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2012年11月28日水曜日

EFの保たれた心不全へのACE阻害薬, ARBs

心不全に対するARBs, ACE阻害薬の使用はほぼ当たり前となっているが,
HF with preserved EF (HFPEF); EFの保たれた心不全, 拡張障害型心不全での両者の効果は議論がある所.

CHARM Preserved (Lancet 2003;362:777-81)
心不全に対するARBs, ACE阻害薬の効果を調査したRCT, CHARM trialの,
EF>40%の群のみを評価したPost hoc analysis.
N=3023, NYHA II 61%, III 37%.

結果は,
Outcome
Candesartan
Placebo
HR
心血管死亡, CHF入院
22.0%
24.3%
0.86[0.74-1.00]
心血管死亡
11.2%
11.3%
0.95[0.76-1.18]
CHF入院
15.9%
18.3%
0.84[0.70-1.00]
中断原因
Candesartan
Placebo
P
低血圧
2.4%
1.1%
0.009
Cr上昇
4.8%
2.4%
0.0005
K血症
1.5%
0.6%
0.029
全体(Lab異常含む)
17.8%
13.5%
0.001



心血管死亡に関しては有意差が無し.
心不全入院率に関してはかろうじてCandesartan群の方が良好と言えるか.
少なくともEFが低下した心不全と比較するとARBsやACE阻害薬の効果は落ちると言える.

EF>45%, NYHA>IIの4563名を対象としたDB-RCT(NEJM 2008;359:11.Nov.)
Irbesartan vs Placeboに割り付け, 平均49.5ヶ月フォロー.
結果は,
Outcome(/1000pt-yr)
Placebo
Irbesartan
HR
Primary
105.4
100.4
0.95[0.86-1.05]
全死亡
52.3
52.6
1.00[0.88-1.14]
HFによる死亡, 入院
57.4
54.8
0.96[0.84-1.09]
MI, Stroke, 心血管死亡
49.4
48.9
0.99[0.86-1.13]



primary outcomeは死亡, 心血管入院, 心不全増悪, MI, UAP, Stroke, Af, VT
特に有意差を認める項目は無く, HFPEFでは両者の効果は乏しい可能性が高い.

スウェーデンのprospective cohort (JAMA 2012;308:2108-2117)
HFPEF(EF>40%)の16216名において, RAS阻害薬使用例 12543名, 非使用例 3673名で, 心血管予後を評価し, Propensity-matched designを用いて比較.
NYHA II-IIIが約80%を占める. IVは5-6%.

結果は,
HFPEFでもRAS阻害薬で死亡率は有意に低下するという結果.

Sub-analysisでは,
EF ≥50%では有意差ないが, EF 40-50%で死亡率低下効果.
HFPEFでもEF値が50%を超えるかどうかでRAS阻害薬の効果も変わる可能性.

IrbesartanのRCTではEF>45%であり, EF<45%ではARBs, ACE阻害薬を適応する方針でも良いのかもしれない.

Biological DMARDのお値段

国内で使用できるbiological DMARDs

レミケード
(Infliximab)
ヒュミラ
(Adalimumab)
エンブレル
(Etanercept)
アクテムラ
(Tocilizumab)
オレンシア
(Abatacept)
作用
TNFα抗体
TNFα抗体
可溶性TNF-R
IL-6R抗体
可溶性CTLA-4
構造
ヒト+マウス
ヒト型
ヒト型
ヒト化
ヒト型
半減期
8-10d
10-20d
3-5.5d
7-9d
8-25d
受容体
TNF-α
TNF-α
TNF-α/β
IL-6R
CD80/86
投与方法
IV,
2,4,8wk, 8wk

MTX
併用必須
SC,
2wk
SC,
2
/wk
IV,
4wk
IV,
2,4wk, 4wk

使用量とお値段を計算


レミケード100mg 1Vで10万円. (3mg/kg, 0,2,6wk目, 8wk毎)
体重50kgでは2V使用するため, 1回20万円.
年に6回 → 120万が最低ライン.


ヒュミラ40mg 1Vで71000円.
2wk毎に40-80mg投与で, 月14万〜28万円.
年に168万〜336万円.



エンブレル25mg 1Vで15500円.
投与量は1回10-25mg, 週2回が基本.
2回/wkでは週3万, 月12万, 年150万円. 
1回/wkではその半額.

アクテムラ200mg 1Vで44500円.(8mg/kgを4wk毎)
体重50kgで89000円/月, 1年で106.8万円

オレンシア250mgで53500円. 
体重<60kgで500mg, 60-100kgで750mg, >100kgで1000mg.
0, 2, 4wkで投与, 以後4wk毎.
体重50kgならば107000円. 年に128万円が最低ライン.
-------------------------------------------------------------------------------------------

どれも100万円越え.
エンブレルに関しては、週に1回投与も効果的との報告があり, となると年間75万円で行ける可能性がある.


(Mod Rheumatol (2012) 22:824–830)
生物学的DMARD未使用のRA患者63例のRCT.
Etanercept(エンブレル®) 25mg 1回/wk群 vs 2回/wk群に割り付け
2年間フォロー. DAS-28の寛解(<2.3)達成率, 骨病変を比較.

結果は,
 臨床症状(DAS-28での寛解率)は両者で有意差無し.


骨病変については有意差ないものの, 2回/wk投与群のほうが改善する傾向がありそう.

費用の面から導入のし易さはEtenercept 25mg 1回/wkと言えそう.
他のが120-130万円ということを考えるとこっちも勧め易い。
自己負担は3割ならば22.5万円くらいか。

にしてもこの薬達は高いなぁ。

2012年11月21日水曜日

Daily interruption of sedation

鎮静を行う場合, 毎日決まった時間(例えば8時〜9時)に鎮静を中断し,
神経診察、人工呼吸器Weaningを行うことを "Daily interruption of sedation"と呼ぶ.
もしくはSAT(Spontaneous Awaking Test)と呼ぶ.

 その際呼吸器設定をA/C, SIMVからCPAPやPSのみ, T-tubeに変更し, 経過観察し,
 問題なければ抜管を施行する流れとなる.
 
 鎮静を中断し, そのままストレスがなければオフのまま. ストレスが強い場合は元の量の半量から開始する. ストレスとは頻脈, 血圧変化, 呼吸数変化, 焦燥感等で判断.

128名の人工呼吸器管理中 & 鎮静中の患者を, Intervention群(Daily interruption) vs Control群(必要時にSedationを中断)に割り付けたRCT. (NEJM 2000;342:1471-7)
結果は,
Outcome
Intervention
Control
P
人工呼吸管理期間(d)
4.9[2.5-8.6]
7.3[3.4-16.1]
0.004
ICU滞在期間(d)
6.4[3.9-12.0]
9.9[4.7-17.9]
0.02
Midazolam平均速度(mg/kg/hr)
0.032[0.02-0.05]
0.054[0.03-0.07]
0.06
Propofol平均速度(mg/kg/hr)
1.9[0.9-2.6]
1.4[0.9-2.4]
0.41



 呼吸器管理期間やICU滞在期間は有意に短縮される.

ICUで人工呼吸管理中の430名のRCT. (JAMA 2012;308:1985-1992)
Opioid and/or BenzodiazepineでLight sedationに維持する群(呼びかけで体動, 開眼する程度)
 vs. 上記+毎日鎮静offとし, 覚醒. 覚醒後ストレスが無い場合はそのまま鎮静はoffとし, 再開する場合は半量から開始.

●抜管のアセスメントは毎日以下をチェック. 
 覚醒, 吸引時に咳嗽あり, PaO2>60mmHg, Sat≥90%, FiO2 ≤0.4, PEEP≤10, RR≤35, 換気量≤15L/min, カテコラミン使用(-), 虚血性心疾患無いことを満たした状態で,

●アシストoffを1時間施行し, 以下を満たさなければ抜管. 
 RR≥35, Sat<90%, HR>140, ΔHR >20%, sBP<90, >180, 発汗, 不安出現.があれば中断.

結果は,

Daily interruption
Light sedationのみ

抜管までの期間(d)
7[4-13]
7[3-12]
HR 1.08[0.86-1.35]
ICU滞在期間(d)
10[5-17]
10[6-20]
MD -3.17[-6.89~0.55]
ICU死亡率
23.4%
24.9%
RR 0.94[0.67-1.32]
院内死亡率
29.6%
30.1%
RR 0.98[0.73-1.31]
ARDS
41.8%
37.3%
RR 1.12[0.88-1.42]
カテコラミン使用
56.8%
62.2%
RR 0.91[0.78-1.07]
腎透析
23.5%
17.7%
RR 1.33[0.91-1.94]
自己抜管
4.7%
5.8%
0.82[0.36-1.84]
体幹抑制
76.4%
79.4%
RR 0.96[0.87-1.07]
せん妄
53.3%
54.1%
RR 0.98[0.82-1.17]
再挿管(<48h)
5.6%
7.7%
RR 0.73[0.35-1.50]
気管切開
23.2%
26.3%
RR 0.88[0.63-1.23å]



両者で挿管期間, ICU滞在期間, 合併症, 予後に有意差は無かった.

現在SAT→SBT(spontaneous breathing test)の流れが一般的となっているが,
Light sedationに維持可能ならばそのままでアセスメントし, SBTに繋げるという手もあるということか。
問題はLight sedationに維持することが結構難しく, アメリカのICUは1ベット1人の看護師が付くが、日本ではそうはいかない。必然的にSedationの量が増加し、過鎮静となってしまうこともしばしばある。
そういう背景ではSATで毎日鎮静をリセットする方が合っているように思える。
増えすぎた鎮静剤も減らせるし。

2012年11月20日火曜日

慢性咳嗽の機序は神経性疼痛と一緒?

呼吸器疾患が除外された8週間以上の持続する咳嗽(+)の62名を対象としたRCT
ガバペンチン ~1800mg/d vs Placebo 10週間継続群に割り付け,
咳嗽に由来するQOLの変化, 咳嗽の頻度, 副作用を比較.

(Lancet 2012; 380: 1583–89)


結果は,
 ガバペン群の方が有意に咳嗽の頻度, 咳嗽由来のQOL, 咳嗽の重症度は改善.
 ただし, 副作用はガバペンの方が多くなってしまう. 特に複視や倦怠感、傾眠。


慢性咳嗽で、呼吸器疾患、消化器疾患、後鼻漏では無い場合、咽頭の過敏性が問題となっていることが多い。その機序は神経性疼痛と同じ機序という説がある。

半夏厚朴湯が用いられることもあるが、それでダメならばガバペンやリリカという選択肢もありなのかもしれない。

2012年11月15日木曜日

ICU患者におけるHES vs 生理食塩水

参考; 敗血症患者に対するHES vs リンゲル

CHEST trial; ICU入室中の7000名の患者を対象としたRCT (N Engl J Med 2012;367:1901-11.)
 6% HES + NSで管理する群 vs NSのみで管理する群に割り付け, 死亡率, 腎障害, 透析療法導入率を比較.(Blinded-RCT)
 患者はICUでFluid resuscitationを必要と判断された群.
 HES群は, 6%HES+NS混合液を50ml/kg/d使用し, その後はNSに切り替え.

Outcome;
 死亡率は両者有意差無し.
 透析療法移行率はHES群で有意に多い(7.0% vs 5.8%)
 副作用はHES群で多かった. 

Subgroup解析でも特に有意差は認められず.

Cre値の上昇はHES群の方が有意に大きく, 尿量は有意に少なくなる.

この結果からもHESの使用は腎機能増悪に関連することが分かり, HESの組織内沈着に伴う臓器障害の機序、リスクが推測される.

2012年11月12日月曜日

2012年11月5日月曜日

レクチャー 破傷風

破傷風 Tetanus
Clostridium tetani



タバコ吸いは10年早く死ぬ

広島と長崎のProspective cohort.
男性27311名と女性40662名を1950年からフォローしているCohort study. (BMJ 2012;345:e7093)
喫煙者と非喫煙者で寿命にどの程度の差があるか、2008年までフォローし比較.

結果は...
 喫煙者は非喫煙者よりも2-3倍死亡リスクが高く, 男性で約8年, 女性で約10年早く死ぬ.


当然若いころから喫煙している方がより死亡リスクは上昇する. 


また、35歳までに禁煙できれば死亡リスクには関与しないが, それ以上では死亡リスクに関与.
女性では45歳までに禁煙できればリスクにはならない.

禁煙を説得する情報の1つにはなり得るが、これで考えを変える様な人はもともと禁煙に前向きであって、理解しない人は吸い続けるんだよな。とりあえず同僚に見せてみよう。