ページ

2013年8月31日土曜日

マイコプラズマ肺炎の診断

マイコプラズマ肺炎の診断基準は肺炎の患者において以下のいずれかを満たす場合と定義されている
 ① マイコプラズマ特異抗体のペア血清で4倍以上の増加を認める
 ② 喀痰、咽頭拭い液からのマイコプラズマPCR陽性
 ③ 喀痰からのマイコプラズマ培養陽性

 と後付けの診断であり, 現場に即したものとは言えない.
抗体検査には、PA法とCF法の2つがあり, IgGとIgMをチェックするが, 主にPA法ではIgM, CF法ではIgGとIgMをチェックしている。
関連凝集素は感度, 特異度共に50%程度とショボい.

PA法と、CF法の感度, 特異度は以下の通り

Sn(%)
Sp(%)
LR(+)
LR(-)
PA




 1:40
89[79-95]
83[78-87]
5.2[4-6.8]
0.1[0.1-0.3]
 1:80
80[68-89]
92[88-95]
10.4[6.8-16]
0.2[0.1-0.4]
 1:160
71[59-81]
96[93-98]
17.7[9.7-32.2]
0.3[0.2-0.4]
 1:320
56[38-62]
97[95-99]
21.9[10.2-46.8]
0.5[0.3-0.6]
CF >=64
33[25-43]
99[96-100]
25.2[8-79.9]
0.7[0.6-0.8]
ImmunoCard Mycoplasma
90[85-94]
93[91-95]
13.4[9.7-18.5]
0.1[0.1-0.2]
Clin Vaccine Immunol 2006;13:708-10
J Clin Microbiol 1996;34:1180-3

 ちなみに血清の迅速検査はImmunoCardを使用し, IgMを見ています.

 これを見ると、ペア血清ではなくても良さげに見えるが,
 他のStudyを診てみるとそうとも言えず、

マイコプラズマ特異的IgM, IgGをチェックする12種類の製品検査の感度, 特異度 
 Gold standardはPCRでの検出. PCRに陽性となった27名と陰性となった33名の血清を前向きに評価(下気道感染症 発症Day 1での血清)
 またマイコプラズマ以外のViral, Bacterial pneumonia 63例の血清でも同様に評価.
ImmunoCardは感度50%以下しかなく, 特異度は79%のみ.
どの検査も感度は低いし, PCRがGold Standardということ自体疑問も残る
(JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, May 2005, p. 2277–2285)


マイコプラズマPCRの感度, 特異度の評価では,
2つのマイコプラズマ肺炎のアウトブレイクにおけるRT-PCRと血清検査の診断能を評価
 咽頭拭い液にてRT-PCR検査を施行. QIAamp DNA[Qiagen], MagNA Pure LC[Roche Applied Science]), また, 血清検査はImmunoCard(IgM), Remel IgG/IgM assayを施行263例中, 97例が臨床的にマイコプラズマ肺炎と判断.
 各検査の感度, 特異度は
 PCRは特異性は良いが, 感度は20%程度と低い. (Clinical Infectious Diseases 2009;48:1244–9)

これは咽頭拭い液を検体として使用していることも原因として考えられ,
別のStudyにおいて, 喀痰, 鼻咽頭吸引液, 咽頭拭い液にてPCRを施行すると, 其々感度は
 ● 喀痰 69%
 ● 鼻咽頭吸引液 50%
 ● 咽頭拭い液 37.5% と感度が明らかに異なる. (J Med Microbiol. 2005 Mar;54(Pt 3):287-91.)

結局のところ, 問題点は,
 ● 抗体検査, 遺伝子検査, 培養検査どれも感度が不十分な点.
 ● その感度が不十分な検査をGold standardとして他の検査の感度, 特異度が出されている点.

それをふまえて,
 マイコプラズマ肺炎を疑った場合は, 臨床像, 画像, 検査結果を複合して判断.
 疑えばカバーが必要. 除外するのは困難.
 PCRをするならば咽頭拭い液ではなくて喀痰を使うべき.

 ということは分かった.

最近保険適応となった咽頭拭い液のマイコプラズマ抗体検査がどの程度役に立つかは論文が見付けられませんでした。少なくともPCRに勝る感度とは思えず...
あと, PCRの検体別の感度の差を見ると, 咽頭拭い液よりは喀痰でチェックした方がいい気もしますが, データは知りません。

2013年8月28日水曜日

腱板損傷の所見2; Rational clinical examinationより

JAMAのRational clinical examinationより (JAMA. 2013;310(8):837-847.)
腱板損傷の身体所見の感度, 特異度を評価したMeta-analysis

身体所見は以下の通り
其々の感度, 特異度は,


疼痛誘発試験
感度(%)
特異度(%)
LR+
LR-
Painful arc
71[60-83]
81[68-93]
3.7[1.9-7.0]
0.36[0.23-0.54]
Cross-body adduction
75[64-85]
61[46-76]
1.9[1.3-2.9]
0.42[0.26-0.68]
Hawkins
76[56-89]
48[23-74]
1.5[1.1-2.0]
0.51[0.39-0.66]
Neer
64-68
30-61
0.98-1.6
0.60-1.1
Yocum
79[61-97]
40[10-70]
1.3[0.75-2.3]
0.53[0.17-1.7]
Passive abduction
74[54-93]
10[0-29]
0.82[0.58-1.1]
2.6[0.35-20]

筋力テスト
感度(%)
特異度(%)
LR+
LR-
External rotation lag
47[21-71]
94[85-100]
7.2[1.7-31]
0.57[0.35-0.92]
Internal rotation lag
97[88-100]
83[70-96]
5.6[2.6-12]
0.04[0.0-0.58]
Drop arm
24[13-34]
93[85-100]
3.3[1.0-11]
0.82[0.70-0.97]
Dropping sign
73[51-95]
77[62-92]
3.2[1.6-6.5]
0.35[0.15-0.83]
Gerber (lift-off test)
34-68
50-77
1.4-1.5
0.63-0.85

疼痛, 筋力低下試験
感度(%)
特異度(%)
LR+
LR-
External rotation resistance
63[49-77]
75[69-82]
2.6[1.8-3.6]
0.49[0.33-0.72]
Full can
75[64-85]
68[54-83]
2.4[1.5-3.8]
0.37[0.23-0.60]
Patte
58[36-80]
60[30-90]
1.4[0.62-3.4]
0.70[0.34-1.5]
Empty can
71[49-86]
49[42-56]
1.3[0.97-1.6]
0.64[0.33-1.3]
Resisted abduction
58[36-80]
20[0-45]
0.72[0.55-8.1]
2.1[0.55-8.1]

Combination
感度(%)
特異度(%)
LR+
LR-
Hawkins and Neer
78[66-90]
50[22-78]
1.6[0.87-2.8]
0.43[0.20-0.96]

腱板損傷の評価に有用な所見は,
 Painful arc, External rotation lag, Internal rotation lag, Drop arm, Dropping signの5つ

"腱板損傷の所見"で記載した, Empty can testのLR-はMetaでは大したことありませんでした.
それ以外の有用な所見は今回のMetaでも同様で, これら5つの所見はやはり押さえておくべきでしょう.



肩関節脱臼に対するエコー評価


Ann Emerg Med. 2013;62:170-175
7.5-10MHzのLinear transducerを用いての評価.
方法は前方と側方アプローチがある.

前方アプローチ; 鳥口突起に水平にプローブを当てる.
通常は鳥口突起と上腕骨頭が並んで見える(B)が, 脱臼している場合はそれがずれる.

側方アプローチ; 肩峰(acromion)直下で長軸方向に当てる
D; 正常像. 肩峰と三角筋と上腕骨頭の位置関係がCの脱臼時には崩れている.

73例の肩関節脱臼患者へのエコー評価では,
肩関節エコーは感度100%[93.4-100]で脱臼を検出. 
また, 整復後の評価でも100%[93.2-100]で整復が確認可能であった.

------------------------------------
整復できたかどうか微妙なときに再度レントゲン評価をする手間が省けるのがいい感じ.

2013年8月22日木曜日

真性多血症 本態性血小板増多症

真性多血症 本態性血小板増多症
Polycythemia vera, essential thrombocythemia

2013年8月13日火曜日

レクチャー 熱中症

熱中症 Heat stroke

2013年8月8日木曜日

壊死性筋膜炎のエコー所見


ACADEMIC EMERGENCY MEDICINE 2002; 9:1448–1451.

壊死性筋膜炎のエコー所見;

筋組織と皮下組織の間に4mm以上のFluid貯留像(Low echoic area)があると壊死性筋膜炎と診断する.

壊死性筋膜炎を疑った62名のprospective study
 組織評価にて, 最終的に17名(27.4%)で壊死性筋膜炎を診断
 前述のエコーによる評価では,
感度88.2%[63.6-98.5], 特異度 93.3%[81.7-98.6]壊死性筋膜炎を予測できた.