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2012年8月27日月曜日

脳波所見: Intermittent Regional Delta Activity(IRDA) 一過性のδ波

てんかん評価の脳波にDelta波が認められた. Delta波, 徐波って抑制されているんじゃないの?

Intermittent Regional Delta Activity (IRDA) (Epilepsy and Behavior 2011;20:254-256)
一過性のDelta波を認める脳波所見(1-4Hz, 50-100µV, 3-5秒以上).
認める部位によりFrontal(FIRDA), Temporal(TIRDA), Occipital(OIRDA)に分類される.

この中でてんかん発作に関連性が強いのはTIRDAとOIRDA.
FIRDAは様々な病態で認められる事が分かっている.
 例えば脳腫瘍, 皮質下病変, 脳浮腫, 代謝性脳症, 脳底型片頭痛, 皮質基底核変性症, PSP, CJD, DLBでの報告がある.
 てんかんに関連するFIRDAは2%のみ. 1.5-2.5HzのFIRDAでは高齢者の部分発作, 3Hz以上のFIRDAでは若年者の特発性全般性てんかんで認められる事が多い.
 FIRDAの機序は不明確で, 当初は皮質下の深部病変, 脳の中心に近い部位からの信号と考えられていたが, びまん性の灰白質, 皮質, 皮質下の過活動から生じることもある. また, 局所の白質や視床からの多源性のDelta波を生じるケースもある.

TIRDA; 1-4Hz, 50-100µV, 3秒以上持続する脳波波形
 主に側頭葉てんかんにおいて指摘される所見であり, 側頭葉てんかんの30-90%で認められる. その場合, 徐波の前にSpike様の波形を認める事がある.
 以前は側頭葉硬化に由来すると言われていたが, 他にも様々な組織所見で認めている. Mesial Temporal Lobe Epilepsy(M-TLE)以外にもLateral-TLEでも認めれ得る.
 薬剤抵抗性の場合も多く, 手術治療への反応性が良好なTLE例が多い.
(Neurology 1999;52:202-205)

 TIRDA所見+の側頭葉てんかん例において, 頭蓋内よりEEGを測定すると, Delta波, Theta波の混合と, Spike-slow waveが混在する所見が得られるという報告もあり, 頭蓋骨外から測定すると徐波だが, 実際は抑制ではなく, 興奮所見を見ている可能性がある (Epilepsia 2011;52:467-476)

129例の薬剤抵抗性の局所てんかん患者で脳波を評価 (Clinical Neurophysiology 2003;114:70-78)
 64/129がTLE (M-TLE 28, L-TLE 9, ML-TLE 27例), extraTLE 40例, TLEを含む多源性 25例.
 TIRDAの頻度は, 以下の通り
M-TLE
24/28(85.7%)
L-TLE
0
ML-TLE
18/27(66.7%)
extra-TLE
0
TLE+
10/25(40%)



 TIRDAはMesial-TLEに高頻度で認められ, Lateral-TLEでは認められない. また, TLE以外の局所てんかんでも認められなかったという結論.
 また, TLE 50例で側頭葉切除を試行した結果, 側頭葉硬化は35例で認められた. TIRDAは30/35(85.7%)で認められ, 他の病理所見よりも頻度が高かった(萎縮では14.3%, 腫瘍では37.5%).

TIRDAは単一波形の方がより側頭葉てんかんに特異的 (Neurology 1999;52:202-205)
 47例のextraTLE(40例が前頭葉, 7例が頭頂, 後頭葉), 43例のTLE患者で脳波をチェック.

片側, TIRDA
片側 monorhythmic
片側 polymorphic
両側 polymorphic
TLE
46.5%
27.9%
18.6%
7.0%
eTLE
23.4%
4.3%
19.1%
2.1%


 この結果ではextraTLEでもTIRDAは認め得る. 特に多型性のTIRDAはTLE, extraTLE双方で認めているため, 特異性は低い. 単型性のTIRDAはTLEの27.9%, extraTLEの4.3%で認められており, よりTLEに特異的と言える.

また, 持続時間は様々. 脳波測定期間の>50%, 25-50%, <25%で認めるのが1/3ずつ程度.
(Epilepsia 2011;52:467-476)

OIRDA; 小児の欠神発作で報告された波形(Epilepsy and Behavior 2011;20:254-256)
 小児例で多く, 特に後頭葉の後方部位では小児例が多く, 後頭葉の前方部位では成人例が多く報告されている.
 TIRDA同様てんかん発作との関連が強く, 全般発作, 欠神発作, 局所性てんかんでOIRDAが認められている.

OIRDAはPhi rhythmとの鑑別が重要
 Phi rhythmは閉眼に一致した1-3秒の左右対称性のDelta波で, 2-4Hz, 100-250µVのDelta波である事が多い. Spike様の波を認めてもてんかんとは関連性は無い.