP<140, dBP<90mmHg)を達成できない161例を対象としたDB−RCT. (Medicine 93(27):e162) 
CKD(Cre>1.5)やDM患者の場合はsBP>130/80で導入.
・sBP>180, dBP>110で緊急降圧が必要な症例, Cre>2.0, eGFR<40, K>5.4mEq/L, Na<130mEq/L, ポルフィリア, 妊婦, 授乳婦,
・二次性高血圧症(+)患者は除外.

上記を満たす患者群161例をSpironolactone 25mg/d vs Placebo追加群に割り付け比較.

患者群における血圧の変動
血圧はSpironolactone併用群で有意に低下する.

電解質や腎機能への影響
血清Kは0.4mEq/Lほど上昇する
またCre値もSpironolactone群で上昇(+5.6µmol/L = 0.06mg/dL).
アルブミン尿は低下する


では, 他の薬剤(ベータ阻害薬, アルファ阻害薬)とどちらが効果が高いのか?

PATHWAY-2: 難治性高血圧に対するSpironolactone vs Bisoprolol vs Doxazosinの比較.
(Lancet 2015; 386: 2059–68)
Bisoprolol(メインテート®), Doxazosin(カルデナリン®)
・患者は18-79歳で, 降圧薬三剤, 最大用量を3ヶ月使用しても血圧高値の患者群335例を対象としたDB-RCT.
・三剤はACE阻害薬/ARB, CCB, 利尿薬
・血圧高値は外来血圧>≥140mmHg(DM患者では≥135), 自宅血圧≥130mmHgで定義.
上記患者群において, 12週間毎に
 Placebo群, 
 Spironolactone 25-50mg/d群, 
 Bisoprolol 5-10mg/d群, 
 Doxazosin 4-8mg/d群をローテーションし, 自宅血圧の変化をフォロー. 
・Wash out periodはない
・投与量は6wk後に倍量に増量.
・元々の薬剤は継続 

除外項目
二次性高血圧 ・増悪因子がある高血圧
・1型DM ・腎不全 (eGFR<45/min)
・血清K異常 ・妊娠, 妊娠予定
・持続性のAf ・アドヒアランスが不良
・入院予定, 手術予定 ・6M以内の心血管イベント
・担癌患者 ・ステロイド, NSAIDの長期使用

母集団データ

アウトカム: 血圧の変化

Spironolactoneは他の降圧薬よりも降圧効果が高い

副作用頻度

特にSpironolactone群で副作用が特別多いわけでもない
高K血症のリスクが高く, 血清K>6mEq/Lとなったのは6/285(2.1%)

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スピロノラクトンは原発性アルドステロン症ではなくても, 難治性高血圧に対して降圧効果が高い.
β阻害薬やα阻害薬よりもその効果は高いと言える.

ただし, 注意点としては,
・降圧効果が高いのであって, 臨床的アウトカムはこの2つのStudyでは評価されていない
・高K血症リスクが増大すること
に注意が必要.