脂肪塞栓 Fat embolism
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2013年3月21日木曜日
2013年3月19日火曜日
アニサキス症
アニサキス症 Anisakiasis
(Clinical Microbiology Reviews 1989;2:278-84)
回虫の幼虫移行症であり, 生の魚の摂取により感染
寿司, 刺身, ロミロミなどで有名
Anisakis, Pseudoterranova, Contracaecum spp.の3種
アニサキスのLife cycle
Noninvasive(luminal), Invasiveに分類
Noninvasive; 組織穿通を認めず, 無症候.
回虫が食道を逆行し, 喉頭へ戻る際に, ”Tingling throat syndrome”を来すこともあり
Invasive; 組織穿通を認め, 腹痛など症状を来す. Anisakis spp.で多く認められる.
日本国内のDataでは, (Med J Hokkaido 1988;63:376-91)
年間発症件数は1000/year
Gastric Anisakiasisi 91.7%, Intestinal 8%, その他0.2%(n=4682)
駆虫するには…
-35度で15hr, -23℃で168hr(7d)
-20度で3-5d
中心温度が+60度以上になるように加熱 10min
室温で駆虫するならば,
症状
摂食後1-12hrで突如発症の腹痛, 嘔気嘔吐, 下痢, 蕁麻疹
摂食後6hr以内での発症が最も多く, <48hrでほぼ全例が発症.
症状は1-5D持続し, 慢性化することもある
70%でFOBが陽性となる.
診断は難しく, 誤診も多い. 半数以上で誤診を認める
国内の報告では, 60%で誤診; 虫垂炎, 急性腹症, 胃癌, イレウス, 胆石症, 憩室炎, 腹膜炎, 膵癌など (Am J Trop Med Hyg 1967;16:723-8)
他の報告では, Gastric Anisakiasisの86%で胃潰瘍, 胃癌, ポリープ, 胃腫瘍と誤診
Intesitinal Anisakiasisの52%で虫垂炎, イレウスと誤診(Prog Med Parasitol Jpn 1972;4:305-93)
診断方法
内視鏡検査; 除去も可能であり, 治療を兼ねる
画像検査; 侵襲部位の周囲, 限局性 or 全周性壁腫脹を認める.
偽腫瘍形成は36%で認められ, Gastric foldは35.4%で認めた.
それら所見は, 回虫除去後数日で消失している (JAMA 1985;253:1012-3) 18名の腸アニサキスの評価では, 17名に病変周囲の腹水を認めた (Radiology 1992;185:789-93)
アニサキスのLab data
アニサキス患者では血中Eoは様々
Case reportにより4-41%と様々(Clin Micro Rev 1989;2:278-84)
18名の解析では, WBC 4900-14100であり, Eo 0-8%(平均3.4%)と上昇は認めない.
腹水検査では, 好酸球増多が著明. (Radiology 1992;185:789-93)
好酸球活動性の指標, Eosinophil cationic protein
32名の評価では, Day 0で 16.3mg(2.6-45.8), Day 30で3.76(0.8-11.6)(Clin Microbiol Infect 2003;9:453-7)
IgEと異なり, 長期的な上昇が認めないが, 特異性は低下. また感度も十分とは言えない
免疫検査
様々な検査があるが, どれも確定的とは言えない
RASTが最もSn, Sp良好とされている.
Anisakisに対するIgE titerは感染後2-6moは上昇しており, Ascaris, ToxocaraとAnisakisとの交差反応も一部認められるため, 過去にAscaris, Toxocara感染を来した患者の場合はアテにならない
Ani s I protein特異IgEはAnisakiasis simplexに対するSn 86%, Sp 90% (Ann Allergy Asthma Immunol 2002;89:74-77)
番外編; 大腸アニサキスによる腸重積 (Intern Med 52: 223-226, 2013)
大腸アニサキスは非常に稀な病態. 0.1-0.9%
結腸の局所的な壁肥厚, 炎症を示し, 腸閉塞や腸重積の原因となり得る.
大腸アニサキスの半数が上行結腸.
腸重積は非常に稀で, 2013年までに国内の報告は4例のみ.(上行2例, 横行1例, S状1例)
原因食物摂取〜発症までは数時間〜2日間.
アニサキスと腸重積で調べると, 国内外の報告例は12例.
特に十二指腸の腸重積が6例と半数を占める. 回盲部が2例, 結腸が4例.
(World J Gastroenterol 2010 April 14; 16(14): 1804-1807)
(Clinical Microbiology Reviews 1989;2:278-84)
回虫の幼虫移行症であり, 生の魚の摂取により感染
寿司, 刺身, ロミロミなどで有名
Anisakis, Pseudoterranova, Contracaecum spp.の3種
アニサキスのLife cycle
⑥成虫は海洋哺乳類を宿主とする
(胃内に生息)
(胃内に生息)
①卵は糞とともに海中へ排泄.
②海中で2nd-stage Larvaeとなり,
③プランクトン, オキアミに捕食
④魚, イカがそれを捕食し,
⑤3rd-Lavaeとなる.
⑦その後ヒトに摂食されると,
Anisakiasisを発症するに至る
Noninvasive(luminal), Invasiveに分類
Noninvasive; 組織穿通を認めず, 無症候.
回虫が食道を逆行し, 喉頭へ戻る際に, ”Tingling throat syndrome”を来すこともあり
Invasive; 組織穿通を認め, 腹痛など症状を来す. Anisakis spp.で多く認められる.
日本国内のDataでは, (Med J Hokkaido 1988;63:376-91)
年間発症件数は1000/year
Gastric Anisakiasisi 91.7%, Intestinal 8%, その他0.2%(n=4682)
駆虫するには…
-35度で15hr, -23℃で168hr(7d)
-20度で3-5d
中心温度が+60度以上になるように加熱 10min
室温で駆虫するならば,
漬けるもの
|
期間
|
10%ホルマリン
|
6d
|
1% HCl
|
112d
|
お酢
|
51d
|
醤油
|
1d
|
ウスターソース
|
1d
|
症状
摂食後1-12hrで突如発症の腹痛, 嘔気嘔吐, 下痢, 蕁麻疹
摂食後6hr以内での発症が最も多く, <48hrでほぼ全例が発症.
症状は1-5D持続し, 慢性化することもある
70%でFOBが陽性となる.
診断は難しく, 誤診も多い. 半数以上で誤診を認める
国内の報告では, 60%で誤診; 虫垂炎, 急性腹症, 胃癌, イレウス, 胆石症, 憩室炎, 腹膜炎, 膵癌など (Am J Trop Med Hyg 1967;16:723-8)
他の報告では, Gastric Anisakiasisの86%で胃潰瘍, 胃癌, ポリープ, 胃腫瘍と誤診
Intesitinal Anisakiasisの52%で虫垂炎, イレウスと誤診(Prog Med Parasitol Jpn 1972;4:305-93)
診断方法
内視鏡検査; 除去も可能であり, 治療を兼ねる
画像検査; 侵襲部位の周囲, 限局性 or 全周性壁腫脹を認める.
偽腫瘍形成は36%で認められ, Gastric foldは35.4%で認めた.
それら所見は, 回虫除去後数日で消失している (JAMA 1985;253:1012-3) 18名の腸アニサキスの評価では, 17名に病変周囲の腹水を認めた (Radiology 1992;185:789-93)
アニサキスのLab data
アニサキス患者では血中Eoは様々
Case reportにより4-41%と様々(Clin Micro Rev 1989;2:278-84)
18名の解析では, WBC 4900-14100であり, Eo 0-8%(平均3.4%)と上昇は認めない.
腹水検査では, 好酸球増多が著明. (Radiology 1992;185:789-93)
好酸球活動性の指標, Eosinophil cationic protein
32名の評価では, Day 0で 16.3mg(2.6-45.8), Day 30で3.76(0.8-11.6)(Clin Microbiol Infect 2003;9:453-7)
IgEと異なり, 長期的な上昇が認めないが, 特異性は低下. また感度も十分とは言えない
免疫検査
様々な検査があるが, どれも確定的とは言えない
RASTが最もSn, Sp良好とされている.
Anisakisに対するIgE titerは感染後2-6moは上昇しており, Ascaris, ToxocaraとAnisakisとの交差反応も一部認められるため, 過去にAscaris, Toxocara感染を来した患者の場合はアテにならない
Ani s I protein特異IgEはAnisakiasis simplexに対するSn 86%, Sp 90% (Ann Allergy Asthma Immunol 2002;89:74-77)
番外編; 大腸アニサキスによる腸重積 (Intern Med 52: 223-226, 2013)
大腸アニサキスは非常に稀な病態. 0.1-0.9%
結腸の局所的な壁肥厚, 炎症を示し, 腸閉塞や腸重積の原因となり得る.
大腸アニサキスの半数が上行結腸.
腸重積は非常に稀で, 2013年までに国内の報告は4例のみ.(上行2例, 横行1例, S状1例)
原因食物摂取〜発症までは数時間〜2日間.
アニサキスと腸重積で調べると, 国内外の報告例は12例.
特に十二指腸の腸重積が6例と半数を占める. 回盲部が2例, 結腸が4例.
(World J Gastroenterol 2010 April 14; 16(14): 1804-1807)
2013年3月16日土曜日
メモ; Hemispheric Encoding Retrieval Asymmetry
メモ; 左右の前頭葉で記憶に関する機能が異なるという理論
Proc Natl Acad Sci 1994;91:2016-2020
Proc Natl Acad Sci 1994;91:2016-2020
- HERA Model
- 左右の前頭葉皮質はEpisodicとSemantic(意味)の記憶に別々に関連
- 左側の前頭葉はSemantic memoryの想起に関連している
左側の前頭前野は生じた出来事をEpisodic memoryとして記憶する - 右側の前頭葉, 前頭前野はEpisodicな情報の想起に関連する.
右側は言語情報の記憶に関連していると考えられる.
2013年3月13日水曜日
間質性膀胱炎、Painful bladder syndrome
30台女性. 下腹部痛.
頻回の膀胱炎の既往があり, 年に2-3回は受診し、抗生剤治療されている.
2ヶ月前より下腹部の痛み、頻尿あり。膀胱炎と思い受診するが、尿所見は奇麗。
血液検査では炎症反応もなく、経過観察された。
その後泌尿器科受診し、エコーなど施行されるも特に問題無し。
症状持続する為に2週間前に近医を受診。その際抗生剤を処方され、その後症状は軽快した。抗生剤は5日分処方され、それが終了すると再度疼痛と頻尿が出現。
原因が分からないとのことで、内科外来を受診。
尿回数は1日10回以上。夜間も4回程度排尿する。排尿時痛はたまにある程度。
既往歴無し。内服は抗生剤のみ。喫煙なし。
所見は確かに下腹部の圧痛あり。筋性防御やMassは無し。
Labも問題なく、尿検査も問題無し。
さて、この疾患は、、、?
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頻回の膀胱炎の既往があり, 年に2-3回は受診し、抗生剤治療されている.
2ヶ月前より下腹部の痛み、頻尿あり。膀胱炎と思い受診するが、尿所見は奇麗。
血液検査では炎症反応もなく、経過観察された。
その後泌尿器科受診し、エコーなど施行されるも特に問題無し。
症状持続する為に2週間前に近医を受診。その際抗生剤を処方され、その後症状は軽快した。抗生剤は5日分処方され、それが終了すると再度疼痛と頻尿が出現。
原因が分からないとのことで、内科外来を受診。
尿回数は1日10回以上。夜間も4回程度排尿する。排尿時痛はたまにある程度。
既往歴無し。内服は抗生剤のみ。喫煙なし。
所見は確かに下腹部の圧痛あり。筋性防御やMassは無し。
Labも問題なく、尿検査も問題無し。
さて、この疾患は、、、?
-----------------------------------------------------------------------
2013年3月1日金曜日
血小板の大きさ Mean Platelet Volume (MPV)
血小板減少時に "血小板の大きさ" が解釈に役立つことが多い.
血小板の大きさをMean PLT Volume(MPV)と呼ぶ.
あまり馴染みの無いかもしれないが, 血算の検査機では大体この数字は出ている.
が、実際の検査結果に反映されていないだけで、検査室に聞けば教えてくれるはずです。
Mean Platelet Volume(MPV)
血小板は産生された直後は大きく, 時間が経てば小さくなる.
従って, 血小板減少を見た時,
MPVが大きければ幼弱血小板が主 ⇒ 血小板消費亢進し, 産生能力は保たれている状態
(主にDICやHUS, TTP, 消費による低下)
MPVが小さければ古い血小板が主 ⇒ 血小板の産生が低下している状態
(骨髄抑制)
MPV>7.9は血小板破壊亢進に対する
Sn 82.3%[70.5-90.8] Sp 92.5%[79.6-98.4], LR 11.0. (Int J Lab Hematol 2008;30:408-14) との結果もある.
Sn 82.3%[70.5-90.8] Sp 92.5%[79.6-98.4], LR 11.0. (Int J Lab Hematol 2008;30:408-14) との結果もある.
他の報告でも,
骨髄疾患(血小板産生低下)では, MPV 7.3, 7.0, 8.1fl.
骨髄疾患(-)(血小板消費亢進)ではMPV 8.6, 8.4, 9.8fl という結果が得られており,
骨髄疾患(-)(血小板消費亢進)ではMPV 8.6, 8.4, 9.8fl という結果が得られており,
(Int J Lab Hematol 2010;32:498-505) (Int J Lab Hematol 2008;30:214-9) (Clin Lab Haematol 2005;27:370-3)
→ MPVのCutoffは8.2-3位と考える.
ただし, 肝硬変患者では巨大血小板, PDW(PLT Distribution Width)が拡大するため, MPVはあてにならない. (Folia Haematol Int Mag Klin Morphol Blutforsch 1988;115:719-26)
----------------以下はエビデンス----------------
血小板減少のある473名の解析(Clin Lab Haem 2005;27:370-3)
PLTの寿命低下による血小板減少群と, 骨髄疾患による血小板低下群でMPVを比較すると,
寿命低下群(消費亢進)のほうがMPVが大きい傾向がある.
MPV値と骨髄疾患のOdds ratioの関連:
MPV Cutoff
|
骨髄疾患OR
|
NPV
|
MPV Cutoff
|
骨髄疾患OR
|
PPV
|
≥11.0
|
0.06[0.02-0.19]
|
95%
|
<11.0
|
17.20[5.31-55.80]
|
47%
|
≥10.5
|
0.05[0.02-0.13]
|
95%
|
<10.5
|
20.75[7.46-57.72]
|
50%
|
≥10.0
|
0.08[0.04-0.16]
|
91%
|
<10.0
|
11.90[6.19-22.88]
|
53%
|
≥9.5
|
0.09[0.06-0.16]
|
88%
|
<9.5
|
10.70[6.36-17.97]
|
59%
|
≥9.0
|
0.10[0.07-0.16]
|
84%
|
<9.0
|
9.57[6.14-14.91]
|
64%
|
≥8.5
|
0.13[0.09-0.20]
|
77%
|
<8.5
|
7.66[5.06-11.59]
|
69%
|
≥8.0
|
0.12[0.08-0.20]
|
70%
|
<8.0
|
8.10[5.03-13.02]
|
77%
|
≥7.5
|
0.20[0.11-0.20]
|
64%
|
<7.5
|
5.11[2.91-8.95]
|
74%
|
血小板減少(<15万/µL)の699名の解析では(Int. Jnl. Lab. Hem. 2010, 32, 498–505)
このStudyでは,
Cutoff≤8.15で感度67.7%, 特異度65%,
Cutoff≤6.75で感度51.6%, 特異度53.8%で骨髄異常を示唆するという結果.
あまりいい結果ではない...
MPVと悪性腫瘍の骨髄浸潤の関係を評価したStudy(Int Jnl Lab Hem 2008;30:214-9)
固形腫瘍の121名(内骨髄浸潤61名)と健常人Control62名においてMPVを評価.
各群のMPVをプロットすると,
担癌患者では, PLT値に関係なく, MPV<7.4は癌の骨髄浸潤を示唆するという結果.
Cut-off
|
Sn(%)
|
Sp(%)
|
MPV<8.0
|
85.1%
|
88.3%
|
MPV<7.4
|
82.7%
|
89.6%
|
MPV<7.2
|
55.6%
|
91.8%
|
Hb<13g/dL
|
74.1%
|
85.6%
|
Hb<12
|
66.1%
|
86.0%
|
Hb<11.5
|
61.4%
|
90.0%
|
意外に知らないけど情報量の多いこのMPVという値.
是非覚えて活用しましょう.