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2013年3月27日水曜日

脂肪塞栓症

脂肪塞栓 Fat embolism

2013年3月21日木曜日

2013年3月19日火曜日

アニサキス症

アニサキス症 Anisakiasis
(Clinical Microbiology Reviews 1989;2:278-84)

回虫の幼虫移行症であり, 生の魚の摂取により感染
 寿司, 刺身, ロミロミなどで有名
 Anisakis, Pseudoterranova, Contracaecum spp.の3種

アニサキスのLife cycle

⑥成虫は海洋哺乳類を宿主とする
(胃内に生息)
①卵は糞とともに海中へ排泄.
②海中で2nd-stage Larvaeとなり,
③プランクトン, オキアミに捕食
④魚, イカがそれを捕食し,
⑤3rd-Lavaeとなる.
⑦その後ヒトに摂食されると,
Anisakiasisを発症するに至る


Noninvasive(luminal), Invasiveに分類
Noninvasive; 組織穿通を認めず, 無症候. 
 回虫が食道を逆行し, 喉頭へ戻る際に, ”Tingling throat syndrome”を来すこともあり
Invasive; 組織穿通を認め, 腹痛など症状を来す. Anisakis spp.で多く認められる.

日本国内のDataでは, (Med J Hokkaido 1988;63:376-91)
年間発症件数は1000/year
Gastric Anisakiasisi 91.7%, Intestinal 8%, その他0.2%(n=4682)

駆虫するには…
 -35度で15hr, -23℃で168hr(7d)
 -20度で3-5d
 中心温度が+60度以上になるように加熱 10min
 室温で駆虫するならば, 
漬けるもの
期間
10%ホルマリン
6d
1% HCl
112d
お酢
51d
醤油
1d
ウスターソース
1d



症状
 摂食後1-12hrで突如発症の腹痛, 嘔気嘔吐, 下痢, 蕁麻疹
 摂食後6hr以内での発症が最も多く, <48hrでほぼ全例が発症.
 症状は1-5D持続し, 慢性化することもある
 70%でFOBが陽性となる.

診断は難しく, 誤診も多い. 半数以上で誤診を認める
 国内の報告では, 60%で誤診; 虫垂炎, 急性腹症, 胃癌, イレウス, 胆石症, 憩室炎, 腹膜炎, 膵癌など (Am J Trop Med Hyg 1967;16:723-8)
 他の報告では, Gastric Anisakiasisの86%で胃潰瘍, 胃癌, ポリープ, 胃腫瘍と誤診
 Intesitinal Anisakiasisの52%で虫垂炎, イレウスと誤診(Prog Med Parasitol Jpn 1972;4:305-93) 

診断方法
 内視鏡検査; 除去も可能であり, 治療を兼ねる
 画像検査; 侵襲部位の周囲, 限局性 or 全周性壁腫脹を認める.
 偽腫瘍形成は36%で認められ, Gastric foldは35.4%で認めた.
 それら所見は, 回虫除去後数日で消失している (JAMA 1985;253:1012-3) 18名の腸アニサキスの評価では, 17名に病変周囲の腹水を認めた (Radiology 1992;185:789-93)

アニサキスのLab data
アニサキス患者では血中Eoは様々
 Case reportにより4-41%と様々(Clin Micro Rev 1989;2:278-84)
 18名の解析では, WBC 4900-14100であり, Eo 0-8%(平均3.4%)と上昇は認めない.
 腹水検査では, 好酸球増多が著明. (Radiology 1992;185:789-93)
好酸球活動性の指標, Eosinophil cationic protein
 32名の評価では, Day 0で 16.3mg(2.6-45.8), Day 30で3.76(0.8-11.6)(Clin Microbiol Infect 2003;9:453-7) 
 IgEと異なり, 長期的な上昇が認めないが, 特異性は低下. また感度も十分とは言えない

免疫検査
様々な検査があるが, どれも確定的とは言えない
 RASTが最もSn, Sp良好とされている.
 Anisakisに対するIgE titerは感染後2-6moは上昇しており, Ascaris, ToxocaraAnisakisとの交差反応も一部認められるため, 過去にAscaris, Toxocara感染を来した患者の場合はアテにならない
 Ani s I protein特異IgEはAnisakiasis simplexに対するSn 86%, Sp 90% (Ann Allergy Asthma Immunol 2002;89:74-77)


番外編; 大腸アニサキスによる腸重積 (Intern Med 52: 223-226, 2013)
大腸アニサキスは非常に稀な病態. 0.1-0.9% 
 結腸の局所的な壁肥厚, 炎症を示し, 腸閉塞や腸重積の原因となり得る.
 大腸アニサキスの半数が上行結腸.
 腸重積は非常に稀で, 2013年までに国内の報告は4例のみ.(上行2例, 横行1例, S状1例)
 原因食物摂取〜発症までは数時間〜2日間.


アニサキスと腸重積で調べると, 国内外の報告例は12例.
 特に十二指腸の腸重積が6例と半数を占める. 回盲部が2例, 結腸が4例.
(World J Gastroenterol 2010 April 14; 16(14): 1804-1807)

2013年3月16日土曜日

メモ; Hemispheric Encoding Retrieval Asymmetry

メモ; 左右の前頭葉で記憶に関する機能が異なるという理論
Proc Natl Acad Sci 1994;91:2016-2020 

  • HERA Model 
    • 左右の前頭葉皮質はEpisodicとSemantic(意味)の記憶に別々に関連
    • 左側の前頭葉はSemantic memoryの想起に関連している
      左側の前頭前野は生じた出来事をEpisodic memoryとして記憶する
    • 右側の前頭葉, 前頭前野はEpisodicな情報の想起に関連する.
      右側は言語情報の記憶に関連していると考えられる.

2013年3月13日水曜日

間質性膀胱炎、Painful bladder syndrome

30台女性. 下腹部痛.
頻回の膀胱炎の既往があり, 年に2-3回は受診し、抗生剤治療されている.
2ヶ月前より下腹部の痛み、頻尿あり。膀胱炎と思い受診するが、尿所見は奇麗。
血液検査では炎症反応もなく、経過観察された。
その後泌尿器科受診し、エコーなど施行されるも特に問題無し。
症状持続する為に2週間前に近医を受診。その際抗生剤を処方され、その後症状は軽快した。抗生剤は5日分処方され、それが終了すると再度疼痛と頻尿が出現。
原因が分からないとのことで、内科外来を受診。

尿回数は1日10回以上。夜間も4回程度排尿する。排尿時痛はたまにある程度。

既往歴無し。内服は抗生剤のみ。喫煙なし。
所見は確かに下腹部の圧痛あり。筋性防御やMassは無し。
Labも問題なく、尿検査も問題無し。

さて、この疾患は、、、?
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2013年3月1日金曜日

血小板の大きさ Mean Platelet Volume (MPV)

血小板減少時に "血小板の大きさ" が解釈に役立つことが多い.
血小板の大きさをMean PLT Volume(MPV)と呼ぶ.
あまり馴染みの無いかもしれないが, 血算の検査機では大体この数字は出ている.
が、実際の検査結果に反映されていないだけで、検査室に聞けば教えてくれるはずです。

Mean Platelet Volume(MPV) 
血小板は産生された直後は大きく, 時間が経てば小さくなる.
従って, 血小板減少を見た時,
MPVが大きければ幼弱血小板が主 ⇒ 血小板消費亢進し, 産生能力は保たれている状態
 (主にDICやHUS, TTP, 消費による低下)
MPVが小さければ古い血小板が主 ⇒ 血小板の産生が低下している状態
 (骨髄抑制)
MPV>7.9は血小板破壊亢進に対する
Sn 82.3%[70.5-90.8] Sp 92.5%[79.6-98.4], LR 11.0
(Int J Lab Hematol 2008;30:408-14) との結果もある.

他の報告でも, 
骨髄疾患(血小板産生低下)では, MPV 7.3, 7.0, 8.1fl.
骨髄疾患(-)(血小板消費亢進)ではMPV 8.6, 8.4, 9.8fl という結果が得られており,
(Int J Lab Hematol 2010;32:498-505) (Int J Lab Hematol 2008;30:214-9) (Clin Lab Haematol 2005;27:370-3)
 → MPVのCutoffは8.2-3位と考える. 

ただし, 肝硬変患者では巨大血小板, PDW(PLT Distribution Width)が拡大するため, MPVはあてにならない. (Folia Haematol Int Mag Klin Morphol Blutforsch 1988;115:719-26)

----------------以下はエビデンス----------------
血小板減少のある473名の解析(Clin Lab Haem 2005;27:370-3)
 PLTの寿命低下による血小板減少群と, 骨髄疾患による血小板低下群でMPVを比較すると,
寿命低下群(消費亢進)のほうがMPVが大きい傾向がある.

MPV値と骨髄疾患のOdds ratioの関連:
MPV Cutoff
骨髄疾患OR
NPV
MPV Cutoff
骨髄疾患OR
PPV
≥11.0
0.06[0.02-0.19]
95%
<11.0
17.20[5.31-55.80]
47%
≥10.5
0.05[0.02-0.13]
95%
<10.5
20.75[7.46-57.72]
50%
≥10.0
0.08[0.04-0.16]
91%
<10.0
11.90[6.19-22.88]
53%
≥9.5
0.09[0.06-0.16]
88%
<9.5
10.70[6.36-17.97]
59%
≥9.0
0.10[0.07-0.16]
84%
<9.0
9.57[6.14-14.91]
64%
≥8.5
0.13[0.09-0.20]
77%
<8.5
7.66[5.06-11.59]
69%
≥8.0
0.12[0.08-0.20]
70%
<8.0
8.10[5.03-13.02]
77%
≥7.5
0.20[0.11-0.20]
64%
<7.5
5.11[2.91-8.95]
74%


血小板減少(<15万/µL)の699名の解析では(Int. Jnl. Lab. Hem. 2010, 32, 498–505)

このStudyでは,
 Cutoff≤8.15で感度67.7%, 特異度65%,
 Cutoff≤6.75で感度51.6%, 特異度53.8%で骨髄異常を示唆するという結果.
 あまりいい結果ではない...

MPVと悪性腫瘍の骨髄浸潤の関係を評価したStudy(Int Jnl Lab Hem 2008;30:214-9)
固形腫瘍の121名(内骨髄浸潤61名)と健常人Control62名においてMPVを評価.
各群のMPVをプロットすると,

担癌患者では, PLT値に関係なく, MPV<7.4は癌の骨髄浸潤を示唆するという結果.
Cut-off
Sn(%)
Sp(%)
MPV<8.0
85.1%
88.3%
MPV<7.4
82.7%
89.6%
MPV<7.2
55.6%
91.8%
Hb<13g/dL
74.1%
85.6%
Hb<12
66.1%
86.0%
Hb<11.5
61.4%
90.0%


意外に知らないけど情報量の多いこのMPVという値.
是非覚えて活用しましょう.