ページ

2013年6月27日木曜日

TIA, Minor stroke後の再発予防には抗血小板薬2剤併用療法がよい?

NEJMのOnline firstより.
Clopidogrel with Aspirin in Acute Minor Stroke or Transient Ischemic Attack. NEJM 2013;

CHANCE trial; Minor strokeもしくは高リスクTIA後24h以内の5170名を対象としたDB-RCT.
 Clopidogrel 90日間 + ASA 21日間投与群 vs. ASA単独90日投与群に割り付け, Strokeリスクを比較.
 Clopidogrelは初回300mg, 以後75mg/d.
 ASAは75mg/dを継続. 
 全患者は初日に主治医の判断でASA 75-300mgを使用し, その後に2群に割り付けられている.
 患者は40歳以上で, NIHSS ≤3の軽症脳梗塞, ABCD2 score≥4の高リスクTIA患者.

患者の母集団;
アウトカム;
 脳梗塞再発率は2剤併用群で有意に低くなる. NNT 29.
 出血リスクは有意差認めなかった.
---------------------------------

ちなみに, 脳梗塞の二次予防としての抗血小板薬のStudyのまとめ;
(Lancet Neurol 2010;9:273-84)
Clopidogrel ± ASA vs ASAはよく行われており, 予防効果はClopidogrel>ASAであることは間違いない. ただし, 薬価が問題となるので1st choiceはASAとなることが多い(20倍くらいちがう)

Clopidogrel + ASA vs Clopidogrelはあまり多くなく, 1つのみ.
また, それも18ヶ月を超えると併用する意味は無くなるとの報告がある.

今回のStudyも母集団の7割がMinor strokeであり, 当然の結果といえば当然.
Clopidogrel + ASA vs Clopidogrelの比較が知りたい所.


2013年6月26日水曜日

急性心不全には塩分制限、水分制限は必要なし?


JAMA Intern Med 2013;173:1058-1064

急性の非代償性心不全患者75例を, 塩分制限+水分制限群 vs 制限無し群に割り付け, 体重変化, 臨床症状の変化を比較したRCT.
 塩分制限; Na 800mg/d (塩分量にして2g/d)
 水分制限; 800ml/d. 7日間 or 退院(<7d)まで継続.
 Control群は通常の食事を摂取. (2.5L/dの水分と, Na 3-5g/d(塩分量7.6-12g)
 
患者はEF≤45%でBoston criteria score ≥8を満たす患者群.
 ClCr <30ml/min, 心原性ショック, 基礎疾患で致死的な状態, 認知症で指示に従えない状態は除外.

母集団のデータ;
アウトカム; Baseline~Day 3での体重変化, 臨床的うっ血所見は有意差無し.
口渇感の自覚症状は塩分, 水分制限群でより高度となる.

薬剤使用量も両者で有意差無し.

制限群
Control p
利尿薬IV
94.7% 97.3% >0.99
血管拡張薬
26.3% 18.9% 0.58
強心薬
1例のみ
0

Loop利尿薬の量
84.7[40.7]mg/d 79.1[31.0]mg/d 0.50
利尿薬IVPOへの移行時期
4d[2.0-7.2] 4d[2.0-7.0] 0.97


Baseline〜退院時のLabも両者で同等.

Control群が実際どの程度水分摂取、塩分摂取をしていたかの評価が無く,
「心不全急性期で食事がとれていない」可能性は否定できない.
その場合は両群とも塩分, 水分摂取は少なくなり, 有意差がでないのはうなずける.
また、喉乾いたときに好きなだけ水分摂取が可能なControl群では口渇間も少なくて済む.
その点の評価が足りていないため, 本当に制限が必要ないかどうかはよくわからない.

まぁ、追試がでるまでは, そこまで頑張って制限しなくても良いかもしれない、という程度で捉えておくことにしよう.

2013年6月18日火曜日

免疫性血小板減少症 ITP

Immune thrombocytopenia
Idiopathic thrombocytopenic purpura
特発性血小板減少性紫斑病 免疫性血小板減少症



2013年6月17日月曜日

尿カテーテル抜去時の抗生剤予防投与のMeta

3日前にCAG目的に入院し, 問題なく翌日退院となった患者.
退院し2日後に発熱、悪寒戦慄を認め, 救急要請.
精査の結果UTIの診断で再入院. CAGの際は尿カテーテルが留置されていたとのこと.

このような尿カテ挿入に伴うUTIはよく見る.
留置のみならず, 一回のみの導尿を切っ掛けに生じることも多い.

そんななか, BMJより尿カテーテル抜去時の予防的抗生剤のMeta-analysisがでていた.

(BMJ 2013;346:f3147)
尿カテーテル抜去後のUTI予防目的のAbxを評価した, 6 RCTs, 1 non-RCTのMeta-analysis.
 カテーテル抜去後 14日以内のUTI発症を, 抗生剤投与群 vs Control群の比較. 
 その内5 trialsは外科患者を対象としたStudyであった.

 抗生剤はST合剤かFQを用い, 投与期間は1回投与のみか, 2-3回投与で終了するレジメが多い.

アウトカム;
 Abxの予防投与は, UTIリスクを5.8%減少させる(4.7% vs 10.5%)
Funnel plotではむしろRR 1のほうに寄っており, 
分布の傾向からはよりリスクを軽減させる可能性が伺える.
------------------------------------------------------------------------------------------------------------

あまりやったことも無く, 一般的とは言えないマネージメント.
耐性リスクや, 現状のAbx濫用の状況では過度な処方も増えそうなので,
推奨するのもちょっと恐ろしげな感じ.
コッソリと心の中に留めておくことにしておきましょう.

2013年6月13日木曜日

ARDSに対する腹臥位呼吸. 2つのRCT.

Prone-Supine II study(JAMA 2009;302:1977-84)とPROSEVA trial(N Engl J Med 2013;368:2159-68.)について.

Prone-Supine II study;
 ARDS (PEEP 5-10でP/F <200を満たす患者群) で挿管管理された342名のOpen-label RCT.
 腹臥位呼吸 vs 仰臥位のまま管理群に割り付け, 予後を比較.
 腹臥位呼吸は20時間/日行うプロトコール.

アウトカム;
Outcome
Prone
Supine
全患者RR
中等症患者RR
重症患者RR
28d mortality
31.0%
32.8%
0.97[0.84-1.13]
1.04[0.89-1.22]
0.87[0.66-1.14]
ICU mortality
38.1%
42.0%
0.94[0.79-1.12]
1.00[0.83-1.22]
0.83[0.60-1.15]
6-mo mortality
47.0%
52.3%
0.90[0.73-1.11]
0.98[0.76-1.25]
0.78[0.53-1.14]



 腹臥位呼吸, 仰臥位のまま管理群で死亡リスクに有意差無し.


Complication
Prone
Supine
P
鎮静, 筋弛緩増量
17.9
12.5
<0.001
気道閉塞
10.3
6.6
<0.001
一過性Sat低下
15.4
11.3
<0.001
嘔吐
4.4
1.7
<0.001
低血圧, 不整脈
18.0
12.4
<0.001
Loss of venous access
1.23
0.25
<0.001
気管チューブのズレ
0.87
0.40
0.02


 それどころか, 仰臥位では合併症が増加してしまうという結論(Event/100-日)

PROSEVA trial;
 発症36時間以内の重症ARDS(FiO2 ≥0.6, PEEP≥5, VT 6ml/kgの条件下でP/F<150) 466名のRCT.
 16時間以上の腹臥位呼吸群 vs 仰臥位で維持する群に割り付け28日死亡率を比較.

腹臥位呼吸は最低16時間行い, 以下を満たした場合に解除.
 ● 仰臥位で4h以上, P/F>150(PEEP ≤10, FiO2 ≤0.6)を維持. 仰臥位と比較してP/Fが20%以上低下した場合
 ● 腹臥位で何らかの合併症を生じ, 継続できない場合
 腹臥位→仰臥位に戻してから, 呼吸状態増悪した場合は, 再度腹臥位呼吸を開始する.

仰臥位群は以下を満たさない限り, 仰臥位を維持; 
 NO吸入, ECMOなどレスキューを用いても, P/F <55となってしまう(PEEP, FiO2はMax)

アウトカム;

 腹臥位呼吸の方が有意に28日死亡率, 抜管成功率, 呼吸器離脱率が良好.

この2つのStudyの結果の違いは何処から来るのか?
明らかに異なるのは母集団.
そもそもの母集団が, Prone-Supine IIではP/F <200である一方,
PROSEVAではP/F<150であり, 当然SAPS II, SOFA scoreはPROSEVAの方が重症が多い.

腹臥位呼吸のプロトコールも, PROSEVAの方がより細かく設定されている印象.

2014年5月に発表された腹臥位呼吸のMeta-analysis
(Crit Care Med 2014; 42:1252–1262)
2013年5月までに発表された11 RCTsのMeta (N=2246)
死亡リスクを評価したForest plot.

Studyの種別の死亡リスクを評価したForest plot.
重症のARDSにおいて, ≥10h/dの腹臥位呼吸で有意差あり.
Lung protective ventilationも大事.

合併症:
褥瘡や気管チューブ閉塞リスクが上昇

Meta-analysisでは死亡リスクの減少効果が示された.
特に重症のARDS(P/F≤150)において, Lung-protective ventilationをしていて, 1日あたり10時間以上の腹臥位呼吸をしている場合で死亡リスクの減少効果が顕著となる.

重症例では考慮しましょうという推奨で良いと思われます。

MTXで効果不十分なRAに対する DMARD3剤療法 vs 生物製剤導入


Therapies for Active Rheumatoid Arthritis after Methotrexate Failure. NEJM 2013
オンライン先行発表より


RACAT trial; 
MTX単剤治療でも活動性が高いRA患者353名を対象としたDB, noninferiority trial.
DMARD 3剤治療群(MTX, Sulfasalazine, Hydroxychloroquine)
 vs. 生物製剤使用群(MTX, Etanercept) に割つけ, 48wk継続.(DB, noninferiority trial)

 治療開始後24wkで目的の治療効果が得られない場合*, Blindした状態でもう一方の治療へ変更するプロトコール. (*DAS28が>1.2低下しない場合)
 
 患者群はMTX 15-25mg/wkを使用しても, DAS28が≥4.4となっている患者を対象.

各薬剤の投与量は,
Sulfasalazine
1g/d 6wk 2g/d
Hydroxychloroquine
400mg/d
Etanercept
50mg/wk
また, PSLは10mg/dまで使用可. NSAIDも併用可能.

母集団;

アウトカム;
 48wk時点でのDAS28値は3剤療法も生物製剤使用群も同等. (3剤療法群 -2.1 vs 生物製剤群 -2.3, P=0.26)(A)
 両群で27%が24wk時点で効果不十分と判断され, 治療プロトコールを変更. 変更率は両者で同等.
 変更後はその治療で効果が認められ,  最終的には同等の反応を示した.(B)

他のアウトカムと副作用

MTX単独で効果不十分の場合,
 DMARD 3剤療法も, 生物製剤変更例も, 同等の効果が見込める.
 双方とも, 効果が見込めない症例は, 3剤療法 ⇒ 生物製剤, 生物製剤 ⇒ 3剤療法へ変更することで, さらなる効果が見込める.


 24wk時点でのACR70はEtanercept群の方が良好であり, 生物製剤の方がより早く症状を緩和できるが, 48wk時点では有意差無し.

費用の観点から, 通常3剤療法→生物製剤に移行することが多く,
それは理にかなった方法と言えそう.

2013年6月11日火曜日

Small intestinal bacterial overgrowth syndrome (SIBO)

Small intestinal bacterial overgrowth syndrome (SIBO); 小腸細菌過増殖症候群 について.

(World J Gastroenterol 2010 June 28; 16(24): 2978-2990)
SIBOとは上部消化管において, 一部の細菌が多量に増殖することで生じる症候群.
小腸は細菌増殖を予防する様々な機構がある;
 胃酸, 小腸の蠕動運動, 回盲弁, 膵液, 胆汁が予防に関与.
 これらにより腸内細菌層を保っており, それらが障害される様な病態でSIBOを生じ得る.
 ● 分泌障害; 無胃酸症, 膵外分泌障害, 免疫不全
 ● 構造障害; 腸閉塞, 憩室, 瘻孔, Blind loop, 回盲弁の切除
 ● 蠕動障害; 強皮症, 自律神経障害, DM, 放射線療法後, 偽性閉塞
 大抵, 複数の因子を有する例が多い


(Infect Dis Clin N Am 24 (2010) 943–959)

肝硬変患者の50%でSIBOを満たす.
無胃酸症で最も多いのは長期のPPI投与. ただし, これについては議論が多い所.
膵外分泌障害; 慢性膵炎の30-40%で合併する.
免疫不全症; 特にIgA欠損症, AIDSなど.
強皮症; 強皮症患者の43-56%でSIBOを満たす.(Rheumatology 2009;48:1314–1319)
他, 様々な疾患でSIBOは合併し得る.
 慢性下痢や吸収不良, 低栄養の1つの原因として意識するのが大事.

SIBOの臨床症状
SIBOの症状としては, 腹部膨隆, 下痢, 吸収不良, 体重減少, 低栄養が主
 無症候性も多く, 後述するSIBOの基準を満たす患者の内, 2.5-22%が有症状との報告もある. (World J Gastroenterol 2010 June 28; 16(24): 2978-2990)

SIBOでは消化障害, 吸収障害を来す.
 細菌が消化酵素の活性化を阻害する機序, 吸収, 代謝を障害する機序.
 細菌がFructose, lactose, sorbitolを分解することで, Saccarideの吸収障害も呈し得る.
 小腸粘膜の障害により, 粘膜透過性が更新し, 蛋白漏出性胃腸症となる例もある

ビタミン欠乏症; Vit B12, Vit D欠乏など
 細菌がVit B12を消費することで欠乏する.

細菌による毒素産生
 外毒素, アンモニア, D-lactateを産生し, 炎症反応を惹起することが知られている.
 >> 慢性の小腸炎を生じ, 粘膜形態に変化を生じる.
 また, Candida albicans, Saccharomyces cerevisiaeにより, エタノールを産生することもある.

IBSとの関連性もあり.
 SIBO患者の30-85%がIBSの診断基準を満たす.
 実際IBSの治療の1つとして抗生剤治療があり, IBSと診断されている患者は実はSIBOではないかとの指摘もある. (CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY 2009;7:1279–1286)

SIBOの診断;
SIBOの診断; Gold standardは十二指腸液の細菌検査. 他にはGlucose, Lactuloseを使用したHydrogen, Methane呼気試験が非侵襲的検査として挙げられる.
 通常, 十二指腸内の細菌量は<103-104/mL
 Lactobacilli, enterococci, Gram陽性好気性菌が主で, 嫌気性のBacteroidesは認められないのが普通.
 空腸になると増加し始め, 空腸末端では109/mLまで増加する. 
 健常人の十二指腸液の1/3が無菌との報告もある.
 十二指腸液の細菌量 ≥105/mLでSIBOと診断するという基準が多い.

呼気試験の方法 (Infect Dis Clin N Am 24 (2010) 943–959)
 Rice flour breath hydrogen test; 30-50gの米粉を摂取させ, Baselineと摂取後30分毎の呼気中水素濃度を評価. 5時間つづける. 空腹時 水素濃度が>15ppm or 摂取後に>14ppm上昇する場合に陽性

 Hydrogen breath test using xylose; 25gのD-xyloseを250mlの水に溶解させて摂取. 吸収不良がある場合, 大腸まで到達し, 分解され, 呼気H2が増加. Baselineから25ppm以上の増加で有意と判断.

 Lactulose breath hydrogen test (LHBT);
 Lactulose 10gを摂取した後, 15分毎に呼気中H2, メタンを評価(3hr). 通常は吸収されず, 大腸で分解されるが, SIBOでは上部で分解.
 メタンは正常でも上部で発生し得るため, H2を測定した方が良く, 上部での分解ピーク, 下部での分解ピークの2峰性をとるのが診断に有用な所見.
 もしくは, 摂取後90分でH2が上昇する所見, 摂取後180分以内にBaselineより20ppm上昇する所見を有意とする.

 Glucose hydrogen breath test (GHBT); 
 グルコース50-75gを用いて10%溶液を作成し, 摂取. 摂取後15分毎に呼気H2を3時間に渡り評価.
 Baseline H2が>12ppmの場合, 摂取後2時間以内で >12ppm上昇する場合を有意と取る.

Glucose負荷試験の感度 62.5%, 特異度 82%,
Lactulose負荷試験の感度 52%, 特異度 86%と, Glucose負荷試験のほうが診断能は良好.
(World J Gastroenterol 2010 June 28; 16(24): 2978-2990)

SIBOの治療 (World J Gastroenterol 2010 June 28; 16(24): 2978-2990)
基本は基礎疾患の治療と栄養の改善.
 細菌の栄養になりやすい単糖類やLactoseは少なくし, その分のCalを脂肪やMCT oils(Medium-chain triacylglyceroles)で補う.

抗生剤の長期投与は様々な問題がある. 
 原因菌に効果のあるAbxが望まれるが, 長期投与では下痢やCDAD, 副作用が問題となりやすい.
 以前はテトラサイクリンが使用されていたが, 27%で改善したのみと, 効果は乏しかった.

使用される抗生剤の一覧; (Infect Dis Clin N Am 24 (2010) 943–959)
抗生剤治療を7-10日間行うことで, その後数ヶ月に渡りSIBOを改善し得る.
ただし, 9ヶ月で44%の再発率であり, 定期的な治療, 根本治療, SIBO予防の併用が必要.

予防に関しては明確なEvidenceが無い.
病態に応じて,
 腸管蠕動促進薬
 PPIやH2阻害薬をさける
 Probioticsの使用 等が選択肢として挙げられる.
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
SIBOは輸入脚症候群で有名だが,  意外にいろいろな病態に合併し得ること, 慢性下痢や低栄養のリスクにもなっており, 結構見逃している症例は多いのかもしれない.
先ずはこういった病態が, 結構な人で診られるという点、疑った場合にどのような検査を行うかという知識を片隅にでも入れておいてください。

レクチャー 正常圧水頭症

正常圧水頭症 Normal pressure hydrocephalus

2013年6月4日火曜日

Cheyne-Stokes呼吸はEF低下に関連する

かのSteven McGeeによるStudy.
(The American Journal of Medicine (2013) 126, 536-540)
2001-2006年に386名を診察し, Cheyne-Stokes呼吸の有無とEFとの関連を評価.
Cheyne-Stokes呼吸を認めたのは45例(11.7%)
呼吸のサイクルは55.3±19.8秒[25-115],
無呼吸の期間は24.2±8.6秒[10-45],
Ventilation durationは31.1±17.6秒[15-90]であった.

 Cheyne-Stokes呼吸に関連する因子は, 年齢とEF.
 高齢者, EF低下している患者程Cheyne-Stokes呼吸が多い.

EF<40%群の34%でCheyne-Stokes呼吸を認める.
Cheyne-Stokes呼吸は, EF<40%に対するLR 5.3[3.1-9].
 また, <80yr群でよりLRが高く, >80yr群ではそこまで有用ではない.

レクチャー; 多系統萎縮症

多系統萎縮症
Multiple System Atrophy


2013年6月3日月曜日

レンサ球菌 菌血症の場合に心内膜炎の評価が必要かどうか?

ブドウ球菌菌血症(S aureus bacteremia [SAB])ではその13-25%で心内膜炎を合併するため, ルーチンで経食道エコー(TEE)が推奨されることは有名.

しかしながら現実問題, 全例にTEEを行うのは困難な事も多く, SABにおけるTEEの適応に関しては最近様々なStudyがでており, 今後明確な基準ができるかもしれない. その辺は後日記載します.
(Clinical Infectious Disease 2011;53:1-9)(Medicine 2013;92: 182-188)

では, レンサ球菌菌血症症例ではIEのルーチン評価は必要かどうか?
"レジデントのための感染症マニュアル 第二版"には, TEEはSABの全例, 他のGPC菌血症の場合, 感染Focusがはっきりしない場合にTEEを行うべき, との記載がある.

TEEの対費用効果を考慮すると,
IEの検査前確率 4-60%の場合に第一選択としてTEEを行うことがよいとされている
(Am J Med. 1999 Sep;107(3):198-208.)
 検査前確率>60%の場合は検査せずにIEをカバーしにいった方が良いし,
 2-3%の場合は経胸壁エコーで除外することも許容される.

実際, レンサ球菌 菌血症(Streptococcus spp. bacteremia; SSB)の場合, どの程度の感染性心内膜炎を合併し得るのだろうか?

遠隔播種のリスク因子を1つ以上満たすSAB 85例, SSB 30例のprospective cohort
(Medicine 2012;91: 86-94)
遠隔播種のリスク因子は以下の通り;
 ○市中感染症
 ○治療の遅れ
 ○>48時間の血液培養陽性持続
 ○治療開始後>72時間発熱が持続

遠隔播種はPETにて評価した.
アウトカム; 遠隔播種の頻度は以下の通り
心内膜炎の合併率は, SABで15.3%, SSBで30%. 統計学的には両者に有意差は無し.
 SSBでは遠隔播種を認めたのが20/30(67%)で, 20例で30部位の感染.
 SABでは遠隔播種を認めたのが64/85(75%)で, 64例で101部位の感染.
  >> 重複感染率も両者で同等

SABとSSBの遠隔播種を評価したRetrospective cohortでも, 遠隔播種の頻度は39% vs 25%と有意差ないものの, 心内膜炎, 脳血管感染症の頻度はむしろSSBの方が高頻度であった
(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2007 Feb;26(2):105-13.)

つまり, SABにしてもSSBにしても, 実はIEのリスクは同等であり,
SSBでも同様にIEを評価せねばならない可能性が高い.
特に遠隔播種のリスク因子を満たす症例に関しては, 積極的に捜すべきなのかもしれない.
ちなみに, 遠隔播種のリスクは, 以下の通り.
(Medicine 2012;91: 86-94)
 これを見ると, 治療の遅れ, >72時間の発熱持続, 侵入門戸不明例, 異物は遠隔播種のリスク因子であり, それらを満たすSSBでもIE評価は大事となりそう.

 SAB以外のGPC菌血症の場合はFocus不明例のみで調べれば良い, となると見逃すリスクもあるのかもしれない.

(注意; これらのGPC菌血症, SSBは肺炎球菌菌血症は除かれています)