ページ

2014年2月28日金曜日

Sjogren's syndrome シェーグレン症候群

シェーグレン症候群
(Am J Manag Care 2001;7:S433-43)
 成人の1%で発症する自己免疫性疾患 (primary SSは0.09-0.6%)
 他の自己免疫性疾患と同様, 女性で多く, 男女比 1/9.
 30-60歳台の中年発症例が主.

 自己免疫性疾患を伴わないPrimary,  RA, SLEなどの自己免疫性疾患に伴うSecondaryに分類される.
 それぞれ割合は同等. SecondaryではRAが最も多い.
 RAの約20%にSSが合併するとの報告もあり.
 Primaryでも45%に甲状腺炎, 72%でPBC合併例があるとの報告あり.

日本国内のSurvey (Mod Rheumatol, 2014; 24(3): 464–470)
4729の科(内科, 眼科, 耳鼻科, リウマチ科, 口腔外科)で調査
回答は1084科(23%)から得られた.
日本国内のSS患者数の推定は68483例.
SS 2195例を解析した結果, 年齢は60.8±15.2歳.
 69.7%が50-79歳の間に含まれていた. 女性が94.2%を占めていた.
Primaryが58.5%, Secondaryが39.2%.
二次性にはRA, SLE, SScの3つで3/4を占める


外分泌腺の障害による口腔内乾燥, 涙液の低下が最も多い初期症状(発症が中年であり, しばしば閉経後の変化と誤診される). 
唾液腺の腫大も認められる.
 他の外分泌腺(女性器, 皮膚, 鼻, 気管, 食道)にも侵襲あり.
 組織学的にはリンパ球, 単球, 形質細胞浸潤を認める炎症変化.
 リンパ球はCD4+ cellが主. CD8+ cellの3倍多く浸潤している.
 他に, 腺管細胞の壊死, M3 muscarinic recptorに対する自己抗体の存在も, 外分泌機能低下に関与していると考えられている.

最も多い眼症状はDry Eye
 異物感や結膜充血, コンタクトレンズが装着できない, 羞明, 眼疲労といった訴えのこともあり.
SS患者がペットボトルを持ち歩く = 口腔湿潤剤を使用すべき
 食事時には特に口渇感が増強するため, 飲水をする. 病歴聴取では重要なポイント.
 口腔タンジダもSSで多い症候であり, 口腔内のヒリヒリ感などには注意.
 唾液腺の腫脹も多い症候. 舌下線、顎下腺の片側, 両側の腫脹.

日本国内の2195例の解析(Mod Rheumatol, 2014; 24(3): 464–470)
 腺症状の頻度, 眼所見の頻度, 病理所見, 検査所見頻度, 自己抗体の頻度.
27.2%がSS-A, B陰性のSeronegative SS.

他の全身症状
 筋骨格系; 関節炎, 筋肉痛
 皮膚; 皮膚乾燥, Hypoerglobulinemic purpura, Vasculitis
 肺; Xerotrachea, Pulmonary infiltrate
 消化器; Esophageal dysmotility, Pancreatitis, Hepatitis
 腎; Renal tubular acidosis, 間質性腎炎
 神経; 末梢神経障害, 脳神経障害, CNS障害
 血液; Leukopenia, 貧血
 Lymphoma; リンパ腫

536名のPrimary SS患者のRetrospective review.
(Medicine 2009;88: 284-293)
 女性例が92.4%, 発症年齢は54y[43-64]
 症状, 所見頻度.

症状, 所見
%

%
倦怠感
22.8%
リンパ節腫大
13.2%
発熱
12.9%
脾腫
2.6%
咳嗽
29.3%
肺病変
19.0%
Raynaud現象
37.3%
腎障害
8.2%
関節痛

肝障害
7.1%
関節炎
30.3%
自己免疫性甲状腺疾患
13.8%
Palpable purpura
11.0%
末梢神経; 感覚
19.2%
生検で皮膚血管炎
3.5%
末梢神経; 運動
7.3%


末梢神経; 脳神経
7.3%


筋炎
0.4%

腺組織障害頻度
腺組織障害
%
口腔症状
83.8%
眼症状
88.8%
耳下腺腫大
30.4%
Schirmer test 5mm/5min
46.3%
Rose bengal score>4
26.1%
Tear break-up time<10sec
30.4%
Minor salivary gland biopsy; Ly浸潤
66.0%
Primary SSと血液所見
血液障害
診断時(%)
フォロー(%)
血液障害
診断時(%)
フォロー(%)
血球減少
31.2%
27.1%
Ig高値(>20g/L)
26.3%
9.9%
Bicytopenia
4.3%

Ig低値(<8g/dL)
3%
2.8%
Pancytopenia
0.7%

Monoclonal Ig
3.9%
3.7%
貧血(Hb<12g/dL)
28.5%
16.4%
Cryoglobulinemia
8.2%
3.5%
ACD
20.7%
13.4%
Mixed monoclonal(type II)
3%
1.5%
βサラセミア
3%
0
Polyclonal(type III)
3.5%
1.7%
IDA
0.9%
0
C3低値(<75mg/dL)
8.8%
5.2%
B12/葉酸欠乏
0.6%
0.2%
C4低値(<10mg/dL)
3.9%
2.3%
自己免疫性溶血性貧血
0.6%
0.6%
ANA
68.1%
-
腎不全
0.4%
0.6%
SSA
36.6%
-
薬剤性
2.1%
1.3%
SSB
18.8%
-
白血球低下(<4000/µL)
14%
11.9%
anti-Sm
0.9%
-
薬剤性
4.5%
3.4%
RF
37%
-
好中球減少(<1500/µL)
2.1%
1.1%
IgM-aCL
9%
-
リンパ球減少(<1000/µL)
6.5%
2.6%
IgG-aCL
7.5%
-
PLT減少(<140k/µL)
3.7%
4.1%



薬剤性
1.5%
1.1%



pSSの7.5%[5.4-10]にリンパ腫を併発. (40/536)
特に Neutropenia(HR 8.97[1.10-73.30]), 
Cryoglobulinemia(HR 2.91[1.15-6.44)],
脾腫(HR 3.97[1.49-10.62]), 
リンパ節腫大(HR 2.62[1.15-5.94]),
C4低値(HR 3.31[1.35-8.12])はリンパ腫のリスクとなる.

シェーグレン症候群とM蛋白血症 (Medicine 2005;84:90–97)
 Primary SS患者を評価した4つのStudyの合計では, 433例中91例(21%)でM蛋白を認めた.

Primary Sjogren syndrome 200例とHCV関連 Sjogren syndrome 37例において, 免疫電気泳動施行
 Primary SSでは18%(35)でM蛋白を検出. HCV SSでは43%(16)でM蛋白を検出.
 Primary SSではIgGκ, λの頻度が高く, HCV SSではIgMκの頻度が高い.
 クリオグロブリンもM蛋白陽性例の18%, 81%で陽性となった.
Primary SSにおけるM蛋白陽性 vs 陰性の比較では, 
 M蛋白陽性群のほうが有意にESR亢進を認めた程度の差.

シェーグレン症候群とSmall fiber neuropathy (Medicine 2013;92: e10-e18)
40例の解析; 女性例が大半であり, SS診断からSFN診断まで5-6年.
 症状は焼ける様な感覚, しびれ感, 疼痛が主となる.
 SFN合併症例のデータ;

SFNを合併するSSでは, RF, SS-A抗体が陰性例が多い

SSの診断
診断は臨床所見が重要.
 Dry mouthは多いが, 他の原因(薬剤性, 糖尿病など)も否定すべき.
 薬剤では抗ヒスタミン, Decongestant, 筋弛緩薬, 抗精神病薬が多い原因.
 ウイルス感染, IMもSSと似た様な症候を示すため, 鑑別が必要.
 HCV感染患者でSicca syndromeを来すことがあり, その場合, 唾液腺に異型リンパ球の浸潤を認める報告がある.
 他にはHIVも鑑別必要.(Diffuse Infiltrative Lymphocytosis Syndrome)
 一般的な膠原病診察 + 眼, 口腔, 頭頸部診察が診断には重要.
 眼診察ではSchirmer test, Slit lamp test, 角膜所見などCheck. 
 Keratocunjunctivitis sicca(KCS)のCheck, Tear breakup time(BUT)の評価など.

唾液腺生検がGold standardとなる
 特に悪性腫瘍が疑われる場合, Infiltrative systemic diseaseが疑われる場合は生検が重要な検査.
 ANAやRFは感度は良好だが, 得意性無し. 
 SS-A, SS-Bはやや特異的だが, 感度はそれぞれ 30%, 15%と低い.
 SS-AはSLEでも50%程度で陽性となる.

European-American Consensus Group Modification; Sn/Sp 95%
Dry eyeの症状あり
Dry eyeの所見あり(Schirmer test, Rose bengal exam)
Dry mouthの症状あり
唾液分泌機能試験の異常(Flow rate, scintigram, sialogram)
Minor salivary gland biopsy(focus score >1)
Autoantibodies(SS-A, SS-B)

診断クライテリアのValidation (Mod Rheumatol (2013) 23:219–225)
日本国内で, 694名のSS, SS疑い例を対象に厚生労働省のCriteria(JPN), The American-European Consensus Group Classification criteria(AECG), American College of Rheumatology classification criteria(ACR)の感度, 特異度を評価.

694名中, SSと診断されたのは476名(Primary SS 302, Secondary 174)

厚生労働省Criteria
AECGクライテリア
ACRクライテリア
各診断クライテリアの比較
各クライテリアの感度, 特異度
ACRが最も簡便だが, その分感度, 特異度は劣る

JPN, AECGが最も診断能が高いが, それでも感度70-80%, 特異度80-90%程度

日本国内の2195例の診断基準を満たす割合 (Mod Rheumatol, 2014; 24(3): 464–470)

JPNは53.8%, AECGは47.7%, ACRは49.6%のSS患者で満たす.
798例/2195はどのCriteriaも満たさない.

シェーグレン症候群の治療
SSの治療は3 phaseに分けられる.
 Moisture replacement, preservation; 外分泌の補助. 口腔, 眼, 鼻, 皮膚, 女性器
 Moisture stimulation; 分泌腺の刺激, Physical, 薬剤治療 (Pilocarpine, Cevimeline)
 Systemic therapy; 肺病変, 血管炎, Pseudolymphomaなど全身症状に対する治療
  NSAIDs, Corticosteroid, 免疫抑制剤(Cyclosporine), Cyclophosphamideなど.

分泌刺激薬はムスカリン受容体刺激するため,
 喘息, 閉塞隅角緑内障, 急性虹彩炎, 心血管障害, 胆道疾患, 尿路結石症, 下痢, 潰瘍病変のある患者では投与注意.
 SSではRTAからの尿管結石合併することもあり注意.
 Pilocarpine, Cevimelineの2剤が使用可能


Pilocarpine
Cevimeline
半減期
~1hr
~5hr
薬効ピーク
1hr
1.5-2.0hr
副作用
発汗(40%)
悪心(10%)
鼻炎(9%)
下痢(9%)
発汗(19%)
悪心(14%)
鼻炎(11%)
下痢(10%)
Pilocarpine; サラジェン®
Cevimeline; エポザック®, サリグレン®

Systemic therapy
 ステロイドの初期投与量はPSL 0.5-1.0mg/kg/d.
 重症度に応じて, 
  MTX 7.5-2.5mg/kg/wk,  
  Cyclosporine A 2.5-5.0mg/kg/d, 
  Azathioprine 1-2mg/kg/d, 
  Cyclophosphamide 50-150mg/d と併用し, ステロイドを速やかに減量.
 重度の中枢神経障害の場合はPSL 1-2mg/kg/d, パルス治療が必要.

国内2195例の治療選択: (Mod Rheumatol, 2014; 24(3): 464–470)